2019年11月8日発売
目下フェアウェル・ツアー中、スラッシュ・メタルの帝王スレイヤー。 2018年8月5日ホームタウンのロサンゼルスで行われたコンサートをフル収録した映像作品が登場。 メタル・ファンならスレイヤー最後の作品となるであろう本作を見逃すな! 2018年1月、ヘヴィメタル界に衝撃が走った。スレイヤーがフェアウェル・ツアーを行う、つまり現役引退することを表明したのだ。 確かにその兆候は以前から見られた。首の手術を受け、激しいヘッドバンギングができなくなってしまったフロントマンのトム・アラヤは、 引退をほのめかすこともあった。問題は首だけではない。 デビュー以来トム・アラヤ、ケリー・キング、ジェフ・ハンネマン、デイヴ・ロンバードという鉄壁のカルテットを誇ってきたスレイヤーであったが、 13年2月にデイヴが脱退。(もうこれで3度目のことであったが。)さらに同年5月2日には、ジェフがわずか49歳でこの世を去ってしまうという悲劇に見舞われたのだ。 その後もエクソダスのゲイリー・ホルトらの手を借りて活動を続けてきたスレイヤーで。 だが、ジェフもデイヴもいない彼らに割り切れなさを感じていたファンもいたかもしれない。 それでも、だ。スレイヤー本人の口から「フェアウェル・ツアー」の言葉が出た衝撃は、半端なものではなかった。 それはそうだろう。スラッシュ・メタルが誕生から、まもなく40年。これまで数多のバンドが生まれ、そして解散していった。 だが、スラッシュ・メタル・バンドによる「引退宣言」なんて、これまで耳にしたことはなかった。 ましてや40年間ずっとトップを走ってきたスレイヤーの引退宣言である。驚くなという方が無理な話だ。 フェアウェル・ツアーは18年5月、ラム・オブ・ゴッド、アンスラックス、ベヒーモス、テスタメントを従えた北米ツアーを皮切りにスタート。 19年3月にはダウンロード・ジャパンにもやってきた。トムの最後のスピーチに、感極まったファンも多かったはず。 このツアーがいつまで続くのか、今のところははっきりしていない。だが、一つ言えるのは、決して遠くない将来、スレイヤーとしての最後の瞬間がやってくるということ。 そんなフェアウェル・ツアーの模様が収録されており、いずれリリースされるという噂はずっと囁かれていた。 前述の北米ツアーのサポートを務めたベヒーモスのリーダー、ネルガルがSNS上で、「スレイヤーがDVD用のビデオ撮影をやっている」とバラしてしまったからだ。 そしてこの度、ついにその全貌が明らかになったのである。 『ザ・リペントレス・キロジー』と銘打たれた本映像作品には、18年8月5日、ロサンゼルスはイングルウッドのザ・フォーラムで行われた公演がまるまる収録されている。 メンバーは、トム・アラヤ、ケリー・キングに加え、ゲイリー・ホルトとポール・ボスタフ。「ヘル・アウェイツ」、「エンジェル・オブ・デス」、 「デッド・スキン・マスク」、そして最新スタジオ・アルバム『リペントレス』のタイトル曲など、35年以上に渡るバンドのキャリアの中で生み出された名曲の数々が、 惜しげもなく披露されている。日本公演ではプレイされなかった永遠のクラシック「アンチクライスト」が収録されているのも嬉しい。 本作が収録されたロサンゼルスは、言うまでもなくスレイヤーの地元。自分たちのヒーローのフェアウェル公演ということで、オーディエンスの熱気もただごとではない。 さらに、本作には「ユー・アゲインスト・ユー」、「リペントレス」、「プライド・イン・プレジュダイス」の3曲のPVを基調とした 『ザ・リペントレス・キロジー』という短編映画も収録されている。 本作がスレイヤーの最後の作品となる可能性は高い。(少なくともゲイリー・ホルトは「スレイヤーがニュー・アルバムを出すことはないだろう」と発言している。) これは単なる1つのバンドの活動停止という話ではない。スレイヤーの終わりは、1つの時代の終わり。彼らの活動停止が、エクストリーム・メタル界、 ひいてはヘヴィメタル界に大きな変動をもたらすことは間違いない。本作は、大きな物語終焉のドキュメンタリー、まさに永久保存版と言うべき作品。 ヘヴィメタル・ファンならば、これを見るのが義務である。 【メンバー】 トム・アラヤ(ヴォーカル/ベース) ケリー・キング(ギター) ゲイリー・ホルト(ギター) ポール・ボスタフ(ドラムス)