著者 : ふすい
「わたしはこの世界から、虐めを一つ残らずなくしたいと思っているんだ」 どこか湿り気のある秋の匂いが漂うある日、私の最愛の友人である睡蓮は、そんな理想を語った。 私は彼女の力になりたいと思い、“何か助けになれないか”と願い出るーー けれど……睡蓮は、自殺してしまった。 壊れゆく日々と、 終わりゆく私たち。 そうして私は、隠されていた“真相”へと辿り着くーー 第9回カクヨムWeb小説コンテスト「映画・映像化賞佳作」作品。 プロローグ 一章 睡蓮の理想 二章 琴子の決断 三章 二人の記憶 エピローグ
風見司が初期臨床研修を終えてから、三年が経過していた。彼は内科医としてより研鑽を積むべく、「北海道総合病院」で新生活を始めていた。風見は研修医を指導する立場になっており、同院の研修医の指導を任されたのだが、患者への治療と安全を優先して、いったん指導を中止したことから不和が生じてしまう。折しも、風見はかつての同期である清水涼子に院内で出くわす。彼女は膠原病内科医として順風満帆な生活を送っており、医師として大きく成長していた。研修医時代に結婚した朝倉雄介と詩織は順調な新婚生活を送っていたが、転勤を繰り返すたびに気持ちがすれ違うようになっていた。医師として社会での役割を果たす責任と、結婚生活の維持との板挟みになってしまう。四人の立場は変わり、それぞれが家庭と仕事の折り合いをつけながら、また新たな命を育みながら、医師としての未来を選んでいく。広大な北海道の大地を踏みしめて。
「俺もずっと、会いたくて会いたくて仕方なかったーー。」 引っ越しで離れ離れになった大好きな翔と、再会の約束をしていたかのん。 けれど彼からの手紙はいつしか途切れ、 級友からも「翔はもう忘れてる」と聞かされる。 会いたい人に出会える、奇跡の電車ーー 噂の三号線を思い出し、ホームへと駆け出すかのん。 そこで翔とは二度と会ってはいけない“秘密”を知ってしまうーー。 「好き」と「さよなら」を届ける、号泣必至の連作短編。 一号線 大好きな人の好きな人 ・・・007 二号線 君に好きだと伝えたい ・・・081 三号線 もう一度ここからはじめよう ・・・141 四号線 君との未来を夢見てた ・・・195
北海道の空知総合病院の研修医たちは2年間の研修医生活も終盤を迎え、進路を決めるべき時が迫っていた。沢井詩織は自分がやりたいことが見つからずにいた。自分の医学に対する自分の熱意が目指す場所を求める感情と、穏やかな私生活を続けたい気持ちの狭間で揺れ動く。朝倉雄介もまた、沢井との生活を続けるための将来を考えていた。風見司は仕事にも慣れ、充実した多忙な毎日を送っていた。だが、ある日、担当患者から「どうせ、先生もすぐいなくなるんだろ?」と言われてしまう。清水涼子は高度な医療を行う大学病院と、大学とは対照的に終の棲家となる穏やかな療養型病院を巡っていた。いずれも必要な仕事だと理解しつつも、その中で自分の医学に対する興味がどこにあるのか、考え直していた。四人はそれぞれの思いを胸に、医師として、個人としての進路を選んでいく。空知の心地よい春風とともに。
空知総合病院の研修医四人は赴任から半年がたち、慌ただしい研修生活は日常となっていた。朝倉雄介は慣れた様子で救急外来をこなしていたが、ある日、交通事故の重症患者が予期せぬ形で運ばれてくる。現場は混乱しており、連絡がうまくいかずにどう対応すべきだったのかと悩む。風見司は放射線科を回っている間、知識と技術を磨くことが要求されていた。プロとして自分に足りないこと、そして自分に合った医師としての生き方について考え始める。沢井詩織は緩和ケア科で自分にできることを探していた。治療を拒否する患者が診察室に入ってきて、沢井は患者の考えに納得ができなかったが……。清水涼子はリハビリテーション科で、パーキンソン病患者と出会ったのをきっかけに医師として患者の疾患を診るだけでなく、個人との向き合い方を考えていく。なにもかも手探りの中、四人の将来像は少しずつ形になっていく。空知の大地をともに歩みながら。
「何のために生まれてきたのか、答えられますか?」 安楽死が合法化されている2040年、神奈川県・江ノ島を望む<ラストリゾート>。 この場所で死を願う人々と向き合う人命幇助者<アシスター>の東峰渚(とうみね・なぎさ)は、かつて自らも安楽死を望んでいた。 だからこそ、寄り添える痛みがあると信じたい。 あの時の自分を照らしてくれたような、誰かの希望の光になりたいと願っている。 それがたとえ、最も許せない人であっても。 生きる辛さ、その孤独に優しく寄り添う。 SNSで話題を呼んだ『レゾンデートルの祈り』、待望の続編。
北海道の『空知総合病院』で働く研修医四人は、研修開始から三か月がたち、本格的な夏を迎えようとしていた。少しずつ医療現場に慣れつつある彼らであったが、新たな科に配属になるや否や、超緊急帝王切開が必要な妊婦が救急搬送されてくる。母子に命の危機が迫る中、産婦人科医や小児科医たちが必死で母子を救おうとするのに対し、研修医の清水涼子はなすすべもなく立ち尽くすばかり。彼女はなにもできない無力さを痛感し、病院という場所で働く重責を再認識する。小児科に配属された風見司もまた、初日から厳しい出産に立ち会って自分の未熟さに打ちひしがれていた。末っ子の彼は子供にどう対応していいのかわからず、四苦八苦していたが、次第に診察を通して子供に向き合っていく。朝倉雄介は高齢者医療に携わる中、祖母と暮らしていた頃を思い出し、貧しかった昔と、医師として歩み始めた今の自分を見つめ直していた。そんな折、高齢の女性患者の脱走に出くわしてしまう。彼女が向かった場所はー。沢井詩織は人付き合いが苦手ながらも、近頃は患者との対話にも慣れつつあった。しかし一人で患者を回診していたある日、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう。そして夏の終わりに北海道でも新型コロナウイルス感染症が流行し、ついに空知総合病院でも感染者が確認された。四人もコロナ禍で働く現実を実感せずにはいられなかった。
北海道の片田舎にある空知総合病院に四人の研修医が赴任してきた。風見司は工学部の大学院を修了後、医学部に編入した経歴の持ち主であり、病院という環境に慣れずにいた。初日から心肺停止の患者に出くわすなど、医療現場の厳しさに打ちのめされる。沢井詩織は都内私立大学の医学部を卒業後、実家の医院があるこの地方に戻ってきたが、医師になってから見える景色は違っていた……。朝倉雄介は貧しい母子家庭に生まれ、生活苦の中で医師を目指したが、思い描いていた生活とのギャップにうんざりしていた。清水涼子はかつて祖父母の主治医であったベテラン医師と出会うが、患者の家族として見えた姿と、同じ病院で働く医師として見る今の姿は違っていた。新米研修医の同期四人は失敗と成長、喜びを分かち合いながら院内を奔走する。二年後に医師として独り立ちすることを夢見て、空知の青空に希望を乗せて……。
「あなたも、生きたくても生きられないのでしょうか」 2035年、神奈川県・江ノ島の<ラストリゾート>。 この場所で遠野眞白が出会う人は、誰もが「死にたい」と願っている。 安楽死が合法化された日本。 人命幇助者<アシスター>の眞白は、死に救いを求める人々と正面から向き合う。 暗闇の奥底に微かな「生きたい」があると信じ、希望の光を照らしたい。 もう二度と、あの日の後悔を繰り返さないために。 苦しくても、生きる理由を見つめ直す。 新鋭作家が紡ぎだす、切なくも温かい命の物語。
時空を超える骨董ミステリー、待望の第2幕! 美術部員の楓と春樹は、迷い込んだ骨董屋「眼球堂」で、絹や金銀の糸で織り上げられた1枚のタペストリーを見つけた。 それはかつて春樹が模写した、幻の画家エディス・グレイの絵、そのものだった。 春樹にその絵を描かせた男は、眼球堂に出入りする少女・リラを執拗に追っていることがわかり…。 幻の絵が複製された真の目的とは?巨大な財団の陰謀と、天才芸術家を襲った悲劇の真実に迫る! 一章 迷子の神様 二章 時の少女2 三章 嘆きのレース 四章 神の瞳 五章 瞳に降り、溶ける雪 六章 雪の翼 七章 アイズ
「どうか、何も知らないまま、永遠に幸せでありますように」 初恋の人ーー柳葉美緑と結婚して三年。俺は幸せな生活を送っていた。 しかしある日、その幸せは絶望へと反転する。 突然襲った病魔が彼女の命を奪ったのだ。 彼女を救うため、俺は時間を巻き戻す力を使い、中学生から人生をやり直すことに。 ただし副作用として、巻き戻した時間の五倍の寿命が縮められる。 それでも、もう一度彼女を幸せにしたかったんだ。 だから、だから俺はーー。 読後必ずあなたは読み返す。 驚愕の結末に涙が止まらない! 一途な愛の物語。
時空の狭間で語られる、奇妙で美しい7つの物語。 デパートの片隅でひっそりと営業している骨董屋・眼球堂(がんきゅうどう)には、 眼にまつわる品だけが集められている。 そしてそこは、彼方と此方をつなぐ場所でもあった。 ーーーーーーーーーーーー ある日、中学生の柚香(ゆずか)はデパートの片隅で ひっそりと営業する骨董屋を見つけた。 眼球にまつわる品ばかりが集められたその店の名は「眼球堂」。 店主は柚香にこう言った。 「この店の骨董はどれもみな物語を持っている。君が物語を読み取れたなら、 その対価として私は君に健やかな眼球をあげよう」 店主の取引に応じた柚香はまず、ブリキの人形を手に取るが…。 一章 革命の瞳 二章 左の目の悪霊 三章 眼目愛づる姫君 四章 妖精の瞳 五章 時の少女 六章 青の王妃 七章 瞳の力
人付き合いが苦手な朝日英司は、ある特別な思いから図書委員になる。一緒に業務をこなすのは、クラスの人気者で自由奔放な、月ヶ瀬ひかり。遠慮のない彼女に振り回される英司だが、ある時不意に、彼女が抱える秘密を知ってしまう。正反対なのに、同じ心の痛みを持つふたりは、“ある方法”で自分たちの本音を伝えようと立ち上がりー。ラストは圧巻!ひたむきなふたりが辿り着いた結末に、優しさに満ち溢れた奇跡が起こる…!図書室が繋ぐ、愛と再生の物語。
ご近所さんが魔女でした!?神戸を舞台に、ほっこりほんわか魔法ストーリー! 神戸に住む、面倒くさがり屋の女子高生あかりの家の隣に、 「自称・魔女」ラーラが引っ越してきた。 神秘的な魅力を持ったラーラは、あっという間に古ぼけた屋敷の庭を素敵なハーブ庭園に作り替え、 身近な人や訪れる友人たちがかかえる悩みを、魔法の力で解決していく。 二人が共有する、ちょっと不思議な物語を、 美味しいハーブティーとともに紡ぎます。
村上ひまり、高校二年生。陸上部のエースでチョコが好きな元気な少女。しかしある日、部活中に倒れてしまい、病院で、とある病に侵されていると告げられる。余命は一年。幼馴染みで恋人でもある森恭介を悲しませたくないひまりは病のことを隠して別れを切り出すが、絶対に嫌だと拒否されてしまう。二人は平行線のまま、刻一刻と残された時間は過ぎていきー瑞々しい高校生の愛の奇跡を描く、感動の純愛小説!!!
誰かの未練、それは残された人へ最期に届く、物語。…あなたの未練は、何ですか?人は未練を残したままでは、死んでも天上へと送られることはない。そんな人間達のやり残したことを解消し、魂を無事に送り届けるーそれが“エージェント”の仕事だ。エージェントの劣等生・遊馬は、実習先で超優秀かつ異端の教官・新藤に出会い、一緒に人の生き様に関わり、変わっていく…。失ってから気づいたのは、誰かを想う優しい気持ち。切なく心に響き、けれどどこか温かいピュアストーリー。
子供向けのセミオーダーアイテムをつくる仕事をしている季衣子。彼女が作る品は一つとして同じものはなく、子供受けもよく人気があった。しかし、自宅の近所での工事の騒音で、仕事ができなくなってしまう。 途方にくれていると、看護師の友人からリハビリで長期転院する女性が家の管理人を探しているという話を聞いた。そこで仕事をさせてもらうことと引き換えに、季衣子は管理人を引き受ける。 さっそく向かうと、そこは湖畔に立つ素敵な洋館だった。が、そこには、かつて幼い季衣子が今の仕事を選ぶきっかけとなった憧れの品ーー古いオブジェ『夜を測る鐘』があった。なぜここに?と疑問を持つ季衣子に、婦人は自分の過去を語り……。雨降る洋館に届く手紙とは。 ふたりの女性が紡ぐ、明日に向けて背中を押してくれる美しい物語。