著者 : アニー・ウエスト
「二度と君を離さない。モリー、君は僕のものだ」事故で記憶をなくしたモリーは見知らぬ婚約者ピエトロにかいがいしく世話を焼かれ、壊れ物のように大切にされていた。お腹のなかでは彼の子がすくすくと育っている。モリーは漠然と広がる不安にさいなまれながらも、豪華な婚約指輪を身につけ、夜ごと無上の喜びに浸っていた。だが、夢のように幸せな日々はある日突然終わりを告げた。モリーは思い出したのだー彼とはただの愛人関係だったことを。妊娠を告げたときの、あまりにも残酷な彼の仕打ちを。
なぜ今ごろ会いに来たの? カリスは喜びよりも強いショックを受けた。 ーーそれは身分違いの恋だった。マッターニ伯爵との夢のような日々。 けれど彼にとっては、つかのまの戯れにすぎなかった。 彼が突然姿を消したあと、カリスは絶望し、ひそかに男の子を産んだ。 あれから2年。彼の狙いは……息子なのだろうか? やはり、この女性は僕のものだ。 アレッサンドロ・マッターニはカリスをひと目見て確信した。 だが、今はまだ彼女に真実を告げるときではない。 もう1つ、確かめなければならないことがある……。 愛情による結婚などばかげているーーかつて身も心も捧げた男性に浴びせられた、耳を疑う冷酷な言葉。富も名誉も欲しいままにする億万長者の前に、ひれ伏すしかなくて……。ピュアなヒロイン像が涙と共感を誘う、記憶喪失×シークレットベビー・ロマンス!
父の死後、叔父夫婦のもとで家政婦扱いされてきたリナは、17歳で放蕩王への貢ぎ物として王宮に差し出されてしまった。だが王が急逝し、若き新国王サイードに帰宅を命ぜられる。「私にはもう帰る家はありません…」おずおずと告げたリナが文字も読めないと知ると、王は学ぶ機会を与えると宣言した。4年後、リナはスイスで必死に学び、希望に燃えて帰ってきた。サイードへの恩返しに、母国で教育の普及に尽くすつもりで。ところが、彼はすっかり大人に成長したリナを見て言った。「恩義に報いたければ、1週間私の愛人として過ごせ」
いつもは大好きなコーヒーの香りを不快に感じたその日、ウエイトレスのアリスは妊娠したことに気づいた。思い当たるのはただ一人。従姉の結婚式で会ったアドニだけ。慣れないシャンパンに悪酔いした彼女を介抱してくれたセクシーなギリシア富豪に、純潔を捧げたのだった。妊娠の事実を伝えたくて彼のオフィスを訪ねたアリスはしかし、金目当てと罵られ、ショックを受ける。しがないウエイトレスの私を、彼が本気で愛するわけないのに。アリスは涙をこらえ、逃げるようにオフィスを出たが…。
「シャキル…?」ロンドンのザラット大使館のパーティでシーク・イドリースを紹介され、アーデンはめまいを覚えた。端整な顔立ち、官能的な唇、なぜか軽蔑のにじむ褐色の瞳ー彼は私の人生を一変させて消息を絶ったシャルキルその人だ。4年前、旅先で惹かれ合った二人は夢のような1週間を過ごし、パリで落ち合う約束をしたが、ついに再会は果たせなかった。アーデンは彼への想いを胸に、彼の子を独りで産み育ててきた。偽名を使った火遊びだったと知って深く傷つきながらも、アーデンは翌朝訪ねてきた彼と熱い口づけを交わしてしまい…。
ラファエル・ペトリが私を雇いたいというの?ニューヨークのホテル王からの突然の指名に、リリーは驚いた。自宅で企業調査を請け負う彼女にとっては名誉なことだが、一つだけ気がかりなことがあった。人目に触れるのが怖いのだ。14年前、リリーはある事故で頬に火傷を負い、それ以来、恋愛を遠ざけて世間から隠れるように生きてきた。その美貌で女性を虜にできるラファエルには理解できないだろう。リリーは地味なだぶだぶの服に身を包み、髪で片頬を覆うと、傲慢な雇い主のもとへ向かったー愛人になる運命とも知らずに。
逃げた姉の身代わりとして、 億万長者と結婚するなんて……。 幼いころから美人の姉や優秀な弟と比較され、 横暴な父に蔑まれ続けてきたエラは窮地に陥っていた。 破産寸前の父が、娘と大物実業家ドナートの結婚を画策したのだ。 地味な看護師の私など、億万長者が相手にするはずがないのに。 だが父はエラの弟が懸命に貯めた事業資金まで使い込んでおり、 ドナートから資金援助を受けた暁にはそのお金を返すと言う。 仕方なく彼に会ったエラはその強烈な魅力に驚き思わず反発する。 そんな彼女にドナートは言った。「僕と結婚しなければ、 君の父親は破産する。君は父親が路頭に迷ってもいいのかな?」 劣等感に苦しみながらも訪問看護師として健気に自活してきたエラ。はたして彼女は、真実の愛を手に入れることができるのでしょうか……? 揺れる思いを巧みに描いた、熱く切ないラブストーリー。
エヴァは旅先のパリで幼なじみのフリンと7年ぶりに再会した。屋敷の使用人の息子だった彼は実業家として大成功し、今や女性たちの理想そのものの、魅力的な男性に変貌していた。恋に落ちたエヴァは彼にプロポーズされ、有頂天になる。私はなんて幸せなの。父とは正反対の伴侶と巡りあえるなんて。家族を出世の道具にした亡父を、エヴァは今も憎んでいるのだ。フリンのために着飾り、パーティを開いては客をもてなす毎日。ふと、彼女は気づく。夫はなぜ、ただの一度も“愛している”と言ってくれないのだろう。私は彼に…愛されているの?
マリサはダマソから突然求婚され、呆然とした。高級リゾート施設を経営する実業家のダマソとは、ひと月ほど前、旅先で一夜をともにしただけ。しかも彼は翌朝、彼女のベッドから冷たく去っていったのだ。あのときは思いもしなかった。まさか自分が妊娠するなんて。彼女はベンガリア国の王女だったが、双子の兄を事故で亡くして以来、故国へは戻っていない。身重の体となった今ではなおのこと…。そんなマリサの窮状を知ってか、ダマソはさらに意外な提案をした。彼が所有する島の邸宅で、しばらく同居してみないかというのだ。彼を信用していいの?マリサに残された道は一つしかなかった。
恋人の浮気の現場を見てしまい、打ちひしがれたマギーは、降りしきる雨の中をずぶ濡れで歩いていた。気分が悪くなり、思わずかがみ込んだとき、長身で引き締まった体つきの男性に声をかけられる。砂漠の国シャジェハールの要人で、カリードと名乗った彼は、マギーを高級車に乗せ、滞在している屋敷まで連れていった。冷たくなった体を抱き上げられ、バスルームに下ろされると、カリードの魅惑的な低い声が囁いた。「さあ、服を脱いで」マギーは恥じらいながらもその言葉に従った。氷雨の夜の熱いひとときが、悲しい千一夜の幕開けとは知らずに。