著者 : キャロル・モーティマー
切ないのは、あの夜に彼が求めたものが 私じゃなく、亡き妻の面影だったこと……。 若きマーリンは仕事で湖水地方へ向かっていた。 妻を悲劇的に亡くした実業家のブランドンに会い、 彼の妻の生涯を描く映画に同意してもらうのだ。 でも、彼は映画関係者の訪問を毛嫌いしているという。 道中、嵐に見舞われて道に迷ったマーリンは、ホテルと勘違いして ブランドンの館を訪れてしまい、やむなく素性を告げずに泊まることに。 その夜、妻の写真を暖炉にくべながら憂愁に包まれる彼を目撃し、 昼間の傲慢さが消えたその姿に、マーリンは胸を衝かれたーー 彼を慰めたい一心で、求められるまま純潔を捧げてしまうほどに。 だが翌朝、彼女が素性を明かすと、ブランドンは豹変した! 傲慢か、繊細かーー昼夜、別の顔を見せる大富豪に猛然と映画化を突っぱねられ、傷つくマーリン。後日、彼の申し出にさらに翻弄されることに。「今後もぼくと大人の関係を続けるんだ」英国女王も認めた稀代の大スター作家、C・モーティマーの貴重な初邦訳長篇!
シャナはその夜、パーティ会場に足を踏み入れたとたん、ある男性の視線を感じた。また彼だわ。リック・ダルモントー浅黒い肌に黒い瞳、長めの黒髪。スペイン人の血を引く、セクシーなプレイボーイで有名な敏腕実業家だ。先日、甘くハスキーな声色で話しかけてきてからというもの、シャナへの執心を隠そうともせず、行く先々に現れる。マティーニのグラスを渡す刹那、彼はシャナの細い指に触れた。「これが君に触れる唯一の方法だから」シャナはびくりとした。そんな誘惑をはねつけた翌日、兄の会社が買収されたと知るーあろうことかリックに!即座にシャナは退職願を出すが…。まるで獲物を前にした野獣のようなヒーローのペースに乗せられまいとするヒロイン…。“年の差”“オフィス”の二大人気テーマも絡めた、夢の逸作。
上司のセクハラに遭い、会社を辞めるはめになったキットは、新たな会社に再就職し、社長マーカスの個人秘書を務めることになった。だが、前任秘書の話では、マーカスはとんでもないプレイボーイらしい。前職での苦い経験をふまえたキットは、ボスに目をつけられないよう、地味な服装とヘアスタイルに野暮な黒縁眼鏡の変装を思いつく。半年後、相変わらず“お堅い秘書”として仕事を続けていたある日、ボスの現在の恋人が現れたと思ったら、かんかんに怒って帰っていった。マーカスからその理由を聞いたキットは、唖然とするー今週末、恋人ではなく、君と一緒に過ごすことにした、ですって!?内心で彼に強く惹かれていることを、悟られてはいけないのに…。
リーと友人ギャビンは知り合って2カ月。彼の父親が所有する別荘に誘われ、リーはなんの心配も抱かず出かけていった。同じ18歳同士の気安さで。屋敷は息をのむほど美しかったが、しんと静まり返った室内には人の気配がしない…。アルコールを飲ませようとしてくるギャビンの執拗さにようやく危険を察知したものの、後の祭りー。とそのとき、低くハスキーな声が響いた。「床に転がって何をしてるんだ」黒いシルクシャツの胸元をはだけた、セクシーなその男性こそ、ギャビンの父ピアーズ。リーの心臓が突然、早鐘を打ち出した。
ガブリエラは義理の兄ルーファスにひと目で強く惹かれたー資産家であるルーファスの父と、母が再婚したその日から。だがガブリエラの母親を欲得ずくと信じるルーファスは、娘も同じだと決めつけ、金目当ての誘惑は無駄だと冷たく言い放った。ひどく傷ついたガブリエラは彼を忘れようと努め、避け続けてきた。6年後、ルーファスの父が亡くなり、意外な遺言が明らかになる。継父は遺産相続と引き換えに、二人に半年間の結婚を命じていた。従わなければ事業も財産もすべてルーファスの従弟のものになる、と。事業を従弟に渡したくないルーファスは、ガブリエラに結婚を迫る。愛する人に憎まれたまま妻になるなんて…でも、私には拒めない。
緑色の瞳のすぐ下と鼻の頭に飛び散る、憎らしいそばかす。赤い髪の冴えない17歳、ローリの小さなコンプレックス。幼いころに両親を亡くし、つましくはあるが大切に育てられ、いまは叔母が社長秘書を務める会社で働いている。そんなローリは、ある朝、運転の練習中に車をぶつけてしまう。あろうことか勤め先のハンサムな社長、ブレアの車に…。社長は車から出てくるなり、目障りだとでもいうように、「注意力散漫だな。子供はこれだから」と、ジロリと睨んだ。瞬間、恥ずかしさのあまりローリの頬が薔薇色に染まった。
ブリナは信じられなかったーこのわたしが妊娠9週目?このところ体調不良がそのせいだなんて、夢にも思わなかった。思春期のころの手術のせいで子供を持つことはできないと言われ、運命を恨んでさんざん泣き暮らした時期もあったけれど。いまは彼女なりの愛される資格を探りながら、半年前、金融界の大物ラフ・ギャラハの愛人になったのだ。だけど約束も束縛もしないという二人のルールは、もう守れない。ブリナは何も告げずにラフのもとを去った。愛していたから。子供が欲しくない、彼の重荷にはなりたくなかったから。
シアは両親亡き後、ウエイトレスをしながら大学で学んでいる。華やかな生活を送る友人からNYでの休暇に招かれたが、連日連夜のセレブの集いには、気後れして楽しむことができない。ある晩、会場のバルコニーでシアは男性に声をかけられた。目を見張るほどハンサムで、富と権力がにじみ出るようなオーラに、男性経験のない彼女は恐れをなして逃げ出してしまう。彼こそがパーティーの主賓、大富豪のルシアン・スティールであり、目を留めた女性は必ず手に入れると知ったのは、そのあとだ。翌朝、高級ホテルの鍵が届き、友人宅から彼女の荷物が運び出された。シアは震え上がった。私は、彼の標的になってしまったの…?
両親を飛行機事故で、そのあと娘と夫も交通事故で喪って、埋めることのできない心の空洞を抱える彼女を、シャーリーと愛称で呼ぶ者は少ない。その数少ない友人マットのフラットに、いま、自宅をぼやで焼かれたシャーリーは間借りしている。そこへある日、友人の知己と称する男アーロンが押し入ってきた。蔑みもあらわにシャーリーを眺めるや、マットの妻が来るから、君が愛人であることを隠さなければ、と言うのだ。邪推のひどさに面食らって、誤解をとこうと顔をあげると、彼はにべもなく言い放った。「すぐに僕の恋人のふりをするんだ」
不実な夫が多額の負債という苦までジェシカに押しつけ、死んでいった。パートタイムの仕事を見つけ、せめて少しずつでもと返済を始めるが、生前に夫が会社のお金まで使い込んでいたことが新たにわかった。もはや手詰まりとなって、途方に暮れるジェシカの頭に、夫の上司だった魅力的な社長、マシュー・シンクレアの顔が浮かぶ。以前、初めて会ったとき、彼はジェシカが誰かも知らないまま、熱い瞳で彼女を見つめ、“僕のものになってほしい”と言った。あの日は戸惑いと恥ずかしさで逃げてしまったけれど…。ジェシカは心を決め、マシューのもとへ向かった。返済できないことの償いとして、わが身を差し出すために。
「僕の弟が戦死したばかりなのに、次の獲物を探しているのか?」牧師の養女リリーは世界一会いたくない人物と最悪の再会を果たした。亡き幼なじみが崇拝していた兄である麗しの将校ー公爵位を継ぐために帰還したジャイルズ・モンタギュー卿だ。彼はリリーを金目当てで弟をたぶらかした悪女と決めつけ、顔を合わせるたびに捨て子だったことを持ち出して嘲るのだ。深く傷つきながらもなぜか彼を憎みきれずにいたある日、またもやジャイルズ卿と言い合いになり、偶然体が触れ合った。その瞬間、胸のうずきを覚えたリリーは彼への想いに気がついた。貴族の彼と結ばれるなど、万にひとつの望みもないのに。
ブルックはコンピューター会社の受付嬢。きわめて平凡な毎日だが、黒髪のハンサムな社長、ジャロッドのそばにいられるだけで幸せだったー美しい人妻と愛人関係にあるという噂の彼に、どんなに恋い焦がれても、報われないとわかっていたけれど。ところが、挨拶を交わすだけだった二人の関係が、ある日の新聞記事で大発展する。なぜか、ジャロッドとブルックの婚約が発表されたのだ。すると体面を重んじるジャロッドはブルックに迫った。当分の間、本当に婚約したように見せかけるしかない、と。
6年前、19歳の看護師オリビアは、恋人だった年上の医師マーカスを深く愛しながらも別れを告げた。彼の心が別の女性にあると知ったから。いまだ傷の癒えないオリビアのもとにある日、マーカスが事故に遭ったという報せが入る。会いに来てほしいと言う彼の娘の懇願に病院に駆けつけると、そこには、視力を失い、心を閉ざしたマーカスの変わり果てた姿が。以前の彼に戻ってほしい!オリビアはマーカスへの愛を痛感し、彼の個人看護師になる決意をした。声を聞いても、彼は私だと気づかなかったけれど…。
キャシーはついに辞表を提出した。最愛の人、ドミニクに。この5年、キャシーは社長であるドミニクの個人秘書として、休暇も取らず献身的に尽くしてきた。だが仕事一筋で冷淡な彼は、当然キャシーになど目もくれない。行き場のない苦しい片思いをあきらめるため、キャシーはクリスマスを姉の家で静かに過ごすことにしたのだ。突然のキャシーの行動に怒りをあらわにしたドミニクだったが、一転して意外な申し出をしてきたー車で送り届けてくれると。今日はクリスマスイブ。いったいドミニクは何を企んでいるの?
シュザンヌが16歳のとき、大富豪だった父が亡くなった。父は再婚した若き後妻に骨抜きにされ、財産も底をついていた。それから3年、いまやつましく暮らすシュザンヌは、次なる獲物を探す継母に連れられ、高級ホテルに宿をとることに。そこで待ち受けていたのは、麗しのイタリア伯爵チェーザレ。シュザンヌはときめくが、しょせん叶わぬ恋だ。ところが、部屋に戻ると伯爵の姿が。さしものシュザンヌも混乱するが、さらに継母が、この娘には男を連れ込む悪い癖があると伯爵に吹き込みー当然、彼は蔑みの目でシュザンヌを見た。
レオニーは青白い顔で、大富豪ホーク・シンクレアの再訪に息をのんだ。ホークがレオニーの妹と自分の息子が交際していることに反対し、手切れ金を払うと言いに家まで乗り込んできたのは9カ月前のこと。彼女の顔色が優れないのは、傲慢な彼との望まぬ再会だけでなく、先日の早産で体が弱っているのが原因だったーそう、私は過ちを犯した。彼と初めて会ったあの日、たった一度だけ。私たち姉妹を侮辱した男と、枕を交わしてしまっただなんて…。この腕に抱いている小さな娘が彼の子とは、とても言えない。しかし、鋭いまなざしでこちらを見すえるホークの目は、赤ん坊が確かにシンクレア家の血を引いていることを見抜いていた!
“姉夫婦の乗る飛行機が墜落”そのニュースにモーガンは茫然とした。そして生存者はいない模様という報道が…。姉は出産のため、ロンドンからロサンゼルスに帰る途中だったのに。だが悲しみに暮れる間もなく、モーガンは思わぬ人物の訪問を受ける。アレックス・ハモンド!姉の夫の兄で、一族の企業を経営する男性。姉の結婚式で会っただけなのに、傲慢さが強く印象に残っている。とっさにモーガンは問いつめた。「姉夫婦は生きているの?」アレックスはきっぱりと否定したあと、子供が生きていると告げる。墜落のあと、姉は息をひきとる前に息子を生んでいたというのだ。モーガンとアレックスを後見人に定め、二人に幼い命を託して…。
ルーシーは取引先の重役から執拗な誘いを受けているところを、居合わせたアメリカ人男性、シンクレアに救われた。激しく惹かれ合った二人はその夜のうちに愛を交わしたが、行きずりの関係など持ったことのないルーシーは、ひどくうろたえ、さよならも言わずに部屋から逃げ出した。その夢のひとときで、彼の子を宿したとは思いもせずに…。数日後、ルーシーはいとも簡単にシンクレアに見つかってしまう。驚いたことに、彼はルーシーの勤め先を傘下に持つ経営者だった。昇進のためにぼくを誘惑したんだろうと決めつけられても、ルーシーは、震えながら吐き気をこらえることしかできずにいた。