著者 : 佐々木譲
目の前の女性はまっすぐ裕也に訊いたーーあなたは、わたしの祖父ですか? 祖父を探していると女性は言った。祖母は安西早智子といい、未婚のまま出産、何も語らずに亡くなった。裕也はその名を知っていた。古い記憶が甦る。一九七六年ベルリン国際映画祭、祝祭の夏。あのとき彼女に何があったのか。祖父とは誰か。探索の果て裕也が辿りついた真実とは。過去と現在が交錯する人生探しのミステリー。
27年前の轢き逃げ事案、あれは〈殺し〉だったのか? 電気街・秋葉原に眠る“ある一族の秘密”が、時を経ていま目覚める。 警察小説の巨匠・佐々木譲が描く未解決事件【コールドケース】 ◆あらすじ 1997年10月、神田明神下の路地で起こった轢き逃げ事案。被害者は秋葉原【アキバ】に根を下ろす一族経営の電器店の常務だった。 未解決のままだったこの事案に、2024年11月、〈殺し〉の可能性が浮上する。 警視庁捜査一課特命捜査対策室の刑事・水戸部と、地元・万世橋署の“やる気のない年上部下”柿本のバディは、電気街の歴史を搔き分け真実を摑めるのか!? 主演・松重豊でドラマ化も果たした〈特命捜査対策室〉シリーズ、待望の最新刊! ◆シリーズ既刊 『地層捜査』 『代官山コールドケース』 (ともに文春文庫刊)
夷地を調査し、万延元年遣米使節団としてアメリカに渡った仙台藩士・玉虫左太夫の生涯を描く歴史長編。明治政府とは違う民主国家を夢見、奥羽列藩同盟成立に奔走しながら悲劇的な死を遂げた人物の生涯を描く。「サンデー毎日」連載「北天の孤星」を加筆して書籍化。
捜査の第一線から外され続けた佐伯宏一。重大事案の検挙実績で道警一だった。その佐伯は、度重なる警部昇進試験受験の説得に心が揺れていた。その頃、競走馬の育成牧場に強盗に入った四人は計画とは異なり、家人を撲殺してしまう。“強盗殺人犯”となった男たちは札幌方面に逃走を図る…。それぞれの願いや思惑がひとつに収束し、警官の酒場にある想いが満ちていくー。大ベストセラー道警シリーズ、第1シーズン完!それぞれの季節、それぞれの決断ー。
一九四九年、終戦から四年が経った東京。陸軍中野学校出身でかつて破壊工作員だった藤堂直樹は、歴史学者の守屋淳一郎と物理学者の和久田元から過去に時間を遡る手段を発見したと聞かされる。さらに二人は直樹に思いがけない依頼をしてきたー「過去に戻って、戦争を始めた者たちを排除して欲しい」。-目指すは満州事変の阻止。未来は、本当に変わるのか?
轢き逃げの通報を受け、臨場した北海道警察本部大通署機動捜査隊の津久井卓は、事故ではなく事件の可能性があることを知る。それは被害者が拉致・暴行された後にはねられた可能性が高いということだった。その頃、生活安全課少年係の小島百合は、駅前交番で保護された、旭川の先の町から札幌駅まで父親に会いたいと出てきた九歳の女の子を引き取りに向かう。一方、脳梗塞で倒れた父を引き取るために百合と別れた佐伯宏一は、仕事と介護の両立に戸惑っていた。そんな佐伯に事務所荒らしの事案が舞い込む…。それぞれの事件がひとつに収束していく時、隠されてきた北海道の闇が暴かれていくー。
東京から大連に渡った警察官は猟奇殺人を追い、命が尽きる予感に抗う画家は、最後の恋に生きる。警視庁を退職して満洲・大連警察署特務巡査となった河村修平は、初勤務早々、殺人事件の捜査に携わる。被害者男性の首には頸動脈を狙ったような傷があり、修平は東京で起こった殺人事件との類似に気づく。一方、新進画家の中村小夜は街で偶然出会った青年ルカへの想いを深めてゆくが、彼には一族にまつわる秘密があった。やがて小夜は警察が事件の容疑者としてルカを追っていることを知る。ただならぬ予感に満ちた圧巻のサスペンス×ロマンス長篇。
定年後の嘱託も辞め、独り暮らしの沖本信也。そこに幼い少女を連れた女性が現れた。逃避行をしている、という。テロと銃撃が頻発する日本で、信也は二人を守り抜くと決断した。役所勤めの経験を生かし、意外なルートで軍事境界線を突破、あらゆる危機を回避していくー。なぜそこまで身をかけるのか?銃撃音の真っ只中で絞り出した言葉が、嗚咽と血とともにほとばしる!圧巻の幕切れに心が震える、ベテランの新たなる高み。
日露戦争終結から十二年たった、大正六年。敗戦国の日本は外交権と軍事権を失い、ロシア軍の駐屯を許していた。三月、警視庁の新堂は、連続強盗事件の容疑者を捕らえるが、身柄をロシアの日本統監府保安課に奪われてしまう。新たに女性殺害事件の捜査に投入された新堂だったが、ロシア首都での大規模な騒擾が伝えられ…。ロシアの属国と化した日本で、男は、警察官の矜持を貫けるのか。「もうひとつの大正」を描く、入魂の改変歴史警察小説、第二弾。
ロシア沿海州に開拓農民として入植した小條夫妻の次男・登志矢は、技能を身につけようと帝室鉄道少年工科学校で学び、鉄道技能士となった。だが世界大戦のさなか、帝国軍に徴兵され前線へと向かう。なんとか激戦を生き延び復員した登志矢だったが、帝国には革命の嵐が吹き荒れ、やがて登志矢もいやおうなしに飲み込まれていく…。悲嘆、憤怒、そして憎悪が、運命に翻弄された男を突き動かす!
翌日からの雪まつりを楽しむため世界中から観光客が押し寄せ沸き立つ札幌。北海道警察本部大通署の佐伯宏一は部下の新宮とともに自動車窃盗現場に向かっていた。その頃署内では、生活安全課少年係の小島百合が釧路から家出した少女が札幌に向かっているという電話を受けた。一方、機動捜査隊の津久井卓は住宅街で起こった発砲事件の現場に向かっていた。これら複数の事件は、やがてもつれ合いながら、雪まつりを舞台に激化していくー。
本番当日に失踪した舞台女優と数年ぶりに再会した脚本家の心に去来したもの(「不在の百合」)。かつての仕事仲間の訃報を私に告げた、意外な人物(「隠したこと」)。自堕落な生活を続ける後輩との会食で、私がとったある行動(「反復」)…。都会の片隅で生きる人々の埋もれた「真実」が明かされるとき、過去の重みが忍び寄る。佐々木譲が贈る渾身の人間ドラマ、全13篇。
1937年の東京。隅田川で拾われた男が病院に運ばれてくる。身元不明の男は記憶を失っていたが、なぜかこれからやってくる戦禍の時代を知っているかのようだった。「遭難者」。とある北の国。猛吹雪の夜、図書館に一人の少年が取り残された。暖房もない極寒の館内。そこに突然現れた謎の男は少年を救い、やがて大切なことを伝え始めたー。「図書館の子」。時とたたかい、時に翻弄される者たちを描く全六編。
日露戦争終結から十一年たった、大正五年。ロシア統治下の東京で、身元不明の変死体が発見された。警視庁刑事課の特務巡査・新堂は、西神田署の巡査部長・多和田と組んで捜査を開始する。だがその矢先、警視総監直属の高等警察と、ロシア統監府保安課の介入を受ける。そして、死体の背後に、国を揺るがす陰謀が潜んでいることを知るー。警察小説の旗手として不動の人気を誇る著者が「今の日本への問題意識を示すために、この舞台を選んだ」と語る、圧巻の歴史改変警察小説。
独り暮らしの初老男性が絞殺死体で発見された。捜査線上に浮上したのは家事代行業の地味な女性。女の周辺では、複数の六十代男性の不審死が報じられ、疑惑は濃厚になっていく。女は、男たちから次々に金を引き出していたのか。見え隠れする「中川綾子」という名前の謎とは。逮捕後も一貫して無実を訴える彼女だが、なぜか突如、黙秘に転じた…。判決の先まで目が離せない法廷小説の傑作。
夏休み。鉄道好きで“スーパーおおぞら”に憧れる僕は、ある日出会った男性に小樽の鉄道博物館へ連れて行ってもらえることに。最高の夏になると信じていたのに、こんな大ごとになるなんてー。生活安全課の小島百合は、老舗店で万引きした男子小学生を補導した。署に連れて行くも少年に逃げられてしまう。一方、刑事課の佐伯宏一は園芸店窃盗犯を追っていた。盗まれたのは爆薬の材料にもなる化学肥料の袋。二つの事件は交錯し、思わぬ方向へ動き出す。北海道警察シリーズ第八弾。
なぜ父は幼い自分を捨てて失踪し、死んでしまったのかー。母の四十九日を終えた岩崎俊也は、両親が青春時代を過ごした北海道の運河町へと旅立つ。二十年前、父が溺死する直前まで飲んでいた酒場の店主によれば、同じ法科大学漕艇部員だった女性の密葬に参加するために滞在していたらしい。さらに、昭和四十四年に漕艇部で起きたある事件を機に、快活だった父の人柄が激変したことを知る。父は事件に関係していたのか?家族にさえ隠し続けていた苦悩と死の真相とは!?会心の野心作にして、まったく新しい「家族ミステリー」が誕生!!
少女の淡い恋心と、突然訪れる別れを描いた痛切なお話。別れるときの女性と男性それぞれの心理を、鮮やかに切り取った大人の恋愛物語。生き別れた父への複雑な感情と、忘れがたい思い出が綴られた作品…。「別れ」にまつわる味わい深い短編を精選したアンソロジー。別れはつらいもの。けれど別れを経験してこそ、出会いの喜びを強く感じられる。心が揺さぶられる作品に、きっと出会える13編。
東京湾岸で男の射殺体が発見された。蒲田署の刑事は事件を追い、捜査一課の同期刑事には内偵の密命が下るーー所轄より先に犯人を挙げよ。捜査線上に浮上する女医の不審死、中学教師の溺死、不可解な警官の名前。刑事の嗅覚が事件の死角に潜む犯人を探り当てたとき、物語は圧巻の結末になだれこむ。徹底したリアリティと重厚緊密な構成で警察小説の第一人者が放つ傑作長編。『犬の掟』改題書。