著者 : 佐伯一麦
まぼろしの夏まぼろしの夏
ほの暗い生の奥底から、射し始める再生の淡い光。仙台の川べり、ノルウェーの空の下、押し寄せる想いの源流には何があるのか?九つの作品群を通じて浮かび上がる男の消息…沈潜の日々からのゆるやかな寛解を描く、最新作品集。
少年詩篇少年詩篇
初めて独りで寝た部屋の闇、父親に連れられてサーカスを見に行った記憶、体温計を噛んでしまい死ぬのではないかと怯えたこと、母親にうちの子ではないと叱かられた悲しみ、犬をけしかけられた恐怖、友だちとのケンカとかけひき、給食を捨てたこと、兄弟ゲンカ…。少年の日のさまざまな光と影を描く47の小品。
木の一族木の一族
青年は若すぎる年齢で夫となり、父となった。電気工として、小説家として、妻とおさな子三人を懸命に支える日々-。都会を離れ、北関東での心細い借家探しを通して生きることの危うさを捉えた「古河」。父と子の幸せな瞬間とその隣合わせで待ち構える崩壊の兆しを描いた、傑作「木の一族」等、普遍的な家族の原風景といのちの手ざわりを美しく切実な言葉で綴る珠玉の中短編4編。
一輪一輪
電気工の青年が修理に訪れたのは昼休みの風俗店だった。手作りのサンドイッチを俯いて食べていたヘルス嬢に青年は一目見て恋をした。以来、青年は客として彼女を指名するようになるのだが…。アスベストの被害に遭い長くは生きられない電気工と路地裏の風俗店で息を潜めて生きる女。大都会の裏側で蠢く不器用な男女の切なく哀しい恋を紡ぎ出す傑作「一輪」など、中編二編を収録。