著者 : 大城立裕
沖縄に暮らし続けてきた作家の日々。92歳の「いま」が、静かに、豊かに、語り出される。歳月という釉薬に、独特の色合いを増しながらー伴侶の死と夫婦の歴史を、沖縄を背景に綴る表題作「あなた」のほか、滋味あふれる私小説を収録。
沖縄に生きて、その風土を呼吸しながら「沖縄の私小説」を書いてきた89歳の作家の新境地ー初めての私小説。川端康成文学賞を受賞した表題作と新作「病棟の窓」を収録する最新作品集。
米国統治下の沖縄で日本人、沖縄人、中国人、米国人の四人が繰り広げる親善パーティー。そのとき米兵による高校生レイプ事件が起こり、国際親善の欺瞞が暴露されていくー。沖縄初の芥川賞受賞の表題作のほか、「亀甲墓」「棒兵隊」「ニライカナイの街」そして日本語版未発表の「戯曲 カクテル・パーティー」をふくむ傑作短編全五編を収録。
清国と薩摩藩に両属していた琉球ー日本が明治の世となったため、薩摩藩の圧制から逃れられる希望を抱いていた。ところが、明治政府の大久保利通卿が断行した台湾出兵など数々の施策は、琉球を完全に清から切り離し日本に組み入れるための布石であった。琉球と日本との不可思議な交渉が始まったのである。
処分官として派遣された松田道之が琉球に突きつけたのは、尚泰王の上京、清国への朝貢禁止、明治年号の強制など独立どころか藩としての体裁をも奪うものであった。琉球内部でも立場により意見が分かれ…。「世界で軍隊をいちばんきらうという琉球」がどう対処するのか。小説で沖縄問題の根源に迫る不朽の名作。
宗教の島・久高島から、本島へ嫁いだ朝子。婚家は誇り高い神女殿内で、接収された軍用地からは莫大な使用料が-幸福を約束されたかに思えた結婚だったが、家の資産を狙うヤクザ者が夫に近づき、朝子の心は次第に“濁った闇”に包まれてゆく…。『日の果てから』『かがやける荒野』に続き、沖縄を代表する作家が、激しく揺れ動く現在の島を舞台に“沖縄の魂”の変貌を描き切った一作。
捨てられない記憶がある。見えない記憶がある…。敗戦から二年。沖縄の“荒野”で、人々はそれぞれに“蘇り”を試みる。戦場で記憶を喪った少女を中心に、占領下の基地の町で繰り広げられる叙事詩的長編小説。
明るい陽の光と豊かな自然につつまれた沖縄の小島。そこに生きる人びとの日々の営為。静かな、そして濃密な生のエネルギーをにおわせる人びとの人生の断片を、深い共感をもって描きあげた名作四篇。
十九世紀末、日本の琉球処分に反発、清国に支援を求めて海を渡った男たちがいた。福州琉球館を舞台に、憂国の思いに燃える彼らを待っていたのは…。歴史の波に翻弄されながらも、時代に立ち向かう琉球人の群像。