著者 : 宮城谷昌光
この者は時機がくれば、雲を招き、天に昇る龍となる。彼の澄み切った忠誠心はいかに育まれたのか。知られざる生い立ち、晴耕雨読の青年期…宮城谷版『三国志』完結から十年、ついに待望の作品が紡がれた。
その信義は宇宙をもふるわせ、誠実さは天地をも感動させる。三顧の礼で迎えられ「天下三分の計」を献策、漢室復興のため帝と国に忠を尽くした名宰相。ただ賢と徳だけが人を服させるー伝説化された“天才軍師”の実像に迫る。
中国、春秋戦国時代に燦然と輝く名将楽毅。その偉業の陰にはこの男がいた。周王朝の王子という身分を捨て、群雄割拠する諸国を商人として渡り歩く青年・公孫龍。その清廉潔白な人格で将軍や有力者たちの信頼を得た彼は、自らその登用に尽力し、燕に仕えるようになった名将・楽毅が企図する空前の大戦略の実現に向け、才覚を発揮する。名作『楽毅』の感動が新たに甦る、宮城谷文学最高傑作、第三部。
関羽と張飛は、顔をみあわせた。あれほど激しく怒った劉備をはじめてみた。政府のために誠意をもって戦ってきた劉備は、その政府の汚濁がゆるせなかったのであろう。-玄徳はめずらしいほど無垢な人なのだ。関羽はここで劉備の本性をみたおもいで感動した。けがれる一方の世で、どこまで無垢をつらぬいてゆけるか、それをみとどけたくなった。
周王朝末期、宮廷内の陰謀で命を狙われ姿を消した後、商人となった公孫龍。公子を助け強国趙の信頼を得たが、その後継者を巡る争いに巻き込まれる。君主となった恵文王と親しい公孫龍だったが、先代の父王(主父)は兄・安陽君の側についた。果たして主父の真の狙いは。一方、公孫龍が拠点とするもう一つの国・燕に、魏から楽毅が使者として到着した。公孫龍は、武将としての力量に注目し、楽毅を留まらせようとする。
「わが懐にはいった窮鳥をどうして殺せようか」これまでの劉備の生きかたを観て、-人からうけた恩を返す型の人間ではない。と、洞察した。どれほど曹操が厚くもてなしても、劉備に滲みてゆくものはない。檻にはいった虎に愛情をかけても、檻からでた虎は飼い主をいきなり襲うであろう…。中国歴史小説の第一人者がいざなう「魏」を創った男たちの物語!
周王朝末期、弱体化した国を守るため人質として燕に送られることになった王子稜。その途上、父王から託された燕王宛の書翰の内容を知る。そこには、これを持参した王子を殺すようにと書かれていた。王宮内の陰謀に巻き込まれたことを知った稜は、身分を捨て運命を天に委ねることに決める。折しも、強国趙の幼い二人の公子を賊の襲撃から助けたばかり。二公子の臣下の求めに応じ、王子稜は商人「公孫龍」として趙の都を目指す。そして運命は変転を始めたー。
中国春秋時代の大国・晋。この国の重臣を代々務めた趙一族。太陽の如く酷烈な趙盾、族滅の危機に瀕した趙朔、名宰相・趙武、王子朝の乱を鎮定した趙鞅、その子趙無恤…。二百年にわたる一族の興亡を、透徹した歴史観と清冽な筆致で描いた著者初期の傑作。指導者に求められる「徳」のありようをめぐる物語。
伍子胥VS.范蠡 呉越両軍、激突! 国家の命運を賭した戦いが始まった。 伍子胥と范蠡、二人の知略戦の行方はーー。 2500年の時を超えて鮮やかに蘇る古代中国歴史譚!
越王・句践が囚われの身となって二年余。その間、范蠡は越国で王がいつ帰ってもよいように準備を整えていた。呉が陳を攻めていることを知った諸稽郢は、呉王・夫差を見舞う使者を出すべしとの提言を受け、范蠡とともに呉へ向かう。すると夫差より思いもかけぬことを范蠡らは命じられるー呉へそのままとどまれというのだ。王が帰ってきた際に万全の体制を整えるべく、秘密裡に楚と外交していたことが露顕したのかと肝を冷やした范蠡らだったが、彼らの拘束のかわりに句践を解放するという。夫差の思惑は、いったい何なのか。呉の伍子胥は、そして越の范蠡の運命はどうなるのか。第九巻堂々の完結!
楚の出身である范蠡(はんれい)は十二歳の時、家族と住居を盗賊の襲撃により失った。奇跡的に難を逃れた彼は、父の親族がいる越の会稽へ移り住み、賢者・計然のもとで学ぶ。ここで親友の種(しょう・後の大夫種)と出会い、優秀な二人は二十代半ばにして太子・句践(くせん)の側近に抜擢される。やがて、越に呉が攻め入ると、范蠡は策略をめぐらし越を救う存在となるのだった。謎多き忠臣を活写する、中国大河歴史ロマン第7弾!
項梁の反秦連合に参戦した劉邦は若き項羽と共に秦と戦い、彼の勇猛さと複雑な人間性を知る。やがて楚王より関中平定という無謀な命を受けた劉邦は、張良の献策を生かし、秦の街を次々に攻略。ついに秦は降伏する。そして劉邦は鴻門の地で再び項羽と相見えるのだった。漢王朝を作った劉邦を描く大河小説、疾風怒涛の第三巻!
劉邦は「西楚覇王」となった項羽により、荒蕪の地である漢中の王に封じられる。新たに韓信を臣下に得た劉邦は、漢より関中・中原へと進軍し、楚軍との間で激しい戦いを繰り返す。幾度も窮地に陥る劉邦だったが、同盟者の協力により楚軍の糧道を断ち、項羽を追い詰めてゆく。漢王朝を作った劉邦を描く大河小説、ついに大団円!
漢王朝を作った劉邦を雄渾に描く中国歴史長篇第一巻。秦始皇帝は、東南に自らを脅かす「天子の気」を観る。この「五彩の気」を持つ者こそ、一地方官吏に過ぎない劉邦その人であった。始皇帝陵建設の夫役へ向かう途上で職をなげうち山に籠った劉邦は、陳勝・呉広が叛乱を起こし戦雲が覆う中、秦の圧政打倒のため挙兵を決意する。
挙兵した劉邦は、民衆の絶大な支持を受け沛公と称され、自らの勢力範囲を拡大していく。人の才を見抜き、その才を用いる名人である劉邦のもとに、稀代の軍師・張良をはじめ、名臣たちが続々と集結する。やがて劉邦たちの前に、南方の呉で挙兵した項梁・その甥項羽の軍があらわれる。劉邦を雄渾に描く、中国歴史長篇第二巻!
六百年に及ぶ栄華を誇る古代中国商(殷)王朝の王子に生れた箕子は、甥・紂王の宰相として、傾きゆく王家のため死力を尽す。炮烙の刑、酒池肉林といった悪名高い故事、紂王を惑わす妖姫・妲己、敵対勢力・周の文王、太公望など多彩な登場人物を通し、権力の興亡と人間の運命を描き切った作家のデビュー作品。文字の大きな新装版。
越は呉を奇襲するべく密かに大量の造船を行い、林野に運ばせていた。これをとある者から聞いた伍子胥は策を練る。その頃、何かがおかしいと感じていた范蠡は句践に伝えるも、句践は秘策を実行する。だが、すでに作戦を把握していた呉の攻撃により越軍は敗退。ついに伍子胥が率いる兵たちに句践は追い詰められるが、何とかかわし会稽山へ逃げ込む。句践は降伏も亡命もありえず、ここで戦い抜くと、ともに山に籠もった兵を前に宣言するが、大夫種の必死の献策をうけ、呉との講和を進めることをやむなく了承、囚われの身となってしまう。范蠡らはいつか句践が解放されることを信じ、その時まで越国を守り抜くことを誓う。