著者 : 小野正嗣
世界文学の巨人が創出したアメリカ南部の伝説の地ヨクナパトーファの全貌を明かす究極の小説選。作家をノーベル賞に導いた奇跡の作品集を最強の翻訳陣による画期的新訳で。
フランス文学最高峰ゴンクール賞受賞作。父に捨てられた弁護士のノラ、移住先で教師の職を捨てなければならなかったファンタ、夫を失ったカディ・デンバ。悩み、悲嘆に暮れ、疑念に駆られ、騙され、無力な怒りに苛まれ、ときに辱められていく三人の女たちの絡み合う生を描く、フランス最重要作家の傑作小説。
「名前のないモノ」ばかり作る大工、「世界でいちばんすばらしい詩」を書いている詩人ー。ストリートで生きる面々の十七の物語は、みな風変わりで、少し切ない。ポストコロニアル文学の源流に位置するノーベル賞作家ナイポール、実質上のデビュー作。
インドからアメリカに渡り、ささやかな幸福を築いてきた移民一家の日常が、ある夏のプールの事故で暗転する。意識が戻らない兄、介護の毎日に疲弊する両親、そして悲しみの中で成長していく弟。痛切な愛情と祈りにあふれる自伝的長篇。フォリオ賞、国際IMPACダブリン文学賞受賞作。
35歳になるさなえは、故郷の海辺の町へと戻った。幼い息子、希敏とともに。希敏の父、フレデリックは、美しい顔立ちだけを残し、母子の前から姿を消してしまった。“引きちぎられたミミズ”のように大騒ぎする子を持て余しながら、さなえの胸には、九年前のあの言葉がよみがえる。芥川賞受賞作を含む四篇を収録。
小さな入り江と低い山並みに挟まれた土地に十歳の尊は連れて来られた。言葉が話せず体も動かせない兄と尊を、都会の狭い部屋に残していなくなった母があれほど嫌っていた田舎。豊かな自然と大人たち、霊的なるものに慈しまれ、尊は癒されていく。芥川賞受賞作『九年前の祈り』に連なる“希望と再生”の物語。
遠い号砲が、オジイの戦争の記憶を呼び覚ます。悪戯者の猿は、オバアの血を騒がせる。冥界から使者が訪れ、水死人は姿を変えて帰還するー。『九年前の祈り』の新芥川賞作家、奇想あふれる6篇。最初の作品から20年の光跡を示す魅惑の短篇集。
尻野浦小学校には、杏奈先生と飛鷹かおるという生徒、そして英語まじりで話をする校長先生がいるばかり。そう、ここは海沿いの限界集落。残りの住人はかおるの父とかおるの兄だけ。そこにある日、山向こうの「ガイコツジン」集落から、エトーくんがやってきてー。それぞれの人生を抱え、集まった人たちの濃密な関係が織りなす、風変わりな家族の物語。芥川賞受賞作家によるオリジナル長編小説。
三十五歳になるシングルマザーのさなえは、幼い息子の希敏をつれてこの海辺の小さな集落に戻ってきた。何かのスイッチが入ると引きちぎられたミミズのようにのたうちまわり大騒ぎする息子を持て余しながら、さなえが懐かしく思い出したのは、九年前の「みっちゃん姉」の言葉だった。表題作「九年前の祈り」他、四作を収録。
祖母から聞いた、四国の森の奥深くに伝わる「壊す人」と「オシコメ」の創造の物語を、MとTという記号を用いて書き記す。時の権力から独立した、一つのユートピアがつくり出される奇想天外の物語は、いつしか二十世紀末の作家が生きる世界、われわれの時代に照応していく。海外で最も読まれている大江作品。
異国の森の小さな家で、幼子と二人きり、妻を待つ。森から声が聞こえる、奇妙な住人が訪れる、妻は戻らない…三島由紀夫賞受賞作『にぎやかな湾に背負われた船』から四年、小説の新たな可能性を切り拓く傑作短編小説集。