著者 : 島田雅彦
神は人に呪いをかけた。どんな悪い環境にも適応できるように。ある夜、横溝時雨が町中華で再会した中学時代の同級生・三浦杜子春は、自分を「子どもの国」バルナランドからの転生者だと語った。半信半疑で杜子春に関わるうち、時雨は新橋の雑居ビルを拠点にひそかに活動する「転生者支援センター」にたどりつき、想像を絶する冒険が始まるー。ライトノベル的想像力の彼方へ読者を運ぶ「異世界転生」文学爆誕!
「異端」の少年アキラと、彼が恋するAIドクターのエリカ。心の交流を通じ、感情や夢見る力を身につけた教育係のアンドロイド・ゴーレム3は、世界の秩序を覆すとてつもないものを作り出そうとしていたー。
「あなたは考えたことがありますか?自分がラストエンペラーになるかもしれないって」私は東京の空虚な中心に広がる森に住む憂いの皇后。ハンドルネームはスノードロップ。花言葉は「希望」「慰め」の二つ。腐敗した泥舟政権は国民を国家に奉仕させる倒錯を繰り返している。さあ、「ダークネット」を駆使し、「令和の改新」を実行すべき時がきたー。「立憲君主国」日本の最後の「良心」はどこにあるのか?作家の奔放な想像力が躍動する禁断の「皇室小説」!あの『無限カノン』の陶酔が蘇るー。
3月生まれの幼年期から、めくるめく修業時代を経て、鮮烈なデビューへー。戦後の文学を彩った、文豪たちとの愛憎劇と、妻がある身の最低男の、華麗なる遍歴と、不埒な煩悶と。最後の文士・島田雅彦による自伝的青春私小説!
一八六一年三月十三日、横浜に生まれた。二十五、六になるまで、定職に就くことなく、風の吹くまま、浮き雲暮らしをしていた。四十を過ぎて、報われない女遍歴にも終止符を打つのだが、戦争の機運が高まり、日露戦争が始まっ 、従軍記者として急遽、戦場に派遣されることになってしまった…。
「絶望」が蔓延する地方の町・葦原に帰ってきた、破天荒な新米坊主(!?)江川放念。若者が「夢」を持てないほどに荒廃した故郷に驚愕した彼は、若い人材が町を救うはずだと「原石発掘プロジェクト」を立ち上げる。放念によって集められた4人の高校生ー常人離れした肩を持つ黒木鷹、町で一番の美少女・青山藍、微生物オタクの白土冴子、そして凡人・緑川夢二ーは、それぞれの個性を活かし「夢」に向かって走り出す。しかし、彼らの前に葦原荒廃の元凶、前市長とその傀儡と化した現市長が立ちはだかり…。「絶望」は噛み締めるほどに甘くなる?「青春小説」の新たな王道、ついに刊行!!東村アキコ描き下ろしウォームアップコミック収録!(原作=島田雅彦)
外交官から首相秘書に抜擢された新一は、七つの別人格に苦しむスパイでもあった。その新一が仕える世襲総理・松平定男は、凡庸な極右との前評判を覆し、米大統領も黙らせる名演説で世間の度肝を抜く。しかし、彼の内部にも奇妙な変化が現れて…。二重スパイと暴走総理は、日本の破壊を食い止められるのか?第70回毎日出版文化賞受賞作品。
なぜか自分以外には誰の姿も見当たらない…。治験バイトのため入っていた病院で、長い眠りから覚めたシマダミロクは驚愕する。事態を解明すべく都心に向かった彼が他の生存者たちの力を得て知ったのは、「太陽のしゃっくり」を引き金に原発危機、感染症の蔓延、ライフライン停止が同時発生し、人類が滅亡へとまっしぐらに突き進んでいること。そんな絶体絶命の状況下で、看護師の国枝すずに囁かれた言葉がミロクの頭をよぎる。「最後の一人になっても、頑張ってくださいね」。驚異の想像力で我々の未来を予見する、純文学×SFの到達点!
「捜査に協力して欲しい」。警視庁特命捜査対策室の穴見は、迷宮入り事件の糸口を見つけるため、探偵ナルヒコのもとを訪れた。銀座ホステス誘拐、ジャーナリスト連続殺人、歌舞伎町水難。シャーマンの血を引き、ひとの夢に入る力を持つ彼が目をつけた事件の捜査線上に、やがて共通の男が浮かび上がる。一見バラバラに見える事件に隠された真の目的とは。探偵と殺し屋の対決がいま幕を開ける。
背任の疑いをかけられた大手銀行員・藤原道長は、妻と娘を置いて失踪した。人目を避けた所持金ゼロの逃亡は、ネットカフェから段ボールハウス、路上を巡り、道長は空腹と孤独を抱え、格差の底へと堕ちてゆく。一方、横領の真の首謀者たる銀行幹部たちは、事件の露見を怖れ、冷酷な刺客を放つー。逆転の時は訪れるのか。東京の裏地図を舞台に巨額資金を巡る攻防戦の幕が開く!
釧路湿原のビニール小屋で、ミイラ化した死体と、彼が自死に至るまでを克明に記したノートが発見された(表題作)。独裁国家を世襲した男と孤高の批判者(聖アカヒト伝)、幻の救世主を探し彷徨う巡礼の旅(アルマジロ王)など、著者が二十代の新人作家時代に発表した短篇七作品。アイロニーを纏う饒舌な言語感覚と、時代への尖鋭な批評精神で表現し続ける、島田文学の源流を遡行する。
デビューからわずか四年で、芥川賞に六回ノミネートされ、六回落選した現・芥川賞選考委員島田雅彦の華麗なる落選の軌跡にして初期傑作集。大学在学中に発表された鮮烈なデビュー作「優しいサヨクのための嬉遊曲」のほか、「亡命旅行者は叫び呟く」「夢遊王国のための音楽」を収録。作家生活三十周年記念企画。
これが輝かしき文学史的事件!芥川賞最多落選者であり現・芥川賞選考委員島田雅彦、前代未聞の初期傑作集。永遠の青二才・悪久間一人を峻烈に描いた代表作「僕は模造人間」をはじめ「ドンナ・アンナ」「未確認尾行物体」を収録。作家生活三十周年記念企画。
幻の娘の誘惑は甘く、そして切なかったー東京郊外、眠りが丘。一時の快楽に身を委ね、堅実なはずの人生を踏み外していく人々。彼らはただ、自らの欲望に少しだけ素直なだけだったのかもしれない…。夢想の町「眠りが丘」を舞台に島田雅彦が描き出す、悦楽と絶望の世界。
一八九四年長崎、蝶々さんと呼ばれた芸者の悲恋から全てが始まった。息子JBは母の幻を追い、米国、満州、焼跡の日本を彷徨う。三代目蔵人はマッカーサーの愛人に魂を奪われる。そして、四代目カヲルは運命の女・麻川不二子と出会った刹那、禁断の恋に呪われ、歴史の闇に葬られる。恋の遺伝子に導かれ、血族四代の世紀を越えた欲望の行方を描き出す画期的力篇「無限カノン」第一部。