著者 : 川上弘美
大きな物語がなくなったあとの複雑な時代に、 新しい出会いや発見、悲しみや葛藤を経験しながら成長する子どもたち、 うつろいゆく大切なものもの。それでもなお世代を超えて受け継がれる、 かけがえのない日々を描く新たな成長小説(ジュブナイル) いまほど世の中の仕組みが複雑ではなかった一九七〇年代。 『七夜物語』という不思議な本の世界を冒険した子どもたちがいた。鳴海さよと仄田鷹彦。七つの夜をめぐる冒険は、二人にとって大切な経験となるが、さよも仄田くんも「夜の世界」の出来事を決して思い出すことはなかった。 あれからおよそ三十年ーー。 さよの息子「絵」と仄田くんの娘「りら」は、両親と同じ小学校でクラスメートになっていた。二人もまた『七夜物語』の世界へと導かれるのか? 二〇一〇年の現代を舞台に、十歳から十一歳へと成長する二人の変化の兆しと、子どもたちを取りまく世界を鮮やかに捉えながら、ささやかな人の営みと、そのきらめきを届ける物語は、二〇一一年の「あの日」へと向かっていく。 著者の長編ファンタジー『七夜物語』から十二年、 次世代を生きる子どもたちの物語
あ、また時間に捕まえられる、と思った。 捕まえられるままに、しておいた。 小説家のわたし、離婚と手術を経たアン、そして作詞家のカズ。 カリフォルニアのアパートメンツで子ども時代を過ごした友人たちは、 半世紀ほどの後、東京で再会した。 積み重なった時間、経験、恋の思い出。 それぞれの人生が、あらたに交わり、移ろっていく。 じわり、たゆたうように心に届く大人の愛の物語。
この扉の向こうに、秘密を抱えた旅人たちがいる。豪華寝台列車「ななつ星」の旅から生まれた5編の物語と2つの随想。ゆっくりと流れる時間の中、人は、それまで口にしたことのない言葉を語りだす。
SNSで話題沸騰、緊急重版! 『蛇を踏む』『神様』『溺レる』『センセイの鞄』『真鶴』『水声』── 現代日本文学の最前線を牽引する傑作群を次々に発表し続ける作家・川上弘美が、8年の年月をかけて丹精こめてつくりあげた、不穏で、温かな場所。 どこにでもあるようで、どこにもない、〈このあたり〉へようこそ。 そこは〈このあたり〉と呼ばれる「町」。 そこには、大統領もいて、小学校も、公民館も、地下シェルターもNHKもある。 朝7時半から夜11時までずっと開店しているが、 町の誰も行くことのない「スナック愛」、 六人家族ばかりが住む六人団地の呪い、 どうしても銅像になりたかった小学生。 どこにでもありそうな懐かしい場所なのに、 この世のどこよりも果てしなく遠い。 〈このあたり〉をめぐる26の物語は、どれも短いのに、ものすごく長い。 「この本にはひみつが多い。 そんな気がする。」 ──作家・古川日出男(解説より) 近藤聡乃さんの挿絵に彩られたこの物語を読み終えるとき、 全身が奇妙な感動に包まれる。
遠い未来、衰退の危機を認めた人類は、「母」のもと、それぞれの集団どうしを隔離する生活を選ぶ。異なる集団の人間が交雑することにより、新しい遺伝子を持ち、進化する可能性がある人間の誕生に賭けたー。かすかな希望を信じる人間の行く末を、さまざまな語りであらわす「新しい神話」。泉鏡花文学賞受賞作。
誕生日の夜、プレーリードッグや地球外生物が集い、老婦人は可愛い息子の将来を案じた日々を懐かしむ。年寄りだらけになった日本では誰もが贈り物のアイデアに心悩ませ、愛を語る掌サイズのおじさんの頭上に蝉しぐれが降りそそぐ。不思議な人々と気になる恋。不機嫌上機嫌の風にあおられながら、それでも手に手をとって、つるつるごつごつ恋の悪路に素足でふみこむ女たちを慈しむ21篇。
変てこだったりグロテスクだったり極端だったりする、究極に純度の高い愛のアンソロジー。人気作家勢揃い! ●川上弘美●多和田葉子●本谷有希子●村田沙耶香 ●吉田知子●深堀 骨●安藤桃子●吉田篤●小池昌代●星野智幸●津島佑子 気鋭の翻訳家、岸本佐知子氏が「変な愛」を描いた小説ばかりを集め訳したアンソロジー。翻訳アンソロジーとしては異例の人気シリーズとなった、前作に続く日本版。 「変愛は純愛。日本の作品にも、すばらしい変愛小説がたくさんあることに気がつき」、「ここ日本こそが世界のヘンアイの首都であると思え」たという岸本氏が選んだ、現代の恋愛小説の名手による、変てこだったりグロテスクだったり極端だったりする、究極に純度の高い愛のアンソロジー。 「形見」 川上弘美 「韋駄天どこまでも」 多和田葉子 「藁の夫」 本谷有希子 「トリプル」 村田沙耶香 「ほくろ毛」 吉田知子 「逆毛のトメ」 深堀 骨 「カウンターイルミネーション」 安藤桃子 「梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる」 吉田篤弘 「男鹿」 小池昌代 「クエルボ」 星野智幸 「ニューヨーク、ニューヨーク」 津島佑子 形見 川上弘美 韋駄天どこまでも 多和田葉子 藁の夫 本谷有希子 トリプル 村田沙耶香 ほくろ毛 吉田知子 逆毛のトメ 深堀 骨 カウンターイルミネーション 安藤桃子 梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる 吉田篤弘 男鹿 小池昌代 クエルボ 星野智幸 ニューヨーク、ニューヨーク 津島佑子
1966年ひのえうまの同じ日に生まれた留津とルツ。「いつかは通る道」を見失った世代の女性たちのゆくてには無数の岐路があり、選択がなされる。選ぶ。判断する。突き進む。後悔する。また選ぶ。進学、就職、仕事か結婚か、子供を生むか…そのとき、選んだ道のすぐそばを歩いているのは、誰なのか。少女から50歳を迎えるまでの恋愛と結婚が、ふたりの人生にもたらしたものとは、はたしてー日経新聞夕刊連載、待望の単行本化。
1996年、わたしと弟の陵はこの家に二人で戻ってきた。ママが死んだ部屋と、手をふれてはならないと決めて南京錠をかけた部屋のある古い家に。夢に現われたママに、わたしは呼びかける。「ママはどうしてパパと暮らしていたの」-愛と人生の最も謎めいた部分に迫る静謐な長編。読売文学賞受賞作。
彼の筋肉の美しさに恋をした“わたし”、魔法を使う子供、猫にさらわれた“小さい人”、緑の箱の中の死体、解散した家族。恋愛小説?ファンタジー?SF?ジャンル分け不能、ちょっと奇妙で愛しい物語の玉手箱。
何人もの子供を育てる女たち。回転木馬のそばでは係員が静かに佇む。少女たちは日が暮れるまで緑の庭で戯れ、数字を名にもつ者たちがみずうみのほとりで暮らす。遙か遠い未来、人々は小さな集団に分かれ、密やかに暮らしていた。生きながらえるために、ある祈りを胸に秘めー。滅びゆく世界の、かすかな光を求めてー傑作長篇小説!
少女の想像の中の奇妙なセックス、女の自由をいまも奪う幻の手首の紐、母の乳房から情欲を吸いだす貪欲な嬰児と、はるか千年を越えて女を口説く男たち。やがて洪水は現実から非現実へとあふれだし、「それ」を宿す人々を呑み込んでいく…。水/土/空気/火の四つの元素、そして世界の名をもつ魅惑的な物語がときはなつ生命の迸りと、愛し、産み、老いていく女たちの愛おしい人生。
留守番電話のテープに聞き入る三人の男「声の巣」。決められた役割を忠実に演じる私たち「学校ごっこ」。女の姿をした蛇が私の部屋に住みついて「蛇を踏む」(芥川賞)。家族の頚木から解き放たれたはずなのに「家族シネマ」(芥川賞)。あのとき彼はなぜ人を拝んだのか?「不軽」。足先から滴る水と寝室に現れる兵隊たち「水滴」(芥川賞)。静かに老いゆく妻、友と見た景色「椿堂」。僕が深夜の公園で遭遇した、ある出来事「無情の世界」。現代文学四〇年の試みを眺望するシリーズ第五巻。
小学校四年生のさよが図書館でみつけた『七夜物語』は、読んだはしから内容をすっかり忘れてしまうふしぎな本。さよは、物語にみちびかれるように、同級生の仄田くんと「夜の世界」へ迷いこみ、グリクレルという料理上手の大ねずみから皿洗いを命じられることになる。
小学4年生のさよは、母親と二人暮らし。ある日、図書館で出合った『七夜物語』というふしぎな本にみちびかれ、同級生の仄田くんと夜の世界へ迷いこんでゆく。七つの夜をくぐりぬける二人の冒険の行く先は?解説・村田沙耶香。
グリクレルの台所でさくらんぼのクラフティーを食べながら、忘れられない夜を過ごしたさよと仄田くん。やがて最後の夜を迎えたふたりは、夜の世界の住人たちを「ばらばら」に壊そうとする力と対決する。そして、七つの夜があけるとー。
川上マジックが冴えわたる極上の恋愛小説集 収録作品は次の通りーー [一実ちゃんのこと]一実ちゃんは「私、クローンの生まれだから」と恐ろしいことを言う。ある日、彼女に牛強盗に誘われた。 [ユモレスク] 不思議な女の子ハナは自称・詩人だ。彼女はイイダアユムに恋していて彼の名前を織りこんだ詩を書いている。 [金と銀] 治樹さんに初めて会ったのは私が子どもの頃。再会したのは彼が離婚した二年後だ。ある日、彼は失踪した。 [エイコちゃんのしっぽ] 「短いしっぽがあるんだ、わたし」とエイコちゃんは言った。あたしが男に襲われそうになったのを救ってくれたのは彼女だった。 [壁を登る] あたしの母はときどき妙なものを家に連れてくる。見知らぬおばさんやおじいさん。今は五朗がいる。彼はお天気になると家の壁を登る。 [夜のドライブ] 温泉に連れてきた母が真夜中に言う。「ドライブに行きたいの。好きな人と夜中にドライブしたことがなかったなって、急に思ったの」 [天頂より少し下って] 十一歳年下の涼に、全身全霊をかけて愛されることなんて、あたし、ぜんぜん望んでいない。あたしの方が全身全霊をかけて愛したいのだ。
恋をしたとき、女の準備は千差万別。海の穴に住む女は、男をすりつぶす丈夫な奥歯を磨き、OLの誠子さんは、コロボックルの山口さんを隠すせんべいの空き箱を用意する。おかまの修三ちゃんに叱られ通しのだめなアン子は、不実な男の誘いの電話にうっかり喜ばない強い心を忘れぬように。掌小説集『ざらざら』からさらに。女たちが足をとられた恋の深みの居心地を描く22の情景。
あの日を心に刻む、胸に迫るアンソロジー。東日本大震災により、甚大な被害を受けた日本。大きく魂を揺さぶられた作家、詩人たちは、何を感じ、何を考えたのか? 谷川俊太郎、多和田葉子、重松清、小川洋子、川上弘美、川上未映子、いしいしんじ、J.D.マクラッチ、池澤夏樹、角田光代、古川日出男、明川哲也、バリー・ユアグロー、佐伯一麦、阿部和重、村上龍、デイヴィッド・ピース。日米英同時刊行! あの忘れられない日を心に刻む、胸に迫るアンソロジー。2011年3月11日に発生した東日本大震災により、甚大な被害を受けた日本。福島第一原発の重大事故との闘いは、今後何十年も続く。大きく魂を揺さぶられた作家、詩人たちは、何を感じ、何を考えたのか? 谷川俊太郎、多和田葉子、重松清、小川洋子、川上弘美、川上未映子、いしいしんじ、J.D.マクラッチ、池澤夏樹、角田光代、古川日出男、明川哲也、バリー・ユアグロー、佐伯一麦、阿部和重、村上龍、デイヴィッド・ピース。 日本、アメリカ、イギリス同時刊行!本書の著者印税相当額/売り上げの一部は震災復興のため寄付されます。 谷川俊太郎 言葉 多和田葉子 不死の島 重松清 おまじない 小川洋子 夜泣き帽子 川上弘美 神様2011 川上未映子 三月の毛糸 いしいしんじ ルル J.D. マクラッチー 一年後 ジェフリー・アングルス訳 池澤夏樹 美しい祖母の聖書 角田光代 ピース 古川日出男 十六年後に泊まる 明川哲也 箱のはなし バリー・ユアグロー 漁師の小船で見た夢 柴田元幸訳 佐伯一麦 日和山 阿部和重 RIDE ON TIME 村上龍 ユーカリの小さな葉 デイヴィッド・ピース 惨事のまえ、惨事のあと 山辺弦訳