著者 : 朱川湊人
昭和40年代、太陽の歩みが今よりも遅くて、1日が十分に長かったあの頃。小学3年生の僕らは『ウルトラマリン隊』を結成して、身の周りに起こる事件に挑んでいた。ある日、僕らは空を走る奇妙な流れ星を目撃する。UFOかもしれないと光を追いかけた先で、不思議な力を持つ少年リンダに出会いーそれが、あの紅色の日々の始まりだった。なつかしくて温かい、少年たちの成長物語。文庫化にあたり最終章を書き下ろした完全版。
母親と東京に住む小学生のハヤトは、同じ団地のトンダじいさんから「一生に一度のお願い」を頼まれる。それは古いオルゴールを鹿児島に届けること。福知山線の事故現場、広島の原爆ドーム、父さんの再婚ー出会うものすべてに価値観を揺さぶられながら、少年は旅を続ける。直木賞作家が紡ぐ心温まる成長物語。
オゾンホールの拡大を食い止めるために、女性科学者テレサが開発した化学物質ウェアジゾン。世界中で物質の散布が始まるが、副作用で夕焼けの色が消えてしまうことが判明する。「夕焼け最後の日」を迎えようとしている日本で、テレサと小学生トモル、謎の男“キャラメル・ボーイ”は数奇な運命でめぐり合い、ある行動に出る。そして夕焼けが失われてゆく世界で、静かな奇蹟が起きるー。直木賞作家の初期作品、待望の文庫化。
美しい容姿からは想像もつかないほどガサツな叔母の意外な秘密についての表題作、雨の日だけ他人の心の声が聞こえる少女を描く「雨つぶ通信」、西日暮里の奇妙な中華料理屋を巡る奇譚「カンカン軒怪異譚」など、『花まんま』『かたみ歌』の著者が、昭和の東京下町を舞台に紡ぐ「赦し」と「再生」の七つの物語。
人や物の「記憶」を読み取れる不思議な力をもった姉・鈴音と、お転婆で姉想いの妹・ワッコ。固い絆で結ばれた2人の前に現れた謎の女は、鈴音と同じ力を悪用して他人の過去を暴き立てていた。女の名は御堂吹雪ーその冷たい怒りと霜しみに満ちたまなざしが鈴音に向けられるとき、何かが起こる…。昭和30年代を舞台に、人の優しさと生きる哀しみをノスタルジックに描く“昭和事件簿”「わくらば」シリーズ第2弾。
志郎が新居に決めたアパートの前には、猫が集まる不思議な空き地があった。その猫たちに構うなという大家の忠告に反し、志郎は空き地を車庫がわりに使い、捨て猫を飼いはじめる。だが、それが彼の幸福な日常を一変させる。愛するものを守るために凄惨なまでに闘う人と猫。愛と狂気を描く長編ホラーサスペンス。
僕らは親愛なる秘密結社「ウルトラマリン隊」を結成して、みんなが持ち込んでくる不思議な事件の謎に挑んでいた。そんな小学三年生の二学期の始業式の日、不思議な力を持った少年リンダが転校してきた…。虹の七色に乗せて送る、ちょっぴりほろ苦い少年たちの成長物語。
17歳を目前に自殺した姉。明るく優しい性格で、直前までそんな素振りはなかったのに、なぜ…背後には、死神のような女生徒の姿があった(「はだれの日」)。孫を交通事故で亡くした祖母。断ち切れない愛情と悲しみが、孫の幼友だちをおぞましい事件に巻き込む(「虎落の日」)。惨劇の陰には、人の心を蝕む「水銀虫」の存在が。取りつかれ、罪を犯した人々の、悪夢のような一日を描いたホラー短編集。
姉さまが亡くなって、もう30年以上が過ぎました。お転婆な子供だった私は、お化け煙突の見える下町で、母さま、姉さまと3人でつつましく暮らしていました。姉さまは病弱でしたが、本当に美しい人でした。そして、不思議な能力をもっていました。人や物がもつ「記憶」を読み取ることができたのです。その力は、難しい事件を解決したこともありましたが…。今は遠い昭和30年代を舞台に、人の優しさが胸を打つシリーズ第1作。
キーコーヒー株式会社のWEBサイト「書茶」にて二〇〇七年九月十四日より〇八年十月三十日にわたり公開された作品を、単行本化。
ちょっとしたきっかけでぐっと近づいたり、もう顔も見たくないってほど嫌いになったり。ともだち、親友、それともライバル?旬の作家が集結、それぞれが描いた、かけがえのない友情の形とは?いまどきの名作を厳選、超豪華ラインアップでおくる短編小説集『きみが見つける物語 十代のための新名作』。「友情編」には、坂木司、佐藤多佳子、重松清、朱川湊人、よしもとばななの傑作短編を収録。
母と二人で大切にしてきた幼い妹が、ある日突然、大人びた言動を取り始める。それには、信じられないような理由があった…(表題作)。昭和30〜40年代の大阪の下町を舞台に、当時子どもだった主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた全6篇。直木賞受賞の傑作短篇集。
人間界に紛れ込んだフクロウの化身に出会ったら、同じ鳴き真似を返さないといけないー“都市伝説”に憑かれた男の狂気を描いたオール讀物推理小説新人賞受賞作「フクロウ男」をはじめ、親友を事故で失った少年が時間を巻き戻そうとする「昨日公園」など、人間の心の怖さ、哀しさを描いた著者のデビュー作。
忘れてしまってはいませんか?あの日、あの場所、あの人の、かけがえのない思い出を。東京・下町にあるアカシア商店街。ある時はラーメン屋の前で、またあるときは古本屋の片隅でー。ちょっと不思議な出来事が、傷ついた人々の心を優しく包んでいく。懐かしいメロディと共に、ノスタルジックに展開する七つの奇蹟の物語。