著者 : 村山淳彦
アメリカ文学の金字塔に、もう一度息を吹き込む 小林秀雄や谷崎潤一郎らも注目した小説『アメリカの悲劇』。「死刑制度」「中絶の権利」「宗教二世」などを描いたこの先駆的名作は、今や忘れられつつあった。 百年の時を経て新訳に取り組んだドライサー研究の第一人者が、研究者として再発見した〈メッセージ性〉と、翻訳家として格闘したその〈難解さ〉を語る。 海外文学を研究/翻訳する時の〈落とし穴〉とはーー? はじめに 第一章 主題論 一 凡夫の悲劇 現代でも悲劇創造は可能か/悲劇的英雄のリアリティ/凡人の悲劇/悲劇的小説のメカニズム/自然主義文学と悲劇的小説と/悲劇的凡人の実存/クライドが背負う法的問題/リチャード・ライト『アメリカの息子』/理知への失望、「民主の花形」への期待はずれ 二 「宗教二世」の悲劇 宗教大国アメリカ/ドライサーの自伝性 三 人工妊娠中絶禁止の悲劇 妊娠中絶禁止狙いの検閲、弾圧/フェミニスト運動家エルシー・メアリー・ヒル 四 リンチ、さもなければ陪審制か 潜在するリンチ衝動/衆庶群民の質 第二章 文体論 一 ドライサー流自由間接話法の繁茂 自由間接話法の訳し方/バフチン流「ポリフォニー小説」/小林秀雄、谷崎潤一郎の誤読 二 「意識の流れ」の流れ エリオット『荒野』の「非在の都市」/フィッツジェラルド『偉大なギャツビー』/ウィリアム・ジェイムズ心理学の「意識の流れ」/「意識の流れ」とドライサー/ドライサーはジョイス、フォークナーの先駆け?/ルカーチの前衛主義批判とドライサー称賛/ヘンリー・ミラーのドライサー評 第三章 本文批評 ドライサー小説の制作過程/ペンシルヴェニア大学図書館ドライサー・コレクション/英語版四書の校合から見えてくるもの/単純な誤植/前出語句と後出語句の不一致/引用符の誤植/校訂困難な食い違い/架空の地図から生じる混乱/大胆な校訂 引用文献書誌 あとがき 人名索引
「わが兄弟たちは何ゆえに嘆き悲しむのか!」 連作「レザーストッキング物語」のうち、もっとも広く読まれ、 映画や演劇などさまざまなアダプテーションを生み出した アメリカ文学の古典的名作が200年の時を経て蘇る完全版新訳! 冒険ロマンスの香り高い本作の内奥には、今にもつながる 西欧植民地主義が北米先住民に加えた甚大な損害が活写されている。 ===== 【目次】 初版はしがき(一八二六年) 序説(一八三一年) [一八五〇年の追記] モヒカン族最後の戦士 原註と訳註 『モヒカン族最後の戦士』関連地図 訳者あとがき 初版はしがき(一八二六年) 序説(一八三一年) [一八五〇年の追記] モヒカン族最後の戦士 原註と訳註 『モヒカン族最後の戦士』関連地図 訳者あとがき
「おれはほんとに救われたのだろうか。人生ってこんなにもあっけないものなのか」 実際の事件をもとに、ドライサーが描き出した〈ゆがんだ社会構造〉と〈人間のこころの弱さ〉。刊行から100年が経つ今、快楽を追い求め倫理を失いゆく青年の物語は、わたしたちに何を語りかけるのか。 資本主義社会の欺瞞を描く、不朽の名作 (あらすじ) ついにロバータが湖で溺死した。 上流階級のソンドラとの恋とその名声に目がくらみ、意図せずとはいえ女工ロバータを見殺しにした、青年クラウド。事件発覚を契機に、水面下では政治、メディア、法廷が動き出す。そして、ついにその審判の時がきたーー 実際におきた事件をモデルに、近代アメリカ社会の闇を克明に描き出す、アメリカ自然主義文学の先駆的傑作。 第二部(続き) 第三部 訳者あとがき
アメリカ現代文学の先駆的傑作、待望の新訳! 夢を求めてアメリカ社会の中で生き抜こうとした青年……。貧困と差別、性の在り方、資本家と労働者、宗教の役割、陪審制度と死刑問題、新聞の役割など、現代に繋がるアメリカ社会の断面を浮き彫りにしながら、その中に生きる人々の苦闘を描く。 (あらすじ) 第一次大戦後のアメリカ・カンザスシティ。貧しい伝道師の家庭から抜け出し、幸福な都会生活を懸命に追い求める青年クライドは、ホテルのボーイを経て裕福な伯父の会社に就職する。そこで出会った女工ロバータと恋に落ちるも、さらに社交界の令嬢ソンドラからも目をかけられ、上流社会に出入りする手がかりを得るが……。 第一部 第二部
アメリカ中西部の田舎から姉夫婦をたよってシカゴへやってきたキャリーは、生活に慣れるに従い、次第に都会の華やかな物質文明の魅力にとりつかれてゆく。そのあげく妻子ある酒場の支配人ハーストウッドと親しくなって、ニューヨークへ駆落ちする。都市小説の先駆となったドライサーの代表作。
大都会ニューヨークで、キャリーは認められて女優への道を歩み始め、大成功をおさめる。一方、ハーストウッドは、事業に失敗して、職さがしもままならず没落してゆき、キャリーとの溝は深まるばかりであった。そして労働争議に巻き込まれて自殺してしまう。現代アメリカ小説の出発を画した記念碑的作品。1900年刊。