著者 : 東郷隆
銃弾飛び交い、炎渦巻く大塩平八郎の乱の後、大坂から脱出し、江戸へと移った泡界坊。かの地で怪しげな瓦版を売って、公儀に反抗する日々。そんなとき泡界は、江戸の汲み取りを仕切る葛西の頭領から助けを求められる。土田新吉郎なる男が、将軍のおぼえめでたいのをかさにきて悪行三昧だというのだ。土田は葛西の頭領の娘をむりやり妾にしようとし、莫大な金を生む肥料の利権を掠め取ろうとしているという。しかもこの土田、泡界が憎からず思っていた“料理屋”の女を捨てて店に叩き売っていたのだ。将軍の御忍び接待を仕込む土田を破滅させるため、泡界の怒りの一撃が炸裂する!これぞ懲悪歴史時代小説。
清二郎は写本仕事で糧を得ているが、御政道による禁書や回収の締めつけで、何やら危い御時世になりそうだ。そんなとき、清二郎は大塩平八郎に出会い、世直しの想いを強めていく。さらに、同じころに出会った破戒僧・第三代法界から見込まれる。第四代として名を継ぐことを宿命づけられた清二郎は頭を剃り、泡界と名を変えた。違法刷り物にのめり込んで公儀を挑発し、願人坊主の身なのに女を抱く。そんな彼に大塩から密命が!不正役人を銃で仕留めろというのだ。一八三七年ついに大塩決起のとき、泡界は世のため人のため、牙をむく。ろくでもない体制に一撃を!熱く強く激しい坊主が天地をひっくり返す、型破りの歴史時代小説。
社会の裏で人知れず働く者として生を受け、乱世の中で己の技をひたすら磨き続ける。ある時は貴重な情報を味方にもたらし、ある時は偽の情報で敵地を混乱に陥れー。そんな常人離れの活躍を見せた忍びの者たちも、戦国時代の終わりとともに淡雪のように姿を消しました。ところが、彼らが活躍した頃の記憶は、庶民の説話や夜噺に残ります。いや、残るどころか、話は徐々に膨れ上がり…「妖しい」シリーズ第三弾はそんな彼らの「非科学的」逸話の数々をお届けしましょう。
「妖しい」シリーズ第二弾は刀剣の怪綺談ばかりをとりあげてみることにしました。よく知られた刀剣伝説よりも全国各地に散らばる刀に絡む民話が中心です。鬼を滅し、人を斬り、妖獣を斬り、器物の怪を斬り、ついには死病まで退治する、妖しい刀の物語ー。当然のことですが、昔も刀に関してはほとんど知識が無い人々もいっぱいいました。夜噺の席の余興と思って刀剣ビギナーの方もどうぞお気楽にお楽しみください。名刀が語り継ぐ怪談・奇談!
女王・卑弥呼の密命を受け、東の情勢を探る旅に出た少年ワカヒコは、旅の途中、とある村の守り神である巨木を伐り倒そうとする“クナ王の使い”なる者に出くわす。クナ国といえば、ワカヒコの父・ススヒコが幼き頃、悪名高い暴君を倒し、人々を悪政から救ったという、あの国だ。そのクナ国に、いつの間に新王が立ったのか。巨木を求める新クナ王の野望とは?ナカツクニ邪馬台国とクナ国の決戦の幕が切って落とされる!
慶長五年九月十五日。美濃国関ヶ原で起こった大会戦は、東軍・徳川家康と西軍・石田三成の戦いとして知られるが、勝敗の鍵を握る人物がもう一人いた。小早川秀秋。彼の裏切りは予想されていて、味方に引き入れようと両軍の将たちは蠢いていた…七人の作家が戦場を活写する、大好評「決戦!」シリーズ第六弾!
“鬼道を事とし、よく衆を惑わ”す女王・卑弥呼は、ひそかに苦悩していた。このナカツクニ(邪馬台国)は大きくなりすぎたー。人々を養うためには東の国との貿易が不可欠。しかし、東に向かった船団は、海霧に姿を隠した巨人に襲われ打ちしずめられたという。卑弥呼の命を受けた少年ワカヒコは巨人が棲むという東の国、蓬莱国の秘密を探る旅に出た。
3世紀初頭、弥生時代最後期。瀬戸内海沿岸部の集落のひとつ、ウクイ村には暗い影がさしていた。卑弥呼の治める女王国に従わず、近隣諸国から税を取り立てるクナ国は、過去のある出来事を盾に、数年置きに生口(奴隷)として少年少女をさらっていく。一度クナ国に連れられた者は、二度とウクイの土を踏むことはなかった。今年がその年。12歳となった少年ススヒコは、幼馴染の少女ツナテが生口となることを知り、自らも名乗りをあげ、クナ国へ向かう。一方、漢土からの使者・公達は、卑弥呼から意外な依頼を受ける。それは、クナ国の暴君にして自身の弟、ハヤスサの討伐だったー。今こそ読みたい!日本のルーツと邪馬台国の謎に迫る、古代冒険小説。
土佐国の豪族・長宗我部家の唯一の悩みは嫡男・弥三郎(のちの長宗我部元親)だった。軟弱者で「姫若子」と綽名された若者が、22歳にして臨んだ初陣とは?(「百足椀」)そのほか、織田信長、徳川家康、蒲生氏郷ら名だたる武将たちの初々しき出陣から無名の兵の壮絶な戦闘まで、戦国時代の人々の戦いの姿を、名手がリアルに描く傑作歴史小説集。
コードネーム“定吉七番”-大阪商工会議所秘密会所に所属し、唯一「殺しの許可証」を持つ丁稚。遡ること四半世紀、スイスアルプスのクレバスに消えたはずの定吉が、関西経済圏破壊を目論む悪の結社“NATTO”封殺のために、今蘇る。本家007も恐れをなす(はず?)爆笑和製スパイアクション!
戦国乱世にあって、甲冑は単なる武具ではなかった。凝りに凝ったデザインはその実力を誇示するばかりでなく、信ずる「神」すら顕示されていた。それは究極の自己表現でもあった。本書は信長、秀吉ら武将たちの甲冑にまつわる奇妙な物語6編を収録、その夢、野望、そして無念の死を鮮やかに描きだす。舟橋聖一文学賞受賞作。
「定吉七番」-大阪商工会議所秘密会所所属の情報部員、「殺人許可証を持つ丁稚」である。八つ接のハンチング、唐桟のお仕着せに前垂れかけて、愛用の包丁「富士見西行」を懐に、関西経済界の破壊を目論む悪の結社「NATTO」(汎関東主義秘密結社)に、再び挑む。日本中を熱狂させた伝説のシリーズが、四半世紀ぶりに復活。爆笑必至のスパイアクションコメディ。
嫡男新八郎久勝を追い出す形で、美濃仙石家の家督を継ぐことになった権兵衛秀久。それは、信長率いる織田家と、龍興が君臨する斎藤家の勢力争いを受け、田舎領主が生き残るためにとられた苦肉の策だった。情愛の絆で結ばれた兄弟が辿る運命とは!?人気連載コミック『センゴク』から生まれた、痛快戦国小説。
大坂冬の陣後、つかのまの平穏な日が続く京、洛中に、一人の世捨人が暮していた。名は金森宗和。飛騨高山藩主の嫡男であったが、父より廃嫡された故である。茶の湯では名の知れた宗和の許には、大坂方や徳川方、様々な人が出入りしていた。最後の闘い、夏の陣で宗和は思わぬ事態に巻き込まれるのだが…。連作歴史短篇集。
攘夷御用盗・魁銀次郎は、縁あって相楽総三と行動をともにする。草莽の志士、相楽は密かに薩摩藩と通じ、江戸上屋敷で浪士隊を募る。西郷隆盛の意を受け、江戸の撹乱を企図したのだ。江戸城二の丸放火、薩摩藩邸焼き打ち、そして戊辰の戦へと続く幕末の大きなうねりの中で、銀次郎の非情剣が歴史に拮抗し閃光を放つ。長篇時代小説。
麻布永坂町の高稲荷。蕎麦屋から少し奥に入った局見世の入口に、人の腕が落ちていた。それも二度も。まるで“羅生門”のように。誰が何のために捨てたのか(「茨木の腕」より)。幕末のお江戸で今日も一大事。芝神明の目明し万吉、果敢に挑む。冴えた勘と粘り強い聞き込みで人様から恐れられる岡っ引き。街の裏側にはびこる有象無象を相手に、江戸中を駆け回る人気シリーズ第三弾。
知の旅人にして希代の博物学者南方熊楠。若き日の彼が留学先のロンドンで、次々に遭遇する奇妙な事件の数々。時あたかもヴィクトリア王朝華やかなりし19世紀末のイギリス。「黄色い頭脳」と謳われたクマグスの博覧強記と奇行が、人跡未踏の謎を解く。「ノーブルの男爵夫人」「ムカデクジラの精」「巨人兵の柩」「清国の自動人形」「妖精の鎖」「妖草マンドレイク」計6編を収録。