著者 : 松井今朝子
絶賛、続々! 〈実〉を緻密に積み上げ、〈虚〉の世界から情を迸らせる。 読みながら、何度もぞくりとした。本作は、虚実皮膜のギリギリを攻める近松の浄瑠璃と地続きにある。 --平松洋子 生真面目で切なくて、色っぽい。虚と実の間に立ち昇る、近松の真実(リアル)。圧巻の芸道小説だ。 --朝井まかて 『曾根崎心中』『国性爺合戦』など、 数多の名作を生んだ日本史上最高のストーリーテラー・近松門左衛門 創作に生涯を賭した感動の物語。 越前の武家に生まれた杉森信盛は浪人をして、京に上っていた。後の大劇作家は京の都で魅力的な役者や女たちと出会い、いつしか芸の道を歩み出すことに。竹本義太夫や坂田藤十郎との出会いのなかで浄瑠璃・歌舞伎に作品を提供するようになり大当たりを出すと、「近松門左衛門」の名が次第に轟きはじめる。その頃、大坂で世間を賑わせた心中事件が。事件に触発されて筆を走らせ、『曽根崎心中』という題で幕の開いた舞台は、異例の大入りを見せるのだが……。 書くことの愉悦と苦悩、男女の業、家族の絆、芸能の栄枯盛衰と自らの老いと死ーー 芸に生きる者たちの境地を克明に描き切った、近松小説の決定版
「勧進帳は不敬である!」 昭和十年、東京。満州国皇帝溥儀が来日し、亀鶴興行は奉迎式典で歌舞伎の名作「勧進帳」を上演。 無事成功するが、台詞が不敬にあたると国粋主義者が糾弾。 脅迫状が殺到した直後、亀鶴興行関係者が舞台装置に首を吊った姿で発見ーー。 江戸歌舞伎狂言作者の末裔、桜木治郎が大いなる謎に挑む、驚嘆の“劇場×時代ミステリー"! あの戦争へ、日本が最後の舵を切った時代を彫刻する渾身作。 『壺中の回廊』、渡辺淳一文学賞受賞『芙蓉の干城』に続く、昭和三部作完結! ■著者略歴 松井今朝子(まつい・けさこ) 1953年、京都市生まれ。早稲田大学大学院文学研究科演劇学修士課程修了。歌舞伎の企画制作に携わった後、故・武智鉄二氏に師事し歌舞伎の脚色・演出を手がける。 1997年『東洲しゃらくさし』で小説デビュー。同年『仲蔵狂乱』で第8回時代小説大賞、2007年『吉原手引草』で第137回直木賞、2019年『芙蓉の干城』で第4回渡辺淳一文学賞 を受賞。著書に『壺中の回廊』『師父の遺言』『縁は異なもの 麹町常楽庵月並の記』『料理通異聞』『江戸の夢びらき』などがある。
【不世出の天才・初代市川團十郎、空前の一代記】 なぜ江戸の民衆は團十郎に熱狂したのか。 團十郎が命をかけた〈荒事〉とは何か。 そして、なぜ舞台上で命を落としたのか。 元禄時代から現在まで常に歌舞伎界に君臨し続けた 大名跡・市川團十郎、そのはじまりの物語。 ●あらすじ 寛文7年(1667)、浪人の娘・恵以はひとりの少年と出会う。 子どもながらに柄の悪い侠客たちに囲まれ、 芝居に出れば大暴れして舞台を滅茶苦茶にする破天荒さに呆れながらも、 恵以は自然と人の注目を集める彼の素質に気づく。 少年の名は海老蔵。 長じて市川團十郎を名乗り、〈荒事〉の追求の果てに 江戸の民衆から信仰にも近い人気を集め、 劇作家としても今なお愛される名演目や斬新な演出を 次々と生み出した不世出の天才。 彼が命をかけた〈荒事〉とは何だったのか、 そして、なぜ舞台上で命を落とすこととなったのか。 謎多き初代市川團十郎の波乱万丈の生涯を、 元禄の狂乱と江戸歌舞伎の胎動とともに描く 空前の一代記がここに誕生!
蔦屋重三郎の法要の膳を出すことになった福田屋善四郎。この日に賭けた善四郎の料理は見事に座の賞賛を呼び、大田南畝、山東京伝ら時代の寵児と知己を得る。やがては料理の道で天下が取れるとの南畝の言葉通り「八百善」の名は高まっていく。文政に入り善四郎が著した『料理通』が大評判となる中、遂に店に将軍の御成を告げる使いがやってくる。
跳ねっ返りの町娘・おきしの許婚が、祝言間近に不審な死を遂げた。「わたくしが、敵を討ちます」娘の決意に若き同心・仁八郎は、心を強く揺さぶられる。一方、元大奥女中で常楽庵庵主の志乃は、おきしの苦難に自らの過去を重ねるがーふたりの推理力で、卑劣な輩を追い詰めることが出来るか?江戸の新本格。
昭和八年、東京。 江戸歌舞伎の大作者、三代目桜木治助の孫でありながら現在は早稲田大学に奉職する桜木治郎は、その知識と確かな審美眼で歌舞伎役者や裏方から厚い信頼を集めていた。 四月。築地小劇場で女優となった親戚の娘・澪子の行く末を案じる実家からの懇願により、木挽座で陸軍軍人・磯田との見合いの席が設けられる。舞台では歌舞伎界の「女帝」荻野沢之丞が見事に舞う中、澪子は真向いの席の男女に、ある違和感を抱いた。 翌日、木挽座そばで男女の惨殺死体が発見される。遺体は右翼結社「征西会」大幹部・小宮山正憲と芸妓の照世美だった。二人が最後に目撃された木挽座を捜索するため、治郎は警察から協力を要請され、事件に巻き込まれていく。 澪子もまた、自身が目撃した二人の奇妙な様子を治郎と磯田に打ち明け、それぞれの立場から事件の真相に迫っていくことにーー。 戦争へと歴史の歯車が大きく動いた昭和八年を鮮烈に描き出す、圧巻の歌舞伎ミステリー! 【著者略歴】 松井今朝子 まつい・けさこ 1953年京都市生まれ。早稲田大学大学院文学研究科演劇学修士課程修了。 歌舞伎の企画制作に携わった後、故・武智鉄二氏に師事し、歌舞伎の脚色・演出を手掛ける。 1997年『東洲しゃらくさし』で小説デビュー。同年『仲蔵狂乱』で時代小説大賞、2007年『吉原手引き草』で直木賞を受賞。 『師父の遺言』『縁は異なもの 麹町常楽庵 月並の記』『料理通異聞』など著書多数。
「町廻りのついでに時々麹町の常楽庵に立ち寄ってくれ」定町廻りの新米同心・間宮仁八郎は上役に命じられ、おそるおそる門をくぐる。大奥勤めが長かったという年齢不詳の庵主になぜか気に入られ、行儀見習いに庵に出入りしていた娘の失踪、商家の不審火など、様々な事件に巻き込まれるはめにー。江戸の新本格!
関東大震災からの復興の兆しを見せる昭和五年、東京。歌舞伎の殿堂木挽座に“掌中の珠を砕く”という脅迫状が届く。皆が疑心暗鬼にかられるなか『忠臣蔵』に出演中の花形役者が毒殺される。江戸の狂言作者の末裔桜木は、築地署の笹岡と真相究明に乗り出す。容疑者は、役者、裏方、観客すべて。だが、嘘をつくのが商売の役者を相手に捜査は難航…。変革の時代を背景に描く歌舞伎バックステージミステリー。
「竹本綾之介は天からの授かりもんだ」大阪で生まれた美少女は、竹本綾之助を名乗り、浄瑠璃で明治の日本中を魅了した。錦絵は即日完売、ファンの書生は人力車を“追っかけ”回し、芸能記者はスキャンダルを書きたてる。孤独と引き換えの栄華を手にした綾之助の傍には、いつも母お勝がいた。そんなある日訪れた突然の初恋。彼女の下した衝撃的な決断とは? 直木賞作家が実話をもとに描く、可憐な元祖アイドル半生記! 「竹本綾之介は天からの授かりもんだ」 大阪で生まれた美少女は、類稀なる浄瑠璃の才能を持っていた。彼女は、竹本綾之助を名乗り、男装の女義太夫として高座に上がる。可憐な少女は、たちまち新都東京、そして日本中の心をつかんだ。馬車鉄道には綾之介の錦絵が飾られ、ファンの書生は人力車を“追っかけ”る。 過密化するスケジュール、寄席と芸人の闘争、スキャンダルを煽る芸能新聞。栄華を極め、孤独に悩む綾之助の傍らにはいつも母お勝がいてくれた。 そんなある日、綾之助に初めての恋が訪れる。人目を忍んで育まれた愛は、芸能記者の格好の標的になってしまい……。 アイドル評論家、中森明夫氏も絶賛! 明治を駆け抜けた日本初のアイドル、竹本綾之助の半生を、直木賞作家・松井今朝子が描いた傑作小説。 姿と心 草木もなびく東京へ 初めてのご贔屓 一度きりのはずが 素人の力 八丁あらし ドウスル連を、どうするねん 五厘騒動 綾之助の恋 男たちの世界 別れは会うの始まり 星と輝き花と咲き
昭和五年、東京。「忠臣蔵」の舞台で事件は起きる。容疑者は役者、裏方、観客すべて。だが、「嘘をつくのが商売」の役者たちを相手に捜査は難航。築地署は江戸狂言作者の末裔・桜木治郎に捜査協力を要請した。激動の時代を背景にした渾身の長編歌舞伎バックステージ・ミステリー。
熊本、秋月、萩、士族による乱が次々と起こる。銀座に棲むサムライ・久保田宗八郎は西から吹く風に男たちの絶望のにおいを嗅いだ。そして西南戦争が勃発。友たる市来巡査も複雑な心境を抱え出征してゆく。ご一新から九年、命の捨てどころを探し続けた宗八郎。ふたりの女からひたむきな愛を受け取り、悪鬼羅刹の如き宿敵との対決に赴く。傑作の誉れ高き三部作、熱涙溢れる完結篇。
時代の絶頂を極め、近代落語の祖と言われた大名人・三遊亭円朝と彼を愛した五人の女。江戸から明治に変わる歴史の大転換期に生きた彼らの姿、いつの世も深く果てない男女の仲を、語りの名手がいま鮮やかに炙り出すー全盛を支えた名妓から、淋しい晩年を看取った娘分まで、女を活写する傑作時代小説。
『東海道中膝栗毛』で一世を風靡(ふうび)するのはまだ先のこと。若き日の十返舎一九(じっぺんしゃいっく)、与七郎は平穏な暮らしに満たされず、憑(つ)かれたように旅を繰り返す。駿府から大坂、そして江戸へ。稀代のユーモア作家が心に抱いた暗闇とは何だったのか。意外な結末が深い感動を呼ぶ、直木賞作家渾身の長編小説。 江戸の大ベストセラー『東海道中膝栗毛』作者は、いかにして「道を外れた」のか。 「弥次さん喜多さん」の生みの親、十返舎一九が作家として立つまで。 漫画家しりあがり寿氏、嫉妬! 直木賞作家が贈る“笑って泣ける”時代小説! 『東海道中膝栗毛』で一世を風靡(ふうび)するのはまだ先のこと。若き日の十返舎一九(じっぺんしゃいっく)、与七郎は平穏な暮らしに満たされず、憑(つ)かれたように旅を繰り返す。駿府から大坂、そして江戸へ。稀代のユーモア作家が心に抱いた暗闇とは何だったのか。意外な結末が深い感動を呼ぶ、直木賞作家渾身の長編小説。<解説・しりあがり寿> いやー、とても一九さんにはかなわない。(略)一九先輩、もしかして『東海道中膝栗毛』の弥次喜多が求めていたのも、そして先輩自身が求めていたのも、「リアル」だったんじゃありませんか? --漫画家 しりあがり寿氏(『真夜中の弥次さん喜多さん』『弥次喜多 in DEEP』作者)--<本書解説より> 東へ西へ 大坂という町 道頓堀の出会い 嵐の前後 打ち壊し 様がわり 異国の香り それぞれの道 外道の誘惑 婿の座 筆の旅立ち 勝負事の行方 焼けぶとり 二度目の災難 夢の旅立ち 江戸の風 泡の暮らし 二度目の見合い 恩人の餞別 故郷の風 道は惑わず エピローグ
命を賭して信じる道に突き進めぬ者が、どうして士族を名乗れようか。久保田宗八郎は、虚しさを感じていた。株式会社、開かれた言論、徴兵制度。西南戦争前夜、すべてが急速に欧米化してゆく。銀座煉瓦街で親しく交わる、若様、巡査、耶蘇教書店主。そして、深い縁で結ばれた元遊女比呂と、互いに恋情を確かめ合った可憐な綾ー。名手が、時代に翻弄される人びとの哀しみを描く。
江戸から明治へ。時代の節目に、男が変わる、女が変わる…。「牡丹燈籠」や「真景累ヶ淵」などの怪談噺をはじめ、「文七元結」「塩原多助」など数々の創作落語を残し、近代落語の祖と言われる落語界のスーパースター、三遊亭円朝。江戸から明治へ、幕府の崩壊によりすべての価値観が揺らいだ歴史の転換期に生きた大名人と、彼を愛した五人の女たちの物語。
江戸北町奉行同心・笹岡伊織の娘瑞江は、おば様と呼んでいる御年寄職・浦尾の勧めで、大名砥部家奥御殿に奉公へ。否応なく、陰湿ないじめや、長局内の勢力争いに巻き込まれていく。折しも、砥部家に勤める女が役者と起こした心中事件を、伊織が探索することになり…。閉ざされた“女の城”で瑞江が遭遇する不可解な事件の数々。家と血の絆を巡る長編時代ミステリー。
「似せ者とわかっていながら、なぜこんなにも心が騒ぐのだろうか」。時は江戸。歌舞伎芝居の名優のそっくりさんが二代目を名乗り、人々は熱狂して迎えるが…。表題作のほか、若い役者二人の微妙な関係を描く『狛犬』、お仕打が東奔西走する『鶴亀』、幕末混乱期の悲恋をめぐる『心残して』の全4編を収録。
士族の身でありながら芝居に関わり、御一新後は蝦夷地に渡った変わり種。久々に江戸ならぬ東京に戻ってきた宗八郎が頼まれたのは…。近代日本の青春期・明治ならではの珍妙な事件が次々と起こる街・銀座。ヤソ信者の元若様や薩摩っぽの巡査も大活躍、笑いと涙がたっぷりの事件帖。