著者 : 桐野夏生
見届けよ、ミロの最後の闘いを。桐野夏生の傑作ノワール・エンタメ最終幕! 私の愛した男たちは皆行ってしまった。私の魂を受け止めてくれる相手はもうどこにもいないーー衝撃作『ダーク』から20年、村野ミロは生きていた。そして息子のハルオは「悪」を知る旅に出るが……。息子を守るため、凍る火の玉、ミロの最後の闘いが始まる。圧倒的迫力で描く、著者渾身のエンタテインメントの結末は。
五木寛之テーマ別作品集、第4弾! 近代化のひずみが生んだ恐怖と悲哀。ヒッピーと大麻、人間を襲う黒い鳩の群れ、子守唄に隠された悲劇など、この世はミステリアス! 巻末には、桐野夏生との対談解説を収録。 【収録作品】 『天使の墓場』(1967年) 隠蔽された飛行機事故の恐るべき真相とは! 『悪い夏 悪い旅』(1970年) ヒッピーと大麻をめぐる冒険譚 『赤い桜の森』(1969年) 真っ赤な花咲く群落に潜む怨念と恐怖 『鳩を撃つ』(1971年) 狂暴化した鳩が異常発生して市民を襲う 『陽ノ影村の一族』(1976年) 「てんてるぼうず」に隠された一族の哀しみ
男たちの身勝手さを、一行で打ち砕く桐野文学の極北! 夫公認のもと、元恋人と自由な時間を過ごす妻を描いた表題作「もっと悪い妻」など、計六作の短編を収録。 「麻耶は大事だと思っている人が他にいるの?」 「いるよ。男でも親友になれるよ」 「それはそうだろうけれど。困ったな」 (「もっと悪い妻」より) ネット上で〈悪妻〉と批判されることに悩むバンドのヴォーカルの妻を描いた「悪い妻」。 妻と離婚した後、若い女性にしつこく迫る壮年の男性の哀歓を伝える「武蔵野線」など、男と女のカタチを切り取った現代の「悪妻論」。 西加奈子さん(作家)推薦 不幸な「悪い妻」は許されるが、 満たされた「もっと悪い妻」は断罪される。 「妻」という呪いと、 「妻」を理想化する社会へのしたたかなカウンター。
1986年春。二人の女が福岡の証券会社で出会った。一人は短大卒の小島佳那、もう一人は高卒の伊東水矢子。貧しい家庭に生まれ育った二人は、それぞれ2年後に東京に出ていく夢を温めていた。野心を隠さず、なりふり構わずふるまう同期、望月昭平に見込まれた佳那は、ある出来事を契機に彼と結託し、マネーゲームの渦に身を投じていく。
時代はバブル全盛に。東京本社に栄転が決まった望月と結婚した佳那は、ヤクザの山鼻の愛人・美蘭のてほどきで瞬く間に贅沢な暮らしに染まっていく。一方の水矢子は不首尾に終わった受験の余波で、思いがけない流転の生活がスタートする。そして、バブルに陰りが見え始めた頃、若者たちの運命が狂い出す…。
この身体こそ、文明の最後の利器。 29歳、女性、独身、地方出身、非正規労働者。 子宮・自由・尊厳を赤の他人に差し出し、東京で「代理母」となった彼女に、失うものなどあるはずがなかったーー。 北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。 『OUT』から25年、女性たちの困窮と憤怒を捉えつづける作家による、予言的ディストピア。 【著者略歴】 桐野夏生(きりの・なつお) 1951年金沢市生まれ。93年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。98年『OUT』で日本推理作家協会賞、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞、『ナニカアル』で10年、11年に島清恋愛文学賞と読売文学賞の二賞を受賞。2015年には紫綬褒章を受章、21年には早稲田大学坪内逍遥大賞を受賞。『バラカ』『日没』『インドラネット』『砂に埋もれる犬』など著書多数。
貧困と虐待の連鎖ーー。母親という牢獄から脱け出した少年は、女たちへの憎悪を加速させた。ジャンルを超えて文芸界をリードする著者の新たな傑作予定調和を打ち砕く圧倒的リアリズム!小学校にも通わせてもらえず、日々の食事もままならない生活を送る優真。母親の亜紀は刹那的な欲望しか満たそうとせず、同棲相手の男に媚びるばかりだ。そんな最悪な環境のなか、優真が虐待を受けているのではないかと手を差し伸べるコンビニ店主が現れるーー。ネグレクトによって家族からの愛を受けぬまま思春期を迎えた少年の魂は、どこへ向かうのか。その乾いた心の在りようを物語に昇華させた傑作長編小説。
平凡な顔、運動神経は鈍く、勉強も得意ではないーー何の取り柄もないことに強いコンプレックスを抱いて生きてきた八目晃は、非正規雇用で給与も安く、ゲームしか夢中になれない無為な生活を送っていた。唯一の誇りは、高校の同級生で、カリスマ性を持つ野々宮空知と、美貌の姉妹と親しく付き合ったこと。だがその空知が、カンボジアで消息を絶ったという。空知の行方を追い、東南アジアの混沌の中に飛び込んだ晃。そこで待っていたのは、美貌の三きょうだいの凄絶な過去だった……
あなたの書いたものは、良い小説ですか、悪い小説ですか。小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末はー。
現在の薄井の楽しみは、十年来の愛人しかなかった。それなのに逢い引きに急ぐところを会長に呼び止められ、社長のきなくさいセクハラ問題を耳打ちされる。家に帰れば、妻が占い師を知らぬ間に連れ込んでいる。女のマンションで機嫌をとって朝帰りすれば、妹から電話で母が亡くなったと知らされた。「なぜみんな俺を辛い立場に立たせる?」欲深い59歳の男はついにある一線を越えてしまう。もっとも過激な「定年小説」!
出版社勤務の沙羅は40歳を過ぎ、かつて妊娠中絶した相手の川島と再会。それ以来、子供が欲しくてたまらなくなってしまった。非合法のベビー・スークの存在を聞きつけ、友人・優子とドバイを訪ねた。そこで、少女「バラカ」を養女にしたが、全く懐いてくれない。さらに川島と出来婚をしていたが、夫との関係にも悩んでいた。そんな折、マグニチュード9の大地震が発生。各々の運命は大きく動き出す。
東日本大震災によって、福島原発4基すべてが爆発し、日本は混沌としていた。たった一人で放射能被害の警戒区域で発見された少女バラカは、豊田老人に保護された。幼くして被曝した彼女は、反原発・推進両派の異常な熱を帯びた争いに巻き込まれー。全ての災厄を招くような川島に追われながらも、震災後の日本を生き抜いてゆく。狂気が狂気を呼ぶ究極のディストピア小説、ついに文庫化!
女は男の従属物じゃない──。 1972年、東京、吉祥寺。ジャズ喫茶でアルバイトをする大学生の直子は、傷つけられ、社会へ憤りながら、同時に新左翼とウーマンリブの現状にも疑問を抱いていた。閉塞感の中、不意に出会ったドラマー志望の男との恋にのめり込んでゆく……。泡のごとき友情。胸に深く刻んだ死。彷徨する魂の行方。まだ何者でもなかった頃のあなたに捧ぐ、永遠の青春小説。
幸せな日常を断ち切られ、親に棄てられた女子高生たち。ネグレクト、虐待、DV、レイプ、JKビジネス。かけがえのない魂を傷めながらも、三人の少女は酷薄な大人たちの世界をしなやかに踏み越えていく。最悪な現実と格闘する女子高生たちの肉声を物語に結実させた著者の新たな代表作。
どこにも、逃げられないよ──。 長老との結婚を拒絶する女は舌を抜かれてしまう、という掟のある村で、ある少女が結婚相手として選ばれる「雀」。 ある日突然、武装集団によって、泥に囲まれた島に拉致された女子高生たちを描いた「泥」。 アイドルを目指す「夢の奴隷」である少女。彼女の「神様」の意外な姿とは?(「神様男」)。 管理所に収容された人々は「山羊の群れ」と呼ばれ、理不尽で過酷な労働に従事し、時に動物より躊躇なく殺される。死と紙一重の鐘突き番にさせられた少年の運命は?(「山羊の目は空を青く映すか」)……など。 時代や場所にかかわらず、人間社会に現れる、さまざまな抑圧と奴隷状態。 それは「かつて」の「遠い場所」ではなく、「いま」「ここ」で起きている。 あなたもすでに、現代というディストピアの奴隷なのかもしれないーー。 様々な囚われの姿を容赦なく描いた七つの物語。 桐野夏生の想像力と感応力が炸裂した異色短編集。 解説は政治学者の白井聡。 カバーイラストは、かわいさと残酷性を併せ持った作風で物議を醸すLA在住の画家、Luke ChuehのRough Waters。
高校二年生のあの日。薔薇(ばら)が咲き乱れる自宅のベッドで、ミロの口から「義父と寝た」という驚くべき話を聞かされた。「俺」は激しい嫉妬に囚(とら)われ興奮した──。ジャカルタで自殺した前夫・博夫の視点で、村野ミロの妖艶な青春時代を描いた表題作など、4つの事件簿からなる短篇集。「ミロシリーズ」第3弾! ●ローズガーデン ●漂う魂 ●独りにしないで ●愛のトンネル 解説 桃谷方子 「新装版」解説 千早茜
友達に本当の名前を言っちゃだめ。マイコにそう厳命する母は整形を繰り返す秘密主義者。母娘はアジアやヨーロッパの都市を転々とし、四年前からナポリのスラムに住む。国籍もIDもなく、父の名前も自分のルーツもわからないマイコは、難民キャンプ育ちの七海さん宛に、初めて本名を明かして手紙を書き始めた。疾走感溢れる現代サバイバル小説。
AVでレイプされ、失踪した一色リナの捜索依頼を受けた村野ミロは、行方を追ううちに業界の暗部に足を踏み入れた。女性依頼人が殺害され、自身に危険が及ぶ中、ようやくつかんだリナ出生の秘密が、事件を急展開させる。乱歩賞受賞直後に刊行された圧巻の社会派ミステリー。「ミロシリーズ」第2弾! 天使に見捨てられた夜 解 説 松浦理英子 「新装版」解説 柚木麻子
これぞ桐野夏生の原点。江戸川乱歩賞受賞作!親友の耀子が、曰く付きの大金を持って失踪した。夫の自殺後、新宿の片隅で無為に暮らしていた村野ミロは、共謀を疑われ、彼女の行方を追う。女の脆さとしなやかさを描かせたら比肩なき著者のデビュー作。江戸川乱歩賞受賞! 親友のノンフィクションライター宇佐川耀子が、1億円を持って消えた。大金を預けた成瀬時男は、暴力団上層部につながる暗い過去を持っている。あらぬ疑いを受けた私(村野ミロ)は、成瀬と協力して解明に乗り出す。二転三転する事件の真相は?女流ハードボイルド作家誕生の’93年度江戸川乱歩賞受賞作! どうぞ楽しいひと時を。 須賀しのぶ氏 個人的には、女性ならでは、とか、女性だからこそ、という表現はあまり好きではないのだけれど、この繊細な皮膚感覚とミロの再生、そして水の膜が一枚ずつ剥がれおちていくように真相に近づいていくミステリー展開の融合の見事さは、やはり女性にしかーーいや桐野さんにしかできないのではないかと思う(「新装版 解説」より)。