著者 : 椰月美智子
中三の息子、昴が家出した。行き先は富山県の氷見。慌てて連れ戻しに向かった母親のみゆきと父親の範太郎だが、昴はまだ帰らないという。倦怠期真っ只中、ほぼ口も利かなくなっていた夫婦は、昴が帰ると約束した日まで富山に滞在するはめに…。鉄軌道王国の富山に浮かれる鉄道オタク夫に、妻はイライラが募るばかり。行く先々で衝突の絶えない夫婦、果たしてどうなる!?そして、息子が家出した理由とは?
同じ中学校に通う子を持つ3人の主夫たち。女尊男卑社会に理不尽を感じながら、妻子を支えようと毎日奮闘していた。そんななか、ある生徒が塾帰りの夜道で何者かに襲われてしまう…。男女の価値観を問うアナザーワールド。
創業50年(おおよそ)の喫茶店「純喫茶パオーン」。トレイを持つ手がいつも小刻みに震えているのに、グラスにたっぷり、表面張力ギリギリで運ぶ「おじいちゃんの特製ミルクセーキ」と、どんなにお腹がいっぱいでも食べたくなっちゃう「おばあちゃんの魔法のナポリタン」が看板メニューだ。その店主の孫である「ぼく」が小学5年・中学1年・大学1年の頃にそれぞれ出会う不思議な事件と、人生のちょっとした真実。
「ベトナム人?お母さんが?」娘、二十歳の夏。家族の秘密を伝える日がやってきたー『るり姉』『明日の食卓』家族小説の名手が70年代末に来日したボートピープル一家のその後を描く新境地。
静岡在住、専業主婦の石橋あすみ。神奈川在住、フリーライターの石橋留美子。大阪在住、シングルマザーの石橋加奈。小学3年生の「石橋ユウ」を育てるそれぞれの母親たちは、慎ましくも幸せな家庭を築いていたが、些細なことをきっかけに、その生活は崩れ始める。そんなある日、「イシバシユウ」虐待死のニュースが報道されー。ユウを殺したのは、私ですか?どこにでもある家庭の光と闇を描く衝撃作。
青木啓太は、しまなみ海道の壮大な「橋」に心惹かれ、土木工学を学ぶため、家から遠く離れた北の大地にあるH大に入学する。自治寮に入り、大学紹介の活動、フィールドワークのサークルなど、友人たちと青春を謳歌している彼のもとに、母が失踪したと双子の弟、絢太から連絡が入る。あの、どこか抜けていて感受性豊かな母が、なぜ突然消えてしまったのか…。自然豊かな美しいキャンパスで大学三年生となった青年の成長と苦悩を描く。
39歳の多香実は、5歳の娘と4歳の息子を育てながら、デジタルマーケティング会社の室長として慌ただしい毎日を過ごしていた。仕事と子育ての両立がこんなに大変だとは思っていなかった。ひとつ上の夫・秀介は「仕事が忙しい」と何もしてくれない。不満と怒りが募るなか、息子が夜中に突然けいれんを起こしてしまう。そのときの秀介の言動に多香実は驚愕し、思いも寄らない考えが浮かんでいくー。書き下ろし短編「あいうえおかの夫」収録。
夏休み、征人は息子の加奈太を誘い、故郷の島にやってきた。征人はたちまち30年前の日々に引き戻され、加奈太はキャンプに参加する。飛び込みに熱中し、ケンカで殴り合い、自意識を持てあまし、初恋に身を焦がし、友情を知り、身近な死に直面する……。思春期の少年が、心身すべてで感じとったものを余すことなく描いた成長物語。
その出来事のあと、強い絆で結ばれた少女たち。三十年前の、あの蔵の思い出が今、蘇るー。小学5年生の夏。遼子と美音は四葉の家でよく遊ぶようになった。四葉の家は幽霊屋敷という噂が立つほど、広大な敷地に庭園、広い縁側、裏には隠居部屋や祠、そして古い蔵のある家だった。亡くなった弟への伝えられなかった思い、こじれてしまった友情、記憶を失っていく大好きな祖母との関係など、自分ではどうにもできない思いを抱えた少女たちは、ある“蔵での出来事”をきっかけに絡まった糸をほどいていく…。繊細な少年たちの心を描いた椰月美智子の名作『しずかな日々』の少女版!輝く少女たちのひと夏の物語。
ふたりが迎えた衝撃の結末は最初のページで明かされる!-32歳の直子は初めて訪れたライブで「ゴライアス」のボーカル・伶也と出会う。持てるお金と時間を注ぎ込み、すべてをなげうち伶也を見守り続ける直子。失われていく若さ、変わりゆく家族や友人たちとの関係。恋愛を超えた究極の感情を描く問題作!
あおのはタウン誌の新人編集者。幼少期に両親を亡くした彼は、ストレス性の病を患っていた。そんな彼が神話の世界のような山中にある、どんな病気でも治してしまうという鍼灸治療院を取材で訪れる。そこには、不思議な力を持つ節子先生がいて…。運命がもたらす大きな悲しみを、人はどのように受け入れるのか。治療院に“呼ばれた”理由は何だったのかー多くの読者の涙を誘った“死生観”を問う魂の救済の物語。
いじめを受ける五年生のぼくは、未来のぼくへ手紙を出す。中学一年から三十二歳まで二十年間分。一年ごとの明るい目標を書いた手紙は、毎年ぼくの元へ届けられた。そして三十三歳になったある日、来るはずのない「未来の手紙」が届く。それは、悪夢の手紙だった…。(表題作)確実に何かが変わってしまう十代前半の少年少女。その不安と期待を等身体で描く珠玉の短編集。
17歳のまひるは、親友4人で騒ぐ放課後や落語家を目指す彼氏・亮司とのデートが何よりも楽しい高校生活を送っていた。将来の夢はぼんやりしていて、大人になるのはもっと先だと思っていたが、亮司に起こった事故をきっかけにまひるの周囲は一変する。大好きな人のため、憧れに近づくため、道を切り拓いていく若者たちの成長を爽やかに綴った物語。
化粧品メーカーの研究部でファンデーション開発に奮闘する秋山箱理、27歳。ある日、弟が婚約者を連れてくるが、祖母だけは猛反対!それをめぐり、家族にさえ素顔を見せない祖母の“厚化粧”の“謎”が明らかに。女にとって化粧とは何かを鮮やかに描く、希望に満ちた成長物語。
「空想の中でしか、私は生きられないから」-中学時代の八雲にまつわるエピソード「真夜中の図書館」(『心霊探偵八雲』のスピンオフ)、物語が禁止された国に生まれた子どもたちの冒険「青と赤の物語」、ノベロイド研究にのめり込み、「物語AI」におもしろい小説を書かせようと奮闘する高校生の青春模様「ワールズエンド×ブックエンド」など、「小説」が愛おしくなる8編を収録。旬の作家によるバラエティ豊かなアンソロジー。
まだ恋を知らない少女、昔の彼と偶然再会した人妻、彼氏に浮気されたOL、婚約破棄された女…。彼女たちが下した決断と新たな一歩とは?実らなかった恋、伝えられなかった言葉、人には言えない秘密。誰もが持っている、決して忘れられない“あのとき”が、ここにある。ラブソングより心に沁みる、人気女性作家8名が奏でる珠玉の恋愛小説集。