著者 : 瀧羽麻子
第三小学校の校長として、長く地域に尽力した高村正子さんが亡くなった。彼女の死を悼んだ後輩の教師たちにより、生前勤めた学校で「高村正子先生を偲ぶ会」が開かれることに。 教え子、友人、趣味の仲間、同僚……生前、彼女と関わっていた人々が偲ぶ会に持ち寄るための思い出の品を準備しながら、高村先生からもらった言葉や教えを振り返る。浮かび上がるのは、頼りがいがあって、生徒と真摯に向き合う高村先生の姿。しかし、実の娘だけは彼女に複雑な気持ちを抱いていてーー。 一人の女性教師と周囲の人々との交錯を、温かな筆致で描いた感動作。
東家は男ばかりの四兄弟。上から研究者の朔太郎、占い師の真次郎、会社員の優三郎、大学生の恭四郎と両親が、ほどよいバランスで暮らしている。ある日、優三郎が趣味のタロットで“最凶”のカードを引き当てた。直後、優三郎と彼女の秘密が真次郎によって恭四郎に明かされ、信頼関係に亀裂が入ってしまう。不運の連鎖は止まらない。朔太郎や両親にも波及し、隠れていたトラブルが表面化しはじめた。あげくの果てに家族関係を崩壊させそうな女性まで現れ…。噴出する秘密と本音に大わらわの東家に、平穏な日常は戻るのか!?
天気を変えることはできない。人間も、他の生きものも、あるがままを受け入れるしかない。天気も、家族も、ゆるやかに続いていく。天気の研究に生涯をささげた藤巻博士。博士一家・四世代の歴史と、時代ごとに変化する家族の在り方を綴った連作短編小説。『ありえないほどうるさいオルゴール店』の著者、新たな代表作!
あなたの心で鳴っている音に、あなたは、きっと気づいていない。島を出て行った初恋の人を想い続ける郵便屋さん、音楽を捨てて都会からやってきた元ミュージシャン、島の神様の声が聞こえるババ様…彼らの心にはどんな音楽が?人の心に流れる音楽が聞こえる、風変わりな店主が、南の島の小さな店で、お待ちしています。感動の涙、再び。
人生の選択肢はひとつじゃない。それぞれが選ぶ道とはー?千葉香澄は、転職エージェントに勤める四十歳のキャリアアドバイザー。「転職した先輩からすすめられて」「営業以外ならなんでも」「勤め先が倒産して」「あこがれの会社に再挑戦したい」…さまざまなきっかけで転職を考えている人々に相応しい求人を、ちょっぴり頭の固いAI「ソフィア」を活用しながら紹介するのが仕事だ。ときには悩みを打ち明けられたり、あらためて再考を促したりもする。十人十色の仕事観や人生模様にふれるうち、自分自身の仕事や人生も見つめ直すことにー。
「最近仕事がうまくいかなくなってきた」「婚約者が自分の家族の話を避けている」「彼との婚前旅行のはずが一人旅になった」「結婚十五年。妻に別の男ができた」切実で誰にも起こりうる人生の重大事。あの一日の出会いが悩みや哀しみを軽やかなものにしてくれる。前を向いて生きていきたくなる心の栄養六編。
結婚式目前に婚約者から振られ、放心状態の雛子のもとに届いた手紙ーそれは「失恋学校」の入学案内だった。全寮制で学費も安い…訝しく思いながらも入学を決意した雛子は、入学式前に泣きじゃくっていたエミリと美人の貴和子と同室になる。「今日の授業は、“思い出の品を捨てる”です」個性豊かな先生たちの奇想天外な授業やテスト。みんな無事「失恋」できるのか。
東京で働く姉の聡美が突然田舎に帰ってきた。実家暮らしの妹の愛美はこの機会に都会暮らしをしようと、聡美の部屋を借りることに。そこで聡美の恋人と遭遇、昔から成績優秀で負けず嫌いの姉の秘密を探ろうとする。一方、聡美は人懐こくて要領がいい愛美が恋人と親しくなったことに動揺、自分も愛美の婚約者と出かけることに…。正反対な姉妹が見つけた新たな自分とは?
京都・二条で小さな和食器店を営む紫。好きなものに囲まれ静かに暮らす紫の毎日が、20歳近く年上の草木染め職人・光山の出現でがらりと変わる。無邪気で大胆なくせに、強引なことを“してくれない”彼に、紫は心を持て余し、らしくない自分に困り果てる。それでも想いは募る一方。ところが、光山には驚くべき過去がー。ほろ苦く、時々甘い、恋の物語。
高校一年生の誠が抱える秘密、それは幼馴染の小夜子と二人でネットにまつわる事件を解決していること。誠が依頼を受け、小夜子が実作業を担当する。当初は厄介ごとが彼女に降りかからないように選んだ手段だったが、誠は次第に罪悪感を覚え始める。自分たちがしているのは人助けか、はたまた犯罪か。思い悩む彼を待ち受けていたのは予想もつかない事件だったー。甘酸っぱく愛らしい学園小説。
しっかり者の事務職員・莢子は、大失恋後に交際を始めた篤志との結婚を夢見る。だが完璧な恋人に思えた彼には思いもよらぬ秘密が…。30代女性の揺れる心と人生の選択を優しい目線で細やかに描く。読めば今よりちょっと自由になれる、すがすがしい成長物語。
東京の製菓メーカーで企画職として働いていた29歳の聡美が久しぶりに故郷に帰ってきた。実家を出たことがなくずっと田舎暮らしの三つ下の妹・愛美は、この機会に姉の家で都会の暮らしを楽しんでみたいと思い立つ。部屋を貸すことを嫌がる姉や困惑する婚約者を説き伏せて、愛美は東京に発つが、聡美の家で姉の恋人と遭遇。プライドが高く向上心の強い姉の突然の帰省を訝しんでいた愛美は彼に探りをいれてみることに。聡美が実家に帰ってきた本当の理由とはー?自分を見つめ直す二人の物語。
小さい頃、芽衣子は嘘ばかりついていた。大人になっても仕事も恋愛も上手くいかない。チリに出張中、彼女は初恋の人と再会する(「サンティアゴの雪」)。中学生の広海は、生まれ故郷が大嫌いだ。彼は島を出て本土に行った女性と出会うが、そいつはとんでもないやつだった(「瀬戸内海の魔女」)。結婚して十五年。ずっと一緒にいるものと思っていたが、妻に別の男ができた。最後に夫婦はもう一度、思い出の店を訪れようとする(「渋谷で待つ」)。静かな感動が降り積もる六編。『うさぎパン』の著者、初の短編集。