著者 : 田中昌太郎
第二次大戦も終盤を迎えようという1944年。守勢に立たされたドイツ軍の最大の関心事は、大々的な反攻を企む連合軍のフランスへの上陸地点の特定だった。折りしも、国防軍情報部は有力な情報を入手した。ロンドンで、反攻に関する極秘計画“マルベリー作戦”が動きだしたという。早速、潜入工作員キャサリンに、機密奪取の指令が下った!一方、ドイツの動きを察知した英国情報部も、全力をあげ工作員割り出しにかかる。
キャサリンはマルベリー作戦の関係者に接近、入手した極秘情報を本国に送る。だが、イギリス側の欺瞞工作により国防軍情報部が攪乱されていることを知った彼女は情報を直接伝えるため、Uボートでドイツへの渡航をはかる。必死の捜査の末、キャサリンの存在を割り出した英国情報部は、連合軍の上陸地点の露見を阻止すべく必死の追跡を開始するが…ノルマンディ上陸作戦前夜の英独の壮烈な諜報戦を描く、大型冒険小説。
躁鬱病で入院中の女性ドンナが五階から飛び降り、昏睡状態に陥った。彼女の家族は病院側を過失で訴え、辣腕でならすシェリダンが弁護人を引き受けた。だが、背後に有力者を擁する大病院は裁判を阻止しようと策を弄し、技術も設備も劣る病院へドンナを追いやった。怒りに震えるシェリダンは、微かだが彼女が生きる意志を示しはじめたことに勇気づけられ、闘い抜くことを誓うが…『評決』の著者が放つ、正義と信念の大作。
状況はシェリダンに不利だった。ドンナの父親の虐待が明かされ、病院側はこれが彼女の自殺未遂の原因だと主張し、さらに彼女のカルテが忽然と消えたのだ。一方、ある病院関係者の恋人が、かつて不審死を遂げていたことが判明。病院側との攻防が激化する中、シェリダンは何者かに銃撃された。やがて、彼がつかんだ衝撃の事実は、この闘いを根底から揺るがすことに…正義を求め、苛酷な現実に挑む弁護士の姿を描く感動作。
独裁政治と貧困にあえぐカリブ海の小国ガナエ。教職にある司祭のミシェルはある日、寒村から一人の若者ジャノーを連れてきた。ジャノーは優秀な学業成績を修めてカトリツクの僧になり、貧しい黒人を救う活動を始めた。そして、圧倒的な支持を得て彼は選挙で大統領に就任、ついに改革に着手する。だが、旧支配層や軍部の反発は激しく、クーデターの危機が!理想の政治をめざす男の熾烈な闘いをサスペンスフルに描く力作。
第二次世界大戦も終局を迎えつつあった1944年、劣勢のドイツ側にとって最大の焦点は、連合軍のフランス侵攻、その時期と上陸地点の特定だった。ドイツのスパイ網は、イギリス当局の手により壊滅状態だったが、国防軍情報部を率いるカナリス提督の手元には切り札が一枚だけ残されていた。戦前からロンドンに潜伏されていた潜入工作員、キャサリンの存在だ。カナリスはただちに機密奪取の指令を飛ばす。狙いは、アメリカの情報源から得ていた有力な情報-「侵攻作戦に関わる、極秘の巨大な建築計画が発動」。この計画こそが、鍵になる!イギリス情報部もドイツの動きを察知した。元大学教授で情報工作担当のヴィカリーは、二重スパイを駆使して、正体不明のドイツ側工作員を追い求める。キャサリンが最高機密をつかむが、ヴィカリーが彼女の所在を突き止めるか。戦争の命運を賭けた謀報戦の幕が上がった…。
ついに、極秘の建築計画「マルベリー作戦」設計図の奪取に成功したキャサリンは、イギリスを脱出すべく、Uボートの待つ北海沿岸へと向かう。彼女の持つ情報がドイツ側の手に渡れば、連合軍の最高機密、ヨーロッパ侵攻作戦の上陸地点が暴露されてしまう。必死の捜査でキャサリンの存在を割り出していたヴィカリーは、脱出を阻止すべく、全力を挙げた捜査網を展開、史上最大のマンハントを開始した。だが、戦争前から六年にも渡って潜伏を続けてきたキャサリンの巧妙な行動は、容易にその尻尾をつかませない。嵐の北海に、脱出時刻は刻々と迫る…。ジャーナリスト出身の新鋭が、第二次大戦史上最大の機密、ノルマンディー上陸作戦の秘話に迫る。雄大なスケール、多彩な登場人物で描く本格冒険スパイ小説の自眉。
ジェリー・フレッチャーは妄想癖を持つニューヨークのタクシー・ドライヴァー。彼は司法省で働く美人弁護士アリス・サットンに恋焦がれている。「世界には陰謀が渦巻く」と説く彼にアリスはなぜか優しかったのだ。そんなある日、ジェリーは何者かに拉致され、拷問を受ける。何とか逃げ出した彼はアリスを訪れた。はたして彼の妄想は真実なのか?手に汗握るラヴ・サスペンス。
かつてのアル中弁護士ギャルヴィンは、今や一流法律事務所で出世街道をひた走っていた。ある朝、巨大製薬会社相手の勝ち目のない薬害訴訟を、若い女性弁護士ティナに持ちこまれる。だが、訴訟の相手が事務所の顧客だったため断わらざるをえず、彼は年老いた恩師をティナの陣営に送りこんだ。そして、心ならずも自分は製薬会社側の弁護に立つがー名作『評決』に続き、硬骨の弁護士ギャルヴィンが活躍する法廷サスペンス。
もし、あなたがコンピュータとモデムを持っているとしたら、あなたはすでに、殺人者を自宅に招いてしまっているのかもしれない…。ヴァーバ-コンピュータとモデムを持つものであれば、誰もが接続し参加することのできる、ヴァーチャルな電子会議室。だが、ひとりの殺人者がそこに侵入して、殺しの獲物をさがしているとは、誰も気づきようがなかった。警告・あなたの生命は危険にさらされている。これを読みながらも、あなたは殺人者の手の届くところにいる-そんな殺人メッセージを電子掲示板で見たとき、ほとんどの人はただの悪質ないたずらだと思った。やがて、ヴァーバの利用者たちが次々と異常な方法で殺害されはじめるが、非力な警察は何の手がかりも見つけることができない…。コンピュータ・ネットワーク上を徘徊する、顔のない殺人者の恐怖をあますところなく描き、全米を震撼させたサスペンス話題作。
ロンドンで中華料理店を経営するニューエン・ニョク・ミンは、どう見ても風采の上がらない東洋人。だが最愛の家族を爆弾テロで失うと、彼は心に復讐を誓った。警察、新聞記者、代議士の元へ足を運び続け、遂に犯行の秘密を握る大物政治家にたどり着くと、ヴェトコンの優秀なゲリラ兵だった彼はあらゆる手を尽くして犯人を追い詰める。果して復讐は完遂するのか?著者渾身の代表作。
若く美しい女性の死体が、ボストン郊外で発見された。捜査の結果、彼女と愛人関係にあった外科医ディラードが、事件の当日に彼女と会っていたことが判明、有力な容疑者として浮かび上がった。野心的な地方検事はディラードの知名度に目をつけ、彼を被告として起訴し、自らの政界進出のためにこの事件を利用しようとたくらむ。窮地に立されたディラードは、敏腕弁護士として名高いダン・シェリダンに自らの弁護を託した。だが、現行の法制度下では、大陪審において、弁護士は異議申立てや反対尋問を行なうことはできない。ディラードの起訴を防ぐチャンスは無に等しいのだ。やがて、シェリダンの事務所に女性FBI捜査官が秘書として送りこまれ、弁護側の手の内は、すべて検察側に把握されてしまう。そして、そのことを露知らぬシェリダンは、天真爛漫にふるまう彼女をいつしか愛し始めていた…。
なぜ父は猟銃で自らの頭を吹き飛ばしたのか。非業の死の背後に潜んでいたのはロンドンの“成長産業”金融界と麻薬ルートを牛耳る二人のマフィアの影だった。闇の人脈に復讐を誓った「わたし」は犯罪のスペシャリストを集め「報復チーム」を組織し、マフィアの重鎮を追いつめる罠を画策するのだが…。復讐サスペンスと金融小説双方の醍醐味を見事に盛りこんだ新進気鋭のデビュー作品。
困難な医療過誤裁判に勝利をおさめた弁護士のギャルヴィンは、その手腕を買われてボストンの一流法律事務所のパートナーになり、多忙な毎日を送っていた。そんなある日、彼のもとに一人の女性弁護士ティナが訪れてきた。動脈硬化や心臓病の特効薬ライオシンの副作用として先天異常の子供が生まれることが判明し、訴訟を起こしたいという。だが、ライオシンを販売しているアメリカのガーメット社と、製造元のイギリスの会社は共に巨大で、手に負えないので代わって起訴してほしいというのだ。ギャルヴィンはいったんは断わるが、薬害にあったという子供を見て心を動かされ、その依頼を引き受けた。そして法律事務所の幹部たちにこの件を語るが、意外にも却下されてしまう。ガーメット社は事務所の顧客だったのだ。ティナは一人で訴訟を起こした。そしてギャルヴィンは恩師の老弁護士モウ・カッツに、彼女を助けてもらえるよう頼んだ。だが、運命の皮肉か、ギャルヴィンの事務所がガーメット社の弁護をすることになってしまった。心ならずも恩師と対決する羽目に陥ったギャルヴィン。しかも、やがて訴訟の関係者が相次いで不審な死を遂げ、事態は奇怪な様相を呈してきた…。迫力と感動の第一級の法廷サスペンス。
ベルファストのホテル支配人ディロンの家に、突如IRAのテロ・グループが乱入した。彼らはディロンの妻に銃を向け、ディロンに自分の車をホテルまで運転するよう強要する。折しもホテルでは要人による講演会があり、IRAが車に爆弾を仕掛けて会場の爆破を計画していることは明白。だがそこには大勢の宿泊客がいた。妻の命と多くの人命の間で板挾みになるディロン。絶体絶命の窮地に立たされた彼のとった最後の手段とは?
ニューヨークでコンサルタント業を営む元OSS局員ダービーは、昔の仲間から緊急の警告を受けた。第二次大戦中、オランダでの秘密作戦に参加したOSS局員が次々と殺害されており、ダービーも狙われているというのだ。その直後、彼の妻が何者かに襲われ、無残な死を遂げた。復讐を誓ったダービーは、事件の鍵を求めてオランダへと飛び、やがて驚くべき真実を探り当てる。だがその時、暗殺者の魔手は彼の身辺に迫っていた。
「赤い旅団」の血を引く極左テロリスト“狐”は、年上の女闘士フランカに激しい情熱を抱いていた。が、そのフランカは自分の目前で当局の手に陥ち、組織は解体する。“狐”は単身、フランカ奪回の機会を狙うが、その耳に〈英国人誘拐〉のニュースが飛び込んできた。イタリア当局は頻発する誘拐事件に眉を顰めるが、追い打ちをかけるように“狐”から一通の不敵な挑戦状が届いた…。
イギリス秘密情報局イラン担当主任マシュー・ファーニスが、ホメイニ体制下のイランに拉致された。現地工作員の情報を求める捜査官は、連日、過酷な拷問を彼に加える。一方イギリスでは、マシューが家族同様に付き合っていたイラン人青年チャーリー・エシュラクが、麻薬密輸で得た資金で武器を調達し、処刑された家族の復讐のため、単身イランへの潜入を計画していた…。