著者 : 白石朗
町はビッグ・ジムの手に落ちた。悪辣な陰謀が人々を陥れてゆく。煽動された暴動。演出された流血。罪なき者は踏みにじられ、焼き尽くされ、投獄される。法も秩序も良心も“ドーム”のなかに手を伸ばすことはできない。陰謀の総決算は臨時町民集会ーそこで反対勢力は弾劾され、死刑を宣告されるだろう。ビッグ・ジムへの反撃を目論む元兵士バービーと医師助手ラスティらは、天才少年ジョーと仲間たちが山奥で“ドーム”発生装置とおぼしき謎の機械を発見したことを知る。しかしビッグ・ジムの弾圧の手は容赦なく彼らに及び…。蓄積しきった圧力が解放されるときがきた。恐怖にうち克つのは生きとし生けるものの生命の尊厳。圧倒的な筆力とイメージで恐怖と怪異、その末の浄化を描いたあのキング、ここに復活。
悲しみに暮れる彼女のもとに突如かかってきた電話の主は…愛する者への思いを静かに綴る「ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で」、ある医師を訪れた患者が語る鬼気迫る怪異譚「N」、猫を殺せと依頼された殺し屋を襲う恐怖の物語「魔性の猫」ほか全6篇を収録した最新短篇集。
不慮の事故で片腕を失ったエドガーは、ひとりフロリダの孤島デュマ・キーに移り住んだ。波と貝殻の囁きを聴きながら静かに暮らすエドガーは、ある日、絵を描く衝動にとりつかれた。かつて幾人もの芸術家を迎えたデュマ・キーに宿る何かが作用したのか?彼の意思と関わりなく手が描き出す少女と船の絵ーそれはいったい何なのか?屋敷に住まう老女の過去に何があったのか?じわり、じわりと怪異が迫る。島にひそむ悪しきものがひそやかに触手を伸ばす“恐怖の帝王”の本領発揮。圧倒的恐怖へ向けたジェットコースターが、高みをめざして昇りはじめる。
エドガーの絵は美術シーンに衝撃をもたらし、個展を開くことが決定した。それはエドガーの新たな人生の幕開けであり、崩壊していた家族との和解の場であり、最高の栄誉の瞬間でありー彼と彼の愛する者たちにとって最後の平穏な夜となった。ついに物語は臨界に達する。そっと時を待っていた死と破滅と邪悪が猛威をふるう。溺れ死んだ双子。黒い闇に沈む船。人形。赤いバスケット。そして邪悪なる“パーシー”。愛する者に迫る死を防がねばならない。邪悪なるものを斃さねばならない。これぞモダン・ホラー。これぞスティーヴン・キング。悲しみに満ちた浄化を描くラストへ突進する最新超大作。
愛娘を亡くした痛手を癒すべく島に移り住んだ女性を見舞った想像も絶する危機とは?平凡な女性の勇気と再生を圧倒的な緊迫感で描き出す「ジンジャーブレッド・ガール」、静かな鎮魂の祈りが胸を打つ「彼らが残したもの」など、切ない悲しみから不思議の物語まで、天才作家キングの多彩な手腕を大いに見せつける傑作短篇集。
チームメイトに“カモ”と呼ばれていた男がイタリア料理にオペラ、そして恋によって自分自身を取り戻すー。フットボールとイタリアへの愛に溢れたグリシャム快心のヒューマンドラマ。
奇妙な噂がささやかれる映画館があった。隣に座ったのは、体をのけぞらせ、ぎょろりと目を剥いて血まみれになった“あの女”だった。四年前『オズの魔法使い』上映中に一九歳の少女を襲った出来事とは!?(『二十世紀の幽霊』)そのほか、ある朝突然昆虫に変身する男を描く『蝗の歌をきくがよい』、段ボールでつくられた精密な要塞に迷い込まされる怪異を描く『自発的入院』など…。デビュー作ながら驚異の才能を見せつけて評論家の激賞を浴び、ブラム・ストーカー賞、英国幻想文学大賞、国際ホラー作家協会賞の三冠を受賞した怪奇幻想短篇小説集。
レイは故郷に戻ってきた。TV脚本家としての名声を捨て、生まれ育った団地の町に貢献するために。貧困と荒廃に覆われた町のハイスクールで、レイは講師をはじめる。少しずつ生徒たちとの交流も深まってきた頃ー何者かが彼の頭を殴打し、瀕死の重傷を負わせた。だがレイは警察に犯人の名を明かさない。捜査を担当することになった刑事ネリーズは、レイの幼なじみだった。献身的に町のために尽くしてきたレイは何を隠しているのか?ネリーズの捜査が、レイに関わった人びとそれぞれの物語を引き出してゆく…それはひとつひとつが悲しく、あるいは暖かく、そして何より彼らにとってかけがえのない物語だ。その果てに明かされる真相。善行をなそうとした男を見舞った悲劇の理由。スティーブン・キング、エルモア・レナードら、小説巧者たちが絶賛の声を惜しまない感動の大作。痛ましい現実に満ちた世界のなかで、しかし希望の光が最後に灯される。
リーガルサスペンスの巨匠ジョン・グリシャムが、ハート・ウォーミングなホームコメディーに挑んだ異色作。感謝祭直前、会計士ルーサーとその妻ノーラは、海外ボランティアに行く一人娘を見送り、ふたりきりになった。これを機にルーサーは、今年はクリスマスを「スキップ」しカリブ海旅行に出かけようとノーラに提案する。だが、この決断は町中に大きな波紋を投げた。各種寄付金は?恒例のパーティは?町内一丸のクリスマス・コンテストはどうする?数々の妨害やプレッシャーをはねのけ、明日は出発というクリスマスイブの朝、大騒動が…。
リーガルサスペンスの巨匠ジョン・グリシャムが、1952年の故郷アーカンソーを舞台に、アメリカが失ってしまった郷愁の世界を描き出す。「弁護士も裁判官も登場しないが、ここにはいままで以上のグリシャムが存在する」(U.S.A.トゥデイ)と各書評で絶賛された。借金を抱え、天候と相場に左右されながらかつかつの生活をしていた借地農家のチャンドラー家が洪水によって絶望の淵に沈むまでの数か月間が、7歳の少年ルークの目から語られる。さまざまな経験と別離に直面し、少年が大人に脱皮していく過程を、ほろ苦くそして暖かく描きあげる-。
感謝祭直後のマイアミ。会計士ルーサーと妻のノーラは、ペルーに行ってしまった一人娘ブレアを見送り、クリスマスをふたりで迎えることになった。かねてからクリスマスの狂騒を快く思っていなかったルーサーは、今年はクリスマスを「スキップ」することをノーラに提案する。クリスマス当日から10日間、カリブ海クルーズに出かけようというのだ。だが、この決断は大きな波紋を投げた。毎年頼んでいるクリスマスカードの印刷業者や、クリスマスツリー販売のボーイスカウト、慈善カレンダーを売りに来る警察、慈善ケーキの消防士、パーティーの企画を進めていたルーサーの同僚や社長、ノーラの友人などなど、ありとあらゆる不信の声が上がった。そして一番の軋轢が、町内一丸となってクリスマスデコレーションを飾り付け、今年もコンテスト優勝を狙う隣人たちだった。ところが、数々の嫌みや妨害、プレッシャーをはねのけていよいよ出発というとき、大騒動が…。リーガルサスペンスの巨匠がシニカルに描き出したハートウォーミング・ストーリー。
はじめてのキスは乾いていて、なめらかで、日ざしの温もりをたたえていた-1960年の夏、ボビー、キャロル、サリー・ジョンの仲良し3人組は11歳だった。夏に終わりがこないように、永遠に友情が続くと信じていた彼らの前に、ひとりの老人が現れる。テッド・ブローティガン。不思議な能力を持つ彼の出現を境に、世界は徐々に変容し始める。貼り紙、路上のチョーク、黄色いコートの男たち。少年と少女を、母を、街を、悪意が覆っていき-。あまりにも不意に、あまりにもあっけなく過ぎ去ってしまう少年の夏を描いた、すべての予兆をはらむ美しき開幕。
狷介な老大富豪、トロイ・フェランが高層ビルから飛び降りた。莫大な富、巨大なコングロマリット、三人の元妻とその子供たち、そして周到に準備された巧妙なトリックを残して。総資産は110億ドル!!しかも、相続人に指名されたのは所在不明、経歴不明の謎の女宣教師。天文学的な金額の遺産を狙って、借金だらけの親族、弁護士、使用人らが暗躍を始めるなか、フェラン・グループの顧問弁護士ジョシュア・スタフォードはひとりの男を起用する。アル中弁護士、ネイト・オライリー。ブラジルの奥地、電話も電気も道すらもない秘境で、果たしてネイトは彼女を捜し出せるのか。