著者 : 白石朗
リーガルサスペンスの巨匠ジョン・グリシャムが、1952年の故郷アーカンソーを舞台に、アメリカが失ってしまった郷愁の世界を描き出す。「弁護士も裁判官も登場しないが、ここにはいままで以上のグリシャムが存在する」(U.S.A.トゥデイ)と各書評で絶賛された。借金を抱え、天候と相場に左右されながらかつかつの生活をしていた借地農家のチャンドラー家が洪水によって絶望の淵に沈むまでの数か月間が、7歳の少年ルークの目から語られる。さまざまな経験と別離に直面し、少年が大人に脱皮していく過程を、ほろ苦くそして暖かく描きあげる-。
感謝祭直後のマイアミ。会計士ルーサーと妻のノーラは、ペルーに行ってしまった一人娘ブレアを見送り、クリスマスをふたりで迎えることになった。かねてからクリスマスの狂騒を快く思っていなかったルーサーは、今年はクリスマスを「スキップ」することをノーラに提案する。クリスマス当日から10日間、カリブ海クルーズに出かけようというのだ。だが、この決断は大きな波紋を投げた。毎年頼んでいるクリスマスカードの印刷業者や、クリスマスツリー販売のボーイスカウト、慈善カレンダーを売りに来る警察、慈善ケーキの消防士、パーティーの企画を進めていたルーサーの同僚や社長、ノーラの友人などなど、ありとあらゆる不信の声が上がった。そして一番の軋轢が、町内一丸となってクリスマスデコレーションを飾り付け、今年もコンテスト優勝を狙う隣人たちだった。ところが、数々の嫌みや妨害、プレッシャーをはねのけていよいよ出発というとき、大騒動が…。リーガルサスペンスの巨匠がシニカルに描き出したハートウォーミング・ストーリー。
はじめてのキスは乾いていて、なめらかで、日ざしの温もりをたたえていた-1960年の夏、ボビー、キャロル、サリー・ジョンの仲良し3人組は11歳だった。夏に終わりがこないように、永遠に友情が続くと信じていた彼らの前に、ひとりの老人が現れる。テッド・ブローティガン。不思議な能力を持つ彼の出現を境に、世界は徐々に変容し始める。貼り紙、路上のチョーク、黄色いコートの男たち。少年と少女を、母を、街を、悪意が覆っていき-。あまりにも不意に、あまりにもあっけなく過ぎ去ってしまう少年の夏を描いた、すべての予兆をはらむ美しき開幕。
狷介な老大富豪、トロイ・フェランが高層ビルから飛び降りた。莫大な富、巨大なコングロマリット、三人の元妻とその子供たち、そして周到に準備された巧妙なトリックを残して。総資産は110億ドル!!しかも、相続人に指名されたのは所在不明、経歴不明の謎の女宣教師。天文学的な金額の遺産を狙って、借金だらけの親族、弁護士、使用人らが暗躍を始めるなか、フェラン・グループの顧問弁護士ジョシュア・スタフォードはひとりの男を起用する。アル中弁護士、ネイト・オライリー。ブラジルの奥地、電話も電気も道すらもない秘境で、果たしてネイトは彼女を捜し出せるのか。
ときは大恐慌時代、アメリカ南部。コールド・マウンテン刑務所では死刑囚が最後に歩くリノリウム張りの通路を“グリーン・マイル”と呼んでいた。不思議な鼠と巨漢の黒人死刑囚をめぐる、奇跡と恐怖、癒しと救済の物語。
夫が肺癌で死んだのは、長年の喫煙が原因だー未亡人はタバコ会社を相手どって訴訟を起こした。結果いかんでは同様の訴訟が頻発する恐れもある。かくして、原告・被告双方の陪審コンサルタントによる各陪審員へのアプローチが開始された。そんななか、選任手続きを巧みにすり抜け、陪審団に入り込んだ一人の青年がいた…知られざる陪審制度の実態を暴く法廷サスペンスの白眉。
熾烈な陪審員買収工作が水面下で進行するなか、被告側陪審コンサルタントの親玉フィッチに近づいた謎の美女マーリー。彼女は、友人である陪審員ニコラスが評決の鍵を握っているという。はたしてマーリーの目的は何なのか?そして、勝利の女神は原告・被告どちらに微笑むのか…全米の一大産業に挑んだ一組の男女の孤独な闘い。その裏に隠された真の思惑が、いま明らかになる。
このままでは、殺されるーある朝、シーツについた小さな血の染みをみつけて、ローズはそう口にしていた。優秀な刑事の夫ノーマンも、家ではサディストの暴君。結婚後の14年間暴行を受け続けたローズは心身ともにもう限界だった。逃げだそう。あの人の手の届かないところへー。だが、家出をした妻をノーマンが許すはずがない。残忍な狂気と妄執をバネに夫の執拗な追跡が始まった。
逃げた先の街でローズが見つけた不思議な絵は、異世界への入口となった。描かれているのは神殿の廃墟を見下ろす女性の姿。彼女のまとう衣服は、ローズ・マダー(赤紫色)。ローズは絵の力を借りて、妄執にとり憑かれたノーマンと対決しようとするが…。何がリアルで、何が非現実なのか?ホラーとサスペンスとファンタジーを巧みに融合させてあなたを未知の世界へと誘い込む。
一人の男が逮捕された-いかなる罪で?男の過去へと物語は収斂していく。実は、男は法律事務所のパートナーから九千万ドルを詐取し、ある男を自分の身代わりに埋葬したのだ。だが逮捕されたとき、男は一銭の金も所持していなかった。では大金はどこへ?男は保身のために殺人を犯したのか?事件は意外な方向に展開する。
タフでクールな女コニーと、まじめで理性的な男ハリーは、カリフォルニア警察の特別プロジェクトに携わる警官。ある日彼らが昼食をとっていた店で、突然ひとりの男が銃を乱射しはじめた。ふたりは協力して犯人を射殺、事件は終わったかのように見えた。しかし、それは悪夢の始まりだった。同じ頃、その周辺では人間離れした巨体の不気味な怪物が出没していた。その正体とは…。
おまえを夜明けまでに殺してやる、チクタク、チクタク…。そう脅迫してくるあの恐ろしい怪物は、一体どこから来たんだろう?ハリーとコニー、それから元広告代理店勤務のアル中男と、ぽんこつ車で暮らすホームレスの母子と愛らしい飼い犬。彼らはどうやってあいつの正体を突き止めるのか。夜明けまではあと数時間ー。パワー全開で突っ走る、第一級のエンタテインメント大作。
肺癌で夫を亡くした女性が、肺癌の原因は長年にわたる喫煙にありとして、その責任を問う裁判をタバコ会社を相手に起こす-と同時に、原告側、被告側、双方の陪審員への働きかけが水面下で熾烈に展開される…陪審員の中にまんまともぐり込んだ男がいる。この男の狙いは。
ジョージア州の老人ホームで余生を送るポールが、生涯のなかでもっとも忘れがたい1932年の出来事を回想しながら書いているこの物語も、そろそろ終わりージョン・コーフィの処刑が目前に迫った時、ポールは恐るべき真実を知った。そして…。死刑囚舎房で繰り広げられた恐怖と救いと癒しの物語もいよいよ完結。分冊形式ならではの幾重にも張られた伏線と構成が導く感動の最終巻。
死刑囚ジョン・コーフィは、少女殺しの犯人ではないかもしれない。それにコーフィには奇跡を起こす不思議な力があるードラクロアの鼠を生き返らせたのを目撃していた同僚の看守たちは、ポールの説明を信じた。そして脳腫瘍で死に瀕している刑務所長の妻を、コーフィに治療させるという計画を実行に移した。だが、その癒しの手が効力を表わした夜が、悪夢の始まりだったのだ…。