著者 : 西村京太郎
幸子は死ぬために「踊り子号」に乗った。彼女は人生に疲れ切ってしまったのだ。唯一楽しい思い出のある下田の海を見て死にたいと思った。ところが、終点に近づいたところで電車が転覆してしまった。電車で横に坐っていた男の両親が看病をしてくれた。どうやら息子の婚約者と勘違いをしているらしいー。表題作ほか四本を収録した傑作短編集。
ポルシェ911Sに乗る唐木は、途方もない計画をもっていた。狙いは東京競馬場で行なわれるダービーの売上げ金20億円だ。唐木は仲間を一人ずつ集め、男五人女二人の七人が揃った。カメラマン、ヘリコプター操縦士、馬券売場で働いている女、爆弾を作る男などが、周到な計画にしたがって動きはじめた。七人の若者が挑んだ冒険の結末は…。
深夜、十津川警部の電話が鳴った。妻を殺し最近出所した男からだった。死んだはずの妻を見たという。同日、電話の男が殺され、現場に次の殺人を予告する血文字「文殊に聞け!」が残されていた。十津川は丹後に急ぐが、予告通り男が射殺され、凶器の指紋から、ライフルのオリンピック選手が浮上する。だが、彼は昨年焼身自殺していた…。死者が絡む奇怪な予告殺人を描く長編ミステリー。
北能登・恋路海岸で、1発の銃弾が若い女性の肩をかすめた。恋人を自動車事故で失い、傷心の旅に出た松田由紀子を狙撃したのは誰か?その翌日、由紀子の泊まった部屋に男の死体、横には血まれのナイフを握った由紀子が…。十津川警部、亀井刑事の指揮のもとに、真犯人を追う若き日下刑事の執念を旅情豊かに描く。
かつて十津川の部下だった私立探偵・橋本は奇妙な依頼を受けた。祖谷のホテルで、女性に現金五百万円を手渡せというのだ。だが、翌日その女が殺害され、彼女の身元を洗う橋本も何者かに襲われる。十津川の調べで、事件の鍵を握る妖しげな「秘密クラブ」の存在が浮上する。SM、クスリ、バクチなどあらゆる快楽を追求する会員たち。十津川の捜査の手は、組織を操る巨悪にまで及ぶ。
荒川の河原で中年女性とおもわれるバラバラ死体が発見された。被害者の身元を確認する手段は胃の中に残されたサクランボの茎だけで、捜査は難航する。数ヵ月前に起こった猟奇事件との共通性を認めた十津川警部は困難極まる状況の中、犯人とおもわれる人物を追跡する。異常な連続犯罪を防ぐことはできるのか。
OLを殺害した容疑で逮捕された男が、引退した写真家水野久明を探してほしいと要求し、拘置所の中で死亡した。十津川は水野の行方を追ったが、手がかりを握る人物は次々に殺害されていく。その背後には彼が二年前に撮影した一枚の写真があった。錯綜する事件の謎が浮かび上がらせる、愛憎と悲しみのドラマ。
元警察官で探偵事務所を開業する橋本のところに、奇妙な位頼が舞い込んだ。廃線となった広尾線幸福駅の切符を買い、駅の壁に絵馬をかけて来い欲しい、というのだ。切符を届けに位頼人の部屋に入った橋本を待っていたのは、飛び散る血痕と、事件を捜査している十津川警部だった。表題作他4編の傑作短編集。
三陸鉄道の車中で、水産会社を経営する男が殺された。男の娘は父の死の前日、捜査一課の十津川警部に助けを求めていたのだ。父親あてに殺害を予告する脅迫状が届けられたというのだった。だが、それだけでは動くわけにはいかなかった。自責の念に悩む十津川をよそに、上野のホテルで第二の殺人が。
南の無医島に赴任した青年医を待ち受けていたのは、島の奇妙な風習。それは美しい自然に似合わぬ人間くさいものだった。やがて島に発生した伝染病の謎とは?恐るべき惨劇の真相とは?超人気作家が二十余年前に自信を込めて私家版とした「幻の名作集」がいま堂々とよみがえる。ファン必読の作品集。
新進タレントの南ユカが、青森県の十二湖で誘拐された。続いて大杉物産の社長夫婦も誘拐された。捜査に乗りだした十津川警部らだが、身代金を払って解放されたと思われる被害者も、その家族も、なぜか誘拐の事実はなかったと否定。事件を立証できずに焦る十津川をあざ笑うように、犯人は第三の犯行に着手した。
東京に着いた寝台特急「さくら」に男女の射殺体、しかもスーツケースには5000万円の札束が残されていた。その札が4年前、少女誘拐殺人の身代金に使われたものと判ったから、捜査陣は俄かに色めき立つ。少女の父の復讐劇か?十津川警部が父親に迫るが彼には鉄壁のアリバイが。会心の鉄道ミステリイ。
十津川警部は、高校時代の親友の宮下が復讐を企んでいると聞かされた。相手は、八年前、大型バンの事故で宮下が妻を亡くした際、車に同乗していた五人の同窓生。宮下を信じる十津川だが、その五人を乗せたC11型蒸気機関車の一両が、橋から転落したという情報が。犯人は本当に宮下か?十津川警部の推理が冴える。
京都発城崎行き特急「あさしお3号」の車内で、十津川警部の友人で作家の沢田功が殺された。事件を追う十津川は、城崎で沢田と会う予定になっていた画家の滝村敬をマークする。しかし、滝村にはアリバイがあった。「あさしお3号」より14分前に城崎に到着した特急「北近畿5号」から隆りる姿が目撃されていたのだ。十津川警部は鉄壁のアリバイを崩せるか?表題作など3編。
上野発の急行「妙高」に乗りこんだ奇妙な男女。彼らに向けてシャッターをきったカメラマンは善光寺の戒壇めぐりの回廊で襲われ、フィルムを抜きとられた。一方、終点に着いた列車からは女性の絞殺体が発見された。一連の事件の背景には新興宗教団体の不気味な影が…。表題作ほか十津川警部名場面3篇。
「おれは函館で、人を殺した。何とか-」親友・牧原は十津川にそう言い残して、病院でこと切れた。ところが捜査をしてみると、牧原の告白した日には彼は函館でなく大阪に出張。さらに西新宿の高級マンションでモデルが殺され、牧原との意外な「関係」が浮かびあがる。十津川警部の心は揺れる。…。最新傑作ミステリー集。
十津川の部下の清水刑事が、27歳になって、見合い結婚した。新婦の征子は健康的な物おじしない、しっかりした女性だった。新婚旅行は、東北の鳴子温泉から、最上川下り、さらに日本海の温泉を回るルートを選んだ。その旅行の途中、同じルートをたどる。もう一組の新婚カップルを見かけた。だが、観光の名所、お湯の噴き出る〈かんけつ泉〉では、相手の夫が別の女と一緒にいた。その後、征子は何者かに襲われけがをし、急行「もがみ一号」の車内で、問題の女性も殺された。清水から報告を受けた十津川警部も捜査に乗り出したが…。トラベルミステリー。