著者 : 豊田行二
下呂温泉旅館『下呂渓山荘』の経営者坂松寿男から「妻の不倫の証拠をつかんでほしい」との依頼が『フレンド探偵社』に舞い込んだ。夫・坂松との夫婦仲がしっくりいかない女将は男と次々浮気を重ねていく。その一人・河内大介は女将の案内で飛騨高山へ車で見物にいった帰途、舞台峠でトラックと正面突し、怪死する。主人の目を盗んでは女将と不倫を重ねていた番頭・吉田も河内と同じ運命をたどる。一連の死に犯罪の臭いを嗅ぎとった志摩男、倫子のコンビは事件解明に本格的に乗り出す。
東京デパートに就職した西沢雄太郎。採用理由は、最も女にもてそうにない醜男で女の職場に害を及ぼさない、というものだった。だが、会社の思惑とは裏腹に女運は彼に味方した。社員の姉妹や母娘、美人秘書たちの数々の名器、珍器をものにしながら、西沢はデパート内に異彩を放ち、着実に出世の階段を昇りはじめる…。官能サクセス・ストーリー
田坂元太郎は、大手の家庭電化製品販売会社の開発係長。33歳。バリバリ働いて、女性にはモテモテなのに、評判の恐妻家であった。ところが、ある夜、不倫の味を知り、人生観が一変した。女性はすべて恋人である。彼はカチカチカクテルを発明し、OL、社長秘書、モデル…と次々に昇天させ、その結果、出世の糸口を掴んでいく。娯楽と実益をかねた、勤め人の清涼剤。
城本硬一郎は花村電工のニューヨーク支店長代理。夜な夜な白、褐色の肌を愛で楽しんでいるが出世志向も人一倍強い。折しも視察に来た副社長を女で歓待攻めにしまんまと本社復帰に成功する。日本でも女漁りは止まらないがただ寝るだけでなく、女たちをスパイに仕立て上司の弱みをつく作戦に出た。これが見事図に当たり人も羨む出世街道まっしぐら。
4000人の子分を抱え、全国にその名が轟いた初代篭寅組組長・保良浅之助は、昭和5年、初めて国会に臨んだ。議場は、後に憲政の神様と謳われた尾崎行雄の演説を阻止しようという輩で湧き返っていた。「お前らなんじゃい。こういう年配の人に手を出すという法があるか!」浅之助は大声で一喝した。-こうして数名の重傷者を出した国会乱闘事件を引き起こした彼は、一躍政治家としても名が知れ渡った…。任侠の徒として政治家として、激動の昭和を逞しく生きた男の野望を描く。
『フレンド探偵社』の浅村志摩男は、山口県萩の大地主・影山源治郎から奇妙な依頼を受けた。影山家の蔵にあるはずの時価5千万円の家宝を捜し出してくれ、というのだ。浅村は社員兼恋人の久保山倫子を伴い、下関経由で萩へ向う。途中、下関の赤間神宮境内の平家七盛塚の前で、源治郎の娘婿・影山久太郎の冷凍死体を発見する。さらに、津和野へ足を伸ばした2人は第2、第3の殺人事件に巻き込まれる。連続殺人事件を追求しているうち、浅村と倫子は影山家にまつわる忌わしい秘密を嗅ぎ出す…。旅情ミステリーの傑作。
若き県議鳥原十三郎は代議士への野望に燃え、県政派閥を転々、派閥のボスが急逝するやその地盤を引き継ぎ、念頭の衆院選に打って出た、最激数区にあって、青年層の支持が弱いと知った鳥原は、地元の青年団長池中に手持ちの若い女を抱かせて懐柔、それが効を奏してついに最下位ながら初当選を果たした。意気揚々と国会の赤絨毯を踏んだ鳥原は、選挙中に関係を結んだ美しい人妻静代を愛人兼秘書にして東京生活を始めるが、そこに思わぬ落し穴が待ちかまえていた…。人気絶頂の著者が、自らの政界体験をもとに、権力と美女を追い求める代議士の姿を赤裸々に描く異色政界サスペンスの傑作!
「運転をかわって、不倫できるところへ連れてって…」不倫願望の強い人妻の美雪にそう言われ、本田は運転をかわると、教習車を一番はじめに目についたラブホルテルにすべり込ませた。本田は女芯に舌を沈め、さらに三分の一ほど頭を視かせた芯芽のベールを剥くように舌で押しまわす。「ああ、気が狂いちゃっいそう」美雪は頭を掻きむしった。「ねえ、早く入ってきて。でないと、わたし、イッちゃう…」
フレンド探偵社の社長・浅村志摩男は、20年ぶりに郷里の下関市で開かれた高校の同期会に出席した。2次会、3次会と流れ、4次会のスナックに落ち着いたのは、東京から行った浅村、野間、鳥居と地元の石原夫妻、鈴木の6人。翌日、同メンバーは、フランス料理店に集まって、昼食をとり、東京組は、各々別途、帰路についた。宇部から空路帰京した浅村を待っていたのは悲報だった。数時間前に別れた野間が、新幹線の車内の洗面所で、背中から刺身包丁で心臓をひと突きにされ、殺されたというのだ。計画殺人か、通り魔的犯行か…!(『ひかり10号殺人事件』より)-次々と話題作を発表している著者が新たに放つ探偵ミステリー!