著者 : 辻真先
島崎藤村『夜明け前』の舞台上で、新進女優はなぜ死んだのか?企業の文化支援活動をめぐって、からみ合う愛と野望。藤村の世界を21世紀前夜の世相に映す、書き下ろしロマン・ミステリー。
坂本龍馬が生きていた!!慶応三年の近江屋襲撃を間一髪逃れた坂本龍馬は、これも難を逃れて生き残った大久保利通が牛耳る明治政府から距離を置き野に下りながらも、日本の行く末を見据えていた。明治八年、朝鮮半島を舞台に、韓国の宗主国・清と、開国を迫る日本との関係が急速に悪化、日清戦争は避けられない状況に。そうしたなか、日本政府のあまりの横暴ぶりに龍馬は一計を案じ、盟友高杉晋作を朝鮮半島に送り込むが…明治維新を、坂本龍馬、高杉晋作等の英雄が生きていたら日本の歴史はどう変わったか、を描く壮大な歴史シミュレーション小説第一弾。
推理作家同士が果たし合いを。新進作家佐々環が先輩作家若狭いさおを批判したことから、両者は剣呑な間柄となり、とうとう決闘宣言に。心配した編集者たちが小島にある若狭の別荘に駆けつけてみると、密室状態の室内で絶命している若狭を発見した。犯人はやはり佐々なのだろうか。二人の書いた短編ミステリを作中作として織り込むという趣向も楽しい、著者会心の長編推理小説。
唐は玄宗皇帝の治世。開元の治とうたわれた名君も政に倦み、楊貴妃にうつつをぬかす始末。悪宰相・李林甫の死因に毒殺説が流れ、警備にあたっていた方術士・葉法善に嫌疑がかかった。汚名をすすいでほしいともちかけられたのは詩仙・李白だ。宮廷を追われ、江南を旅していた詩人は再び長安の土を踏み、調査に乗りだす。厳重な護衛下にあった宰相を誰がどうやって殺害したのか。折しも安禄山の乱が王朝を震撼させる。殺人事件の背後に、唐を滅亡へと導く大陰謀が隠されているとは。酒豪詩人・李白の名推理。
昭和七年、銀座。カフェー“キャット”で行なわれた魔術ショーの途中、突如大地震が起こった。狂乱と怒号の中、矢島菊枝子爵夫人のダイヤの指環“スフィンクスの涙”が怪盗・銀座男爵によって盗まれてしまう。偶然居合わせた少年・那珂一兵と女探偵・龍千景は、警視庁の仁科刑事とともに初動捜査にあたり、大地震がモートルを使ったトリックであったことを掴む。トリックに関わった人物及び、現場にいた不審な人物を追う一兵らは、次第に事件の真相に近づく。だが核心に迫った時、鍵を握る人物が死体となってしまう-。
悪夢の鍵を握る土方歳三に会うため二百年の時空を超える霊花…。維新の嵐吹き荒れる明治元年の箱館・五稜郭へ。そこで彼女が見たのは、巨大コンピューター“ガイア”の思惑も交錯する混迷を窮めた箱館戦争だった。歴史を造るのは人間か機械か。人類の生命力を見せつけるがごとく、一代の戦鬼・土方歳三は激動の時代を駆け抜けてゆく。待望の書下ろし歴史SF。
智佐子の勤める三良旅行社が社運を賭けて企画したグルメツアーは、一流料亭で鮎づくしのフルコース、お泊まりは老舗旅館という豪華版。有名作家夫婦やOL3人組、怪しげなカップルにカヤおばあちゃんまでツアー客で、一騒動ありそうな気配。そのうえグルメにはほど遠い克郎と“夕刊サン”の田丸部長もついてきた。やっぱり殺人が起きて、意外な人が容疑者に…。大好評シリーズ。
ドジな三流夕刊紙の記者の可能克郎は、終電に乗り遅れて、深夜サウナにもぐりこんだ。中にはいろいろな常連がいたが、ひときわ異彩を放っていたのは、布袋さまのような恰幅のいい頭の禿げた老人だった。名前も年齢も定かならぬ老人が、客の経験した事件の謎を名推理でたちどころに解決してしまうー。軽妙なタッチで綴る長編ユーモア・ミステリー。
結婚して以来転居を繰り返している智佐子・克郎の若夫婦が今回引っ越してきたのは公団住宅。家賃の安さにつられたけれど、今時珍しい星型の住宅で、五階建てなのにエレベーターなし、おまけに傾きかけている。隣に住む老人が120億の遺産を智佐子に進呈すると言いだして、やっぱり死体が御登場。オンボロ団地の住人を巻き込んで繰り広げられる好評のドタバタ書下ろしシリーズ。
日本有数の豪雪地帯、秋山郷。江戸の昔、かの地にわけ入った異才・鈴木牧之が『北越雪譜』『秋山記行』という書物をものした。トラベルライターの草分け・牧之氏は、いってみれば瓜生慎の大先輩にあたるわけだ。「鉄路」編集部から取材依頼がきたのもそんな縁からである。あたり一面雪景色のなか、辿り着いたノヨサ民俗館で、慎たちはいきなり老婆失踪事件にでくわす。隠居部屋の通用口は雪で塞がれており、人目につかずに家を出ることは不可能に見えた。これが秋山郷を襲った恐るべき殺人事件の幕開けだったのだ…。
ひょんなことからAVの脚本を書くことになった売れないマンガ家大日向陽。AV界の大御所文字監督に無理やりいわれ、陽は脚本どころか出演まで引き受けるはめになった。カラミの相手は陽にぞっこんの美少女クララ。ロケのためひなびた温泉宿にやってきた一行は、さっそくベッドシーンから撮影を開始したのだが、そんなかれらの目の前で怪異な現象が…。知らずに化物屋敷に足を踏み入れてしまった陽とクララたちを襲う亡霊の正体は。書き下ろし長篇サスペンス。
日本最後の清流・四万十川とトンボ王国・中村を観光パンフレットで紹介した縁で、瓜生慎親子は土佐へと家族旅行に出かけた。久しぶりに仕事抜きの旅行とあって、気分も高揚気味だ。岡山駅で駅弁を譲ってくれた女の子・水木留美が慎のファンだったとわかり、親しくなる。彼女は四万十川に身を投げた姉の葬式のため帰郷するのだという。留美が慎たちの席へ行っていたわずかの隙に、彼女の座席は若い男の死体によって占められていた。しかもこの事件は、その後慎たちを待ち受ける新たな殺人の幕開けにすぎなかったのだ。
ユノキプロの“イベントキャスター”葉月麻子は、ともかく鹿児島へ飛ぶことにした。マネージャーの堀喜平が殺人容疑で逮捕されたというのだ。休暇を利用し、余命いくばくもない父親と後妻の三人で指宿へ来た堀は、砂むし風呂で死体を発見。被害者はなんと堀のかつての恋人で、彼女は堀に会いに行く、と妹に手紙を出していた…。桜島の噴煙の下でくり広げられるテンヤワンヤの結末は?書下し長篇ミステリ。
暑い・狭い・うるさい3拍子揃った愛の巣を営む智佐子・克郎の新婚夫婦に、願ってもない話がとびこんだ。箱根湯本にある敷地3000m2の豪邸を、しばらく使ってくれないかーもちろんOK、即座に2人はお引っ越し。だがロマンスカーで新居に帰宅した克郎は、さっそく死体とご対面。それも、たしか電車で隣り合って意気投合したばかりの美女。おまけにその死体が、起き上がった…。