著者 : 霜月桂
ロンドンからスコットランド高地への旅は散々だった。イライザは雨に濡れながら、人里離れたロッジの玄関にたどりついた。こんな場所で、二人の教授が研究を続けているなんて信じられない。看護師のイライザは、彼らの手助けをするためにこの地を訪れた。きっと年老いた学者たちが、ここで実験に夢中になっているのだろう。ところがイライザの前に現れたのは、そんな予想を裏切る、端整な顔立ちにエレガントなスーツをまとった男性だった。戸惑うイライザに、彼は笑みを浮かべて言った。「きみはぼくの下でも働くことになるんだよ」彼こそがオランダから来たクリスチャン・ヴァン・ドイル教授。彼女に手伝いを頼んできた老教授のパートナーだったとは……。
真実の愛は、寝室の扉ではなく、 心の扉を開かないと確かめられない……。 ターニャが大富豪のレイフと結婚して、もうすぐ2年が経つ。 燃えさかる情熱で結ばれたはずなのに、ターニャの不満は募る一方だった。 レイフが妻に求めているのは、ベッドで果たす役割だけ。 心を開いて語り合ったことは一度もない。 もっと彼のことをわかりたいし、わたしのこともわかってほしいのに。 それに、レイフはまだ早いと言って子どももほしがらないし、 彼の秘書が彼に横恋慕しているようなのが不安なので、 そのことを話し合おうとしても取り合ってくれないのだ。 ターニャがあの手この手で気を引こうとすればするほど、 彼がますます心を閉ざすことに絶望し、家出を決行すると……。 レイフへの想いは少しも変わらないけれど、彼にとって自分はただの所有物でしかなく、このまま人形のように生きるのが嫌で行動を起こしたターニャ。愛し愛されて結婚したはずなのに、いつしか岐路に立たされていた夫婦の愛の復活を描いた名作をお届けします。
私を冷たく見捨てた公爵に、 この子を奪われたくないーー ルイーズは祖父母の遺灰を埋葬するため、シチリアを訪れた。 10年前、18歳だった彼女はこの地で忘れえぬ過ちをおかしたーー 1400年続く公爵家の若き当主、シーザー・ファルコナリと。 二人は愛し合っていると信じ、ルイーズは彼に純潔を捧げたが、 翌朝、当主を誘惑したと周囲から断罪され、村を追われたのだった。 彼からの連絡はなく、だからルイーズもその後のことは伝えていない。 もう二度と会うことはないと思っていたのに、まさか、 遺灰の埋葬に彼の許可をもらわないといけないなんて……。 10年ぶりに会うシーザーは、鋭いまなざしと言葉で彼女を凍りつかせた! 「ぼくたちの息子も、連れてきているのか?」 《特選ペニー・ジョーダン》より、ドラマティックなシークレットベビー物語をお贈りします。作者が生涯最後に描いた本作は、ロマンス小説家として駆け抜けた30余年の集大成とも言える傑作です。
ベスト作品コンテスト受賞作をふたたび! 何度読んでも泣ける、切ない愛の物語。 疎遠な双子の妹ナターリャの事故の知らせを受けたナターシャ。 病院に駆けつけると、妹は無事で、婚約者のチェイスが重傷を負っていた。 彼は富豪弁護士だが、体に障害が残る可能性を耳にしたナターリャは 指輪を外し、彼を見捨てて病院から出ていった。 一方、ナターシャは彼を放っておけず、そばで見守った。 「ナターシャ……」意識を取り戻したチェイスがつぶやいた。 ああ、妹はまた私の名を騙ったのね。昔から姉の名を気に入っていたから。 だがチェイスに妹と勘違いされても、ナターシャは否定できなかった。 いつしか彼に恋してしまった自分に気づいて。 間違いを正せぬまま、ナターシャは彼と結婚し、小さな命を宿したーー ファン投票により選ばれた“ベスト作品コンテスト”の受賞作が甦る企画。ご好評につき、《不朽のファン・セレクション》と題してお贈りします。本作は1998年上半期、日本デビュー作にして栄えあるベスト作品賞第2位に輝いた、感涙必至の秀作です!
この子を宿した一夜は絶対に忘れない。 たとえ彼は忘れ去ってしまっていても。 ある嵐の夜、ライザは血のつながらない義兄ロークと結ばれた。 クルージングに出た船上で、激情に駆られてのことだった。 だが、直前にマストから落ちて脳震盪を起こしていたロークは、 断片的に記憶を失い、翌朝には彼女と結ばれたことを忘れてしまう。 義妹への潜在的な罪の意識からか、以来、彼はライザに冷たくなった。 あの一夜の思い出に胸を焦がしても、報われることはないんだわ。 耐えかねたライザは書き置きも残さずに家を出たーー身重の体で。 5年後、無事に生まれた息子を育てながらロンドンで自活する彼女の前に、 突然、以前と変わらぬ非情さを漂わせたロークが現れる! しかも彼は、幼い息子を、ほかの男性の子供だと信じこんでいて……。 親同士の再婚により義理の兄妹となったヒーローとヒロインによるドキドキのシークレットベビー物語をお届けします。大スター作家ペニー・ジョーダンらしく人間の心の裏表を巧みに描いた名作です。
ロマンスの女帝リンダ・ハワード自身が、 「今でも心から離れない」というヒーローの物語! 母と弟を亡くした悲しみが今も消えないベアリー。 そんな彼女がある日、何者かに連れ去られ、異国で囚われの身となった。 暗い部屋でじっと心身の痛みに耐えるベアリーに、黒い影が忍び寄るーー 「合衆国の救出隊員、ゼイン・マッケンジーだ」 ゼインに導かれて建物を抜け出し、深夜まで身を潜めた。 その間、ベアリーは彼の強さと優しさに激しく惹かれ、 命がけの状況のなか救いを求めるように、純潔を捧げたのだった。 それから2カ月。あの夜の結果、人知れず小さな命を宿したベアリーは、 事件後、なぜかゼインと彼女を会わせまいと妨害する父を避け、 密かに姿をくらまそうと考えた。そこへ突然、愛しのゼインが現れる! 《マイ・ベスト・ブック》と題し、作家本人がおすすめする自著をご紹介する企画です。大スター作家リンダ・ハワード自身が惚れこんでいると公言する、勇敢で優しい、どこを取ってもパーフェクトなヒーローが登場する不朽の名作をどうぞ!
リン・グレアム本人がおすすめする、 “お気に入りのヒーローとヒロイン”の物語! キャットは父が遺した家を宿にして生計を立ててきたが、 不景気で今は差し押さえ寸前まで追い込まれていた。 ところがある日、弁護士に呼ばれ、驚くべき話を聞かされる。 億万長者の石油王ミハイルが彼女の宿を買い取ったというのだ。 ミハイル……つい先日泊まったばかりの、あの謎めいた宿泊客だわ。 いったい彼はなんの目的でそんなことを? キャットは真相を問いただそうとミハイルを訪ねたが、 逆に彼から買い取った見返りとして不可解な提案を受ける。 「ひと月だけ僕のクルーザーに滞在してほしい。体の関係抜きで」 男性を知らない彼女にとって願ってもない取り引き、のはずが……。 今や押しも押されもせぬハーレクインの大スター作家となったリン・グレアム。本作はそんな彼女自身が特に気に入っているというヒーローの物語です。「タフだけれど、傷つきやすい一面を持っているところ」がチャームポイントだそうですので、ぜひご注目ください!
両親に捨てられ、掃除人として身を粉にして働くタビーは、里親の元で姉妹のように育った親友を看取ったあと、遺された生後6カ月の赤ん坊の後見人となった。だが、独身で貧しい彼女に福祉局が養育権を認めず、悩んだ末、タビーは会ったこともない遺児の共同後見人ーギリシア富豪アケロンに協力を仰ぐことにした。巨大なビルの最上階で対面した彼は、恐ろしいほどハンサムで、とてつもなく冷酷だった。「その薄汚い女をつまみ出せ」にべもなく追い返されたタビーだったが、なぜか数時間後、態度を急変させたアケロンにプロポーズされて…。
ギリシア神のごとくハンサムな雇い主は、 とてつもなく冷酷非情な富豪だった! 捨て子として拾われ、里親の元を転々として育ったリリーは、 笑いの絶えない温かい家庭を築くことを夢見ていた。 彼女にとっての理想の男性とは、すなわち理想の夫。 遊びの恋など、これまでしたことも考えたこともなかった。 そんな不器用さが災いしてか、白馬の王子はまだ現れていない。 ある日、彼女は借金返済のために引き受けている清掃の仕事で、 ギリシア人富豪ニック・ゼルバキスの豪奢な別荘へと赴く。 そこでリリーは彼の恋人に誤解され、結果、恋人は去ってしまう。 困ったわ、どうしよう。動揺する彼女にニックは冷淡に告げた。 「さっさと支度してくれ。今夜のパーティは君に同伴してもらう」 これぞ、シンデレラ・ロマンスの決定版! 傲慢で強引な魅惑のヒーローを描いて、世界的人気を誇る実力派作家サラ・モーガン。2003年に日本のハーレクインで鮮烈デビューを飾ったあと、またたく間にトップ作家の地位にのぼりつめました。
北米ロマンス界の巨匠ダイアナ・パーマーを筆頭に、大人気作家が長年の片想いをテーマに描いた秀作3篇を厳選してお届けします。伝えたくても伝えられない恋心を抱えるヒロインたちの、切なくてちょっぴり甘酸っぱい恋物語。幸せな読後感をお約束します!
高校を卒業後、経済的な理由で大学進学をあきらめたチャリティは、速記とタイプを習い、今はロンドン市内の病院で秘書を務めている。彼女の収入をあてにする家族と暮らす平凡な日々の中、内科医長のワイリーライアン教授のことが、心の片隅で気になっていた。院内の事情通たちも、彼の私生活についてはほとんど知らない。住まいや、結婚しているかどうかさえ。でも、チャリティは知っていた。以前、教授に手紙のタイプを頼まれた際、彼がまだ独身とわかったが、それを誰にも話さず、自分の心の中だけにとどめておいたのだ。そんなある日、チャリティは教授に引き抜かれ、彼の診療所の秘書となる。舞い上がったのもつかのま、彼が近々婚約するという噂を耳にし…。
「子どもたちを認知してもらうために、裁判所に訴えるわ」 ベルは震えながら、冷酷な大富豪クリストに宣言した。 幼いベルを連れ、クリストの父の別荘で住み込み家政婦となった母は、 雇主を愛し、5人の子をもうけたーー日陰の身にずっと甘んじたまま。 その母も雇主も亡くなった今、父親違いの弟妹たちと遺され、 途方に暮れるベルの前に現れたのが、クリストだった。 隠し子の存在を一族の恥とし、養子に出すよう迫る彼に、 ベルは弟妹たちを守りたい一心で、とっさに裁判の話を持ち出したのだ。 醜聞を避けたいクリストは、思惑を秘めた目でベルを見据え、言った。 「ならば子どもの面倒は僕が見よう。ただし、君が妻になるのが条件だ」 愛などこの世に存在しない。女性とは割り切った関係しか持たない。そんな愛を知らない大富豪が、傲慢な言動でヒロインを振りまわします。うぶな彼女は反発心を覚えると同時に彼の魅力に圧倒され、弟妹のためと自分に言い聞かせて唐突な求婚を承諾してしまい……。
世界屈指の大富豪のそばで働くーー それは、思いがけない運命の扉。 グレースは養母の治療費と妹の学費でかさんだ借金を返すため、 億万長者セサール・ナバロの邸宅の住み込み家政婦となった。 彼の秘書から、多忙の主人と顔を合わせることはないだろうと 言われていたが、なんと初日から鉢合わせしてしまう。 まあ……自宅でくつろぐ彼は、なんてセクシーなのかしら! 頬が熱くなり、緊張からついおしゃべりになった彼女は、 花も飾らぬ屋敷の殺風景さを指摘して、セサールに睨まれる。 グレースはくびを覚悟したが、彼の言葉は意外なものだった。 「ぼくの一族が主催するパーティに、一緒に来てくれ」 人気ベテラン作家のキャロル・モーティマー。苦労人ながらいつも明るく健気なヒロインのシンデレラストーリーをお楽しみください。
妹の婚約者である伯爵が、 なぜわたしを騙して妻にするの? 大学院生のダーシィは、急に実家に呼び戻された。 なんと、失踪した妹になりすましてほしいという。 イタリア人伯爵ロレンツォとの縁談が決まっていた妹は、 婚約披露パーティを目前に、行方がわからなくなった。 もし破談になれば、父は借金を返すあてがなくなるから、と。 そんな猿芝居が通用する相手ではないと反論したが、 意外やロレンツォは特に疑うふうもなく婚約披露を済ませ、 結婚式の“予行演習”まで強行すると、にやりと笑った。 「実は今の誓いは有効だ。僕らは夫婦になったんだ、ダーシィ」 往年の作家M・ライアンズには隠れた名作が多く、この美しい題名の作品もそのひとつです。ロレンツォの思惑がわからないまま、ダーシィは彼に惹かれてゆき……。夫に横恋慕する女性や、夫の亡き母の秘密に翻弄されながらも、愛を貫くダーシィの姿に涙してください。
メロドラマを描かせたら右に出る者がいないエマ・ダーシーをはじめ、人気と実力を兼ねそなえたスター作家たちが集結! 予期せぬ妊娠やシークレットベビーにまつわるロマンスを3話収録した、胸が痛いほど切なくてドラマティックなアンソロジーをお贈りします。
継母の死後、血のつながらない妹キャロルを養ってきたメグ。 ある日、まだ高校生のキャロルが同乗していた車が事故を起こし、 メグが身代わりとして警察に出頭したことから、人生は一変する。 仕事も信頼も失い、妹までが薄情にも彼女のもとを去ったのだ! メグは絶望のなか新しい町に移り住み、秘書の勉強を始めた。 そして幸運にも、作家サイモン・イーガンに住み込みで雇われる。 すてきで優しい彼と恋に落ち、やがてプロポーズの言葉も聞けた。 ようやく幸せになれるのだわ……。喜びの絶頂にいるメグは、 即座にイエスと答えたーーサイモンの本当の目的に気づかずに。
ルイーズは祖父母の遺灰を埋葬するため、シチリアを訪れた。 10年前、18歳だった彼女はこの地で忘れ得ぬ過ちを冒したーー 1400年続く公爵家の若き当主、シーザー・ファルコネリと。 二人は愛し合っていると信じ、ルイーズは彼に純潔を捧げたが、 翌朝、司祭から当主を誘惑したと断罪され、村を追われたのだった。 彼からの連絡はなく、だからルイーズもその後のことは伝えていない。 もう二度と会うことはないと思っていたのに、まさか、 遺灰の埋葬に彼の許可をもらわないといけないなんて……。 10年ぶりに会うシーザーは、鋭い眼差しと言葉で彼女を凍りつかせた。 「ぼくたちの息子も、連れてきているのかい?」 大スター作家ペニー・ジョーダンは、ミステリアスな大人の男性に翻弄されるヒロイン像が多くの読者の共感を呼びました。『純愛の城』は、2011年に亡くなった作家の遺作。深く繊細な心理描写で描く、シークレットベビー・ロマンスです。
母と弟を亡くした悲しみが今も消えないベアリー。 そんな彼女がある日、何者かに連れ去られ、異国で囚われの身となった。 暗い部屋でじっと心身の痛みに耐えるベアリーのもとへ、黒い影がーー 「合衆国の救出隊員、ゼイン・マッケンジーだ」 ゼインに導かれて建物を抜け出し、別の場所で深夜まで身を潜めた。 その間、ベアリーは彼の強さと優しさに激しく惹かれ、 命がけの状況のなか救いを求めるように、純潔を捧げたのだった。 それから2カ月。あの夜の結果、人知れず小さな命を宿したベアリーは、 事件後、なぜかゼインと彼女を会わせまいと妨害する父を避け、 密かに姿をくらまそうと考えていた。そこへ突然、ゼインが現れる! ひとたび愛するターゲットを定めたら、もう誰も止められないーー危険な色香をもつパーフェクトなヒーロー像が熱い支持を集める、大スター作家リンダ・ハワードの〈マッケンジー家〉シリーズ第3話をお届けします。屈強な四男、ゼインの情熱ほとばしる物語!
挙式の直前で婚約者に裏切られたリリーは、おばのもとに、 しばらく滞在することにした。だが、一つ気がかりなことがある。 アレッサンドローーおばの屋敷に住まう、初恋の相手のことだ。 おばに拾われて、イタリア有数の実業家にまでなったが、 孤児だった彼は、想像を絶する悲惨な少年時代をおくったという。 その生い立ちが影を落とし、鼻持ちならない人間なのだ。 いまは誰にも傷つけられたくない……誰も愛したくない…… 複雑な想いを抱えたまま、リリーはアレッサンドロと再会する。 変わらぬ美貌にひどく冷酷な笑みを浮かばせたーー