著者 : 高橋三千綱
発見された未刊小説。 ポルノ小説?これは発酵した性愛、身を焦がす純愛小説だ 故山口瞳さんが褒めた官能文芸作品を単行本化! 編集部より 人気絶頂のロックシンガー小諸初の死からしばらくして、フリーライターの小暮京一郎に仕事の依頼が舞い込んだ。小諸初の最後の恋人キリコが告白する小諸初とのセックスだけに特化した手記を三日間の取材で作ってほしいというものだった。取材を重ねていくうちに29歳の京一郎は神秘的な美しさを秘めた18歳のキリコの不思議な肉体の魅力に引き込まれていき、ついに一線を越えて耽溺の世界に沈む。若さや美しさに隠れて、彼女にはとんでもない近親憎悪の性の秘密があった。 芥川賞作家がはじめて挑んだ激愛エンターテイメント官能小説。作家の山口瞳氏賞賛、西村賢太氏絶賛!! 高橋三千綱 故山口瞳さんにほめられた。 お礼状を出したら折り返し山口瞳さんから葉書が届いた。 〈お手紙拝見。小説(注・『カラタチ家の末娘』・未刊行)は、やはり違うなあと思って愛読しました。「ポルノを書いてはいけないなんてことはない」この点では珍しく五木寛之さんと意見が一致します。貴方の書くものは力感に溢れ、すがすがしい感じもあると常に思っています。(略)〉 『枳殻家の末娘』に寄せて より 小説家 西村賢太 本作を「サンケイスポーツ」紙に連載時の氏は、四十五歳。円熟の壮年であり、また小説家としてもデビュー二十周年を間近に控えた、まさに脂の乗りきった時期である。 それかあらぬか、後年の病を得てからの繊細で巧緻な短篇群に比し、ともすれば溢れる気力と体力とで良くも悪くも文章を押しきっている部分も見受けられるが、けれど文句なしに面白いエンターテインメントである。 かような佳品が没後に再び陽の目を見ること自体を、一読者として大いに喜びたい。 氏は、その死の間際まで書き続けた。 悪化した肝硬変と糖尿病以外にも、他者が安直に挙げ述べるのは気が引ける程の種々の疾病をかかえながら、それでも飲んで、そして書き続けていた。 満身創痍で、尚も書くーー言うは易いが、こんなのはなかなか実践できることではない。実際に、健康時には古武士よろしくそうした大言壮語を述べつつ、イザ病に倒れて余命宣告を受けたら途端にガックリし、再びペンをとる気力も失いそれっきりとなった書き手を何人か知っている。 だが、三千綱氏は違った。 本当の満身創痍で、本当に最後の最後まで書き続けた。それでいて自身にも病にも気負うことなく、標榜する“楽天家”の流儀を徹底的に貫いた。 稀有の晩年を闘い抜いた、真物(ほんもの)の小説家であったと思う。
時は幕末。越前野山土屋家中はお家騒動の気配をはらんでいた。小身の家臣の三男坊・岡和三郎は、無駄飯食いの立場だが、剣の腕には覚えがあった。ある日、藩重役から江戸での剣術修行を命じられる。しかも脱藩して密行せよ、と。大枚の路銀をせしめ、刺客に襲われるも旅立つのだった。修行人宿に泊まりつつ江戸を目指す東海道中、若き剣客を待ち受ける運命やいかに…。傑作時代小説シリーズ幕開き。
売れない作家の子として生を受けた芥川賞作家が,書き継いできた作品から単行本未収録のものも含めセレクト.デビューから最近の作品まで読んでいくと,作家の歩みにとどまらず,時代の息吹が伝わってくる.解説,唯川恵. 1 雷 魚 木 刀 馬 2 兄の恋人 妹の感情 3 逃亡ヶ崎 落ちてきた男 池のほとりで 4 祈 り セカンド パリの君へ 後書き 解 説(唯川恵)
番組のレポーターとして南極に向かった作家椿三十郎は、経由地で少女から皇帝ペンギンの雛を南極に帰してほしいという依頼を受ける。悪戦苦闘の旅の果てに──。軽妙な筆致で命の尊厳を描いた感動作。
婚礼直前に屋敷を逃げ出した竜子姫を助け、石川島で大捕物を仕掛けた“若様”奥山右京之介。まんまとせしめた大金を仲間に配り、風のように江戸から消えた。そして季節が秋から初冬へと移る頃、若様は姫が嫁ぐはずだった播磨国仙崎藩にフラリと姿を現す。此度の狙いはなんと、豊臣秀吉が多田銀山に隠したと伝わる四億両もの埋蔵金。仙崎藩のお家騒動に便乗し、若様は仰天の秘策を打つ。芥川賞作家、入魂の書き下ろし。
糖尿病からアルコール性肝炎。医師の禁酒勧告も知らぬ存ぜぬの作家の橋本道太郎は、80以下が正常値のγ-GTP検査の数値で、驚きの4000台をたたき出す。新聞に書いたその件で、講演、原稿依頼殺到!気を良くして、毎日4合5合と飲み続けた1年後、61歳にして「肝硬変」を宣告される。くわえて「食道がん」「胃がん」が身体に襲いかかる。彼を取り囲む献身的な妻、娘、美しき女友だち、1匹のブルドッグ…。そんな闘病中、我が身に起きた奇跡も知る。重病を宣告され狼狽しながらも、「病気」をエネルギーに変えていく自伝的小説。
とびきり強くて滅法色っぽい奥山右京之介が帰ってきた!ある夜、土手で大立ち回りをする黒づくめの美貌の女を捕えた右京之介は、訳ありと見て吉原の遊郭に閉じ込める。実はこの女、婚礼を間近に控え、屋敷から逃げ出してきた竜子姫。武芸が達者で気位の高い姫は精一杯の抵抗を試みるも、右京之介はどこ吹く風。豊富な金子と意外な人脈を駆使し、姫の背後に蠢く幕閣の闇を暴いていく。芥川賞作家、渾身の書き下ろし。
豪胆細心、あっと驚く妙計奇策。若様侍、抜け荷にからんだ悪党退治。痛快時代小説。5年振りに江戸に戻った若様右京之介は、悪党退治で危難の連続。暗闘の渦中で若様を救ける女は人妻、それは忘れ得ぬいとしい多美殿…。
都立高校2年、惣菜天ぷら屋の息子、北村章。野球部投手ではあるが、年上の証券会社OLを愛人に持ち、汗と涙の球児像とはほど遠い毎日。「青春とはセックスだ」と叫ぶノイローゼ教師、不倫の恋に懊悩する女教師など、彼を取り巻くあまりにも人間的過ぎる男、女。愛人の妊娠告白、彼を慕う女子下級生の自殺未遂、蒸発した父との再会。そして男対男の対決…。激しく流れる時の果てに彼が見たものは…。誰にでもあった、けっして美しくはなかった青春の日々を描く著者会心の一作。
家族を捨てた父の勝利をひっそりと祈る少年。偉大なる兄への畏敬の念を抱いて、最後のパットに賭ける異父弟。老ゴルファーの心に生き続ける初恋。ゴルフのさまざまなドラマの中に人間の真実の姿を描く。