著者 : 高橋弘希
「おまえはいったい、おまえの人生をどうしたいんだ」易きに流れて人生に行き詰まり、闇バイトに手を染めた若者。押し入った不動産業者の家で老婆を縛り上げ、まんまと金を奪ったのだがー目が覚めると彼を誘った男は金と共に姿を消していた。しかも覆面は外され、老婆に目撃される。俺だけ損するだろこの展開!不遇な過去を振り切るように、若者は包丁を手に老婆に近づくー表題作の他、訳も分からず妻に去られた夫や、海に消えた父を待つ娘など、様々な「隣の人生」を収める作品集。
天賦の作詞作曲の才に恵まれた福田葵。幼馴染と組んだバンドが、とうとう大手レコード会社の目に留まった。プロデューサーの条件を受け入れた葵はー。バンドのデビューのために幼馴染を外すことを選んだ。その瞬間から音楽の神は葵にますます愛を注ぎ始め、-あるいは天罰を下す。
「皆さん、おはようございます、日直の杏子です」「拒食も過食も不眠も自傷の一種だ」「僕はあなたがたを愛しているので、方法は記しません」「関東地区でパーティー希望です」「俺は死にたくない!」「だってわたしはもう子供じゃないから!」人々の声は、あなたに届くでしょうか?第39回野間文芸新人賞受賞作。
日本文藝家協会が毎年編んで読者に贈る年間傑作短編アンソロジー。2017年の1年間に文芸誌などの媒体に発表された全短編の中から17篇を厳選。ベテラン作家から新鋭作家まで、多彩な書き手による注目作、意欲作を選び出し、この一冊で2017年の日本文学を一望できる珠玉の短篇名作選。解説は沼野充義氏。 高橋弘希「踏切の向こう」 青山七恵「帰郷」 阿部千絵「散歩」 綿矢りさ「意識のリボン」 柴崎友香「公園へ行かないか? 火曜日に」 中原昌也「劣情の珍獣大集合」 青来有一「沈黙のなかの沈黙」 山尾悠子「親水性について」 星野智幸「世界大角力共和国杯」 丸山修身「頂上の一夜」 金原ひとみ「fishy」 津村記久子「サキの忘れ物」 牧田真有子「桟橋」 沼田真佑「廃屋の眺め」 佐藤洋二郎「瀞」 小山田浩子「蟹」 町田康「とりあえずこのままいこう」
他者に何かを伝えることが救いになるんじゃないかな。亡くなった従姉から届いた日記。それをきっかけに、僕はある自助グループに関わるようになった…。死に惹かれる心に静かに寄り添う、傑作青春小説!
太平洋戦争中、南方戦線で負傷した一等兵の私は、激戦の島に建つ臨時第三野戦病院に収容された。最前線に開いた空白のような日々。私は、現地民から不足する食料の調達を試み、病死した戦友眞田の指の骨を形見に預かる。そのうち攻勢に転じた敵軍は軍事拠点を次々奪還し、私も病院からの退避を余儀なくされる。「野火」から六十余年、忘れられた戦場の狂気と哀しみを再び呼びさます衝撃作。
私と母の間には、何があったのかー。父の不在。愛犬の死。実家の片付け。そしてカセットテープの謎。母とその娘との繊細な関係を丁寧に描き出す気鋭の作家の注目作。第155回芥川賞候補作「短冊流し」を併録。
その日に死んでしまふ気がするのですー。凛太はTBを患い療養する幼馴染みの妻・早季を足繁く見舞っている。身体も、精神も、安静に保つ日々。しかし病状は悪化、咽喉の安静のため若い夫婦はついに会話を禁じられてしまう。そして或る日、彼が妻の瞳の底に見たのは、おそらく、人間が生きたまま宿してはいけない種類のものだったー。戦争を知らない世代が書いたと話題の『指の骨』で新潮新人賞を受賞し、各賞の候補に挙げられた大注目作家が描く、清らかで静謐な恋愛小説。