著者 : 鹿島田真希
水槽のあるゲイバー「Aqua」で、僕が出会った優利という美しい青年。ある日彼は、静かに語り始める。昔「Aqua」で働いていた男装した少女のことを。彼女はタマと名乗り、毎夜過激なショーを演じていたが、ある晩オーナー緑山の友人・武史にその正体を見破られてしまう。タマに一目惚れした武史は彼女を強く求め、のめり込んでいくのだがーチェルノブイリの事故で危機管理能力が壊れてしまったルームメイト・オリガと横暴な恋人・マサル、タマを虐待した“あの人”と彼女の恋人たち。タマと出会ったことで運命が変わっていく人々の話を聞いているうちに、いつしか僕もその運命の渦に巻き込まれていく。
壊れても生き続けろ 新人作家の三崎小夜は、次回作が書けずに悩んでいた。 担当編集者からの宿題は、なぜかBL小説を読むことだった。 自称クリエイターの元彼。自意識過少な恋に熱き先輩。自我崩壊気味な人気漫画家。 ちょと壊れた周囲の人たちに翻弄されながら、戦う快楽に目覚めるまでの成長物語。
子供の頃、家族で行った海に臨むホテル。そこは母親にとって、一族の栄華を象徴する特別な場所だった。今も過去を忘れようとしない残酷な母と弟から逃れ、太一と結婚した奈津子は、久々に思い出の地を訪ねてみる…。車椅子の夫とめぐる“失われた時”への旅を通して、家族の歴史を生き直す奈津子を描く、感動の芥川賞受賞作。
頭脳、運動神経、容姿、全て完璧な喜多義孝。学園のエースが恋したのは、幼馴染の「可もなく不可もない」女子高生・宮村奈緒。喜多の激しい告白を拒んでいた奈緒だが、彼がずっと抱えていた孤独を知り、想いを受け入れる。二人が付き合い始めた矢先、喜多は自殺した少女の日記を読み、精神を侵されていきーー。芥川賞作家・鹿島田真希が描く、純粋ゆえに危うい青春文学。 イケメン、秀才、野球部エースと、すべてにおいて完璧な「選ばれし」喜多義孝と、幼馴染で「可もなく不可もない」宮下奈緒。想いを告白する喜多に、平穏な学園生活を望む奈緒は冷めた態度をとるが、彼を突き放すこともできないでいた。しかし奈緒は喜多が抱えていた孤独を知り、自分が彼に恋をしていることに気付く。 ようやく付き合い始めた二人だが、奈緒は付き合う前と態度を変えず、喜多をやきもきさせるばかり。さらに十年前に自殺した少女・新田真実の日記を手にした喜多は、徐々に精神の不安定さを見せ始めーー。 私は文学を高尚なものにはしたくはなくて、ドストエフスキーやバルザックのように三面記事を読んでネタにするような娯楽読みものでありたいと、この小説を書きました。--鹿島田真希 芥川賞作家・鹿島田真希が描く、世界で一番残酷な初恋の物語。
つねに様々な小説様式で深い宗教性を感じさせる作品を発表してきた芥川賞作家・鹿島田真希の夫婦小説。結婚十年目のカップルが、互いへの疑いや気づまりの念を交互に独白してゆく。やがて二人は呼応するかのように、社会にではじめの頃、大学生の頃、高校生の頃、子供の頃の記憶をさかのぼり、行き着いたのは……。女子大生ミカの不敵な挑戦を描く「パーティーでシシカバブ」併録。
明と純一は落ちこぼれ男子高校生。何もできないがゆえに人気者の純一に明はやがて、聖痕を見出すようになるが……。<聖なる愚か者>を描き衝撃を与えた、三島賞作家によるデビュー作&第三十五回文藝賞受賞作。
優しい夫と息子と団地で暮らす何不自由ない生活を捨て、ある日、女は長崎へと旅立った。かつて六〇〇〇度の雲で覆われ、原爆という哀しい記憶の刻まれた街で、女はロシア人の血を引く美しい青年と出会う。アルコール依存の末に自殺した兄への思慕を紛らわすかのように、女は青年との情交に身を任せるがー。生と死の狭間で揺れる女を描き、現代人の孤独に迫った三島賞受賞作。
建築史家の若手教授、彼に弟子入りする小説家志望の青年、教授が片思いの愛を捧げる少女、少女を残酷に支配する婚約者の美青年。現代の都市の話題の建築を舞台に、交わされる、永遠、生と死、愛、芸術を巡る会話。男と女、男と男、意表をつく展開を遂げる恋愛関係。人間が生きるための空間、建築、その新たな可能性を探し、現代の絶望に立ち向かう、若き新鋭の画期的長編。
奇蹟をめぐる5つの“聖なる愚者の物語”。“楽園”を追われた子どもたちの魂の放浪…。連載時より各紙誌で絶賛された、文芸賞作家による話題の連作小説。