ジャンル : ノンフィクション > 文庫(ノンフィクション)
その男には2つの顔があった。昼は高齢者に金融商品を売りつける高給取りの証券マン。一転して夜はSMクラブの女王様に跪き、快楽を貪る奴隷。よりハードなプレイを求め、死ぬほどの苦しみを味わった彼が見出したものとはーー芥川賞選考委員の賛否が飛び交った表題作のほか、講師と生徒、奴隷と女王様、公私で立場が逆転する男と女の奇妙な交錯を描いた「トーキョーの調教」収録。
写真家を目指す俊彦は、小料理屋を営む二歳上のみすみと結婚する。やがて小説に転向した夫を、気丈な妻は支え続けた。しかし平穏な関係はいつしか変質し、小さなひびが広がり始める……。それでもふたりは共に生きる人生を選ぶのか? 結婚に愛は存在するのか? そして人生における快挙とは何か? 一組の男女が織りなす十五年間の日々を描き、静かな余韻を残す夫婦小説の傑作。
貞享元年、大老堀田正俊が稲葉正休に江戸城内で殺された。二年後、堀田家家臣である新井白石は、元稲葉家家臣の医者が辻斬りされる事件に出くわす。正俊殺害との繋がりを直観した白石は、辻斬りを調べ始めるが……。
内神田にある手習所「上谷塾」に新しい手習子・今井竹之助がやってきた。上谷家の皐と幸太郎姉弟が通う「比賀道場」の師匠・比賀兵衛の縁者だという。塾の師匠である上谷理与が人見知りの竹之助を心配するなか、彼は幸太郎と肩を並べるほどの秀才ぶりを見せつけるのだった。お互いの存在を意識し合う竹之助と幸太郎。2人の距離が縮まろうとした矢先、比賀が何者かに襲われる事件が起きてしまうー。書き下ろし時代長篇。
捜査一課の刑事・朝倉は、陸自の空挺団出身の変わり種。都内で自衛官の首が切断される猟奇殺人事件が起こり、自衛隊の警務官が捜査本部に乗り込んできた。互いの矜恃をかけて捜査を進める男達だが、朝倉は警務官が抱える秘密ー駐屯地で首を切られて死んだ別の自衛官の存在を知る。さらに米国海軍犯罪捜査局も絡み、事件はより複雑な様相に…
父が遺したアトリエ兼自宅で革製品の修理をして生計を立てている透子。十年前から止まっていた歯車が、婚約者だった男との再会によって動き出した。目を背けてきた過去と向き合う時、浮かび上がるのは「あの女」…彼女からすべてを奪った事件の真相を、アトリエに持ち込まれる品々にひそむ人間ドラマとともに描きだす。
中国の謀報機関・国家安全部の辣腕工作員と、警察に紛れ込んだ「潜入者」の罠にかかり、公安部を追われた元スパイハンター・筒見慶太郎。だが、左遷先のニューヨークで発生した外務大臣毒殺未遂事件を機に、8年の月日を経て再び彼らと対決の時がー。極秘の存在とされる公安部ウラ作業班の元精鋭たちが再び立ち上がる。これが国際謀報戦の現実だ!
時は安政二年十月二日、凄まじい地震が江戸を襲った。あたり一面が火事で焼け、それに乗じた無法者が横行するなか、臨時の町廻り同心・虎之助は人びとのため、事件解決に奔走する!(解説/吉野仁)
僕の会社は悪徳商法のブラック企業!? 退職を決意し詐欺の証拠集めに奔走し、会社とは違う“ある場所”で日々繰り広げられるバトル。表題作ほか短篇一篇を収録した新芥川賞作家の話題作。(解説/古市憲寿)
正義感が人一倍強い青田菜緒は、幼い頃からの夢を叶え警察官に。だが、配属先は被疑者の常套句「俺はやってない!」を信じるのがモットーの冤罪係。誤認逮捕、強要された自白、不十分な証拠…。刑事課長に嫌みを言われつつ、身内の粗探しに勤しむ菜緒。彼女は警察の不祥事を未然に解決できるのか?新米刑事の憂鬱な日常を綴った連作ミステリー。
誰もが羨望の眼差しを向ける美貌とスタイルを誇る音菜は人気絶頂のモデル。スタッフを虫けらのように扱い、恋人を付き人同然と考えていた。だが旬は長くは続かず、トップの座と恋人を後輩のレイミに奪われる。事務所も解雇され、何もかも失った音菜は、手に入れた塩酸をレイミの顔に投げつけた…。疾走する女の狂気を描ききる、暗黒ミステリ!
日村誠司が代貸を務める阿岐本組は、今時珍しく任侠道をわきまえたヤクザ。その阿岐本組長が、兄弟分の組から倒産寸前の出版社経営を引き受けることになった。舞い上がる組長に半ば呆れながら問題の梅之木書房に出向く日村。そこにはひと癖もふた癖もある編集者たちが。マル暴の刑事も絡んで、トラブルに次ぐトラブル。頭を抱える日村と梅之木書房の運命は?「任侠」シリーズ第一弾(『とせい』を改題)。
歴史作家・望月真司は、一枚の古写真に瞠目した。「島津公」とされる人物を中心に、総勢13人の侍がレンズを見据えている。そして、その中でひときわ目立つ大男…かつて望月が「フルベッキ写真」で西郷隆盛に比定した侍に酷似していたからだ。この男は、若き日の西郷なのか?この大男が彼だとしたら、この写真はいつ、何ために撮影されたのか?謎を解明するために望月は鹿児島へ飛んだ。
恋も仕事も中途半端、片山製作所勤務の「役立たずOL」梢恵に、ある日まさかの社命が下されたー単身長野に赴き、新燃料・バイオエタノール用のコメを作れる農家を探してこい。行く先々で断られ、なりゆきで農業見習いを始めた24歳に勝算はあるか!?働くこと、生きることの意味を問う、『ジウ』シリーズ著者による新境地。
ほんとうの七夕物語を知っていますか? 夏がくるたびに思い出す──。香乃と雪弥が、まだ幼くて……ひとりぼっちだった頃に出会った、凛とした人のこと。あの日の「香り」ミステリー、続編!
武勇にすぐれ、戦では天才的な巧妙さを発揮した立花宗茂。戦国乱世には、武勇を誇る英雄豪傑ならば幾人も出たが、そのなかにあって彼をひときわ際立たせたのは、その心術の高朗さにあった。極めて清潔にすぎる宗茂の人柄を見事に描きだした「立花宗茂」をはじめ、素材を九州にとった全十一篇を収録する至極の短篇集。
眼鏡型の携帯通信端末「サイグラス」が普及したある日、見習い板前・和泉淳のもとに謎の電話が入る。その警告を無視した先に待っていたのは、殺人未遂犯としての緊急逮捕だった。冤罪にもかかわらず逮捕時の映像がサイグラスで広まったことで、淳は執拗なネット攻撃の標的に。次々と起こる出来事に巻き込まれ、傷つく淳は、窮地から這い上がれるのか?若き鬼才がリアルに描く!近未来社会の恐怖。
“開帳”とは、寺院が特定の日に秘仏を一般の人々に参拝させる事を云う。そして、開帳を催す興行師を“開帳師”と呼んだ。その開帳師・宝船の長兵衛から真光院御開帳の万揉め事始末役を任された素浪人・矢吹平八郎。金の匂いを嗅ぎ付け押し寄せる地廻りや貧乏御家人を次々と退ける一方で、莫大な“お布施”を狙う者の影が…。悪を許さぬ男気の剣。傑作人情時代小説。