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長年の修行のかいなく、才能を見限られ天山から里へ帰された、落ちこぼれの巫女ソニン。ある日ソニンは、沙維の王子イウォルが落とした守り袋を拾う。口のきけないイウォルに袋を手渡した瞬間、ソニンはイウォルの“声”を聞いてしまいー。不思議な力をそなえた少女をめぐる、機知と勇気の王宮ファンタジー!日本児童文学者協会新人賞、講談社児童文学新人賞ダブル受賞作品。
はじめて白髪を見つけたのは、いくつの時だったろう。四十の坂を越え、老いを意識し始めた紙商・小野屋新兵衛は、漠然とした焦りから逃れるように身を粉にして働き、商いを広げていく。だが妻とは心通じず、跡取り息子は放蕩、家は闇のように冷えていた。やがて薄幸の人妻おこうに、果たせぬ想いを寄せていく。世話物の名品。
気品ある文体と、研ぎ澄まされた感覚。病魔とたたかいながら自己の内面を探究し、出ずる孤独と絶望とを中国古典に、あるいは南洋の風光に託した中島敦の作品世界は、永遠にその輝きを失わない。芥川賞候補に推され、文学的起点となった「光と風と夢」。名作の誉れ高い「李陵」「弟子」「山月記」など、必読の六篇を収める。
なぜ『こころ』のKと先生は自殺しなくてはならなかったのか?意外なキーパーソンとして浮かび上がる静と青年ー漱石は「女の謎」に悩み続けた時代の教科書だった。高校生から大人まで、国民的作家がぐっと身近に感じられる一冊。新たに2章を特別書き下ろし!
総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録、あなたの胸を揺さぶる警察小説集。
町人ながら剣客となった秋月栄三郎は侍の世界に失望、人生に迷っていた。そこへ大坂に暮らす父・正兵衛が現れ、知己の老親分・洞穴の源蔵の世話を命じる。昔、火付盗賊改方の手先だった源蔵も、今や“法螺吹きの”と揶揄される隠居暮らし。その大法螺に苛立つも、父の語る人生の極意を信じ、世話を焼き始めるが…。じんと来て、泣ける!感動の“取次屋”誕生秘話。
スパイMの奸計により逮捕され共産党から転向した小松修吉は、Mを追って満洲に渡り、終戦後、捕虜となる。昭和21年早春。ハバロフスクの日本新聞社に移送された修吉は、脱走に失敗した軍医の手記を書くよう命じられた。面談した軍医は、レーニンの裏切と革命の堕落を明かす手紙を彼に託した。修吉はこれを切り札にしてたった一人の反乱を始める…。著者の集大成。遺作にして最高傑作。
「仄聞するところによると、ある老詩人が長い歳月をかけて執筆している日記は嘘の日記だそうである。僕はその話を聞いて、その人の孤独にふれる思いがした」(落穂拾い)明治の匂いの残る浅草に育ち、純粋無比の作品を遺して短い生涯を終えた小山清。不遇をかこちながら、心あたたまる作品を書き続けた作家の代表作を文庫化。いまなお新しい、清らかな祈りのような作品集。
「呼ぶことはできなくても頻繁に呼ばれる人生」を送るOLのヨシノ。友人から結婚式招待状が届き、申し込んだその日に旅行をキャンセル。二次会幹事まで頼まれ準備万端当日を迎えたが、途中で上司の父親の通夜手伝いに呼び出され、空腹のまま駆けつけるはめに…芥川賞受賞後、ますます快調な著者の傑作中篇集。
執筆に行き詰まり、衝動に任せて麻布の長期滞在用ホテルに身を隠した探偵小説界の巨匠・江戸川乱歩。だが、初期の作風に立ち戻った「梔子姫」に着手したとたん、嘘のように筆は走りはじめる。しかし小説に書いた人物が真夜中に姿を現し、無人の隣室からは人の気配が…。耽美的な作風で読書人を虜にした名文家による、虚実入り乱れる妖の迷宮的探偵小説。山本周五郎賞受賞作。
『銀の匙』が時代を超えて共感をもって読まれ続けるのはなぜなのか。この名品の文章に寄り添い、表現に織り込まれたメッセージを周到に抽きだしてその謎を解きほぐす。多くの図版資料を随所に収め、彫琢をきわめたこの作品の肌理と佇まいがおのずと浮かびあがる。読者を魅了してやまない勘助の美しい文学世界の息吹がみち溢れる一冊。
「替天行道」の志を受け継いだ楊令の闘いと、熱き漢たちの生き様を壮大なスケールで描いた、北方謙三の『楊令伝』。文庫版全十五巻完結を記念して、公式読本が文庫オリジナルで登場。地図や年表、厖大な登場人物たちを網羅した人物事典、著者のエッセイや対談、さらにはここでしか読めない担当編集者のウラ話など、『楊令伝』の世界をもっと楽しむためのコンテンツが満載。
一人旅中の三浦あや子は田沢湖でベンツに乗った実業家・田代に声をかけられる。気軽に乗せてもらうが、車中で暴行を受けてしまう。その時、傍の線路を特急「ゆうづる3号」が通過する。同日、都内で会社社長が絞殺体で発見される。容疑者として田代の名前が挙がるも、あや子が特急の通過を目撃したことで田代は殺人事件のアリバイが成立することに。十津川警部は狡猾な罠を見破ることが出来るか?傑作鉄道ミステリー短編集。
ふつうの人々の営むささやかな日常にも、心打たれる物語がひそんでいる。その一つ一つをていねいにすくい上げて紡いだ、美しく切ない作品集。妻殺しの容疑で起訴された友人の物語「尾瀬に死す」(TVドラマ化)ほか、ネットカフェ難民の男女の出会いを描いた表題作、はぐれカモメと放浪犬とおばあさんの物語など十四篇を収録。
警視庁捜査一課の蛯名舞子は、チョコザイと名乗る青年に出会う。彼は舞子には理解できない行動をとるが、事件の証拠を目にすると、突然難解な、しかし事件解決の重要な手がかりとなる単語をつぶやいた。舞子は上司である沢俊一とともに、チョコザイがつぶやく単語をもとに事件を次々と解決していくがー。謎めいた過去を持つサヴァン症候群の青年と、2人の刑事が難事件を次々と解決していく、新感覚ドラマの完全ノベライズ第1弾。
三十五歳の脚本家、奈津は、才能に恵まれながら、田舎で同居する夫の抑圧に苦しんでいた。ある日、夫の創作への関与に耐えられなくなった奈津は、長く敬愛していた演出家・志澤の意見に従い、家を飛び出す決意をする。束縛から解き放たれた女性が、初めてめぐり合う生と性、その彷徨の行方を正面から描く衝撃的な官能の物語。
母と弟の2人で暮らす小学6年生の杉原美緒。母はアルコールに依存し、親類に引き取られた美緒は心を閉ざしていく。そんな折、元検事の永瀬丈太郎という初老の男と出会う。美緒は永瀬の人柄に心を開いていくが、彼はひとり娘を誘拐されており、大きな心の傷を抱えていた。数年後、美緒は事件を調べ始め、余りにも哀しい真実を知るー。家族とは何か。赦しとは何か。今最も注目を受ける気鋭が贈る、感涙のミステリ巨編。
大学進学で高知にやって来た篤史はよさこい祭りに誘われる。初恋の人を探すという淡い望みを抱いて参加するも、個性的なチームの面々や踊りの練習、衣装も楽曲も自分達で作るやり方に戸惑うばかり。だが次第に熱中するうち、本番が近づく。憧れの彼女は果たしてどこに?祭りの高揚を爽やかに描く青春小説。
仕事もしない無責任な夫と身勝手な息子にストレスを抱えていた芳恵。ついに我慢の限界に達し、取った行動は…(「崩れる」)。30代独身を貫いていた翻訳家の聖美。ある日高校の同級生だった真砂子から結婚報告の電話があり、お祝いの食事会に招待されるが…(「憑かれる」)。家族崩壊、ストーカー、DV、公園デビューなど、現代の社会問題を「結婚」というテーマで描き出す、狂気と企みに満ちた8つの傑作ミステリ短編集。