ジャンル : 外国の小説
謎の蔓草モスバナの異常繁殖地を調査する植物学者のアヨンは、そこで青い光が見えたという噂に心惹かれる。幼い日に不思議な老婆の温室で見た記憶と一致したからだ。アヨンはモスバナの正体を追ううち、かつての世界的大厄災時代を生き抜いた女性の存在を知る
冬になると旅行客がほとんどやって来ない避暑地、ソクチョの小さな旅館でわたしは働いている。ある日、フランス人のバンドデシネ作家が旅館にやって来る。彼の中に、わたしは未だ見ぬフランス人の父と父の国への憧憬を重ねるがーー。男女の一期一会を描く長篇
ヴィクトリア朝ロンドンで暮らすメアリ・ジキルら、特異な能力をもつ"モンスター娘"こと〈アテナ・クラブ〉の令嬢たちに、ヴァン・ヘルシング教授の娘ルシンダから救助を求める手紙が届く。彼女たちは一路ウィーンへ! 大陸で繰り広げられる華麗な大冒険
ベトナムで孤児であったところを拾われたマンは、育ての母に導かれ、カナダのモントリオールでベトナム料理店を営む男性と結ばれる。子供にも恵まれ、レストランも次第に繁盛して、生活は順風満帆であるように見えるが、マン自身は、常に日陰にひっそりとたたずんでいるように感情を押し殺して、どこか満たされない様子で日々を過ごしていた。しかしそんな最中、レストランの盛況とともに刊行したレシピ本の成功を機に訪れたフランスで一人のシェフと出会い、マンは、内に秘めた感情を少しずつ顕わにしてゆく…
今日の韓国文学作家に多大な影響を与え続ける 「韓国文学史で前例なき異端の作家」による、待望の邦訳! 著者は1965年ソウル生まれの女性作家。イメージに富むと同時に生硬で鉱物的な破格の文体を用い「韓国文学史で前例なき異端の作家」と評価され、今までに多数の短篇集と長篇、エッセイ、詩作品を発表。常に独自のスタンスで揺るぎない地位を占める韓国女性作家のトップランナーである。また、ハン・ガンの英訳者として知られるデボラ・スミスがぺ・スアの作品を高く評価しており、既に3冊を英訳している。これまでの作品は、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、中国語などにも翻訳されている。本書は、今日の韓国作家に多大な影響を与え続ける著者の初の邦訳となる。 物語の舞台は「ソウルを連想させる人口1000万人都市」であるが、はっきりとは書かれていない。午後四時にベッドで目を覚ました「私」は、旅館の一室におり、存在を規定する記憶がすべて消えていることを知る。椅子には黒い服を着た同行者が座って本を読んでいた。同行者も、自分の存在を規定する記憶をすべて失っていることに気づく。広げられた新聞に、ジョナス・メカスの訃報記事があることから、日にちは一月二十三日頃だとわかる。巫女に会い、「ウル」と名付けられた私は、感覚と予感をもとに、様々なものにいざなわれ、自分が何者であるのかを夢幻的に探っていく。〈はじまりの女〉という原初的なイメージが、ときに激烈な感情をともなって変遷しながらウルの前にあらわれる。「それこそが私の存在の唯一の根拠であるという確信」が芽生えて……。 全篇を通して、存在の不安、孤独、愛、性、死などの人間の本質を体感するような謎めいたイメージが横溢し絡み合う。世界と自己をまったく新しく捉え直す文学の挑戦!
戦争の大義は何処へ。三部作完結 激戦地クレタ島脱出から2年が経ち、ガイ・クラウチバック大尉はロンドンで無為な日々を送っていた。王立矛槍兵団の戦友たちが戦地へ向かうなか、もうすぐ40歳という年齢を理由にひとり後に残されたガイは、開戦時に抱いた崇高な大義を見失いつつあった。一方、クレタ島でガイの命を救ったリュードヴィック曹長はいまや情報軍団少佐に昇進し、戦場で書きとめた覚書きに基づく『瞑想録』の出版を画策中。ガイの元妻ヴァージニアは予期せぬ妊娠に途方に暮れていた。ついに情報将校としてイタリア方面への派遣が決まったガイは落下傘降下訓練に参加するが、訓練中の負傷で療養生活を送るはめに。不運続きのガイの戦場は一体どこにあるのか……。 「私には、世界のいたるところに戦争への意志が、死の願望が存在しているように思えます」--主人公に突きつけられる「戦争の名誉」と「男らしさの神話」への痛烈な批判。作家自身の軍隊経験をもとに、戦争の醜悪かつ滑稽な現実と古き理想の崩壊を時に喜劇的に、また辛辣に描いて、最高の第二次大戦小説と称賛されたイーヴリン・ウォー最後の傑作《誉れの剣》三部作完結篇。本邦初訳。
ロシアの支配により過酷な変容を迫られた19世紀のジョージア。植民地支配脱却の鍵を宗主国ロシアに求めた作家と、ローカルな神話に想像の源泉を求めた詩人。植民地ジョージアにおける、2人の交点とは?第3回東京大学而立賞受賞。
〈大きな悲しみが、私を守ってくれる〉 『ショウコの微笑』『わたしに無害なひと』の気鋭のベストセラー作家、初の長編小説 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 夫の不倫で結婚生活に終止符を打ち、ソウルでの暮らしを清算した私は、九歳の夏休みに祖母と楽しい日々を過ごした思い出の地ヒリョンに向かう。 絶縁状態にあった祖母と二十二年ぶりに思いがけなく再会を果たすと、それまで知ることのなかった家族の歴史が明らかになる……。 家父長制に翻弄されながらも植民地支配や戦争という動乱の時代を生き抜いた曾祖母や祖母、そして母、私へとつながる、温かく強靱な女性たちの百年の物語。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日が昇る前に大切なあの人に伝えておきたいことがあった。 明るくなったら、言えなくなりそうだから……。 2021年〈書店員が選ぶ“今年の小説”〉、第29回大山文学賞受賞。
リュルネソスの王妃ブリセイスは、敗戦後、奴隷となった。その主は、家族と同胞を滅ぼした英雄アキレウス。彼女に与えられた選択肢は、服従か死か。だが、彼女が選んだのはーー。英国の戦争文学の旗手が、黙殺されてきた女たちの声で『イリアス』を語り直す。
この本がきっと、わたしの父のもとへ導いてくれる。 レベッカは、7つの奇妙なおとぎ話が収められた本を手がかりに 幼いころに家を出た父親を探す。切なくも心温まる家族の物語! ★〈woman&home〉誌2021年ベストブックス選出 ★〈ウォーターストーンズ〉書店2022年5月のスコットランド本選出 幼い頃に両親が離婚したレベッカは、父のレオに20年近く会っていない。ある日、男性記者が取材でレオの行方を尋ねてきた。レオはBBCの子ども番組に出演していた人気俳優だったが、レベッカは彼の生死すら知らない現状に疑問を持ち、父が書いたというおとぎ話を手がかりに彼を探そうとする。「収集家と水の精」「世界の果てへの船旅」「魔女とスフィンクス」……7つの奇妙な物語と想像力のきらめきが導く、心温まる家族小説!
貧しい祖父母の家で育ち、身分違いの地主の息子ジェイクの子を宿したキティ。だが初めての一夜のあと、彼に言われたのだ。妊娠しても子供は諦めてほしいと。妊娠を告げる前に、彼は別の女性と結婚。キティは打ちのめされ家を出た。8年後、祖母が亡くなり帰郷すると、長身の男性が現れた。彫りの深い顔立ちージェイク?-『飽くなき情熱』エミリーは結婚して3年経った今も大富豪の夫フィンに夢中。だが彼は前妻といまだに親しく、毎晩帰宅も遅いので不安でならない。今日は3度目の結婚記念日なのに、腕によりをかけて作った食事はすっかり冷めてしまった。思い余って夫の会社に行ってみると…そこには、一緒にシャンパンを飲む夫と前妻の睦まじい姿が!-『悲しい嫉妬』田舎町の診療所で看護師として働くララ。今年のクリスマスにはドクターの息子ニックが帰ってくるという。7年前のイブの日にダンスパーティでニックに恋したララは、次の日からダイエットに励んだ。今はもう太って未熟な少女ではないわたしを、彼はどう思うかしら?ララは期待に胸を高鳴らせるが、現実は残酷でー。-『始まりはラストダンス』
サイラは親友の婚約披露パーティに出るためイギリスに帰国した。8年前、親友の兄でホテル王のネイサンと付き合っていたが、結婚など考えられないという彼に絶望し、アメリカに渡ったのだ。今回パーティでサイラは思いがけずネイサンと再会した。真っ青な瞳のハンサムな彼は、歳を経てさらに魅力を増していた。サイラは親友にせがまれ、彼を含めたグループ旅行に行くことになる。断ち切れずにいた想い。よみがえる情熱。たとえ結婚に行き着かなくてもかまわない。今が幸せなら…。そう自分に言い聞かせ、サイラはネイサンとベッドを共にしてしまう。3カ月後、彼女は体の異変に気づく。まさかー?
ファッションショーの舞台を下りた花形モデルのリーナ。明日からは本名のケイティ・メルデントンに戻るのだ。最後の仕事は、チャリティオークションでデート権を落札した男性とディナーを共にすること。だが現れた黒髪の長身の男性を見て、彼女は息をのんだ。ジェイク…!2年前に別れたきり、二度と会いたくないと思っていた男性だ。かつてはジェイクを愛し、愛されていると確信していたー継母と彼が愛人関係にあると知るまでは。ジェイクは、なぜ大金を使ってわたしとの時間を手に入れたの?
遠い夏。16歳のキャラはデビッドと出逢い、恋に落ちた。だが必ず迎えに来ると誓ったのに、デビッドは戦場に赴き…永遠に帰らぬ人となったのだ。キャラのお腹に赤ん坊を残して。いまは静かに暮らすキャラの前に、ある日、ひとりの男性が現れた。「キャラ」懐かしい声…ああ、デビッド!彼は生きていた!キャラの頬に涙が伝う。これが夢なら、覚めてほしくない。あの頃と変わらぬしぐさで、デビッドに抱かれ、キャラは恍惚に浸った。まるで時を取り戻そうとするかのように、甘い蜜月を過ごす二人。けれど別れは唐突に訪れた。ほどなくして、彼が姿を消したのだ。“愛している”という走り書きと婚約指輪を残してー。
ああ、今日もくたくただわ…。病院の住み込み庶務係のクローディアは、きつい仕事をこなしてはベッドに倒れ込む日々。お世話になっていた大おじが亡くなったのを境に、これまで住んでいた家を追い出されてしまったのだ。そんな彼女に手を差し伸べたのは、大おじを診ていた年上のハンサムな医師トマスだった。「結婚すればきみは自由を、ぼくはよき友人を手に入れられる」愛のかけらもない申し出と知りつつも、彼が時折見せるやさしさに淡い期待を抱き、クローディアは思わずうなずいてしまうが…。
相次ぎ病に倒れた親の介護に追われ、自分の夢は諦めていたソフィ。両親亡き後も彼女が用務係として働く病院に、ある日、山で遭遇して意識不明の男性が搬送されてきた。まるでギリシア神のような美貌の持ち主に魅せられ、ソフィはいけないと思いながらも個室で眠る彼にキスをしてしまう。すると不意に男性が目を覚ましたー記憶喪失の状態で!行き場のない彼が気の毒で、ソフィは自宅で面倒を見ると申し出る。たちまち緑の瞳の男性と恋に落ちてしまい、彼女は純潔を捧げた。彼がプレイボーイの億万長者アキレス・リカイオスだとも知らず。
メイドとして働くエフィは胸を躍らせ、銀行の面談に向かった。夢だった香水会社の立ち上げに必要な融資を受けられそうなのだ。ところが途中、富豪アキレスが起こしたトラブルに巻きこまれ、約束の時刻に間に合わず、融資の話は白紙となってしまう。もう夢をあきらめるしかないの?失意のエフィの前に、事情を知ったアキレスが再び現れると、いきなり切りだした。「僕と結婚してほしい。病床の父のため、すぐに妻が必要なんだ。もし妻になってくれるなら、きみの希望額の3倍を出そう」彼の熱いまなざしに魅入られ、気づけばエフィはうなずいていた。