ジャンル : 外国の小説
アリソンが恐れていた日がついに来た。必死に忘れ去ろうとしていた元恋人のルークが現れたのだー彼女が兄弟と営む、傾きかけたホテルへの出資者として。ルークは地元の名家の子息で、魅力の権化のような男性。そしてアリソンを無惨なかたちで捨てていった人…。アリソンはルークと別れてから子どもを産んだが、もうすぐ2歳になる息子の存在を、彼には秘密にしていた。だがルークは巧妙な手段でそれを知り、息子に会わせろと言う。私から奪って自分の跡継ぎにするの?アリソンは不安に怯えた。
妹の忘れ形見を守るために、 冷たい富豪に仕えるしかなくて……。 ケリーンの18歳になる妹が亡くなった── 生まれたばかりの我が子の父親の名を言い残して。 富も名声も手に入れた著名人、トリスタン・ロスが父親だなんて! つい最近まで、妹はトリスタンの秘書として働いていた。 妹の訃報を知っているはずなのに、連絡ひとつよこさない男。 ケリーンの胸に怒りがふつふつと沸きあがった。 矢も楯もたまらず、ケリーンはトリスタンの邸宅を訪ねるが、 驚いたことに、彼は即座に子どもの父親ではないと断言したうえで、 聞くに堪えない妹への侮辱の言葉を並べたてた。 ケリーンは衝撃に打ちのめされた。いったい何が真実なの? トリスタンは赤ん坊を自分の子とは認めないながらも、ケリーンが住み込みの秘書になるなら、彼の家に赤ん坊を連れてきてもいいと言います。甥と一緒にいるにはほかに道はないと考えたケリーンは、妹のように弄ばれるのではと怖れながらもその提案を受け入れ……。
コロナ禍のベルリン。若き研究者のパトリックはカフェで、ツェランを愛読する謎めいた中国系の男性に出会う。 “死のフーガ”“糸の太陽たち”“子午線”……2人は想像力を駆使しながらツェランの詩の世界に接近していく。 世界文学の旗手とツェラン研究の第一人者による「注釈付き翻訳小説」。 1 歌うことのできる成長 2 天使の素材からなるテクスチュア 3 傷つきやすい指 4 生命の樹をともなう小脳の虫 5 衝突する時間たち 6 ミイラの跳躍 訳者によるエピローグ 訳注 訳者解説(パウル・ツェランについて/詩集『糸の太陽たち』について/多和田葉子とツェラン)
著者は、40年以上にわたり、ヨーロッパの児童文学の舞台を訪ね、写真に収めてきました。現地を訪れ、撮影し、スライド上映会用にまとめたテーマは46タイトルにのぼります。今回は、『ブリジンガメンの魔法の宝石』、『オオバンクラブ物語』、「ヒルクレストの娘たち」などイギリス各地を舞台とする14作品を取り上げました。作品への愛情あふれる解説と貴重な写真で、物語の魅力に迫る1冊です。20年以上にわたり、東京子ども図書館をはじめ全国の図書館や文庫で「スライドとお話の会」と題し講演を行ってきた著者の記録をまとめました。2020年刊『世界の児童文学をめぐる旅』(エクスナレッジ)の続編。 まえがきにかえて/ブリジンガメンの魔法の宝石/銀の枝/オオバンクラブ物語/アルバム1『ロビン・フッドのゆかいな冒険』/地に消える少年鼓手/サティン入江のなぞ/海鳴りの丘/アルバム2『プークが丘の妖精パック』/かっこうの木/魔女とふたりのケイト/農場にくらして/アルバム3「ブルターニュに伝わるアーサー王物語」/古城の幽霊ボガート・ネス湖の怪獣とボガート/ヒルクレストの娘たち/『ドリトル先生航海記』との出会い/あとがき(張替恵子)/池田正孝年譜/スライドタイトル一覧
1985年11月、ネブラスカ州ガンスラム。鹿狩りの季節を迎えた田舎町で、女子高生ペギーが失踪した。当初は家出と見られたが、弟マイロは不審に思い、周囲に聞き込みをする。やがてペギーに好意を抱いていた知的障害のある青年ハルが鹿狩りの帰りに血が付いたトラックに乗っていたことから疑惑の目を向けられる。ハルの無実を信じて事件を調べる保護者代わりの中年夫婦、姉の行方を追うマイロ、何かを隠している町の人々とハル…様々な思惑の果てに浮かぶ真実とは?アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞作。
マリアンは、お手伝いの息子コネルとは幼馴染。惹かれ合い、周囲に内緒で付き合い始めるが、高校卒業前に別れてしまう。だが同じ大学に通うことになりーー。劣等感や社会格差、すれ違いで引き裂かれた男女の恋愛の機微を描く、全世界100万部超の傑作長篇小説
半世紀以上を経て娘が探し当てた亡き母の生 ロシアとウクライナの血を引くドイツ語作家が、亡き母の痕跡と自らのルーツを見いだす瞠目の書。 母エウゲニアは、著者が10歳のとき若くして世を去った。幼い娘が知っていたのは、母がマリウポリで生まれたこと、第二次世界大戦中、両親が強制労働者としてウクライナからドイツに連行されたこと、曾祖父が石炭商人、祖母がイタリア人だったらしいことくらい。母の運命を辿ろうとこれまで何度か試みたが、成果はなかった。ところが、2013年のある夏の夜、ふと思い立ってロシア語の検索サイトに母の名前を打ち込んでみたところ、思いがけずヒットする。ここから手探りの調査と驚くべき物語が始まる。 「ここ一年ほど悲しい姿ばかりが報道されたウクライナのマリウポリだが、その多文化都市としての輝かしい歴史と、そこに生きた作者の親族の運命が、この小説には知的なユーモアと息苦しいほどの好奇心をもって描かれている」(多和田葉子氏) ウクライナの船主、バルト・ドイツの貴族、裕福なイタリア商人、学者、オペラ歌手など、存在すら知らなかった親類縁者の過去が次々と顕わになり、その思いもよらぬ光景に著者は息を呑み、読者もそれを追体験する。忘却に抗い、沈黙に耳をすませ、失われた家族の歴史(ファミリーストーリー)を永遠にとどめる世紀の小説。ライプツィヒ書籍見本市賞受賞作。
ディーノ・ブッツァーティ没後50年、追悼出版第二弾 作家自身が編んだ最後の短篇集『難しい夜』の前半部分26篇を訳出! 三十年の時を経て、ついに全ての収録作品が邦訳される。 人里離れたアルプスの一角にある療養所で行われている驚くべき安楽死法を語る「誰も信じないだろう」、全人類の滅亡の可能性をSF的な奇想を用いて描く「十月十二日に何が起こる?」、一匹の野良犬の死がきっかけで中国とアメリカの核戦争が勃発する「ブーメラン」、美人コンテストに担ぎ上げられた障害のある少女の絶望が引き起こすカタストロフィ「チェネレントラ」、夢の中に入りこむ夜の巨獣の退治譚「ババウ」など、老いや死、現代社会の孤独や閉塞感といったテーマを、幻想とアイロニーと諧謔を織り交ぜたシンプルな文体で描く26篇。
ダメだ、もう何も考えられない。無念だ……。 緑の騎士、結婚、 聖杯探求、そしてランスロットとの友情と戦いまでーー アーサー王のもっとも忠実な騎士・ガウェインを彩るエピソードが、自身の語りによって蘇る。 ファンタジーの第一人者による傑作、待望の邦訳。 2022年11月25日、映画『グリーン・ナイト』公開! 1. 円卓の騎士たち 2. 石に刺さった剣 3. オウェイン卿と泉の貴婦人 4. ガウェイン卿と緑の騎士 5. ガウェイン卿の結婚 6. 無名の美男子 7. パーシヴァル卿 8. 聖杯探求 9. 聖杯 10. ランスロットとグィネヴィア 101. ランスロット追放 102. イングランドへの帰還 103. ガウェインの死 Postscript 原作者ノート あとがき
「俺は自分のすべきことをやるだけだ。他人にどう思われようと、関係ない」 その言葉に、杜紹宇(ドゥ・シャオユー)の心臓は高鳴る。 この一瞬のときめきが、三年後の今でもまったく冷めようとしない片想いのはじまりだったーー。 食品メーカーに勤める杜紹宇は、 ひょんなことから長年片想いしている同僚の童偉瀚(トン・ウェイハン)と一緒に通勤することに。 知られてはいけない想いを抑えながらも、紹宇は心ときめく日々を過ごしていた。 ある日、二つ星レストランの有名シェフ・高文競(ガオ・ウェンジン)のもとに二人で出向くことになったが 文競は偉瀚に並々ならぬ想いを持っているようで、紹宇の心はかき乱される。 一方、偉瀚も過去に仕事で助けてくれた紹宇のことが気になっていたが……。 台湾発人気ドラマ「We Best Love」の脚本を手掛けた林珮瑜がおくる、片想いから始まるオフィスBL。
書くことをめぐる無二の長編 「翻訳の仕事をしていると、たまに「自分が今までに訳したものの中で一冊だけ自分が書いたことにできるなら何か」と質問されることがある。そんなとき、私はいつだって「『話の終わり』!」と即答してきた。それくらい私にとっては愛着の深い作品だ」(本書「訳者あとがき」より) 語り手の〈私〉は12歳年下の恋人と別れて何年も経ってから、交際していた数か月間の出来事を記憶の中から掘り起こし、かつての恋愛の一部始終を再現しようと試みる。だが記憶はそこここでぼやけ、歪み、欠落し、捏造される。正確に記そうとすればするほど事実は指先からこぼれ落ち、物語に嵌めこまれるのを拒むーー ミランダ・ジュライなど下の世代の作家にもファンの多い「アメリカ文学の静かな巨人」デイヴィスの、代表作との呼び声高い長編が待望の復刊! デイヴィス作品三か月連続刊行第一弾。
ロザリーンの子供たちは、“緑の小径”近くのこの家から巣立っていった。司祭になると言って家を飛び出した長男ダンは、ニューヨークのアート界周辺を漂浪して久しい。次男エメットは、アフリカ各地で途上国支援に身を捧げている。一番上の長女コンスタンスは、夫と子供たちとの平凡だが穏やかな毎日を送っている。末っ子のハンナは、女優になったものの、いまは赤ん坊を抱えて休業中。そんななか、夫亡き後独りで暮らす母ロザリーンから4人にクリスマスカードが届く。我が家を売ることにしたという一文に驚き、これまで帰郷を避けてきた子供たちがクリスマスに久しぶりに勢ぞろいする。だがぎこちない距離感とそれぞれのわだかまりからたびたび小さな諍いに。たまらずロザリーンは車で出かけてしまうが…。自分の居場所はどこなのか。現代アイルランド文学の第一人者が精巧な筆致でリアルに描き出す、潮の満ち引きのように離れても引き戻す強い家族の愛と変化の物語。2016年度アイルランド文学賞受賞作。
サーガはここから始まった! 高校を卒業して自立のときを迎えた双子の兄弟を取り巻く貧困、暴力、薬物ーー。そして育ての親である祖母への愛情と両親との葛藤。全米図書賞を二度受賞しフォークナーの再来とも評される、現代アメリカ文学を牽引する書き手の鮮烈なデビュー作。 「デビュー作には作家のすべてがある」とはよく聞く言葉だが、本作はただ舞台が同一であるという以上に、後続の作品でも一貫して問われ続ける貧困、人種、格差といったテーマや問い、そして事物(人物、動物、植物、薬物)が描かれている。 (…)南部の黒人コミュニティが人種差別だけでなく階級的にも虐げられた存在であることは、カトリーナ後の政府の対応の酷さによりアメリカのみならず世界中が知ることになった。しかし、そもそもカトリーナ以前から南部の黒人たちが過酷な生を強いられていることを『線が血を流すところ』は痛烈に突きつける。その筆致に、一切の容赦はない。 青木耕平「狼の街(ウルフ・タウン)の慈悲深い神ーージェスミン・ウォードが刈り取れなかった男たち」より
アメリカの天才物理学者ルーカス・マルティーノは、自らが立案した極秘のK88計画の実験中に大爆発に巻き込まれ瀕死の重傷を負った。事故の起きた研究所が、連合国支配圏とソビエト社会主義国支配圏の境界近くにあったため、マルティーノはいちはやく現場に駆けつけたソビエト側の病院に収容されてしまう。そして3か月後、外交交渉の末、マルティーノは解放されることになる。だが国境線の検問所のゲートから現れたのは、卵型の金属の仮面をつけ、体のほとんどが機械で出来た、変わり果てた姿のマルティーノであった! 果たして彼は本物のマルティーノなのか、それとも別人なのか、本物であれば洗脳されているのではないのか、解放したソビエトの意図とは? 解放に立ち会った中央ヨーロッパ国境地区の保安責任者ショーン・ロジャーズは、様々な方法でこの人物の正体をつきとめようと試みるもののことごとく失敗に終わる。その後、新たにマルティーノの追跡調査担当者に任命されたロジャーズは、マルティーノをニューヨークに送り届け、彼を泳がせ、その行動を追跡することで正体に迫ろうとするが……。全編に緊張感をみなぎらせ、独特の抒情を漂わせつつ展開する、SF界の巨匠バドリスの代表的長編SFサスペンス。 【炉辺談話】 『誰?』(山口雅也) 誰?
Lafcadio Hearn's Kwaidan (which means "ghost story" in Japanese) is the first and most famous collection of Japanese yokai stories ever published. This unforgettable collection of 17 eerie tales and 3 original cultural studies by Hearn are based on traditional oral tales passed down for generations. They are fresh reminders of the dark and mysterious corners of the Japanese psyche, from popular representations in anime, manga and video games to Masaki Kobayashi's Oscar-nominated horror film Kwaidan. This new edition includes over 20 full-color woodblock prints that showcase the rich visual tradition of Japanese Yokai. A new foreword by Michael Dylan Foster, the leading Western expert on Yokai literature, places the stories in context and explains the lasting importance of Hearn's pioneering look at Japan's bewitching spirit world. 『Kwaidan』の改訂新版。「耳なし芳一」「雪女」「むじな」など、誰でも一度は聞いた事がある怪談17話に加え、ハーンが自ら書いた3作品を収録しています。新たに16ぺージのカラーイラスト、そして妖怪小説の専門家マイケル・ディラン・フォスターによる序文が加わりました。
横溝正史とA・A・ミルン。日英を代表する二大作家が翻訳と原作で夢のコラボレーションを果たす! 雑誌掲載のまま埋もれていた長編ミステリの翻訳が90年の時を経て初単行本化! 赤屋敷殺人事件 父を支えた猫たち犬たち 野本瑠美 解説 浜田知明
作家自身が見つめ、経験した、ナチスのチェコ侵略、「プラハの春」の挫折、そして「ビロード革命」。それら歴史の大きな出来事についての語りは、しかし奔放に、自在に逸脱し、メランコリーとグロテスクとユーモアがまじりあう中に、 シュールで鮮烈なイメージが立ち上がってくるーー 20世紀後半のチェコ文学を代表する作家、ボフミル・フラバルの傑作短編集。 魔笛 沈める寺院 公開自殺 幾つかのセンテンス 競馬の競走路での三本足の馬 グレイハウンド・ストーリー 「ホワイト・ホース」 十一月の嵐 人間の鎖 ぎりぎり
白亜の海岸で化石に混じって見つかった少年の骨。彼の死は肥沃な黒い土地を巡る悲劇の犠牲なのか……。有罪と無罪の間で苦悩する名探偵フォーチュン氏。 ブラックランド、ホワイトランド 訳者あとがき 解説 絵夢恵
1999年、あの超ベストセラーの映画化が決定! 主役の最終オーディションに残った少年二人それぞれの運命。 一人は約束された世界的スターの座に就くが、「もう一人のハリー」は⁉……選ばれなかったNo.2が20年後に見た光景は… 少年マーティンは両親の離婚に伴い、父の住むロンドンと母の住むパリを行き来しながら成長する。ある日、マーティンは父に連れられて行った撮影現場でプロデューサーの目に留まる。世界的大ベストセラーの映画化で主役を演じられるのか? だが、最終セッションで、もう一人の少年が主役に選ばれてしまう。マーティンの希望は潰え、いやでも自分の運命を「奪った」ライバルの栄光を見続け、挫折感に苛まれることになる。マーティンは人生を棒に振ってしまったのか? セカンド・チャンスはあるのか? 名作『ナタリー』の作家が描く選ばれなかった「ナンバー2」の物語。 目次なし 本文のほか、訳者あとがき