ジャンル : 外国の小説
イギリスにある海辺の町イルマーシュで、十六個の馬の頭が並べられているのが見つかった。グロテスクながらも美しいこの奇妙なオブジェは、これから町に起こる様々な災厄を告げるものだった……! 閉鎖された町で起こる不気味な事件を描く、戦慄のスリラー。
パリ郊外に住む13歳のクレオ。ダンスが大好きな彼女は、若者を支援する財団から奨学金のオファーを受けるが、選考委員の男から性的被害に遭う。だがその後彼女自身も周囲の少女を財団に勧誘する役目を自ら負い、何十年も罪の意識に苛まれーー。仏発の#MeToo小説
父親を亡くしたパーイが子供のころに出会った友達「クロン」。クロンはなぜかパーイにしか見えない「空想上の友達」だった。しかし、ある日クロンは忽然といなくなる。 失意のパーイだったが、それから22年の時が流れ、パーイは研修医となる。そして、ある日運命の出会いかのように初めて会った公園で再会する二人。 オトナになった二人は、お互い愛し合いつつも、それは空想上の世界だけにとどまらず、現実の世界までを侵食していくーー。 イラストは、「My Ride, I Love You」に続いて、楔ケリ先生が担当します!
日本漢文の粋を集め、平安期の時代思潮や美意識を知る上でも貴重な文献「本朝文粋」。その漢文の世界の深遠へと誘う格好の入門書。第七巻では、慶滋保胤、紀長谷雄による公的な文章、大江匡衡・藤原行成による書状の応酬、そして、源順による書序、大江朝綱の詩序など、全十一作品を収載、さらに作者略伝を付した。
抑圧された環境下でも協働して人間らしく生き延びようとしたアフリカン・アメリカンの歴史を、児童文学を手がかりにしてたどる。奴隷制度や人種差別の痛苦を描きながらも、そこから逆説的に浮かび上がる命の強さに焦点を当て、現代を生きる子どもに新たな視点と励ましを与える児童文学のポテンシャルを描き出す。
来るべき、台湾文学。 豊かな田園風景、碧い海と空、大きな太陽、賑やかな屋台ーー。 台湾の生活シーンを多様に描いた、近年の佳作十一作を収録する作品集。 陳思宏「ぺちゃんこな いびつな まっすぐな」 鍾旻瑞「プールサイド」 陳柏言「わしらのところでもクジラをとっていた」 黄麗群「海辺の部屋」 李桐豪「犬の飼い方」 方清純「鶏婆の嫁入り」 陳淑瑤「白猫公園」 呉明益「虎爺」 ワリス・ノカン「父」 川貝母「名もなき人物の旅」 甘耀明「告別式の物語 クリスマスツリーの宇宙豚」
田舎町に魚売りの娘として生まれ、ソウルにわび住まいする大学生ビトナは、病を得て外出もままならない裕福な女性に、自らが作り出したいくつもの物語を語り聞かせる役目を得る。少女の物語は、そして二人の関係は、どこに辿り着くのかーー。 ノーベル文学賞作家が描く人間の生。 サロメは「キティの話をしてよ!」と言い、「そのあとは、チョさんの鳩の話の続きをお願いね」と付け加える。 彼女はお茶をちびちびと飲む。左手が震え、右手はもう何の役にも立たないのか膝に置かれたままだ。サロメはわたしが目を凝らしているのを見てとり、ただこう言った、「これがわたしには何よりも受けいれにくいのよ」彼女はちょっと顔をゆがめて何かおもしろいことを言おうとするが、思いつかない。「毎日少しずつ死んでいくの、何かが去っていく、消えていく」 わたしは何も言わなかった、サロメのような人を慰めるのに言葉はいらない、憐れみもいらない。ただ、旅をさせるための物語があればいい。(本書より) わたしの名はビトナ。もうすぐ十八になる サロメに語られた最初の物話 二〇一六年四月 サロメは手を叩いた。目はきらきら光っていた そのころ、家の状況はさらにひどくなった サロメに語られた二つ目の物語 二〇一六年五月 午後もおそい時刻となり、日差しはもう しばらく前からサロメに会いにいっていなかった サロメに語られた三つ目の物語 二〇一六年七月 チョさんと鳩たちの物語の続き 二〇一六年八月 その話はここまで。今度はわたしの物語を話す時だ ある新米殺人者の物語 二〇一六年八月末 梅雨が突然到来して、豪雨が何度も街を通りすぎ しばらく前からサロメに会っていない、電話もしていない サロメに聴かせるチョさんの物語の結末 二〇一六年八月 梅雨のせいでサロメもわたしも疲れ果てた サロメに聴かせる女性歌手ナビの物語 二〇一六年九月 サロメに聴かせる二頭の龍の物語 二〇一六年十月末 1この日を境に、ナオミは二頭の〈龍〉のことをしきりに あのストーカーにまた会った こうした変わったできごとが次々と起きたあと レインボー橋を渡る、セヴランス病院にてサロメに聴かせる話 二〇一七年四月 わたしはビトナ、十九歳だ 訳者あとがき 語る、聴く、生きる
いまふたたび熱い注目を集める作家・都筑道夫が手がけた、翻訳にして創作“創訳”ミステリ小説3作品を一挙復刻! ・底本の書影/口絵を収録した巻頭カラー8ページ! ・底本の挿絵60点超を完全収録! ・生前の都筑道夫と親しく交流したミステリ作家・堀燐太郎によるエッセイを収録! ・ミステリ評論家・新保博久による50枚の入念な解説を収録! ・新保博久、平山雄一による詳細な註によって原書との異同を明らかにし、“ツヅキ流翻案術”を解剖する! エンタテインメント作家は、亡くなってしまうと、たちまち忘れ去られて、書店からも作品が消えてしまうのが宿命だ。(…)そんな風潮にあって近年、奇跡的なほど旧作の復刊、未刊行作品の初書籍化で快進撃を遂げているのが都筑道夫である。 (…)その二作(『魔海風雲録』『クレオパトラの眼』)以上にレアだった都筑著作は、児童向け翻訳書『銀のたばこケースの謎』『象牙のお守り』『火星のくも人間』の三冊である。それぞれ出版されたのが一回こっきり、児童書すべての常として所有者には大事に扱われず、すり切れ、棄てられ、幸運にも入手したマニアは大事がって手放さないから、古書市場にも出回らない。プレミア価格を払う覚悟を決めても、商品がないのだ。なんだ子供向けか、翻訳であってオリジナルではないんだろう、と都筑ファンであっても二の次に考えるかも知れない。だがこれらは見方を変えれば、改装版・再編集本を含めて三百冊になんなんとする都筑著作のなかでも特異というだけでなく、都筑氏本来の小説作法を窺ううえで重要な作品群なのである。 というのは、これらは翻訳といっても、横のものを縦にしただけではない。 (新保博久「解説 恐るべしツヅキ流翻案術の冴え」より) 銀のたばこケースの謎 「銀のたばこケースの謎」について 江戸川乱歩 象牙のお守り 火星のくも人間 センセーとボク 堀燐太郎 解説 恐るべしツヅキ流翻案術の冴え 新保博久
長篇小説を執筆中の作家ポール・オレロンは古い貸家に引越すが、忽ち創作は行き詰まり、作家は周囲に何者かの気配を感じ始める。邪悪なものの憑依と精神崩壊の過程を鬼気迫る筆致で描き、ブラックウッド、平井呈一らが絶賛した心理的幽霊譚の名作「手招く美女」。沈没寸前のガレオン船の前に霧の中から現れた謎の船の正体とは……超時間的な幻想譚「幻の船」。シチリアの富豪の娘が旅先のチュニスで英国青年と恋に落ち、同時に神秘的な人格の変容を経験する。エキゾティックな舞台に古代幻想が交錯する中篇「彩られた顔」など全8篇と、作者がその怪奇小説観を披露したエッセーを収録。英国怪奇小説の黄金時代に、精緻な心理主義と怪異描写、斬新なアイデアで新しい地平を拓いたオリヴァー・オニオンズの怪奇小説傑作選。 信条(エッセー) * 手招く美女 幻の船 * ルーウム ベンリアン * 不慮の出来事 途で出逢う女 * 彩られた顏 * 屋根裏のロープ * 解説 中島晶也 (*=本邦初訳)
流産した私を見捨てたあなたに、 こんな形でふたたび会うなんて……。 老舗宝飾ブランドのオーナー、ダニエルに見初められ、 幸せの絶頂にあったミアは、一瞬ですべてを失った。 彼に長年の婚約者がいることを知り、ショックで流産したのだ。 だが泣き暮れている彼女に、医師は驚くべき事実を告げる── 赤ん坊は双子で、一人だけは無事に育っていると。 ダニエルには頼れない。独りで産もう。ミアはそう決めた。 2年後。仕事で偶然、彼のブランドの商品を預かったミアは、 宝石泥棒と間違われ、ダニエルの前に突きだされてしまう。 「大事な娘が発熱して慌てていただけなのよ。娘の父親は……」 人気のアビー・グリーンが描く、珠玉のシークレットベビー・ロマンス! 身分違いと知りながら、ヒーローに身も心も捧げてしまったヒロイン。愛娘を守るため、便宜結婚の提案を受け入れますが、ヒーローがある日、ふと漏らしたひと言に深く傷ついて……。
あなたがすべてを思い出したとき、 わたしの恋は終わってしまうの? ジョセリンは父に言われるがまま、金の瞳の美貌のイタリア富豪 チェンツォと結婚した。そして彼の所有するシチリアの古城で 衝撃的な話を聞かされる。 「きみと結婚したのは、きみの父親に仕返しするためだ」 夫はわたしを手籠めにするつもり? だが城に着いたその日に、 チェンツォは石段を踏み外して頭を打ち、記憶喪失に陥る。 これは天の恵みよ。ジョセリンはいたずら心から彼に告げた。 「チェンツォ、あなたはわたしが雇った“召使い”なの」 かくして、彼女と大富豪の花婿との奇妙な結婚生活は始まった。 やがてヒーローは“奥様”が気になりだして、こんなところに彼女を放っておく“夫”とはどんな男なのか? 身分の壁を越えて奥様を手に入れたいと思うようになり……。ユニークな設定で読者を虜にする、大人気作家ケイトリン・クルーズの筆が冴える1作です!
私は愛されていない。辛い事実を知ったとき、 彼女の内には小さな命が宿っていた。 クラウディアは3歳で母を亡くし、16歳まで修道院で育った。 21歳で過保護な父から逃れ、一人暮らしを始めた矢先、 チーロ・トラパニと名乗る長身のセクシーな富豪が訪ねてきた。 以前この家に住んでいたというチーロとはなぜか話がはずんだ。 クラウディアは彼の虜になり、2カ月後、二人は結婚した。 だが幸せな日々はあっけなく消え去る。 彼がプロポーズしたのは私を愛しているからではなかった……。 クラウディアは孤独と絶望のなか、家を出た。 妊娠に気づいたのはその直後でーー。 人気急上昇中! アメリカ本社発、ダイバーシティーー多様性ーーを打ち出した設定の秀作をお贈りします。読み書きができない障がいをもつヒロインにはなんと一度聴いたことを一語一句記憶できる特殊能力がありました。優れた特性を生かしてヒーローを翻弄するヒロインにご注目ください。
いつも意地悪だった初恋相手の兄。 なのになぜ、彼を求めてしまうの……? ポピーの初恋相手は、いとこのクリスだった。 幼いころは、彼の兄ジェームズが大好きだったが、 思春期になり、優しいクリスに淡い恋心を抱くようになると、 それに気づいたジェームズは、ひどく冷たく、意地悪になった。 大人になり、ポピーの初恋はクリスの結婚で無残に散った。 ほどなくして上司でもあるジェームズの出張に同行したポピーは、 あるささいなきっかけで、彼の腕に抱かれてしまう。 思いがけず、クリスには感じたことのない情熱をかきたてられ、 ポピーはみずからジェームズを求め、純潔を捧げた。 その一夜で身ごもってしまうとは、思いもせずにーー。 大作家ペニー・ジョーダンによる、読み応えたっぷりの初恋物語をお贈りします。ジェームズによって激しい情熱を知ったポピー。けれど彼から愛されてはいない……。そう信じる彼女に妊娠という事実が追い討ちをかけ、苛むのです。
愛を返してくれない富豪に、 悲しいほどときめいてーー トスカーナのワイナリーを父親と切り盛りしていたマルシアは、 元婚約者に資金を持ち逃げされ、絶望のどん底に突き落とされた。 経営難に陥ったワイナリーを家屋敷ごと買い取り、 引っ越してきた新オーナーは、アメリカの大富豪トレイス。 マルシアは1年間、彼の下で働くことになった。 ワイナリーの付属品として買われたも同然の状況だったが、 自分のせいで家族が失業し、住む家を追われたという罪悪感から、 マルシアは身を粉にして働き、夜はトレイスに料理もふるまった。 しかしある夜、ふいに唇を奪われた瞬間、否応なく気づいてしまう。 ひとつ屋根の下で暮らすには、彼は魅惑的すぎるということに。 互いの魅力に抗いきれず、ついに結ばれた二人。しかしトレイスは、マルシアの家族の再出発に尽力してくれる一方で、突然心を閉ざします。じつは彼には、愛に挫折した悲愴な過去があって……。孤高の富豪と買われた乙女の、甘く切ないシンデレラ・ロマンスです。
看護師のクリスティはスペイン人の夫アレッサンドロと別居中。ハンサムで有能なドクターである彼を愛しているけれど、彼が仕事ばかりで家庭を顧みないことに耐えられず家を出たのだーまだ愛があるのなら、追いかけてきてくれると淡い期待を抱いて。しかし彼が現れるのを待つうち、一緒に連れてきた子供から家族全員で過ごしたいとせがまれ、やむなく家へ帰ることにした。みずから戻るのは本意ではなかったものの、夫との久々の再会に、クリスティは胸を高鳴らせた。だが、アレッサンドロは彼女の荷物を客用の寝室へ運ぶと、冷たく言い放った。「ここが、きみの部屋だ」
土埃だらけの服の下には、 隠しきれない玉の肌と、美しい曲線。 海軍で輝かしい戦果を残した後に負傷して帰郷した、 第10代ライブンホール伯爵マックスは、世を儚んでいた。 ある日、領地を馬で駆けていると、奇妙なものが目に入った。 男物のズボンに包まれた尻がもぞもぞ動き、しきりに何かを掘っている。 何やつ、盗賊か? 鋭い声で呼び咎めると、男ははっと顔を上げた。 眼鏡越しに見開いた大きな丸い目、麻のシャツの開いた胸元ーー女か? 「伯爵さま、どうか怒らないで。古代遺物を発掘したいだけなんです」 エフィは近くに住む天涯孤独の若い女性で、歴史が好きなのだと言う。 失せろと命じたが、彼女は夜中にこっそり領地に入ってきているようだ。 女性が夜に一人では危険だ! マックスはつい手を差し伸べてしまいーー。 新作家ヴァージニア・ヒースの登場です。傷ついた心身を持て余し隠遁する伯爵ヒーローと男装のヒロイン。女性として見られたことがないエフィにとって、恋愛や結婚は夢物語でした。でも伯爵は、彼女のズボン姿を好ましくさえ思っているようで……?
(「悪魔」に「サタン」とルビ付ける) 侯爵様がたとえ★悪魔/サタン/でもかまわない。 わたしはサタンの花嫁になりたい。 質素を好む厳格な叔父に育てられ、その教えを忠実に守るアネリス。 ある日、彼女にはセントジョン侯爵という後見人がいるとわかり、 住み慣れた村からロンドンに出て、レディ教育を受けることになった。 屋敷に着き、現れた侯爵を見て、アネリスは息をのんだ。 村で偶然知り合って、つい心を奪われた王党派の人。 世にも美しい瞳のあの方が、わたしの後見人だったなんて! 叔父によれば、贅沢を好む王党派は皆、悪魔ーーサタンの弟子だという。 そんな考えも、アネリスの恋心を消し去ることはできなかった。 やがて魅惑的なレディに変身した彼女は華やかな宮廷生活に飛び込む。 しかし国王たちの注目を引くも、愛する侯爵だけは彼女に厳しくて……。 清貧であれと育てられたアネリスは華やかな社交界に戸惑いつつも、まるでシンデレラのようにレディとして花開きます。それなのに侯爵は彼女に厳しいだけでなく、彼には美しく洗練されたフランス人女性の恋人までいることがわかり……。アネリスの初恋の行方は?