ジャンル : 外国の小説
【ネビュラ賞・ローカス賞受賞作】 言語の力が世界を支配する ふたつの言語における単語の意味のずれから 生じる翻訳の魔法によって、 大英帝国が覇権を握る19世紀ーー 秘密結社ヘルメスは帝国に叛旗をひるがえす。 銀と、ふたつの言語における単語の意味のずれから生じる翻訳の魔法によって、大英帝国が世界の覇権を握る19世紀。英語とは大きく異なる言語を求めて広東(カントン)から連れてこられた中国人少年ロビンは、オックスフォード大学の王立翻訳研究所、通称バベルの新入生となり、言語のエキスパートになるための厳しい訓練を受ける。だが一方で、学内には大英帝国に叛旗を翻す秘密結社があった。言語の力を巡る本格ファンタジー。ネビュラ賞、ローカス賞受賞作。
友情と相剋、そして青春の終わり 極東では大英帝国と清朝政府が戦争の瀬戸際にーー 中国が持つ膨大な銀を手に入れ、 銀の魔法を用いた支配を確立せんとする 帝国を止める術はあるのか? 世界二十カ国で翻訳のベストセラー バベルが供給する、銀を用いた魔法によって世界を支配する大英帝国。通訳として広東を訪れたロビンたちは、イギリスが阿片貿易を口実に清朝政府に戦争をしかけ、中国が持つ膨大な銀をわがものにしようとしていることを目の当たりにする。そしてロビンは、後戻りのできないひとつの決断をする。帰国したロビンたちは、戦争を食い止めるべく奔走するが……言葉の力を巡る本格ファンタジイ。ネビュラ賞、ローカス賞受賞作。
囲碁は物語を内包しながら『西遊記』を意味論の世界へと導くー。 7世紀の中頃に遥かインドまで仏教の教義を求めた三蔵法師玄奘、その旅を題材にした『西遊記』は、お馴染みの孫悟空や沙悟浄、猪八戎らが活躍する伝奇物語として知られている。 しかし全100話のこの物語を注意深く読むと、三蔵法師一行の存在や関係性など至る所に囲碁を思わせるような記述があることに気づくー。 前著『日本将棋と西遊記』に続き、盤・石・ルールという囲碁の構造が物語のなかで不思議なほどに象られ類似するその謎を、仏教や易をはじめとする東洋思想を背景に数学の力も借りながら解き明かした、囲碁が誘う構造論的『西遊記』への旅。
『僕らはとびきり素敵だった』 (原著:How Beautiful We Were、Imbolo Mbue著、2021年3月、Random House社) 目次 スーラ ⼦供たち ボンゴ ⼦供たち サヘル ⼦供たち ヤヤ ⼦供たち ジュバ ⼦供たち 訳者解説:粘り強い文学 《登場人物》 スーラ:コサワ村の少女 マラボ:スーラの父 サヘル:スーラの母 ボンゴ:マラボの弟 ヤヤ:マラボの母 ジュバ:スーラの弟 ルサカ:スーラの同級生の父親 ウォジャ・ベキ:コサワ村の村長 コンガ:コサワの狂人 ジャカニ:双子の霊媒師 サカニ:双子の治療師 〈リーダー〉:ペクストンの社員 〈病気の人〉: ペクストンの社員 〈丸い人〉: ペクストンの社員 フィッシュ:ペクストンの上級監督 オースティン:新聞記者。〈病気の人〉の甥 〈いけてる人〉:コサワ回復運動のスタッフ 〈かわいい人〉:コサワ回復運動のスタッフ
中国出身、中国在住、中国人が書いた、日本語の歴史小説! 盛朝は去って逝き、詩意だけが残る。 外に異族の馬蹄が関門を叩き、内に梟雄の陰謀が波瀾を起す。 将軍の銀刀が斬り下ろし、踊子の双剣が舞い上がる;毒姫が花雨を撒き散らし、刀者が血路を切り開く。 国の危機を誰が救え、江湖の紛争を誰が収める? 内容について 中国では「武俠小説」というジャンルがあり、日本では最も近い概念は「時代小説」となる。 物語の舞台は「武林」或いは「江湖」と呼ばれる武術に長ける者たちの世界、テーマ主に正邪の争いだ。 中国語で最も知られる武俠小説家は金庸と古龍、子供の頃からこの二人の先生の作品を楽しんできた。 そして中国には「布袋劇」という芸能があり、現在最も有名なのは台湾の霹靂布袋劇と金光布袋劇だ。 霹靂と金光の物語は武俠世界に基づいて、ファンタジー要素を加え、布袋劇の人形もアクションシーンを上手く表現できて、初めて観るとすぐに惚れた。 それ故、初めて書く日本語の小説は、金庸の語彙を古龍の構文で繋げ、布袋劇の様な物語を作りたいと思う。 ペンネームについて 昔Lang-8という言語学習サイトがあり、そこでshiiという名前の日本人と出会った。shiiさんは優しくて中国語が上手くて、いつも日本語の記事を添削してくれる。だが悲しいことに、ある日shiiさんは予兆もなくいなくなった。 そして数ヶ月や一年経ち、shiiさんは突然namikiという名前に変わって復帰し、あの時は本当に大喜びだった。しかしまた数ヶ月や一年経った時、namikiさんはまた消えてしまい、しかも今回はLang-8がサービス停止までも二度と戻っていなかった。 恐らく二度と会えない我が最も親しい外国の友人を記念するために、あの人が使った二つのハンドルネームを合わせて自分のペンネーム「椎名未聞(しいなみき)」を作った。 漢字は「しいさんの名を未だに聞いておらぬ」という意味になってしまうが、別に中の人の情報を取得するなど違法行為をするつもりはなく、ただ大好きな歌詞が歌う通り、「今でもあなたは私の光」、と言いたい。 本小説は、mogumogu、Tina、minoli、ジュライの四名の方に添削して頂きました。謹んで感謝致します。誠にありがとうございました。
詐欺まがいの投資話でエマやアンから恨みを買うウィカムが、パーティの最中に殺された。キャサリンの娘とエリザベスの息子が嵐で閉ざされた館で起きた怪事件に挑む! 『高慢と偏見』『エマ』『説得』……オースティン作品の登場人物が織りなす正統派ミステリ
資本主義の進む近未来のアメリカで、刑務所の囚人たちに釈放をかけて殺し合わせる「スポーツ」が誕生した。サブスクリプション配信される彼らの死闘とその終わりに、多くの人々が熱狂する……。 『フライデー・ブラック』の著者が、人種差別や消費社会を痛烈に皮肉る、文芸×SF×エンタテインメントの衝撃長篇! ニューヨーク・タイムズ紙の年間のベスト10に選出された、 全米図書賞最終候補作、アーサー・C・クラーク賞最終候補作。 スティーヴン・キング絶賛! 原題:CHAIN-GANG ALL-STARS 【著者略歴】 Nana Kwame Adjei-Brenyah ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー ガーナ移民の両親のもと、アメリカのニューヨーク州スプリング・バレーで育つ。ニューヨーク州立大学オールバニ校を卒業し、その後シラキュース大学でジョージ・ソーンダーズらに学び、MBA(芸術修士)を取得した。 デビュー作の短篇集『フライデー・ブラック』(押野素子訳/駒草出版)はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリスト入りを果たし、PEN/ジーン・スタイン賞およびウィリアム・サローヤン国際文学賞を受賞した。 また初の長篇小説である本書『チェーンギャング・オールスターズ』は全米図書賞とアーサー・C・クラーク賞の最終候補作に選ばれたほか、2023年ニューヨーク・タイムズ紙の年間のベスト10冊に選出された。 現在はニューヨーク市ブロンクス区在住。 【訳者略歴】 池田真紀子(いけだ・まきこ) 1966年東京生まれ。上智大学卒業。1997年アーヴィン・ウェルシュ『トレインスポッティング』(角川文庫、その後ハヤカワ文庫NV)でBABEL国際翻訳大賞新人賞を、2024年ジョセフ・ノックス『トゥルー・クライム・ストーリー』(新潮文庫)で日本推理作家協会賞翻訳部門を受賞。そのほかジェフリー・デイーヴァーの『ボーン・コレクター』(文文春文庫)をはじめとするリンカーン・ライムシリーズ、チャック・パラニューク『ファイト・クラブ』(ハヤカワ文庫NV)、スティーヴン・キング『トム・ゴードンに恋した少女』(河出文庫)など訳書多数。
アフリカにある動物たちの王国ジダダは、植民地支配から民を救った建国の父オールド・ホースの政権誕生40周年を迎えた。だが、ジダダの民たちは気づいている。この栄光の影で犠牲となる者たちの声を。ブッカー賞最終候補に選ばれたジンバブエ版『動物農場』。
『失われた時を求めて』は幾重もの謎に包まれている。──長篇はいかに誕生したのか? 対比されているのはスワン家とゲルマント家なのか? ヒロイン・アルベルチーヌはなぜ捉えどころがないのか? 「私」という一人称の仕掛けとは?──小説と批評を総合した希有なる作品の隠された構造を、草稿研究の先駆者が精緻に読み解く。 まえがき 第一部 大長篇誕生の謎 第一章 まぼろしの初稿の発見──「七十五枚の草稿」を読む 第二章 小説と批評の総合──『サント=ブーヴに反論する』の未完の構想 第三章 増殖する長篇──終わりなき加筆をたどる コラム1 レオニ叔母の「椎骨」──ジッドによる出版拒否 第二部 作品の構造をめぐる謎 第四章 社交界に君臨する人びと──貴族・ブルジョワ・ユダヤ人 第五章 ジュヌヴィエーヴ・ド・ブラバンの幻灯──コンブレーとゲルマントをつなぐ伝説 第六章 画家ベノッツォ・ゴッツォリ──「コンブレー」から『囚われの女』への四極構造 コラム2 フロイトの時代──スワンの「夢」を分析する 第三部 芸術と芸術家をめぐる謎 第七章 キク、乃木将軍、浮世絵、水中花──ジャポニスムへのまなざし 第八章 ギリシャの彫刻とエジプトのミイラ──偶像崇拝と分身について 第九章 作中の芸術家たち──エルスチールを中心に コラム3 厳寒のパリにプルーストとモローを訪ねる 第四部 恋心と性愛をめぐる謎 第十章 情熱と冷静──恋心を語る自由間接話法 第十一章 ジッドとプルーストの対話──『コリドン』から『ソドムとゴモラ』へ 第十二章 「サディストは悪の芸術家である」──ヴァントゥイユ嬢の純粋さ コラム4 ニジンスキーの跳躍──作家の見たバレエ・リュス 第五部 作家の方法をめぐる謎 第十三章 パリの物売りの声──フィクションか批評か 第十四章 ゴンクール兄弟の「未発表の日記」──文体模写とフェティシズム 第十五章 第一次大戦下のパリ──反リアリズムの方法 コラム5 プルーストの墓(二〇二二) 終 章 深まる謎コラム 『失われた時を求めて』の梗概 初出一覧 あとがき 注 参考文献一覧 図版出典一覧 人名索引
内気な公爵令嬢・マクシミリアンは父の命令で、下級騎士・リフタンと政略結婚をすることに。 そうして二人は一夜を共にするが、翌朝には彼の姿はなく、出立の言葉も告げずにドラゴン討伐に出征したあとだった。 それから3年、いよいよ彼が帰ってくると知ったマクシミリアン。 ところが大陸中に名を馳せる英雄となったリフタンに王女との新たな縁談話が持ち上がっていた! 美しくもなく、何の取り柄もない自分など、離縁されるだろうーー ところが、戻ってきた彼はマクシミリアンに予想もしなかったことを告げ!? わたしのすべてを、愛してくれますか? 話題の“じれキュン”ロマンスファンタジー登場!
ユーゴスラヴィアの作家ダニロ・キシュの代表作。 ボルヘスの『汚辱の世界史』への「対本」としてーーオマージュとして、かつアンチテーゼとしてーー構想された7つの連作短編集。 スターリン時代の粛清に取材しながら、全体主義社会での個人の苦闘を描く。 ボリス・ダヴィドヴィチのための墓 紫檀柄のナイフ 仔をむさぼり食らう雌豚 機械仕掛けのライオン めぐる魔術のカード ボリス・ダヴィドヴィチのための墓 犬と書物 A・A・ダルモラトフ小伝(一八九二ー一九六八) 訳者あとがき
明末清初の中国に、途方もない批評家が現れた! 金聖嘆ーーその無謀で繊細なフォルマリズムに導かれ『水滸伝』を読み解き、導き手に肉薄して、小説批評の起源と変奏を描破する。著者が生死を賭けて文学=批評の根源へ挑む絶後の達成。 《荘子》《離騒》《史記》《杜(甫)詩》、小説《水滸伝》、戯曲《西廂記》を〈六才子書〉と呼び論じた、文芸批評家・金聖嘆。その金聖嘆が、元々120回だった《水滸伝》を70回にまで削った「70回本」は、後世にも大きな影響を与えた。金聖嘆の『水滸伝』読解法をもとに、さらに本作を精緻に読み込んでいく。それに加えて、『水滸伝』から派生した『金瓶梅』を同様に分析。日本の文芸評論の世界に、新たな地平を切り開く一冊。 序文 「解剖学」と「愛」にむけて 第一章 好漢たちの「注定(さだめ)」 第二章 作品は誰のものか? 《水滸》是因文生事︱金聖嘆 第三章 聖嘆批評の「モダニティ」 第四章 亜流論ー『金瓶梅』と張竹坡 付章 『水滸伝』「読法」についてー「文法十五則」 主要引用(参考)文献一覧 あとがきー「私情」の方法化
稀代の作家高橋昌久氏による「マテーシス古典翻訳シリーズ」第11弾は、アンドレ・ジッドの「大地の糧」です。本作はジッドがまだ三十にならぬ、まだ若さを有していた頃の作品で、若者の作品と言えるだろう。技法や思想として円熟は見られないが、中庸を知らぬ獅子が粗々しさを省みずただ猪突に猛進していく様は読み手に大きな印象を残すだろう。少なくとも代表作であり技法的には円熟したであろうが何処かなよなよした『狭き門』よりも遥かに好感が持てる作品である。 凡例/訳者序文/第一書(1、2、3)/第二書/第三書/第四書(1、2、3、4)/第五書(1、2、3)/第六書/第七書/第八書/エピロゴス
作家・哲学者の高橋昌久氏による「マテーシス古典翻訳シリーズ」第15弾は、『カルメン』で知られるフランス人作家プロスペル・メリメによる、ナポレオンの故郷としても知られるコルシカ島を舞台とした作品『コロンバ』です。今回も氏本人が原典より翻訳したものを収録しています。 凡例/訳者序文/一/二/三/四/五/六/七/八/九/十/十一/十二/十三/十四/十五/十六/十七/十八/十九/二十/二十一
作家・哲学者の高橋昌久氏による「マテーシス古典翻訳シリーズ」第17弾は、ルートヴィヒ・ティーク著『ブロンドのエックベルト』、『人生の余剰』です。『人生の余剰』は本邦初翻訳です。 凡例/訳者序文/ブロンドのエックベルト/人生の余剰/エピロゴス
大富豪の彼に不可能なことはないーー ただ一つ、誰かを愛することを除けば。 ある雨の日、歩道で転んで頭を打ち失神したネルは、 目を覚ましたとき、銀色の瞳を持つ美貌の男性に手を握られていた。 あなたは誰……? ネルを助けてくれた長身の逞しい彼の名は、 アリストパネス・カツァロス。ギリシア大富豪にして、 ヨーロッパ最大の金融会社CEOだった! たちまち彼に心奪われ、 一夜限りと知りつつ、ネルは身を捧げた。翌朝、彼の姿は消えていた。 3カ月後、ネルは妊娠したと伝えるため彼のオフィスを訪ねた。 「赤ん坊と一緒にぼくの家で暮らすんだ」甘い囁きの裏に隠した 彼の真意はネルには想像もできなかったーーネルを愛せないが、 “愛されているような気分にさせればいい”と彼が考えているとは。 誰も愛さないと豪語し、肉欲解消のため週2日愛人と過ごしてきたヒーロー。人を愛せない彼ははたして、生まれ来る赤ちゃんを、そしてヒロインを、いつか愛せるようになるのでしょうか? 人気沸騰中、J・アシェンデンが綴る〈億万長者と運命の花嫁〉第2話!
あの雪の夜、私は愛されたと思った。 でも結婚後、彼の愛はどこにもなかった。 レクシーは生活保護を受けながら三つ子の赤ん坊を育てていた。 けれど今の家も出ていかなくてはならなくなり、 子供たちの父親であるギリシア富豪ニコに助けを求めた。 雪の降る夜、横転した車から助けてくれたニコに私は惹かれ、 純潔を捧げて身ごもった。けれど妊娠を知らせようとしても、 彼からはそのたびに拒絶され、捨てられたのがわかっただけだった。 ニコは1年半ぶりに姿を現したかと思うと、子供を両親のそろった 家庭で育てたいからとレクシーに結婚を申しこんだ。 同時に、なぜか彼女が妊娠を知らせなかったと怒りに燃えていて……。 大評判のミニシリーズ2部作〈エーゲ海の富豪兄弟〉の第2作をお届けします。子供を飢えさせないために、ヒロインはヒーローとの結婚を承諾するしかありませんでした。たとえ彼から“妊娠を知らせなかったひどい女”とさげすまれる日々が待っていても……。
シンデレラに靴はいらない。 探しているのは愛だけ。 「助けて! 雇い主に私たちの赤ちゃんを奪われそうなの!」 教会に駆け込んだ身重のスカーレットは、花婿に向かって叫んだ。 祭壇で花嫁と誓いのキスを交わす寸前の富豪ヴィンが振り返った。 8カ月前、スカーレットは彼と出会った瞬間に恋に落ち、 純潔を捧げた翌朝、彼の身分を知って名前も告げず姿を消したのだ。 まさかヴィンの子を身ごもっていようとは思いもせずに。 辣腕実業家らしくヴィンはその場で政略結婚を取りやめると、 彼女を追ってきた雇い主を叩き出し、子のDNA鑑定と婚前契約を 要求した。この人に愛はないの? これはビジネスじゃないわ! 憤然とするスカーレットを、ヴィンは傲慢にも腕にかき抱き……。 感情が豊かで一途に愛をそそぐヒロインの登場で、冷酷無比なヒーローが振り回され、仮面がしだいに剥がれていく様子を、ジェニー・ルーカスがドラマティックに描きだします。ときにコミカルで、ほろりと涙も誘う、出色のロマンスをお楽しみください。
田舎の冴えないウエイトレスが、 一度のキスで富豪の妻になるなんて。 高級リゾートホテルでウエイトレスとして働くエリー。 ある夜、顧客の富豪アレックの話し相手を務めるうちに、はずみで キスを交わし、運悪く、ゴシップ紙の記者に見られてしまう。 “ギリシア富豪と貧しいウエイトレスの密会”は瞬く間に広まった。 罠にはめられたと誤解したアレックは怒り、エリーをくびにさせ、 それでも収まらず、家に押しかけて彼女をベッドへ組み敷いた。 エリーは拒めなかった。じつはずっと彼に惹かれていたのだ。 だが数週間後、事態は急変する。どうしよう……妊娠するなんて! おなかの子を、私と同じ婚外子として産み育てるのはつらすぎる。 エリーはアレックにすがって懇願した。「お願い、私と結婚して」 婚外子として厳しい人生を送ってきたヒロイン。絶対に母と同じ轍は踏むまいと頑張っていた矢先、ヒーローとのキスがきっかけですべてが一変することに。契約結婚でありながら、一日でも長く続きますようにと願ってしまうヒロインの切ない心情が胸に沁みます。
言いたいのに、言えないーー 私はあなたの子を育てている、と。 サディは勤務する病院に赴任してきた医師ローマンを見て凍りついた。 11カ月前に出張したウィーンのホテルのバーで出逢った男性だ。 あの日はバレンタインデーで、サディはバーのお祭り騒ぎをよそに、 カウンターで独り、恋人の裏切りに遭った心の痛手を癒やしていた。 一方の彼もまた、愛や恋には無関心な様子で独りで座っており、 自然と惹かれ合った二人は、名前さえ告げずに一夜をともにした。 今、互いの名前はわかったが、サディにはまだ彼に伝えるべきことがーー あの夜のあとに彼の子を宿したことに気づき、産み育てているのだ! でも、早くも理想のデート相手として注目の的になっているローマンに、 なかなか打ち明けることができなくて……。 メディカル・ロマンスが得意なJC・ハロウェイが、大人気のシークレットベビー物語で華々しく日本デビュー! 自分は不妊症だと思って恋に後ろ向きだったヒロイン。けれども、女性の視線を釘づけにする魅力的なヒーローにもまた、恋愛を避けてきた理由が……。