出版社 : クオン
心の平和を望み、孤独になりたくない「僕」らが畏怖するのは、ただの乱暴者なのか、それとも孤高の存在なのかーー ことあるごとに暴力で周囲を威圧する不良グループのリーダー・ギピョ、クラスの秩序を保とうとする担任教師、そして級長ヒョンウ。各者の対立と葛藤を見守る高校二年生のユデが視点人物だ。 中学・高校で19年間にわたって国語教師を務めた作家による、学校を舞台にしたアイロニカルな物語。 【韓国文学ショートショート きむ ふなセレクション】 翻訳家きむ ふなが今お勧めする作家の深い余韻と新たな発見を感じさせる短編を 日本語と韓国語の2言語で読むことができるシリーズです。 韓国語の朗読をYouTubeで聴くことも可能です。
人生をやり直そう。糸をほどきさえすれば何にでもつくり直せる編み物のように。 三十歳を過ぎ、ミュージシャンの夢を諦めた「あたし」。ある日、育ての親であるおばから自分が経営する編み物店の店番をしてほしいと頼まれやむなく帰郷する。 都会を離れ、希望もやる気も失いつつあった主人公が故郷で見つけたものは。 【韓国文学ショートショート きむ ふなセレクション】 翻訳家きむ ふなが今お勧めする作家の深い余韻と新たな発見を感じさせる短編を 日本語と韓国語の2言語で読むことができるシリーズです。 韓国語の朗読をYouTubeで聴くことも可能です。
大海原で 知を詠い、人を詠う チャン・ソクは、かつて森の若いクヌギだった炭の声で宇宙を語り、 錆びた釘とひずんだ板のかたい抱擁に自らの死を哲学し、 生の全貌にふりつもる初雪の下に〈愛〉を探す。 彼の詩を読むと、自分の詩がいつしか忘れていたものが 見えてくる。まだ間に合うだろうか。 もう一度最初から書き始めよう。 ーー四元康祐 一部 風が吹いてくる 散らばれ 二部 すべての宇宙がわたしの背後だ 三部 おいしいひとになります 四部 つぶれて踏みにじられた血の跡 五部 波はおのれの道をゆくもの 解説 紅梅の銀河にひびく人間の歌(四元康祐) 訳者あとがき 作品一覧(原著掲載順)
戦争の暗雲は平沙里にも漂っている。母の家を逃げ出してきた南姫は心身ともに病んでいた。成煥の祖母は成煥の出征を知って失明してしまう。允国は戦地に出発し、還国はひどくやつれた母の姿に衝撃を受ける。李府使家の民雨も日本で行方をくらました。もはや親日派すら何の力もなく、禹介東は面事務所を解雇され、ハイ雪子には悲惨な結末が待っていた。他方、栄光は仁川に良絃を訪ね束の間の逢瀬に喜びを得るが、二人の未来を信じられない。麗玉はソウルに来た翔吉に自らの決意を伝え、緒方は父親と名乗れないまま荘次と満州への旅に出る。女学校四年生になった尚義は日本人教師の理不尽な振る舞いに敢然と立ち向かう。
弘を頼ってハルビンに行った栄光は、独立運動に関わり父と親しかった錫、良絃の実父・相鉉らと出会う。栄善は智異山の家に母が来たことで、兄の満州行きを知る。西姫は仁川の良絃を気遣い、平沙里の屋敷に連れ戻した。永八が死んで平沙里の来歴を知る人も少なくなり、代々続く家同士の因縁も新しい世代に払拭されていく。南姫は延鶴の配慮で晋州の参判家に身を寄せ、尚義は女学校を卒業した。自分の意思が希薄だった人生を悔やみ、明姫は周囲を驚かせる行動に出る。それを機に集まった海道士やカンセら山の男たちは、スパイを捉えたとの知らせに緊張感を高めた。そうした中、とうとう皆が待ち望んだ日を迎える。
日常にひそむ不安や欲望、家族の中で抱く孤立感。生きあぐね、もがく女たち。現代女性文学の原点となった呉貞姫の作品集。朝鮮戦争を体験した著者の幼少期が反映された「幼年の庭」「中国人街」のほか、三十代の内面の記録だという六編を収録。繊細で詩的な文章は、父の不在、家族関係のゆがみ、子どもや夫への愛情のゆらぎに波立つ心を描き出す。それは時代の中で懸命に生きる人の肖像でもある。
日本の敗色は今や隠しようがなく、朝鮮でもすべての物資が欠乏している。キリスト教徒の一斉検挙で投獄された麗玉は釈放されたものの、その凄惨な姿に明姫は衝撃を受けた。栄光への愛と、兄嫁との葛藤に苦しむ良絃は医師となって家を出た。晋州で寮に入り高女に通う尚義は、天皇主義者の教師に反発する内向的な少女に成長している。統営では趙俊九が醜い様で生涯の幕を閉じ、モンチは周囲の心配をよそに子持ちの寡婦媌花に求婚する。任明彬は静養のために智異山を訪れ、輝は徴用を避けて山に戻った。独立運動に関わる若者も山に逃れてきたが、過激なことを企んでいるのではないかと海道士は警戒の目を向ける。
私たちは共に、絶えず声を上げ、お互いを思いやり、しっかりと手を携えて生きていける。韓国SFの話題作『となりのヨンヒさん』著者、チョン・ソヨンによる初の邦訳エッセイ集。
日中戦争に行き詰まった日本は仏領インドシナに進駐し、朝鮮人への抑圧も増している。拘束される日が近いと予感する吉祥は智異山周辺の独立運動組織の解散を決めた。新京で自動車整備工場を営んでいた弘は妻の軽率な行為から夫婦共に密輸容疑で朝鮮に連行された。これを機に工場を畳んだ弘は単身、満州に戻るつもりだ。統営に弘を訪ねた栄光は、栄善夫婦を通じて父・寛洙につながる人たちと交流を深める。平沙里では鳳基老人が世を去ったが、錫の母ら女たちは健在だ。崔参判家を巡る人々の運命は、世代を超えて複雑に絡み合っていく。他方、ハルビンで偶然に燦夏と出会った仁実は、十余年ぶりに緒方と再会する。
朝鮮戦争休戦の翌年、小学校を卒業したばかりの“僕”は、各地からの避難民で溢れる大邱で暮らすことになった。混乱した社会で生きる人々の哀歓が“僕”の周囲で起きるさまざまな事件とともに生き生きと描かれている。発表から三十余年を経て、今なお読み継がれるロングセラー。
済州島四・三事件をテーマに書き続ける在日の老作家K。若き日に北朝鮮関係の地下組織に参加したものの離脱、その後の精神的危機とさまよいを回想する「消された孤独」。韓国語と日本語のはざまで二つに割れた存在に苦しみつつ韓国舞踊を学び、島を想う在日女性との対話を描いた「満月の下の赤い海」。四十二年ぶりとなる自らの故国・韓国訪問と済州での取材を通じて、語りえない記憶の真実に耳を澄ませる「地の疼き」。三編の小説と対談を収録。
同郷の友であり同志であった寛洙が牡丹江で病死したことで、吉祥は自分の生き方を見つめ直す。主治医だった朴医師の死に衝撃を受けた西姫は、心の奥底に秘めていた思いに気づく。二人は互いの存在が束縛であったことを初めて認め合う。寛洙の死は家族を再会させ、新たな絆をもたらした。還国は家庭を持ち新進気鋭の画家となり、李家に戸籍を移した良絃は女医専に学んでいる。西姫は允国と良絃について意外なことを言い出す。日本は中日戦争の泥沼から抜け出せず、物資が不足して生活は不便になるばかりだ。朝鮮語の言論は弾圧され、志願兵、創氏改名など新たな制度で朝鮮の人々はますます生きづらくなっている。