出版社 : ハーパーコリンズ・ジャパン
レストランを手伝うダーシーは、グラスを割って指にけがをする。居合わせた会社経営者のローガンに優しく気遣われ、無我夢中で彼の上等なシャツにすがって泣きだした。母親を亡くしたばかりなのに、父親の再婚話が持ち上がり、仕事中にもかかわらず取り乱してしまったのだ。悩んだ末、ダーシーは後日、新しいシャツを彼に送り届けた。すると血相を変えたローガンが店に現れ、若い娘が見知らぬ男に高価なシャツを贈るものではないと叱り飛ばした。ダーシーはなぜ怒られるのかもわからず、唇をわななかせた。
ロサンゼルスで成功を収めたマギーだったが、何かを逃れるように田舎の家へ移り住んだ。そこで知り合った、逞しい隣人クリフに守られるようにして、慰められる日々が過ぎた。だが、彼女は失った家族のことを忘れられず、そのせいで臆病になり、彼の愛情を受け入れられずにいた。ある日、荒れ果てた庭から白骨死体が掘り起こされる。クリフの亡き母親が、遺体の男と関係があったと知って、マギーの心にじわりとクリフへの不信感が芽生え…。
訪れた城で、リーはショーヴィニー伯爵ことジルと再会する。 6年前の夏、16歳のリーは端麗な美貌のジルに幼すぎる恋をした。 だが純粋な想いは、いつでもちょっとしたことで汚される。 ふたりに嫉妬した友人が、リーの字体をまねて、 潔癖なジルにいかがわしいラブレターを出したのだーー。 今だにリーが書いたと信じる伯爵は、蔑みの色を浮かべ、脅した。 君は僕と結婚するんだ。さもないとあのコピーをばらまくと。 さらに、これは愛ではない、単なる欲望だともつきつけられて、 古傷をかきむしられたリーの心は、声にならない悲鳴を発した。
週末のパーティに招待され、婚約者や親友夫婦らと郊外の屋敷に滞在中のエミリー。その屋敷の主人が何者かに頭部を撃たれ殺されてしまった!容疑者として捕まったのは、前日に彼と口論をしていた親友の夫ロバート。なんとか彼の無実を証明したいエミリーだが、手がかりは週末に被害者のもとへ届いたという差出人不明のウィーンからの手紙だけで…。貴婦人探偵、今度はワルツの都を大奔走!?
ローカス賞処女長編賞候補作。 19世紀倫敦(ロンドン)と明治日本を舞台に紡ぐ奇想ミステリー その時計には、運命の歯車が組みこまれていた。 1883年ロンドン。内務省に勤める 孤独な青年サニエルは、誕生日の 夜、下宿部屋に見覚えのない懐中 時計が置かれていることに気づく。 半年後、スコットランドヤードを 狙った爆破テロから間一髪、彼を 救ったのは、奇妙なその時計だった。 爆弾にも使われていた精緻なぜん まい仕掛けーーこれは偶然の一致 なのか。サニエルは知人の警視の 依頼で、天才時計師と名高い日本 人モウリの周辺を調べだすが……。
慈善事業を行う財団の代表を務めるアレグラは、余命わずかな最愛の祖父から、ある願いを託される。かつて手放した秘宝の箱を、砂漠の国ダル・アマンの国王から取り戻してほしいというのだ。アレグラは財団の調査という名目でなんとか国王ラヒムとの面会まで漕ぎつけるが、会うなり彼の男性的な魅力と圧倒的なオーラの虜になってしまう。このままではだめ。でもラヒムにどう切りだせばいいの?深夜、アレグラは偶然にも宮殿内で箱を見つけて歓喜するが、ふと人影に気づいて震えた。燃える目をしたラヒムが立っていた!
「助けて!雇い主に私たちの赤ちゃんを奪われそうなの!」大聖堂に駆け込んだスカレーレットは2000人の列席者の背後から叫んだ。祭壇に立つ花婿はイタリア出身の辣腕経営者ヴィン・ボルジアー8カ月前、バーで出会った彼の魅力に抗う術もなく純潔を捧げた翌朝、彼の身分を知ったスカーレットは名前も告げずに姿を消したのだった。突然の珍客に驚きながらもヴィンは彼女を追ってきた雇い主を追い払い、政略結婚を取りやめて、スカーレットに父親鑑定と婚前契約を要求した。屈辱的でがんじがらめの条件のもとに、愛なき結婚をするなんて…。傲慢でセクシーな黒い瞳に見据えられ、彼女の心は千々に乱れた。
リーザが亡き父から受け継いだ会社は破産の危機に瀕していた。立て直そうと奔走する彼女のもとに、ある日支援の申し出が届く。ティノ・ザゴラキスー世界的に有名なギリシア人大富豪だった。ところが彼の真の狙いは支援ではなく、会社の乗っ取りだとわかり、リーザは愕然とした。このままではすべてを彼に奪われてしまう。彼女は直談判するため、ティノが住むエーゲ海の島に向かうが、待ち構えていた彼はリーザに5日間の滞在を許すと、その間にあらゆる手を使って僕を説得してみればいいと挑発する。まるでリーザがその挑戦を拒めないと確信しているかのように。
噂の実業家ドミニクの豪邸の前で、アンドレアは不安に身を震わせた。彼は世間から“守銭奴の億万長者”とのあらぬ汚名を着せられ、自宅で盛大なチャリティパーティを開いて悪評を払拭したいという。アンドレアは目の前に立つ並外れたオーラを放つ男性に圧倒された。彼はすでに3人ものパーティプランナーをくびにしたかなりの難物だ。それでもドミニクのために一生懸命プランを考え提案した結果、無事に採用が決まり、アンドレアは胸をなでおろした。だが、やがて彼に惹かれ始めた彼女に難題が降りかかる。重要な契約を控え、社会的信用のため“婚約
年金暮らしの祖父と二人きりで生きるユステイシャは、雑用係として働く病院で、有名外科医のコーリンと出会う。独身貴族の彼は、弟夫婦がしばらく外国へ行っている間、預かっている幼い甥たちをもてあまして、ユステイシャを住み込みの世話係として雇うことに。ところが、弟夫婦が不慮の事故で他界し、状況が一変する。遺言により後見人となったコーリンから子供たちを奪おうと、母方の祖父母がやってきて、不在がちな彼を責めだしたのだ。すると、コーリンの口から思いもよらない言葉が飛びだした。「ご安心くださいーーぼくとユステイシャは、まも
夫と離婚後、実の父にまで裏切られ、踏みつけにされたベスは傷心をいやすため、一人イタリアを訪れた。最初の訪問地ヴェローナでオペラを見ていたとき、幕間に後ろの席の男性に声をかけられた。黒髪にラテン系の顔立ち。マーカス・クレイヴンと名乗るゴージャスな億万長者の彼の誘いを、その日はうまくかわしたが、次の日、“ロミオとジュリエット”の舞台、キャピュレット家で再会。さらに翌日の夜、ヴェネチアのホテルのレストランに彼が現れ、ベスは彼に惹かれながらも、度重なる偶然の出会いに不安を覚えた。そして部屋まで送ってきたマーカスに、強引にキスをされ…。
看護師のエリザベスは、年配の入院患者のプロポーズを受け、彼の所有するカリブ海に浮かぶ島へと赴いた。彼の健康が回復次第、結婚することになっている。ところが、憧れの南の島での生活を夢見て、期待に胸躍らせていたエリザベスは、婚約者の高圧的な態度や異常なほどの嫉妬深さにショックを受け、結婚にためらいを感じ始める。そんなとき、危険な男だと思い警戒していた有力者、深緑色の瞳をもつラウールと何度も顔を合わせるようになり、彼の男性的な魅力に惹かれていき……。
エリカは決意を胸に、生まれ育った北欧の国を離れ、アメリカに渡った。ある大富豪の男性にーーおなかの子の父親で海運会社の御曹司、ジェルヴェに会うために。3カ月前、エリカは逞しくハンサムな彼の圧倒的な魅力に抵抗できず、情熱の赴くままに体を重ねた。その結果、身ごもったことを彼に打ち明け、将来について話し合わなければならない。だがエリカが恐れたとおり、妊娠を知ったジェルヴェは即座に言った。「ぼくと結婚してくれ」ああ、イエスと答えられればどんなにいいか。でも無理だわ。だって、彼はわたしを愛してはいないから……。
世界的大富豪の令嬢、キャシー・カルデロンは、レイフを一目見たとたん恋におち、純潔を捧げた。だが夢のような日々は、またたく間に終わりを告げた。残酷すぎるレイフの裏切り。それが父の計画とは、キャシーは知る由もなかった…。6年後、キャシーがフランス人貴族と結婚間近と知って、レイフは矢も楯もたまらずメキシコを訪ねたー今も忘れられない最愛の女性と、まだ見ぬ我が子に会うために。
妹夫婦が事故で亡くなったと聞き、フローラはオランダに向かった。遺された9カ月になる幼い姪は、今やただ一人の肉親だった。当然引き取り、大切に育てていこうと心に決めていた彼女は、思いがけない人物に養育権を主張されて面食らう。世界的な鉄鋼王アンヘロ・ファン・ザール──妹の夫の実兄は、嫌悪の表情をありありと浮かべて、フローラに言い放った。「君のような女に姪を任せるわけにはいかない」フローラの抗議の声はすぐさまキスでふさがれ、彼女は情熱の炎に炙られるまま、アンヘロにバージンを捧げてしまう。数週間後、フローラは自身の
イタリア人実業家リカルドの秘書アンジーは転職を考えていた。何年も彼の手足となって働き、ときには恋の後始末さえしてきた。──日ごとにつのるリカルドへの想いはひた隠して。彼にとって私はただの地味な秘書。このままでは惨めすぎるわ。ところがオフィスのパーティが催される日、突然リカルドから美しい赤いドレスをプレゼントされて、アンジーは驚く。ドレスに着替えたアンジーはまるで別人のように魅力的に変身し、リカルドのエスコートで夢のような一夜を過ごした。そして翌朝、夢は儚く消えた。彼に冷たくあしらわれたばかりか、トスカーナ
ダルシーは仕事のため、ロンドンからヴェネツィアへ飛んだ。ゴンドラの船頭をしているフェデリコという男について、調べてほしいと依頼されたのだ。ダルシーはさっそく旅行客を装い、彼のゴンドラに乗り込んだ。予想に反して、フェデリコはとても魅力的な男性だった。太陽のように輝く笑顔と高貴な佇まいに、ダルシーはすぐさま心を奪われてしまった。なんてすてきな人なのかしら…。ダルシーは知る由もなかった。このハンサムな船頭の正体を。彼はある理由で友人のフェデリコに成りすましている、イタリア名門伯爵家の後継ぎ、グイード・カルヴァーニだった。
生まれつき目が見えず、手術の末に20歳で初めて視力を獲得したケンドラ。盲目の日々のなかで驚異的な洞察力を培い、FBIに協力して数々の難事件を解決してきたが、1年前の事件で元恋人を亡くして心に傷を負った後は、捜査から離れた日常を送っている。そんなある日、1年前にケンドラを事件に巻きこんだ張本人、その冷徹さで恐れられる敏腕犯罪コンサルタントのアダムが再び現れ、連続殺人の捜査に協力するよう迫る。事件の共通点はただひとつーーどの殺人のやり口にも、ケンドラが捕らえた殺人鬼の手口が模倣されていて……。