出版社 : ベネッセコ-ポレ-ション
20代の女性の悩みに答える雑誌「GP」。その編集部には、数多くの恋愛相談が寄せられる。不感症、不倫、マザコンの恋人…、どこかが似通っていて、それでいて一つとして同じではない秘密の数々。単なるアドヴァイスやコメントを超えて、恋愛相談は、真実の物語をつむぎ出していく。「いつも心のどこかで感じている、この何か足りないような気持ち。人生のどこかでミスをしてしまったような不安は、いったい何なんだろう。」多数のルポやインタビューを通して、若い女性たちの「今」に密着してきた著者が、自らの痛みをこめて書き下ろす、現代の恋愛事情の“向こう側”。新世代女性作家の小説。
新興宗教を創設してしまった賽銭泥棒の父親と、海上での遭難事故の最中に「神」と出会った息子…。巧みな物語展開とユーモラスな文体で、現代ニッポンにおける「神」の問題に迫った全く新しい「宗教小説」。
激動のうちに20世紀も暮れようとするなか、フランスの大富豪ピエール・ベナック男爵は私財を投じて国際科学オリンピックを開催した。アルプス山中のリゾートタウンは一躍、全世界のすぐれた頭脳を集めた科学の祭典の場となる。しかし、ある朝聖火台の炎に焼かれている科学者の死体が発見されるにおよんで、この世紀の大イベントは恐怖と迷信と死の交錯するおどろおどろしい悪夢に変貌するのだった。つぎつぎに起こる殺人事件。その残虐な手口と満月の夜に限られた犯行から、狼男への恐怖がつのっていく。そんななかで、アメリカから天才的素人探偵が事件解決に赴く。『ホッグ連続殺人』いらい、ひさびさのベイネデイッティ教授の登場である。
故郷アルトモア山から遠く離れ、非情なテロリストとして生きるジョン・ジョー。健気に留守を守るテロリストの妻。北アイルランドに潜入した若き諜報部員ブレン。彼を教育する“師”パーカー。弱さゆえ、密告者として敵に絡め取られた男…。さまざまな人生をはらんで、IRAと英国情報機関の戦いは今日も続く。IRA暫定派の活動拠点アルトモア山では、テロ活動の失敗が相次ぎ、密告者=売国奴がいるのではとの疑いが浮上する。この地では売国奴は死を意味する。山をあげての売国奴狩り。パーカーとブレンに操られた密告者は、発覚の薄氷を踏みながら、ジョン・ジョーを故郷に呼び戻す策を弄する。英国情報機関対テロリストの対決が迫る。
世界最高の医療水準を誇るボストンのホワイト記念病院で、奇妙な急患が出た。医学的所見から明らかに死亡と診断されたホームレスの女性。解剖されたその胸部から、おびただしい血とともにあらわれたのは、まだ拍動している心臓だった。患者は死んではいなかったのだ。誤診を犯した担当医の同僚エリックは、自分の診断した患者の中にも同様の男がいたのに気づく。しかもその男の“遺体”が、忽然と消えた。行方不明の兄を探す女性ローラとともに謎の解明に乗り出すエリックの前に、病院内にうごめく秘密結社〈ヘルメスの杖〉の恐るべき計画が浮かび上がってくる-。現役の医師が描く、迫真の医学サスペンス。
時は天保・元禄の世、次々と起こる事件を前に、俳諧師・桃青こと松尾芭蕉の助けを借りて、同心・笹木仙十郎の推理が冴える。大老堀田正俊刺殺事件、赤穂浪士の討ち入りなど史実を舞台に、芭蕉の発句を一人ごちる、仙十郎の胸に去来するものは、人の世のあや、浮き沈み。
恋人との休暇旅行を直前に控えた刑事フィオーナを現場に引きもどしたのは、妊娠中絶反対の立場をとる女性下院議員フランキーの死。状況は“自殺”を指し示す。ところが、フィオーナの上司エッグプラントの第六感は“他殺”を主張する。捜査を進めるうち、関係者の意外な実像が見えてくる。解剖の結果、フランキーは妊娠していたことが判明。形だけの夫婦となっていた夫からは、離婚を迫られていた。影のように付き従っていた第一秘書は、どうやらゲイらしい。政都ワシントンにうごめく人々の虚と実。愛と背信。フィオーナ自身も背信を秘めたまま、事件捜査にあたる。はたしてフランキーの恋人は誰だったのか?胎児の父親を探せば…犯人がわかる。
トランス状態で小説を書く大学教授ランドル・エリオットは、いまや話題の作家。次期ピューリツァー賞候補との呼び声も高い。しかし、本人すら知らないことだが、彼の著作はどれも妻メアリが書いたものだった。メアリは四児の母で専業主婦。影の作家に撤して二十数年、精神障害を持つ夫にかわって家族の暮らしを支えてきたものの、自分の名前で堂々と本を発表したいという思いはつのるばかり。そんなある日、ランドルが事故死。メアリに転機が訪れる。そして、ランドルに心酔する年下の学者ポールとの恋。すべてが順調に運ぶかに思えたが…。『愛がこわれるとき』の作者ナンシー・プライスが、ひとりの主婦の苦悩と自立を描いたサスペンス長篇。
テキサス州の高地砂漠地帯にあるグアダルーペ山脈国立公園。初夏のある日、女性レンジャーのシェイラ・ドゥルアリーが、悲惨な遺体となって奥地で発見された。発見者はピューマの生態調査をしていた同僚のアンナ・ピジョン。遺体には、動物の爪跡と噛み跡が、現場周辺の地面には大型獣の足跡が残っていた。警察と公園管理局はピューマのしわざと断定し、狩猟チームを編成した。だが、アンナは不自然な足跡に疑問を抱き、犯人はピューマではないと主張する。手を下したのは人間だ。独自に捜査を進めるアンナは何者かに命を狙われた。なぜシェイラは死ななければならなかったのか。アンナは公園に隠された邪な真実にたどりつく。ピューマと自然と動物を愛する女性レンジャーが、雄大な国立公園を舞台に繰り広げる自然派ハードボイルド。
「天使の技」を駆使して快勝を続ける、天才プロ・ゴルファーの八百長疑惑。次々に起こる死と脅迫。その謎を追って行きついた所は、山奥の小さなゲイの町だった。元ロック・シンガー、死の商人、スキンヘッドのドラッグの売人たち、性転換者…。異様な人間が交錯する奇想天外な殺人劇とプロ・ゴルフ公式戦での八百長トリック。まったく新しいミステリー誕生。
カレン・ニューマンはニューヨークに住む有能な会社役員。ハロウィーンの夜、彼女は娘と電話でおしゃべりを楽しんでいた。ところが、その途中で娘の家にチンピラ集団が押し入り、残忍なレイプのあとで娘を殺害する。この犯罪の一部始終を電話で聞き、伝聞証人となったカレンだが、アメリカの法は彼女に冷たかった。カレンはやがて、実質的に犯人を守ることもある法に業を煮やし、自讐という考えにとりつかれていく。かつて、ほのかな恋心をいだいたFBIマンを敵にまわし、みずからスパイとなってまで、自讐活動にのめりこむカレン。はたして、その行く末は…。都市暴力に悩まされる現代女性の心理をこまやかに描く、サイコロジカル・サスペンス・スリラー。
29歳のハンサムな青年クリシュナン・ヘムカー通称サニーは、LAの病院に医学実習生として勤務しているが、実は彼がアラブ系テロリストであることは誰も知らない。その彼のもとにある日、電話が入る。「ニューヨークにアパートが見つかったわ」長年待ちわびた任務遂行の日がついに来たことを悟ったサニーは、すぐさまニューヨークに向かい、次の指示を仰ぐべく新聞広告で見つけた司令塔の女性の部屋を訪れる。「7月1日に行なわれるカナダ自治記念日の祝典か、あるいは7月4日の独立記念日に自由の女神像の前で行なわれるセレモニーのどちらかで、彼を仕留めるのよ」そう言って渡された1枚の写真。そこに写っていたのは…。超高速テンポで読ませる暗殺スリラー。
非合法のプロ集団が、「噂」を使って暗躍するピカレスク・ロマン。選挙を策謀し、巨大企業を告発する「噂」。トレーラーで移動しつつ、「噂」を流していく無国籍の集団が、日本に存在する。現代の断面を鮮やかに切る中篇小説集。