出版社 : ベネッセコ-ポレ-ション
恋人との休暇旅行を直前に控えた刑事フィオーナを現場に引きもどしたのは、妊娠中絶反対の立場をとる女性下院議員フランキーの死。状況は“自殺”を指し示す。ところが、フィオーナの上司エッグプラントの第六感は“他殺”を主張する。捜査を進めるうち、関係者の意外な実像が見えてくる。解剖の結果、フランキーは妊娠していたことが判明。形だけの夫婦となっていた夫からは、離婚を迫られていた。影のように付き従っていた第一秘書は、どうやらゲイらしい。政都ワシントンにうごめく人々の虚と実。愛と背信。フィオーナ自身も背信を秘めたまま、事件捜査にあたる。はたしてフランキーの恋人は誰だったのか?胎児の父親を探せば…犯人がわかる。
トランス状態で小説を書く大学教授ランドル・エリオットは、いまや話題の作家。次期ピューリツァー賞候補との呼び声も高い。しかし、本人すら知らないことだが、彼の著作はどれも妻メアリが書いたものだった。メアリは四児の母で専業主婦。影の作家に撤して二十数年、精神障害を持つ夫にかわって家族の暮らしを支えてきたものの、自分の名前で堂々と本を発表したいという思いはつのるばかり。そんなある日、ランドルが事故死。メアリに転機が訪れる。そして、ランドルに心酔する年下の学者ポールとの恋。すべてが順調に運ぶかに思えたが…。『愛がこわれるとき』の作者ナンシー・プライスが、ひとりの主婦の苦悩と自立を描いたサスペンス長篇。
テキサス州の高地砂漠地帯にあるグアダルーペ山脈国立公園。初夏のある日、女性レンジャーのシェイラ・ドゥルアリーが、悲惨な遺体となって奥地で発見された。発見者はピューマの生態調査をしていた同僚のアンナ・ピジョン。遺体には、動物の爪跡と噛み跡が、現場周辺の地面には大型獣の足跡が残っていた。警察と公園管理局はピューマのしわざと断定し、狩猟チームを編成した。だが、アンナは不自然な足跡に疑問を抱き、犯人はピューマではないと主張する。手を下したのは人間だ。独自に捜査を進めるアンナは何者かに命を狙われた。なぜシェイラは死ななければならなかったのか。アンナは公園に隠された邪な真実にたどりつく。ピューマと自然と動物を愛する女性レンジャーが、雄大な国立公園を舞台に繰り広げる自然派ハードボイルド。
「天使の技」を駆使して快勝を続ける、天才プロ・ゴルファーの八百長疑惑。次々に起こる死と脅迫。その謎を追って行きついた所は、山奥の小さなゲイの町だった。元ロック・シンガー、死の商人、スキンヘッドのドラッグの売人たち、性転換者…。異様な人間が交錯する奇想天外な殺人劇とプロ・ゴルフ公式戦での八百長トリック。まったく新しいミステリー誕生。
カレン・ニューマンはニューヨークに住む有能な会社役員。ハロウィーンの夜、彼女は娘と電話でおしゃべりを楽しんでいた。ところが、その途中で娘の家にチンピラ集団が押し入り、残忍なレイプのあとで娘を殺害する。この犯罪の一部始終を電話で聞き、伝聞証人となったカレンだが、アメリカの法は彼女に冷たかった。カレンはやがて、実質的に犯人を守ることもある法に業を煮やし、自讐という考えにとりつかれていく。かつて、ほのかな恋心をいだいたFBIマンを敵にまわし、みずからスパイとなってまで、自讐活動にのめりこむカレン。はたして、その行く末は…。都市暴力に悩まされる現代女性の心理をこまやかに描く、サイコロジカル・サスペンス・スリラー。
29歳のハンサムな青年クリシュナン・ヘムカー通称サニーは、LAの病院に医学実習生として勤務しているが、実は彼がアラブ系テロリストであることは誰も知らない。その彼のもとにある日、電話が入る。「ニューヨークにアパートが見つかったわ」長年待ちわびた任務遂行の日がついに来たことを悟ったサニーは、すぐさまニューヨークに向かい、次の指示を仰ぐべく新聞広告で見つけた司令塔の女性の部屋を訪れる。「7月1日に行なわれるカナダ自治記念日の祝典か、あるいは7月4日の独立記念日に自由の女神像の前で行なわれるセレモニーのどちらかで、彼を仕留めるのよ」そう言って渡された1枚の写真。そこに写っていたのは…。超高速テンポで読ませる暗殺スリラー。
非合法のプロ集団が、「噂」を使って暗躍するピカレスク・ロマン。選挙を策謀し、巨大企業を告発する「噂」。トレーラーで移動しつつ、「噂」を流していく無国籍の集団が、日本に存在する。現代の断面を鮮やかに切る中篇小説集。
1959年、駆け出しの翻訳者だった頃、僕は沙知と結婚した。その頃、僕にとってのアメリカは、古本屋にひっそりと積まれてあるペイパーバックや、アメリカの雑誌のことであって、アメリカに行くことなど夢にも考えていなかった。アメリカ文学の翻訳家であり、直木賞作家として知られる常盤新平が若き日を描く青春小説。
迷宮都市はガルシア=マルケス、イタロ・カルヴィーノといったマジック・レアリズムの作家達の衣鉢を継ぐ新進作家による幻想短篇集である。ある閉ざされた都市の綺譚を描いた表題作「迷宮都市」、ゲームの規則に支配された奇妙な街の物語「Du」、孤独な女性が垣間見た白日夢の世界「失われた結婚式」、都市のアンダーグランド・ゾーンの魅力をさぐる「ストリップ・ショー」、謎めいた流刑地の歴史を考察する「ロベルト・デ・カステランの日記」他、全23篇を収録。