出版社 : 作品社
イタリアで客死した叔父の亡骸を捜す青年、予知能力と読心能力を持つ男の生涯、先々代の当主の亡霊に死を予告された男、養女への遺言状を隠したまま落命した老貴婦人の苦悩。日本への紹介が少なく、読み応えのある中篇幽霊物語四作品を精選して集成!一八六〇年代には今日のミステリやスリラー小説の源流になったと目される作品が次々と出版され、また、怪奇小説、恐怖小説の分野で優れた作品が数多く発表されたのもこの時代であった。内容的に長い話にはしにくかった恐怖小説は中短篇が主体で、特にクリスマスの時期になると、各雑誌が競って幽霊物語を掲載し、当時の文壇の大御所であった作家も好んで幽霊譚を寄稿した。比較的長い物語の場合、優れた作品でありながら、選集に収録するには長すぎるし、かといって、それ一作を単行本として刊行するには短かすぎる、ということで、あまり日の目を見ずにきたという作品もかなりある。本書では、そうした長めの怪異譚の中から、読み応えのある力作で、かつ、日本の読者にはあまり馴染みがない作品を四篇選び、これまでにない趣のアンソロジーの編纂を試みた。--三馬志伸「解題」より ウィルキー・コリンズ「狂気のマンクトン」(1855)ジョージ・エリオット「剝がれたベール」(1859)メアリ・エリザベス・ブラッドン「クライトン・アビー」(1871)マーガレット・オリファント「老貴婦人」(1884)訳註訳者解題
「群像」編集長を務めたのち作家に転身、泉鏡花賞を受賞、芥川賞の候補となり、2015年に逝去した辻章の著作集全6巻、第4巻刊行!「季刊・綜合文芸誌 ふぉとん」掲載全作品所収。
“最初の出版人”の全貌を描く、ビブリオフィリア必読の長篇小説!グーテンベルクによる活版印刷発明後のルネサンス期、イタリック体を創出し、持ち運び可能な小型の書籍を開発し、初めて書籍にノンブルを付与した改革者。さらに自ら選定したギリシャ文学の古典を刊行して印刷文化を牽引した出版人、アルド・マヌツィオの生涯。
『ストーナー』で世界中に静かな熱狂を巻き起こした著者が描く、十九世紀アメリカ西部の大自然。バッファロー狩りに挑んだ四人の男は、峻厳な冬山に帰路を閉ざされる。彼らを待つのは生か、死か。人間への透徹した眼差しと精妙な描写が肺腑を衝く、巻措く能わざる傑作長篇小説。
“城”と呼ばれる自宅の近くで誘拐された大富豪ドン・ディエゴ。身代金を奪うために奔走する犯人グループのリーダー、エル・モノ。彼はかつて、“外の世界”から隔離されたドン・ディエゴの可憐な一人娘イソルダに想いを寄せていた。そして若き日のドン・ディエゴと、やがてその妻となるディータとのベルリンでの恋。いくつもの時間軸の物語を巧みに輻輳させ、プリズムのように描き出す、コロンビアの名手による傑作長篇小説!アルファグアラ賞受賞作。
南北戦争末期、右脚に重傷を負った若い北軍兵士が南部の森で女の子に救われ、女子生徒五人と黒人奴隷が戦火を避けつつ生活する、姉妹の営む女学園に運び込まれた。彼女らの看護の甲斐あって、兵士は回復していく。彼は甘い言葉をかけ、皆の気を惹こうとするようになる。年少の二人はあどけない愛着を抱く程度、優等生の少女は超然として誘惑されない。だが、秘密を抱える最年長の生徒は甘言に惑わされてしまう。人知れず心に傷を負う姉妹も。そしてそんな中、ある事件が起き、すべての状況は一変するー。心かき乱され、本能が露わになる、女たちの愛憎劇。ソフィア・コッポラ監督、ニコール・キッドマン主演、カンヌ国際映画祭監督賞受賞作、原作小説!
『死者の書』は、こう読め!生誕130周年、いま、甦る折口信夫。歌人・小説家=釈迢空と民俗学者・国文学者=折口信夫。二つの才能が見事に融合・醗酵した稀有の小説『死者の書』。作家の青年期、作品成立の時代背景、作者の精神に踏み込むことで謎多き名作の秘鑰に迫る。
「群像」編集長を務めたのち作家に転身、泉鏡花賞を受賞、芥川賞の候補となり、2015年に逝去した辻章の著作集全6巻、刊行開始!第一作品集『逆羽』、第二作品集『この世のこと』、芥川賞候補作「青山」所収。
日本探偵小説史上に燦然と輝く大作の「新青年」連載版を初めて単行本化!「新青年の顔」として知られた松野一夫による初出時の挿絵もすべて収録!2000項目に及ぶ語註により、衒学趣味に彩られた全貌を精緻に読み解く!世田谷文学館所蔵の虫太郎自身の手稿と雑誌掲載時の異同も綿密に調査!
経済が崩壊し、人心が鬱屈したアイルランドの地方都市に暮らす無軌道な若者たちを、繊細かつ暴力的な筆致で描きだす、ニューウェイブ文学の傑作。世界が注目する新星のデビュー作!ガーディアン・ファーストブック賞、ルーニー賞、フランク・オコナー国際短編賞受賞!
幼き日々を懐かしみ、愛する妹との絆の回復を望む判事の女と、 その思いを拒絶して、乱脈な生活の果てに恋人に裏切られる妹。 先人の足跡を追い、ペトラの町の遺跡へ辿り着く冒険家の男と、 名も知らぬ西欧の女性に憧れて、夢想の母と重ね合わせる少年。 ノーベル文学賞作家による珠玉の一冊! ペルヴァンシュはまたもかたくなになっていた。クレマンスが表しているものすべてを、社会的地位だの、責任だの、権威だのを憎んでいた。ある瞬間、こんなあばら家を出て、あんなひどい人たちから遠く離れたところに行けるようにあなたを助けてあげられるわ、お金を貸してあげられるわと、ぎこちなく口にした。ペルヴァンシュは猛然と反発した。(「心は燃える」より) きっと、アリがひとこと頼みさえしたら、サマウェインは自分の宝物を見せただろう。手紙の束を、何枚もの黄ばんだ写真を、そしてなによりも、女性の腕に抱かれた赤ん坊がうっすらと写っている写真を。海の向こうからやってきた金髪の女性、父を連れて行ったその女性を、サマウェインは母と呼んでいる。(「宝物殿」より) 心は燃える 冒険を探す 孤独という名のホテル 三つの冒険 カリマ 南の風 宝物殿 各篇解題 訳者あとがき
ルイス・キャロル、コナン・ドイルらが所属した心霊現象研究協会の会長による幽霊譚の古典、ロンドン留学中の夏目漱石が愛読し短篇小説の着想を得た名著、120年の時を越えて、待望の本邦初訳! はじめに 第一章 夢 犬のファンティ/マーク・トゥエインの話/食堂に入りこんだ豚/モクセイソウ/なくした小切手/アヒルの卵/なくした鍵/古い証券/十分の一税の滞納金/ふたりのクルマ/アッシリアの神官/よろい戸の節目 第二章 夢と幻視 メアリー・スチュアートの宝石/死の床/パーシバル首相暗殺の夢/ガラガラヘビ/赤いランプ/口ひげの下の傷/サンゴ模様のクラバット/サテンの上靴/死んだ店主 第三章 水晶玉による幻視 ある外交官の話/ランプの下にいた人/ベルをつけた牛/ルイ一四世の臨終 第四章 幻覚 二頭立ての馬車/食事会から帰ってきた幽霊/赤い傷跡/幽霊と肖像画/抑えこむ手/修道士の聞いた声/エレベーター前に立つ男 第五章 生き霊 エカテリーナ二世の生き霊/幽体離脱/タビストック通りで/ウィンヤード氏の幽霊/ブルーアム卿の物語/死にゆく母親の話/花嫁の幻影 第六章 死者の幽霊 デヴォン州スプレイトンの幽霊、一六八二年/ジョージ・ヴィリヤーズ卿の幽霊/ある王党員の記述/ウィンダムの手紙/リトルトン卿のもとに現れた幽霊 第七章 目的を持って現れた幽霊 デイヴィーズ軍曹の殺害/デイヴィーズ軍曹殺害事件について/庭師の幽霊/モーズの犬/ピーターの幽霊 第八章 幽霊 タイコンデロガ/ティローン伯爵の幽霊/午前一時半のできごと/常夜灯を消す幽霊 第九章 幽霊と幽霊屋敷 きしむ階段/食料品屋の咳/ガイドの父親の話/夢でノックしたドア/ピンク色の服の娘/幽霊部屋の犬/黒い服の婦人/踊る悪魔 第一〇章 近世の幽霊屋敷 ウェスリー家の幽霊/セント・ヴィンセント卿の身内の幽霊譚 第一一章 さらなる幽霊屋敷 霊に憑かれたチャン夫人/アマーストの大いなる謎/ドナルド・バンとボカン/ヒャルタスタッドの悪魔/ガルプスダルの幽霊 第一二章 大昔の幽霊 グラームの物語/〈ファウルフォーズ〉またはロングフォーマカスの蹄鉄工 第一三章 アイスランドの幽霊 フローザーの怪異 第一四章 さまざまなおばけ 出現する手/冷たい手/黒い犬と親指のない手/指を嚙む幽霊 原註/訳註/訳者あとがき 一二〇年の時を経てあらわれた幻の本 吉田篤弘