出版社 : 岩波書店
一九二五年五・三〇事件とは?日系紡績工場ストライキで出会う在留邦人と中国共産党の職女芳秋蘭。金融界から風俗業まで轟く排日排英の足音、露地に軋む亡命ロシア人や湯女の嘆き。国際都市を新感覚派の手法で多声的に描く問題作。
『朝鮮詩集』を再訳するに当たって 韓 龍 雲 金 億 金 石 松 金 素 月 金 東 煥 金 東 鳴 金 允 植 金 起 林 金 燮 金 尚 鎔 金 泰 午 金 大 鳳 許 保 洪 露 雀 呉 相 淳 呉 熙 秉 朱 耀 翰 徐 廷 柱 辛 夕 汀 趙 明 熙 張 瑞 彦 鄭 芝 白 石 卞 榮 魯 朴 英 熙 朴 鍾 和 朴 八 陽 朴 龍 毛 允 淑 李 光 洙 李 相 和 李 章 熙 李 燦 李 箱 李 陸 史 李 秉 柳 致 環 梁 柱 東 林 学 洙 盧 天 命 異 河 潤 補遺 あとがき
放火犯はだれだー民衆の怒りははけ口を求めて荒れくるう。列強の圧政に苦しむポーランド同胞への思いを、迫害されるキリスト教徒に託したこの作品は、発表と同時に熱狂的歓迎を受け、二七ヵ国語に翻訳された。はたして「心の勝利」は成るか。
20世紀を代表する児童文学作家アストリッド・リンドグレーン(1907-2002)の一生を秘蔵写真でつづる愛蔵版。スウェーデンの田舎で遊んで遊んだ幸せな少女は、未婚のまま妊娠して故郷を離れ、やがて世界的な人気作家となった……。ここには、みごとに生きた一人の女性の生涯が凝縮されていて、感動的である。
ローマーこの頽廃の都では恋など懶い日々のほんの一興。だが、ウィニキウスは心のすべてを傾けた。相手はリギ族王家の娘、人質の身の上、そしてキリスト教徒だったー。ヘリニズムとヘブライズムの拮抗を背景に、壮大な歴史ロマンの幕が上がる。
傷ついたウィニキウスを一心に看護するリギア。神への愛に身を捧げる人たちの中にあって、それぞれの心に重大な変化が芽生え、やがて幸福の予感が二人を包む。しかし、ネロの気紛れからローマの街は一面の火の海にのみこまれることに…。
人間社会に対して激しい不信の念を抱くネモ船長とは何者?その目的は?謎の潜水艦ノーチラス号は、インド洋から地中海、さらに大西洋を南下して南極へ。凍結した海底に閉じこめられ、巨大なタコの大群や暴風雨に遭遇、と波瀾万丈の航海は続く。
長い熟成期間を経てまとめあげられたエンデ晩年の傑作短編小説集。精神世界の深みにおもりをおろし、そこに広がる様々な現実を色とりどりの花束に編み上げた、エンデ文学の到達点を示す力作。ドイツ・ロマン派的伝統を背景に、手紙・手記・パロディ・伝記など多彩な手法を駆使して、ファンタジーの世界が繰り広げられる。
ルージンの卑劣な工作により窮地に立たされたソーニャを弁護したラスコーリニコフは、その後ついに彼女に罪の告白を…。贖罪をうながすソーニャに、彼はつぶやく。「もしかすると、ぼくはまだ人間で、しらみではないのかもしれない…」。全三冊完結。
その年、いくつもの船が海で“何か巨大なもの”に出くわしていた。それは長い紡錘形の物体で、時に燐光を発し、クジラよりもずっと大きく、ずっと速かった。アメリカ海軍から依頼され、追跡行に加わったアロナックス氏は、ついにその怪物に遭遇した。
朝鮮で植民地官僚の家庭に生まれ、敗戦の年に内地に引き揚げた著者は朝鮮を舞台にした作品を何作も執筆している。創氏改名が朝鮮の人々をいかに蹂躙したかを描いた「族譜」。日本軍の民衆虐殺事件が作品の要となる「李朝残影」。いずれも朝鮮植民地支配と日本人の責任を問いかけ、朝鮮民衆の受難を描いた作品として極めて完成度が高い。昭和二〇年八月十五日を主題にした自伝的小説「性欲のある風景」も収録。
事件の衝撃から立直れないラスコーリニコフは、心配してくれる家族や友人にも、警戒と不信を抱き続ける。妹の婚約をめぐって悶着を起こし、殺人事件の捜査官と薄氷の渡り合いを繰広げる一方で、心の清らかなソーニャとの交流が次第に深まってゆく。
その年、ペテルブルグの夏は長く暑かった。大学もやめ、ぎりぎりの貧乏暮らしの青年に郷里の家族の期待と犠牲が重くのしかかる。この悲惨な境遇から脱出しようと、彼はある「計画」を決行するが…。世界文学に新しいページをひらいた傑作。
斬新な語りの手法と構成で、新しい文学表現に挑んだフォークナー(一八九七ー一九六二)の最初の代表作。語り手たちの内的世界のかなたに、アメリカ南部を舞台とした兄弟たちの愛と喪失の物語が浮かびあがる。フォークナー自身この作品をもっとも深く愛した。
コンプソン家の現在を描き、物語にいっそうの奥行きを与える後半。「奇蹟が起きた」と言われるこの作品の成立によって、フォークナー独自の創造世界は大きく開花し、世界の文学に幅広く影響を与えた。のちに書かれた「付録」も収録。
都会で働く一六歳のジーニアと一九歳のアメーリア。二人の女の孤独な青春を描いた本書は、ファシズム体制下の一九四〇年、著者三一歳の作品。四九年にようやく刊行され、翌年イタリア最高の文学賞ストレーガ賞を受賞。