出版社 : 岩波書店
『モモ』『はてしない物語』など数々の名作児童文学で知られるミヒャエル・エンデが、自らの人生、作品、思索について、翻訳者で友人の田村都志夫氏に亡くなる直前まで語った談話。作品の構想のもととなった、現代の物質文明の行きつく先を見通し、精神世界の重要性を訴えたエンデの深い思想が、語りを通して伝わってくる。各章冒頭、巻末に田村都志夫氏の解説付き。
独房No.404に収監された元人民委員ルバショフ。覚えのない罪への三回の審問と獄中の回想、壁越しの囚人同士の交信に浮かぶ古参党員の運命。No.1とは誰か。なぜ自白は行われたか。スターリン時代の粛清の論理と戦慄のモスクワ裁判を描いて世界を震撼させたベストセラー。心理小説の傑作(1940年刊)。【解説=岡田久雄】 第一回審問 第二回審問 第三回審問 文法的虚構 訳者あとがき 解 説(岡田久雄)
序 章 探偵小説の誕生 1 ミステリーと文学 2 探偵と探偵小説 3 人間をいかに描くか 第1章 心の闇を探る──チャールズ・ディケンズ 1 「ミステリー」としてのディケンズ文学 『バーナビー・ラッジ』 2 探偵の登場 『荒涼館』 3 犯罪者の肖像 『エドウィン・ドルードの謎』 第2章 被害者はこうしてつくられる──ウィルキー・コリンズ 1 抹殺される恐怖を描く 『白衣の女』 2 物的証拠と謎解き 『月長石』 第3章 世界一有名な探偵の登場──アーサー・コナン・ドイル 1 人間観察と推理 『緋色の研究』 2 哲学する探偵 「赤毛組合」「唇のねじれた男」「まだらの紐」ほか 3 なぜ人々は名探偵を切望するのか 『バスカヴィル家の犬』 第4章 トリックと人間性──G・K・チェスタトン 1 凡人探偵の登場 「青い十字架」「奇妙な足音」「飛ぶ星」ほか 2 単純な事実がもたらす謎 「折れた剣」「見えない男」「神の鉄槌」ほか 3 ブラウン神父の影 『木曜の男』『詩人と狂人たち』『ポンド氏の逆説』 第5章 暴かれるのは誰か──アガサ・クリスティー 1 解明のプロセスで起こること 『アクロイド殺し』ほか 2 人間を裁けるか 『オリエント急行殺人事件』ほか 3 誰かに似ている犯人 『火曜クラブ』ほか 終 章 英国ミステリーのその後──「人間学」の系譜 あとがき 主要参考文献
“英国小説の父”とも呼ばれるフィールディング(1707-54)。この小説は、当時人気を博していた書簡体小説『パミラ』に対抗して書かれた。人間性に対する鋭い洞察、真実に徹した精神を喜劇の衣に包んで表現。虚飾を嫌い、庶民の大らかな善良さを愛する作者の意識が全編を覆い、“物語”を読む原初的な楽しさに満ちている。
第 二 部 ブライズヘッドを去る 第 一 章 サムグラスの失脚ーーわたしはブライズヘッドを去るーーレックスの正体 第 二 章 ジューリアとレックス 第 三 章 マルカスターとわたしは祖国を守るーー国外のセバスチアンーーわたしはマーチメイン・ハウスを去る 第 三 部 一本の糸 第 一 章 嵐の孤児 第 二 章 個展ーーブライズヘッドのレックス・モットラム 第 三 章 噴水 第 四 章 世界に背を向けたセバスチアン 第 五 章 マーチメイン侯爵帰国ーー中国風応接間での死ーージューリアの道 エピローグ ブライズヘッドふたたび
作者序文 序章 ブライズヘッドふたたび 第 一 部 われもまたアルカディアにありき 第 一 章 セバスチアン・フライトおよびアントニー・ブランシュとの出会いーーはじめてブライズヘッドを訪れる 第 二 章 従兄ジャスパーの大諫言ーー魅力にたいする警告ーーオクスフォードの日曜の朝 第 三 章 わが家の父ーージューリア・フライト 第 四 章 英国のセバスチアンーー国外のマーチメイン卿 第 五 章 オクスフォードの秋ーーレックス・モットラムとの食事、マルカスターとの夕食ーーサムグラス氏ーー英国のマーチメイン夫人ーー世界に背を向けたセバスチアン 〈解説〉 イーヴリン・ウォーと『回想のブライズヘッド』
動物や死者の魂の声を聴き取ることのできる不思議な少女・パリ。飢餓に苦しむ北朝鮮を逃れて国境を越えたパリは、家族全員を失いたった一人で世界に投げ出される。行き着いたロンドンは、移民、難民が世界中から吹き寄せられる街。テロや暴力に苦しむ世界中の声が、パリの耳に響く。そこで出会ったのは、パキスタンから来た一人の男…。韓国随一の作家黄〓(せき)瑛は、89年、国禁を犯して北朝鮮に渡り、帰国後五年間、獄に投じられた。その後はパリ、ロンドンに居を移し、世界中を渡り歩いた。「パリデギ」はその経験を踏まえ、移民、難民の側から現代世界の苦しみ、哀しみを描いた小説である。
さて大陸のまんなかに、うす紫の湖があって、そのほとりには一輪、見たことも聞いたこともない花が、恥かしそうに控え目にこっそり咲いておりました。「醜い花」というのがその花に冠せられた名前でしたー。
風 博 士 傲慢な眼 姦淫に寄す 不可解な失恋に就て 南 風 譜 白 痴 女 体 恋をしに行く 戦争と一人の女〔無削除版〕 続戦争と一人の女 桜の森の満開の下 青鬼の褌を洗う女 アンゴウ 夜長姫と耳男 解 説(七北数人)
長篇小説『人間の絆』『月と六ペンス』の作家サマセット・モーム(一八七四ー一九六五)は、絶妙な語り口と鋭い人間描写で読者を魅了する優れた短篇小説も数多く残している。希代のストーリーテラー・モームの魅力を存分に楽しめる作品を厳選して収録。
大正末期、大震災直後の東京にひとりの異才が登場、卓抜な着想、緻密な構成、巧みな語り口で読者をひきこむ優れた短篇を次々と発表していった。日本文学に探偵小説の分野を開拓し普及させた江戸川乱歩(1894-1965)の、デビュー作「二銭銅貨」をはじめ「心理試験」「押絵と旅する男」など代表作12篇を収録。
日本におけるチェーホフを考えるとき、神西清(1903-1957)を抜きにしては語れない。短篇の名手の逸品を翻訳の名手がてがけた9篇、これに訳者のチェーホフ論2篇を加えた“神西清のチェーホフ”とも言うべきアンソロジー。表題作の他に、「嫁入り支度」「かき」「少年たち」「アリアドナ」等を収録。