出版社 : 徳間書店
第8装甲野戦旅団長J.フランソワ准将は、死んだら必ず天国へ行けるだろう。それほどいやな奴だった。トライテニア平原の会戦に最終的な勝利をおさめた雨の降る夜、部下を持たない個人戦闘員のコクラン少佐は、そんな彼に呼ばれた。不吉な予感…「少佐、君はわが旅団で最高の勇者だ。だから君を選んだのだ」…有無をいわせぬ命令だった。彼の行手に非情な世界が待ちうけている!詩情豊かに描く表題作ほか「銀河英雄伝説」に結晶するまで、田中芳樹が精魂をこめて発表した傑作7篇。ファン待望の声に応えて贈る傑作スペース・アドベンチャー!
「志濃田さん?山崎です。大変なことになりました」-広告代理店〈関通〉から掛かってきたこの1本の電話が、いまにして思えば壮大な茶番劇の始まりだったのだ。私はアニメ制作会社〈ジパングアニメーション〉のプロデューサー。次期放送予定の子供向け巨大メカアニメの新番組に備えて脚本家と打合せの最中、スポンサーの意向に基いて突然、寝耳に水の企画変更指令が飛び込んできた。B企画の「サンバイマン」で行け、と言うのだ。でも実はこの企画は…。主人公の目を通して、マスコミの救いなき悪ノリ体質をリアルに描く、新・ギョーカイ小説!
米軍の要請に従い宗谷、津軽、対馬の三海峡封鎖に踏み切った自衛隊は、ソ連太平洋艦隊の北海道進攻に直面した。緒戦のソ連潜水艦による奇襲でレーダー網を寸断された東北、北部各方面隊は、手さぐりの陸海防衛を余儀なくされていた。さらに、ソ連軍に呼応する蠍(スコーピオン)グループは道内各地で蠢動、北海道は風前の灯となった。圧倒的なソ連軍の戦力から、北海道を守ることはできるのか?近未来パニック巨篇。
西ドイツの首府ボンで日本人女性の変死体が発見された。女性は元オペラ歌手・両角佐枝子。ボン警察は自殺と断定するが、身許調査に立会った日本大使館二等書記官草葉宗平は不審を抱く。彼女が訪ねた音大の講師ハウザーも、1カ月前謎の死をとげているのだ。佐枝子の娘も5年前、留学先のミュンヘンで自殺。草葉は単身事件解明に乗りだした。「浴室の告発」ほか、海外を舞台にした本格サスペンス連作。
昭和の初め。“三尺の辰”こと磯貝辰之助、身の丈四尺三寸、侠気の巷に生きる1匹の虫。花火の三尺玉同様、前後の見境なく逆上してははぜる。道頓堀界隈を這う。一大歓楽街開発をめぐり、二雄の熾烈な諍いが起こり、小村の旦那に“買われた”三尺の辰、敵方・西塚を刺し、5年後出所。辰を待ちうけた道頓堀は…(表題作)。流転する人の世と時代の底で蠢く男たちの哀歓を描破する傑作集4篇。
私は中年の独身男、サンフランシスコのしがない私立探偵だ。恋人はいるが、結婚まではほど遠い。日々悩める私に、ある日たてつづけに3件も依頼が。宝石の警備、尾行、上流婦人の居所の確認。どれも楽な仕事だ。ようやく運が向きかけてきたか。ところが、3件が3件とも信じられない具合にねじれ、探偵免許さえ取り上げられそうになってしまった。好評“名無しの探偵”シリーズ注目の最新作。
大草原(パンパ)よ、血の旋律が聴こえるか。誘拐された恋人・柊子を追って、ブエノスアイレスにやって来た隆治。彼を待ち受けていたのは、ナチの亡霊による第四帝国建設の陰謀だった!
取調室で刑事の執拗な追及を受けながら、私は2度と百花双瞳はつくるまいと思った。そもそも14歳で広州から神戸の華僑宅に奉公に出され、主人から「あんなに美味いものはなかった」と聞かされたのを職人気質の料理長に洩らしたのが始まりだった。しかし、彼に手伝わされて料理法も材料も分かぬまも分らぬまの名点心が、こんなにも恐ろしい結末を呼ぶことになるとは…。人間の宿業に迫る傑作推理集。
〈私〉はサンフランシスコの私立探偵。猛烈なヘビー・スモーカーで、喀痰検査の結果が不安だ。そんな折、戦友のハリーから電話があった。自分の経営するキャンプ場で何か事件が起こりそうだという。その後彼の予言通り断崖からヴァンが転落。だが乗っていた男は転落前、既に殺されていた。現場付近には、なぜかクジャクの羽根が…。これは新しい事件の単なる幕開きなのか。“名無しの探偵”シリーズ、得望の新作。
薬師寺太郎は“現象界引き戻し人”だ。“現象界引き戻し人”というのは、現実世界から、なんらかの原因で精神的にも肉体的にも離れてしまい、境界線を越えて“未知の領域”へ踏み込もうとする人間をつかまえ、連れ戻すのが役目なのだ。今日の太郎のターゲットは、失恋して現実逃避、幽体離脱しかかっている女の子・由美子を連れ戻すこと。渋谷の街を透明人間になってさまよっているらしい。行方を追いかける太郎。だが彼女の囲りには早くも境界線を越えた人間を飲み込む闇が迫り始めていた。ヤバイゼ!岬兄悟のちょっとHでファンキーなSF連作集。
「おにいさん、あたしを買わない?」田賀倉健助は、突然声をかけられた。声の主はお嬢さま風の娘、晃美。断わると、彼女は中年男とホテルへ…。翌日ニュースが報じた女子大生殺人事件の被害者は晃美だった。どうやら、田賀倉と別れた直後に殺されたらしい。おまけに証言しに行った警察の副署長は、ゆうべ晃美と消えた中年男にそっくり!真相を究明しようと事件に乗り出した田賀倉を、今度はヤクザが追ってきた。この事件には何か裏があるらしいのだ。一般市民・田賀倉は、なんとヤクザと警察を相手に、仲間と大がかりな「信用詐欺」を開始した!
世紀末都市/メガロポリス-それは、人類がテクノロジーの高度化の果てに生み出した文明の廃棄場である。昼夜の別なく響き渡るサイレン。崩れ、朽ちかけた裏通りを彷徨う男達。殺し屋、刑事、タクシー・ドライバー、バーテン…職業は違っても皆、心の奥に苦い過去を隠しながら、誇り高くタフに生きている。近未来のSFイメージを随所に散りばめながら、犯罪に巻き込まれて戦う彼等一人一人の姿を通じて、都市と人間の歪みを鮮やかに描いた、著者初のハードボイルド連作集・全6篇。作品のアイディアを詳しく解説したあとがきも収録。
おれ-邑谷武は、人間-機械のハイブリッドソルジャーだ。火星陸軍の1等兵として無機生命体・マグザットと戦闘を繰り広げてきた。だがマグザットに急襲されて、意識を失った-そしてここは地球、1986年。ある日、おれの脳に組み込まれたTIPがコンピュータとシンクロし、ディスプレイに火星の戦友・中条光則の助けを求める姿が映し出された。崩壊していく現実の中で、火星のイメージと風景がオーバーラップした時、おれは2131年にいた。そこで、首なし死体となった中条に再会する。謎をとくため、おれは彼の恋人・絵里奈の家へ向った。
限定核戦争によって、壊滅状態となった東京は、浮遊都市として驚異的な復興をなしとげた。日本最大の宇宙産業グループKPDの若きトップ・九条俊一郎は、宇宙都市P1の市長の娘・レイチェルとのロマンスを実らせようとしていた。一方、凶悪なスラムと化した保護区では、リョウの率いるグループが勢力を伸ばしていた。おしのびで保護区に遊びに来ていたレイチェルは、スラム内の抗争に巻きこまれ、リョウに掠奪されてしまう。陽のあたる道を歩いてきた俊一郎と闇の世界を牛耳るリョウ…同じ女性を愛してしまった二人には悲劇的運命ともいえる秘密が。
漂泊の民、出雲呪族。彼らは山野を放浪し、歴史の裏側で暗躍した一族である。出雲王朝崩壊後の迫害の歴史は怨念の呪詛として一子相伝で語り継がれてきた。しかし、簸上竜造が掟を破り、3千年におよぶ遺恨を文字にたたきつけた。陰から体制を支配しつづけてきた謎の天孫一族・須米婁は、簸上文書の存在を嗅ぎつけ、闇に葬り去ろうと動きだした。支配者・須米婁にとって日本史を否定されることは自らを否定されることを意味するからだ。次々と襲撃を受ける出雲呪族。鬼祭光舜は人狐と呼ばれる精神遊離の呪用を用いて、須米婁の魔手を退けようとするが…
俺の名はヒトシ・トキムネ。しがない運び屋兼ハスラーだ。土星の衛星タイタンを周回するステーション『アルテミス』を根城にしている。そんな或る日、ビリヤードの賭けに勝った俺は、相手の男にノコノコ付いていった。不覚にもガツンと一撃をくらう。気がつくと、そこは海王星の衛星トリトン。俺は、米宇宙軍のお偉いさん、J・Jから異星人とのファースト・コンタクトを依頼される。宇宙空間に浮遊する28個の球体を駒にした立体版チェスゲームでコンタクトしようというものだ。プレイ・デイが近づくにつれ、俺のハラスー魂は燃え上がるー。
東京相互物産会長内藤牛之助の秘書である燕三四郎は、“富士の君”と呼ばれる会長の愛人上月茜に3000万円を騙し取られてしまった。3000万の代わりに残されたのは、会長が金に糸目をつけず蒐集したアタッシェケース一杯の“大人のオモチャ”。激怒した会長の命令で、三四郎はアタッシェケースをかかえ、上月茜とその恋人高木を捕まえるため、奇妙な旅へでかけるのであった…。長篇ミステリー。
伊井直人は名ばかりの伊達家剣道指南役、若妻定の薙刀にも敗れた直人は、面あてに妻との閨房も断って出奔した。一方、定との不倫を疑われた弟子の仏子四郎五郎も旅の途次、真田幸村の遺児磯姫らが隠れ棲み武技を磨く加賀山中の地で直人に再会。妬心に狂う直人から逃れ江戸での御前試合を目指したが、諸国から集まる武芸者の中には直人、定、さらに仏子を慕って里を出た磯姫の男装姿があった…。時代娯楽巨篇。
奔放無頼な暮しぶりで江戸下町の庶民に慕われる無役の幕臣・勝小吉の子として生まれた麟太郎(後の海舟)は、周囲の愛に育まれて成長、島田虎之助に学んだ剣では早くも皆伝を許され、都甲斧太郎に師事した蘭学でも頭角を現わしつつあった。まさに栴檀は双葉より芳し。紅夷の学を蔑視する側からの圧迫もものかは、来るべき激動の日本を担う大器の進取の気は、日増しに鋭くなって行く…。『父子鷹』姉妹篇。