出版社 : 文藝春秋
ひょんなことから跋丸への復讐をすることになった「自分」と帆一。考えつく限りの嫌がらせを実行するものの、なぜかうまくいかない。無言電話、百枚の白紙ファックスを送るエスカレート戦術もうまくいかない。そんな二人の珍道中を独特の文体とリズムで描く表題作と「けものがれ、俺らの猿と」の二篇を収録。
夏休暇も間近なある日、湾岸校に通う温は、ルビと名乗る少年から「契約」をもちかけられる。無口な少年と、手癖のわるい女の子、二つの人格をそなえたルビを、離れて暮らす母は「あなたの弟よ」というのだがー。生殖医療の発展した近未来を舞台に、人をこの世につなぎとめる愛、血脈を越える絆を描き出す傑作長篇。
ケネディ国際空港からタクシーに乗った出張帰りの男女が忽然と消えた。やがて生き埋めにされた男が発見されたが、地面に突き出た薬指の肉はすっかり削ぎ落とされ、女物の指輪が光っていた…女はどこに!?NY市警は科学捜査専門家リンカーン・ライムに協力を要請する。彼は四肢麻痺でベッドから一歩も動けないのだが…。
連続殺人鬼ボーン・コレクターは被害者の周辺に、次の犯行現場と殺害手口を暗示する手掛かりを残しながら次々と凶悪な殺人を重ねてゆく。現場鑑識にあたるアメリア・サックス巡査は、ライムの目・耳・手・足となり犯人を追う。次に狙われるのは誰か?そして何のために…。ジェットコースター・サスペンスの王道を往く傑作。
ダムの底に沈んだ故郷を出て二十年、旧友の死が三十代も半ばを過ぎた同級生たちを再会させた。帰りたい、あの場所にー。家庭に仕事に難題を抱え、人生の重みに喘ぐ者たちを、励ましに満ちた視線で描く表題作始め三編を収録。現代の家族、教育をテーマに次々と話題作を発信し続ける著者の記念碑的作品集。
このたび、1998年に新たに発見された日記5ページを追加した「増補新訂版」が誕生した。鋭い感性と驚くべき表現力で、思春期の夢と悩みが赤裸々に綴られた日記は、永遠の青春の記録として、半世紀を経たいまも世界中の人びとの胸をうってやまない。
源太郎、花世らを連れて外国船で賑う横浜を訪れた東吾。美人局(つつもたせ)に身包みはがされて、首をくくろうとした英国人船員のために、一肌脱ぐことになるが……。お馴染みの江戸情緒に、横浜の異国情緒が花を添えた表題作ほか、子供の頃別れた母と娘の切ない行き違いを描いた「鬼ごっこ」「烏頭坂今昔」「鬼女の息子」など全八篇を収録。
「死の谷」を意味する北ビルマの広大な谷地フーコンで、日本軍はインパール戦に並ぶ必敗の愚かな戦いを演じた。片腕を失い生還した元兵士は、ながい平穏な戦後、老いを重ねる。問い、反復、忘却、諦念。記憶の年輪ともいうべき稀有の文学世界。三部作の最終作であり、作家自身の遺書ともいうべき名篇である。
「この先、何が起ころうと、それはわっちが決めたこと、後悔はしませんのさ」-誤解とすれ違いを乗り越えて、伊三次と縒りを戻した深川芸者のお文。後添えにとの申し出を袖にされた材木商・伊勢屋忠兵衛の男の嫉妬が事件を招き、お文の家は炎上した。めぐりくる季節のなか、急展開の人気シリーズ第三弾。
米空軍のステルス爆撃機が北アルプスに墜落!その搭載物をめぐって男たちの死闘が始まった。報道カメラマン西崎勇次もその渦中に…。かたや週刊誌記者の松永慶子は、横田基地に侵入・逃走した北朝鮮の工作員に接触する。吹雪の北アルプスと東京。二つの場所で、男と女は絆を取り戻せるのか。渾身の国際謀略サスペンス。
狂躁の季節がきた。長州藩は既に過激派の高杉晋作をすら乗りこえ藩ぐるみで暴走をかさねてゆく。元冶元(1864)年七月に、京へ武力乱入し壊滅、八月には英仏米蘭の四カ国艦隊と戦い惨敗…そして反動がくる。幕府は長州征伐を決意し、その重圧で藩には佐幕政権が成立する。が、高杉は屈せず、密かに反撃の機会を窺っていた。
動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し…。わずか八十人で兵を挙げた高杉晋作のクーデターは、きわどく成功する。幕府は、慶応二(1866)年、この長州藩を圧し潰そうと、天下の兵を糾合し、藩の四境から進攻するが、時運はすでに移り変っていた。維新の曙光を認めながら、しかし高杉はもはや死の床にあった。
争いを好まず、あえて負けを選ぶことで真の勝ちを得るー。乱世にあって自らの信念を曲げることなく、詐術とは無縁のままに生き抜いた小国・宋の名宰相、華元。名君・文公を助け、ついには大国晋と楚の和睦を実現させた男の奇蹟の生涯を、さわやかに描く中国古代王朝譚。司馬遼太郎賞を受賞した名作。
戦争は私から何を奪ったのだろう。軍隊に入り、私は屈辱を受けることに鈍感になり、たちまち誇りを失った。下級兵士は無意味な死を覚悟することに馴れ、それではあまりにみじめだから、お国のためだと自分に言いきかせる。兵士は死シテ神トナルなどと本当に考えていたのか?戦争を日常として生きた人間の貴重な文章である。
徳川幕府の崩壊は、薩長の武力のみにあらず、もう一つの大きな要因は通貨の流出にあった。ペリーの来航以来日本は、初めて世界経済の荒波に見舞われた。幕府の経済的な無知につけ込んで、一儲けを企む米外交官ハリス、駐日英国代表オールコックたちの姿を赤裸々に描く新田次郎文学賞受賞の傑作歴史経済小説。
嘉永六(1853)年、ペリーの率いる黒船が浦賀沖に姿を現して以来、攘夷か開国か、勤王か佐幕か、をめぐって、国内には、激しい政治闘争の嵐が吹き荒れる。この時期骨肉の抗争をへて、倒幕への主動力となった長州藩には、その思想的原点に立つ吉田松陰と後継者たる高杉晋作があった。変革期の青春の群像を描く歴史小説全四冊。
海外渡航を試みるという、大禁を犯した吉田松陰は郷里の萩郊外、松本村に蟄居させられる。そして安政ノ大獄で、死罪に処せられるまでの、わずか三年たらずの間、粗末な小屋の塾で、高杉晋作らを相手に、松陰が細々とまき続けた小さな種は、やがて狂気じみた、すさまじいまでの勤王攘夷運動に成長し、時勢を沸騰させてゆく。