出版社 : 新潮社
北海道の骨壺温泉、宮城県の死急温泉、名古屋の繁華街にある恥曝温泉など、絶対に行けない、行くことのできない本当の秘湯だけをガイドした表題作「秘湯中の秘湯」。あきれるほど何も知らない女子大生の無知を笑う「非常識テスト」。他に何回読んでもさっぱりわからない機械の取扱説明書や、うんざりするほど詳しくて長い手紙など、身近な言葉の面白さに注目した爆笑小説全11編。
ジュディスは著名な歴史小説家。美貌に恵まれ、次期英首相候補の婚約者でもある。王政復古を題材にした新作の取材で、ロンドンに滞在中だ。実は彼女には、もつ一つ、自分の出生を確かめるという目的があった。精神科医パテール博士が投与した薬によって、幼時に戻ることに成功した彼女の心は、さらにさらに時を遡って…。著者には珍しい人格転移を扱った表題作ほか、4編を収録。
公爵家の最後の血 兄の孫アリョーシャを西側に脱出させようと、1987年83歳の公爵夫人ターニャは68年ぶりにロシヤの地を踏んだー。ロシヤ革命後の1919年1月、アダレーフスキー公爵家の人々はパリ亡命を決行。15歳のターニャ(彼女のブーツの底に公爵家の宝石が隠された)と兄ペーチャ以外は全員暴行され殺された。ソ連のアフガニスタン侵攻を背景にターニャの賭と甥孫の逃亡を描く。
二十五歳という年齢は、青春の夕暮れに浮かぶ迷子のお月様のようね…。七年越しの恋にピリオドを打ち、大阪に舞い戻ったさつき。新しい職場、新しい仲間、新しい夢、そしてふるえるような恋の予感。それは、青春のフィナーレを鮮やかに彩る、せつないドラマのはじまりだった。
両親と死別し、遠縁にあたるドリーとヴェリーナの姉妹に引き取られ、南部の田舎町で多感な日々を過ごす十六歳の少年コリン。そんな秋のある日、ふとしたきっかけからコリンはドリーたちと一緒に、近くの森にあるムクロジの木の上で暮らすことになった…。少年の内面に視点を据え、その瞳に映る人間模様を詩的言語と入念な文体で描き、青年期に移行する少年の胸底を捉えた名作。
’60年代最後の年、22歳の上山哲夫は、アコースティック・ギターひとつを持ってアメリカへ旅立つ。子供の頃、ベース・キャンプの金網の向こう側にしかなかった「アメリカ」を求めて。西海岸から東へたどる哲夫が出会ったものはベトナム戦争の影とヒッピーたち…。巨大な異文化に裸で身をさらし、己れの根を必死に捉まえようと彷徨する若者の姿を鋭い感性で描きだした青春の書。
小学4年生になっても、ぬいぐるみの「くますけ」と片時も離れられない成美は、交通事故で突然両親を亡くして、ママの親友の裕子さんに引き取られた。裕子さんはとても優しい人だけれど、成美には誰にも言えない秘密があるから、くますけ以外は信じることができない…。正常と異常、現実と非現実の境界にある閉ざされた少女の心の内面をモダン・ホラーの手法で描く異色の長編。
低い扶持にあえいでいても、こころはいつもサムライ。十年のうち九年は百姓暮らし、一年だけ赤錆だらけの槍を担いで日光山警護にあたる八王子槍組千人同心・鷹取俊太郎。後に陰の御庭番・信濃屋芳兵衛となり、将軍の耳目となって活躍した男の元服後の筆下ろしを描く表題作をはじめ、江戸時代の底辺を担って生きた下級武士たちの心意気を無類のユーモアとペーソスで綴る時代短編集。
オレゴン州の小さな町ホープ・バレーが宇宙からの攻撃としか考えられない方法で消滅させられた。一方、CIAから離れてフリーとなったマクラッケンは、むかし愛し合った女から何者かに脅迫されている宝石商である祖父の救援を依頼される。マクラッケンの追跡が、ホープ・バレーを攻撃した巨大な勢力とクロスした時、恐るべき〈アルファ計画〉の全貌が浮かび上がる。シリーズ第2弾。
ブルックリンに根を張る大ファミリー、プリッツィ一家。13歳からこの業界に手を染めたチャーリー・パルタンナは、30歳になった今や副ボス兼執行人である。マジメでトッポいチャーリーが一目惚れしたショー・ガールのマーデル。これがなかなか一筋縄ではいかない女だった。一方で、ボスの娘メイローズがチャーリーに惚れたから話はややこしい。恋と義理と人情のマフィアン・コメディー。
ホームズの下宿のあったベイカー街、ワグナーのオペラをみにいったロイヤル・オペラ・ハウス、彼とワトスンが初めて出会ったセント・バーソロミュー病院、二人が犯人を追跡したオックスフォード街からリージェント街、そして散策した公園はどこか?-大英帝国の最も華やかな時代に大活躍した名探偵中の名探偵シャーロック・ホームズ。その足跡をたどると、ヴィクトリア朝時代の残り香が色濃くただよう都・倫敦が霧の中から…。
一九七九年に起きた一人の若者の死。その状況と原因をめぐって、それぞれの関係者が推理するその口から、また新たな物語が紡ぎ出されていく。懐古にふけっていたはずの彼等は、いつしか自分たちで作り上げた迷宮に踏み入っていく…。言葉によって構築される現実の脆さとそこに潜む謎を描いて一気に読ませる、気鋭の力作。