出版社 : 新潮社
「概ね健康」と公式発表されているVIPの遊説先に何故医師団が随行するのか-胸中にくすぶる疑念が次第に膨れあがってゆく。「会合」の真の目的は何なのか…。(レッドライン・カルテ)。花札一枚を看護婦に差出して藤森医師に取次ぎを頼んだ過去からの客人。男は何の礼を言いに現れたのか…。(第二外科時代の余罪)。八ケ岳の避難小屋で生死の境をさまよう登山者。猛吹雪のなか、わずかな材料で手術に踏み切れるのか…。(八ケ岳モルゲンロート)。新しいアングルから描く医のサスペンス集。
西郷隆盛には写真がない。思いがけない事実を知った雑誌『歴史時代』の新人編集部員稲葉元博は、それをきっかけに維新史の闇の迷路に足を踏み込んで行く。-西郷の戦死後、大久保利通はなぜ再度の検視と所持品検査を命じたのか?それと時を同じくして鹿児島を徘徊した謎の人物たちが求めていた物とは何か?おおいなる歴史の謎が百年を経て現代に甦る渾身の長編小説。
ギリシア・ローマ古典学の教授宮沢明(数年前に交通事故で、妻を失っている)は、避暑地で会った知的な和泉聡子に強くひかれ、二人は美しく愛しあっている。そして、現役を退いた老カップルやユニークな学生ペアのそれぞれの愛のかたち…。21世紀に入って10年がすぎた夏の日の避暑地=半島の海辺にある別荘に集う数組の男女の優雅な〈饗宴(シュンポシオン)〉と〈愛(エロス)〉の時間を描く長編恋愛小説。
突如記憶が中断してしまい、謎に満ちた世界を手探りで行動する男。現代人の孤独と不安を抉り出し、『燃えつきた地図』の原型となった『カーブの向う』。自分の糞を主食にし、極端に閉じた生態系を持つ奇妙な昆虫・ユープケッチャから始まる寓意に満ちた物語、『方舟さくら丸』の原型となった『ユープケッチャ』。ほかに『砂の女』の原型『チチンデラヤパナ』など、知的刺激に満ちた全9篇。
明治41年、第1回ブラジル移民791名を乗せ笠戸丸がサントスに入港した。夢と希望に満ちた彼らを待ち受けていたのは、苛酷な自然と厳しい労働だったー。大農場で農奴にひとしい生活を送る井原・山口家の人々。色々な職業を転々とする香山六郎。農場主に支配されない日本人入植地を夢みる平野運平。紺碧の空の下、苦闘する初期移民の姿を描いた構想十余年の大作第1部。
笠戸丸による第1回移民から7年。平野運平を指導者に、初の日本人入植地が作られた。自分の土地を得、開拓に燃える人々を襲うマラリア。入植した佐久間・山口家の人々も、作物を食い尽くすバッタや冷害に悩まされる。一方、香山六郎は既成の邦字紙にあきたらず『聖州新報』を創刊する。故国を遠く離れ雄大なブラジルの大地に苦闘する、様々な人間のドラマを描く長編小説第1部。
戦乱の世も遠く去った3代将軍家光の世、徳川の天下取りに尽くした旗本たちは、いまや時代遅れの無骨者として軽んぜられている。その現状を断固として認めない者がいた。旗本奴水野十郎左衛門は、彼らの壊滅を企てる老中松平信綱の野望を砕くため、町奴幡随院長兵衛と密かに連帯する。滅びゆくおのれの運命を知りつつ侍の意地を通した男の生涯を描く長編。
女性国連事務総長を乗せた特別機が、ハイジャックされた。機はグリーンランドに向い、墜落するが、たまたま近くで沈没したソ連原潜の捜査を行なっていたダーク・ピットが、彼女を救助した。またピットは付近の海底から、四散したとされる古代アレキサンドリア図書館の収蔵物の隠し場所を示すらしい遺物を発見した。一方事務総長は、ピットの父の手で厳重に保護されていたのだが…。
ゲリラ戦の専門家で、書記長を叔父に持つアフガニスタン駐留KGB大佐は、母国の将来を憂えていた。軍紀の乱れ、士気の低下、無意味に殺されていく民間人たちの姿に心を傷めながら、彼は熟慮し、そして決断したー。クレムリン内での派閥抗争は熾烈さを増し、首都は不穏な空気に包まれた。早く内戦をくいとめて、漁夫の利を狙う諸外国を抑えねば…。迫真の政治・軍事サスペンス。
15歳の少女テルジーは、天才レベルの知能を持つ、褐色に日焼けした活発な少女。ペットの猫型異星生物チクタクを連れて惑星ジョンタロウを訪れたテルジーは、ひょんなことから惑星規模のトラブルに巻きこまれるハメに。それがきっかけとなって眠っていた超能力を目覚めさせたテルジーを、今度は連邦心理学局が狙いはじめるー「惑星カレスの魔女」につづく、さわやか冒険SF長編。
アメリカ大統領選の候補に、日系上院議員が急浮上!権謀術数の渦を泳ぐG・マキタのもとに、日本から届いた奇妙な質問状。脅迫ともとれるその内容をプラスに転化する錬金術はあるのか-。厖大な情報をもとにリアルに描き切った、驚天動地のポリティカルサスペンス。
私の部屋に無断で入り込んでいるのは誰?マンションの鍵を拾った主を突き止めるために仕組んだ計画が、3人の思惑を木の葉のように弄ぶ。見知らぬ死体、思いがけぬ妊娠-菜織子の精神の歯車は徐々に狂いはじめ、そしてある日-一切の前提が覆される。心理サスペンス
昭和20年夏、敗戦へと雪崩れおちる日本の、辺境ともいうべき地に生きる人々の生き様を通し、「昭和」の転換点を見つめた作品集。突然のソ連参戦で宗谷海峡を封鎖された南樺太の一漁村の村人の、危険な脱出行を描く表題作。撃沈された沖縄からの学童疎開船・対馬丸に乗船していた一中学生の転変をたどる「他人の城」。東大寺の仏像疎開作業に従事する僧侶と囚人たちをめぐる「焔髪」など5編。
謎めいた過去を持つ若き人気女形・嵐夢之丞が忽然と姿を消した。時を同じくして、江戸市中で夢之丞に似た美女が次々と惨殺されていく。夢之丞を慕う女掏摸・切支丹お蝶、碧眼の怪剣士・西東霊之介、女賊・雲居のおさよ、善玉悪玉入り乱れ、運命の妖しい糸が縺れ合い、怨霊渦巻く地獄の島で、いま夢之丞の恐るべき秘密が明らかにされる!新感覚の伝奇時代ロマン・シリーズ第二弾。
第三世界会議に出席中のエジプト・メキシコ両国の大統領、国連事務総長、そしてピットの父を乗せたヨットが消えた。偵察衛星の目からも隠れてしまった船の行方を、ピットは冷静な推理で捜し当てたが…。一方測り知れぬ価値を持つ古代の宝物の在処は、最新のコンピューターを駆使しても確認できない。北極から南極へ、古代から未来へ、現代のヒーローの時間と空間を超えた活躍。
街にジングル・ベルのメロディーが流れ、冬休みを前に誰もがほっと息をつくクリスマスは、殺人鬼や悪霊が大活躍する季節でもあります。幼児期のサンタクロースへの恐怖を語る「煙突」、貴族の屋敷の呪われた伝説を背景に兄弟が恋敵となって争う「幻の女」、死ぬ自由を奪われた未来社会の倦怠を描く「終身刑」など聖誕祭にまつわる恐怖の数々。古今の傑作の中からアシモフ博士が精選。
どうして大きくならないの?なぜ返事をしないの-。マリオネットの手足がてんでに宙を舞う。狂気が胎児のように、着実に育ってゆく。友人の死にまつわる赤い記憶も、しだいに形をとりはじめ、そして-第1回日本推理サスペンス大賞優秀作受賞。
19世紀の末、大旱魃に見舞われたブラジルの奥地に、突如現われた流浪の説教師。世界の終末と人類の滅亡を説く男は、たちまちにして貧困や飢えに悩む人々の心をとらえる。やがて、預言者を中心に安住の地カヌードスにたてこもる宗教的熱狂者の集団と政府軍の過酷な徹底的闘争が始まる。著者の円熟さを示す壮大な野心的大作。