出版社 : 新潮社
どんなふうに生きてもいいはず。私はひとりしかいないのだから。なのに、なぜ、こんなにも囚われてしまっているのだろうー美しい長女、知的な次女、風変わりな三女、年の離れた末妹。母と四姉妹はどう生きてきたか。家族のなかで自分を生き抜くための物語。
鹿康平が怪物を撃ったのは一九六二年のことだった。わたしが書いた小説の冒頭だ。広東省上空で撃墜された台湾空軍B-17偵察機に乗っていた叔父が主人公のモデル。彼は敵国から奇跡の生還を果たしたのだー。台北出身の作家・柏山康平が執筆した長編『怪物』は高い評価を受ける。故郷に凱旋した柏山はその夜、同行した出版社社員椎葉リサと関係を持ってしまう。運命の女。乱舞する青い鳥。中世の王のごとく君臨する“怪物”との対決。恋そして冒険。唯一無二の圧倒的エンターテインメント!
英国グラスゴーの病院で終末期医療を受ける少女レニーは17歳。好奇心旺盛で老人向けのアートセラピーに潜り込み、83歳のマーゴと知り合う。ふたりは自分たちが生きた証として、合わせて100年の人生を100枚の絵にして残すという計画を立て、1枚の絵を描くごとに、絵にまつわる人生の1コマを相手に語ってゆくー。生と死と愛という、人間にとって根源的な重いテーマを正面から取り上げながら、明るく風変わりなふたりの愛すべきヒロインと、個性ゆたかな登場人物が織りなすデビュー作。
家庭も故郷もない還暦世代の3人の男女の元に舞い込んだ“理想のふるさと”への招待。奇妙だけれど魅力的な誘いに半信半疑で向かった先には、かけがえのない“母”との出会いが待っていた。彼らが見出す人生の道しるべとは?あなたを迎えてくれる場所が、ここにある。至高の名作誕生!
横須賀基地近くで殺人事件が発生、米海軍犯罪捜査局が捜査に加わる異例事態に。一方、竜崎の同期でトップ入庁の警察官僚・八島が神奈川県警に赴任してくることになるが、彼には不穏な噂がつきまとっていた。さらに、息子の邦彦が留学先で逮捕されたという報が…。波乱含みの人気シリーズ第九弾!
高知から終点宿毛へ走る特急「あしずり」で、新任大臣が毒殺された。これを発端に、各地で不気味な事件が続発する。ところが、第一容疑者には常に確実なアリバイが。世直しを訴える奇妙な手紙との関係は?十津川警部は、姿なき犯人と闇で蠢く難事件に、いかに立ち向かうのか。
「60年前の団地生活を体験して500万円!」という企画につられて、リアリティショーに集まった二つの家族と番組制作者たち。古き佳き時代であるはずの昭和の生活は、思ったほど楽じゃないどころか地獄の格差社会。意外な人物たちも巻き込み、不穏な空気が漂い始める。次々と起こる事件は虚構か、現実か…。
第166回芥川賞候補作。高校の歴史研究部に所属するぼくは、ある日皆川城址で中年男に出会う。男はぼくが入手した旧家の蔵書目録を奪い取ると、映画監督の縁戚にあたる小津久足の著作を指さし、『皆のあらばしり』などという本はこれまで全く記録されていないと言う。「まだ世に出てないものだってことか」「もしそうなら大発見やのー」男は満面の笑みでぼくの肩に手を置いた。うさん臭さに警戒しつつ、ぼくは男の博識に惹かれていく。幻の書の新発見か、それとも偽書かー。高校生のぼくと怪しい中年男は、「謎の本」の存在を追う。歴史謎解き+スリリングな会話劇+ラストの大逆転。本をめぐる知的愉楽に満ちた三島賞作家受賞第一作。第37回坪田譲治文学賞受賞
陽気で如才なく、やがて地下出版に携わるイリヤ、繊細な詩人の感性を持つユダヤ人のミーハ、ピアニストを目指すサーニャ。三人の幼なじみを軸に、そこに三人の少女たち、正義感に溢れる優等生オーリャ、苦学の末に役人の妻となるガーリャ、ユダヤ人のタマーラが加わり、六人の人生が時に交錯して時にはなれる。1953年のスターリンの死から1991年のソ連崩壊へ。激動の時代を背景に、人を愛し、結婚し、子どもを産み、互いに影響し合いながら困難な時代を生き抜いた市井の人びとのドラマを、ノーベル文学賞候補にも目される女性作家が複雑な光沢と色合いで織りあげていく。人間への深い愛情に満ちた大河長篇。
「あんたは子供の顔をした淫婦だわ」8歳の娘とミカちゃん人形の間に恋愛バトルが勃発。人形と現実、両方の家族を巻き込み、ドールハウスは愛欲と憎悪の渦にのまれていくー。王子をめぐる争いがフツーの一家を惨劇に陥れる表題作ほか、予想のつかない展開と飛び切りシニカルな笑いに悶絶必至。退屈な毎日に倦んだ紳士淑女に贈る、タブーとエロス満載の全5篇。
大晦日の夜、ホテルに集まった八十歳過ぎの三人の男女。彼らは酒を飲んで共に過ごした過去を懐かしみ、そして一緒に命を絶った。三人にいったい何があったのか…。妻でも、夫でも、子どもでも、親友でも、理解できないことはある。唐突な死をきっかけに思いがけず動き出す、残された者たちの日常を通して浮かび上がるのはー。人生におけるいくつもの喪失、いくつもの終焉を描く物語。
冴津武士は三十代前半、物を持たない生き方を推奨するウェブサイト「身軽生活」を運営し、ミニマルなライフスタイルのためのグッズ「MUJOU」をプロデュースしている。住むのは都心のワンルーム、家具は必要最小限。持ち物も、仕事に必要なデジタル機器の他はわずかな衣服と食器のみ。その冴津の前に、彼の過去の所業のせいで人生を狂わされたという男・更伊が現れる。果たして復讐にやって来たのか。必要最低限の物だけで生活するミニマリストの男。物欲から解放され自由を得たはずが、なお因果は尽きず…SDGs時代の悲喜劇。
「水憑き」の血を受け継ぐ不村家では、数代に一度、生前に躰を「お納め」した子が生まれる。人智を超えた才気を授かることから、一族繁栄の兆しとされていたが、一方その陰では、常に、ある怪異の存在が蠢いていた。「あわこさまは、不村に仇なすものを赦さない」。脚のない天才児、狗神遣いの少女、生首で生き存える双子のきょうだい…。あわこさまの正体、不村家を襲う悲劇との関係とはー。一族に受け継がれる異形の血脈。それは、忌むべき業か、或いは神が与えし恩寵か。頽廃と禁忌が織りなす、危険すぎるホラーミステリ。
性愛の対象が同性であることに気づいたのは、中学生の頃だったー。有名企業の経営者一族に生まれ、何不自由ない学生生活を送る「僕」。ある日、同級生男子への思いを綴った“妄想ノート”がクラスメートの女子に見つかってしまい…。BLマンガのようにはならない初恋、出会い系サイトでの冒険、大失恋に家族への露見ー胸焦がす想いを歌にたくして「お金持ちのダンくん」が歌人・小佐野彈になるまでを描く自伝的青春小説。
1580年代のイギリス、ストラトフォードに3人の子を持つ夫婦がいた。夫は舞台の仕事でロンドンに出たまま不在、子どもたちと義父母と同居する妻のアグネスは、鷹匠の技を持ち、薬草や民間医療に詳しく、不思議な能力を持った女性であった。ある日、娘のジュディスが高熱を出しペストに罹る。必死に看病するアグネスと双子の兄ハムネット。だがその努力も空しく…。わずかに残された史実から、シェイクスピアの妻を全く新しい姿で描き、イギリスで喝采を浴びた歴史小説。英女性小説賞、全米批評家協会賞受賞作。
金は二の次。絡んだ糸をほぐして核心に迫る「捜査」が愉しいのだー。白昼堂々起こった100キロ5億円の金塊強奪事件。かつては大阪府警暴対課の敏腕刑事だったが、今は警察を退職して無為な日々を過ごしている堀内信也は、刑事時代の相棒だった伊達誠一に誘われて、まだ押収されていない金塊の行方を追うことに。大阪から淡路島、由布院、小倉を経て名古屋へー。事件の核心に近づいていく二人に、ヤクザ、半グレ、汚職警官、悪徳貴金属ブローカーたちが次々と立ち塞がる!暴力と混沌の中でしか生きられない男たちを描くノワール小説の最高峰。
壬申の乱の真相。平城京が秘めた謎。奈良・猿沢池の畔に鎮座する春日大社の末社、采女神社。なぜか池に背を向け、普段はひっそりと門を鎖す。古来から続く、中秋の宵の祭の二日間以外は…。編集者の橙子は、ふと目にした采女祭に奇妙な違和感を抱いた。大学助手の堀越と共に、橙子は奈良から大津の寺社史跡を巡り、手掛りを追う。その時、遂に小余綾俊輔が電話に応答したー。