出版社 : 新潮社
第14部 明日への航路ー戦争孤児の勝利。戦地で大怪我を負った信介。島の復興に奮闘する信介に連れられ、勝利は初めて東京の土を踏む。第15部 野球小僧の詩ー長嶋に憧れる静雄が入った中学の野球部は、崩壊の危機にあった。急ごしらえのチームで、静雄は都大会に挑むが。第16部 一ノ屋の終わりー一ノ屋の跡取り、松人は、一族の血を残せとの厳命を帯びていた。仲のいい理香は、歌手を目指して島を後にする。「邯鄲の島遙かなり 下」には、第14部から第17部まで収録。
医療事故の責任を若い医師がとらされる現実、看護師たちの密かな怒り、病院に蔓延る権力闘争、法案成立にしがみつく厚労技官、そして病院経営に隠された闇…。毒だらけの日本の医療界に、孤高の外科医がメスを入れる。
事業が行きづまり、コーンウォールの邸宅に一人暮らす老いた女性。近頃は見知らぬ子供の頭が視界に現われ落ち着かない。いっしょにクリスマスを過ごそうと、息子とその恋人がロンドンから訪ねてくるものの、母はすっかり塞ぎこんでいる。じつは息子のほうも本物の恋人と喧嘩別れをしたばかりで、同行した「恋人」は、金を払って雇った移民の女性なのだった。この恋人の提案で、母とは30年間音信不通の破天荒な伯母も、人里離れた屋敷にやってくる。犬猿の仲だった姉妹の再会が埋もれていた家族の歴史を呼び覚まし、偽の恋人のあたたかく率直なふるまいが、ひびの入った一家を甦らせてゆくー。EU離脱が決定した2016年、人びとの落胆と社会の分断を背景に描かれる、「四季四部作」の冬物語。
思春期から33歳になるまでの男同士の友情と成長、そして変わりゆく日々を生きる奇跡。まだ光は見えない。それでも僕たちは、夜明けを求めて歩き出す。現代日本に確実に存在する貧困、虐待、過重労働ー。「当事者でもない自分が、書いていいのか、作品にしていいのか」という葛藤を抱えながら、社会の一員として、作家のエゴとして、全力で書き尽くした渾身の作品。
稀代のカリスマは、なぜ殺されたのか。“奇跡”の限界集落で発見された惨殺体。その背後には、狂気のテロリストによる壮絶な陰謀が隠されていた。否応なく迫られる命の選別、そして国民の分断ー。最悪の結末を阻止すべく、集落の住人・陽菜子は“死神”の異名を持つエリート官僚・雨宮とともに、日本の存亡を賭けた不可能犯罪の謎に挑む。
初めての普通選挙、島の英雄の死。血族の営みの影で、時代は動いていた。栄えつつある島に、容赦なく戦争の足音が近づく。島に生きた、ある一族の150年。激動の第二幕へ!
五輪(オリンピック)と疫病(コロナ)に揺れる都(TOKYO)で幽霊たちの大騒ぎ!来日したアメリカ人作家の前に現れる幽霊また幽霊。柴田元幸との名コラボが生んだ連作綺譚、世界初刊行!
19世紀中盤のアメリカ・ヴァージニア州。黒人奴隷ハイラムは、美しい踊り手でもある奴隷の母と、奴隷主である白人の父とのあいだに生まれた。並外れた記憶力と祖母から受け継いだ神秘的な能力をあわせもつハイラムは、恋人との逃亡に失敗するが、黒人奴隷を逃すネットワーク「地下鉄道」の活動家に見出される。やがて自身もその活動に身を投じ、多くの奴隷たちの物語に触れるうち、自らの力の源である、失われた母の記憶を取りもどしてゆくー。トニ・モリスンが「ボールドウィンの再来」と絶賛した、いまもっとも注目される全米図書賞作家によるデビュー長篇小説。壮大かつエキサイティングな物語。
無二の親友は、なぜ敵になったのか。沖縄生まれの勇は、ブラジルの日本人入植地「弥栄村」で日本移民二世のトキオと出会う。二人はかけがえのない友となるが、やがて祖国の終戦について真逆の報がもたらされー。誰もが見たいものを見る世界で、何を信じ、何を守るべきか。史実に基づくエンターテイメント巨篇。
信じていた相手に裏切られ、傷付いた人々が集う「いやしの村」。再起を期して集団生活を営む人々の姿は、慎ましく穏やかにしか見えない。しかしネット上には、「呪いで人を殺すカルト集団」という根強い噂があった。その真偽を探るべく、ルポライターが潜入取材を試みるのだが…。「幾重もの仕掛け」が明かされたとき、ようやくその真実を現す「いやしの村」。二度読み必至!「禁止」ファンの期待は、決して裏切りません!
「埼玉県内で会社を経営する男性の遺体を発見。警察は、事情を知ると見て、内縁関係にあった女の行方を追っていますー」顔を変え、新しい名前を手に入れた女は、日本海沿岸の温泉地で働き始める。誰も知る者のいない新天地で、別人としての人生を生きるはずだったが…。人間の欲望と業をみつめるスリリングな長篇小説。
母に連れられ、戦後の混乱が続くベトナムからアメリカへと渡った僕。幼い僕と祖母を抱え、英語もままならない母がネイルサロンで働いて一家を支えた。異国での不慣れな生活のいらだちを息子にぶつける母。母の苦しみは、周囲の少年たちから孤立する、僕自身の痛みでもあった。アルバイト先で出会った少年との初めての恋、性のおののき…。母を苛んできた「言葉」は、いつしか僕をそのきらめきで魅了するようになる。そしていま僕は、祖母と母、自身の三代にわたる人生を、文字が読めない母への手紙として綴りはじめるー。不世出の若きベトナム系詩人が、自らの来歴を元に、優美で切実な言葉で紡いだデビュー長篇。