出版社 : 早川書房
第一次大戦さなかの1917年。オスマン・トルコ軍は、劣勢に立たされながらも、イギリス軍と激しい戦闘を繰り広げていた。そんな中、トルコ軍の軍事機密をイギリス側に流し続ける美貌のユダヤ人女性がいた。彼女の名前はルース・メンデルソン。恋人サウルの影響を受けた彼女は、イギリスがパレスチナを解放した後、そこにユダヤ人の国家を建設することを夢見ていた。だが、その活動がトルコ側に知られてしまった。ルースとその父親を捕らえたトルコ軍の司令官ムラドは、即座に二人を抹殺しようとする。しかし、軍事顧問のドイツ人、フォン・トラウプ伯爵の策略を受け入れ、ルースをその道具にすることにした。彼女をトルコのスパイにさせて、イギリス軍のエルサレム進攻作戦を探らせようというのだ。別人になりすました彼女は、イギリス軍が駐屯するカイロに密かに潜入した。アラビアのロレンス、アレンビー将軍など実在の人物を巧みに織り込んで描く、絢爛たるスパイ・サスペンス。
「ヨットマンのエベレスト」と讃えられる世界一周の「ランカスター・グレート・サークル・レース」。イギリスのポーツマスを出発して大西洋を越え、ケープタウンを回ってシドニー、リオ・デ・ジャネイロ、そしてポーツマスに至る、雄大かつ危険に満ちた大ヨット・レースである。勝者の栄冠を求め、全世界からヨット乗りたちがエントリーする-。操船ミスの汚名をそそがんとするイギリスのエド・コール、豪放磊落なオーストラリア人チューブズ・マーフィ、祖父の代から海で生計をたてているアメリカ人アート・シャッカー、人気を取り戻そうとあせるテレビ司会者デイブ・ケリー、フランス貴族の末裔アンリ・ド・ロシャンボー、女性クルーのエミリー・デハビランドとハリエット・アグニュー…。それぞれの思惑を胸にスタートした彼らを待ち受けるかずかずの苦難。大いなる波涛を越えて、栄光のポーツマスに一位で辿りつくのは誰か?「海のディック・フランシス」と賞賛される気鋭作家が、海を愛する人々の勇気と連帯を爽やかに描く壮大な冒険小説。
この男は蛇に似ている-これが、はじめてロイ・マーシュと顔をあわせたときに私立探偵ジョン・カディのうけた印象だった。ロイと離婚訴訟中の妻ハンナが夫を恐れるのも無理はなかろう。カディはそのハンナから頼まれて、彼女のボディガード役として離婚協議の席にたちあったていたのだった。話し合いは、ハンナから家の所有権を求められたロイが激昂し、そのまま物別れに終わった。だが、ロイはおとなしくひきさがっているような男ではなかった。ハンナの家に忍びこむと、幼い娘のかわいがっていた子猫を虐殺したのである。娘を巻きこんだ卑劣なやり口に怒りをおぼえたカディは、ロイと対決すべく彼の家へのりこんでいったが…。夫の暴力の影に怯える母と娘をまもるべく、ボストンの知性派探偵がたちあがる。待望のシリーズ最新作。
リゾート小惑星シルヴァーサイドがついに完成した。華やかな開幕セレモニーにつめかけたあまたの名士や貴婦人たちのなかに、われらが快盗マイジストラルの姿もあった。狙いは、銀河に名高い宝石《エルトダウンの炎》。だがこの宝石を狙っているのは彼だけではない。宿命のライバル、フウ・ジョージも、この警戒堅固な小惑星に乗りこんできていたのだ。エレガントな快盗の胸のすく活躍をえがく人気沸騰シリーズ第2弾。
人類の長年の夢がようやく実現した。太陽系外の星系への植民がついに可能になったのだ。多国籍企業アライド・トランスコンの傘下にあるディアスポラ事業団は、すでに最初の恒星間世代宇宙船ウル号を2083年にイプシロン・エリダニへ向けて出発させた。さらにタウ・セチをめざす巨大な第二の宇宙船、乗員1万人のメンフィス号の完成も目前に迫っている。だが、この宇宙計画に反対するテロ・グループが暗躍しはじめていた…。
星々に憧れ、なんとかメンフィス号に乗に組む1万人の開拓者に選ばれたいと望む人々とは対照的に地球の貴重な資源と人材を宇宙へ送るのは無意味だと考えるグループがいた。なかでも、エレミアに率いられるホームワールドは、宇宙計画をすすめる企業アライド・トランスコンに対しつぎつぎと妨害活動をしかけてくるが…。宇宙開発にたずさわる人々の姿を最新の科学知識を縦横に駆使して迫真の筆致で描きだす力作長篇。
男と女の心を誘惑し、罪な恋のとりこにする愛の女神アプロディーテー。あろうことか、この女神の御名においてあなたを愛す、と口ばしりながら、カッサンドラーに迫る美貌の神官が現われた。しかし、太陽神アポローンに仕える彼女は人間の男に愛を捧げるわけにはいかない。これを知った神官は今度はアポローンの仮面をかぶってカッサンドラーの寝室に忍びこむが…。トロイア戦争の伝説を女性の視点から語り直した野心作。
外惑星連合軍と航空宇宙軍の壮絶な闘いが終結した。外惑星連合軍にとって、はじめから勝算の見込みの薄い闘いではあったが、やはり兵士たちにとって敗れたショックは大きかった。戦後処理のため敵軍が敷設した宇宙機雷処分の命を受けたガニメデ宇宙軍所属の掃海艇CCR-42の艇長・田沢も例にもれなかった。その田沢に対して、厳重に機雷封鎖された木星の小衛星に設置された研究所のデータ回収が言い渡されたが…。
保安会社を経営するスタフォードは、かつての恋人から奇妙な相談を受けた。巨額の遺産を相続した彼女の夫が、不審な行動をとりはじめたというのだ。調査を始めたスタフォードは、遺産を詐取しようとする邪悪な企てに気づき、これを阻止すべく灼熱のケニヤに飛んだ。遺産の背後に、アフリカ全体を揺るがす巨大な陰謀が隠されているとも知らずに…。『サハラの翼』のスタフォードが再び活躍する巨匠の傑作冒険サスペンス。
夢多き青年マシューの運命は友人の医者サイモンが事故死した日から変わった。ロンドンの病院でポーターをしていた彼は、死んだ友人の身分証明書を盗み、友人になりすまして、ブリストルの総合病院に就職することになった。偽医者となった彼は必死で医学の知識を詰め込み、医者として実務をこなそうとするが、綱渡りの連続だった…。90年代のイギリス青春群像を斬新なタッチで描く、衝撃の社会派サスペンス・スリラー。
軍需物資を満載してソ連に向かう輸送船団の護衛作戦ーそれは北極圏の想像を絶する寒さと暴風雨にさらされる、英国海軍最悪の任務だった。しかもキャメロン大尉の乗るフリゲート艦スプリンターには、さらに困難な任務が課せられていた。独ソ戦の勝敗を左右する重要人物2名を、ムルマンスクへ極秘裡に護送せよというのだ。だがバレンツ海では、強力なドイツ艦隊が満身創痍の輸送船団を待ち受けていた。シリーズ第5巻。
お願い、わたしの生物学上の父を探してー。閑散としたオフィスに突然飛び込んできた少女にサムスンは面食らった。大富豪クリスタル家の一人娘が、血液型から自分は実の子ではないことが判明したと涙ながらに訴えるのだ。さっそくクリスタル家の系譜を探り始めたサムスンは、こころならずも名家の巨富をめぐる醜悪な争いに巻き込まれてゆく。暴力を憎む心優しき知性派探偵アルバート・サムスン、文庫初登場。改訳決定版。
離婚調停が泥沼化し、わたしは意気消沈していた。ベルリンで開かれる名画展の仕事に飛びついたのもそのせいだ。が、わたしはたかが一介の美術館学芸員、そこで思わぬ冒険が待っているとは夢にも思っていなかった。名画展の主任が「この中に贋作がある」と言い残し、謎の死を遂げるまでは…。軽妙な語り口と本格派の香りが魅力の、エルキンズの新シリーズ。
ナチ・ドイツの崩壊を目前にした1945年春。英米軍は西から、ソヴィエト軍は東から、ベルリンに迫っていた。そのソヴィエト軍のなかに密かに〈大天使〉作戦なる計画を企む者たちがいた。〈大天使〉作戦-それは、東部戦線の全ソヴィエト軍を結集してドイツ軍を撃破したのち、その兵力で英米軍を攻撃、いっきょに全ヨーロッパを席捲しようという極秘の軍事作戦だった。作戦の計画文書を手に入れた英国は、ソ連の企みを撃破するため〈守護天使〉作戦を発動する。ドイツの最新鋭機を使って、チェコ領内にいる計画の中心人物シャポシニコフ元帥を秘密裡に抹殺するのだ。かくて密命を帯びた英軍パイロット、クルーズが、戦乱のドイツに潜入する。だが、クルーズはゾヴィエト側に恐るべき最終手段があることを知るよしもなかった。「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリィ」の元編集者が史実をおりまぜて壮大なスケールで描く航空冒険巨篇。
暴動に紛れて現金輸送車を襲ったのは、おれじゃなかった-。仮出所したばかりの黒人の大男デヴリーズは私立探偵ウォーカーにそう告げた。その事件が起きたのは、20年前のことだった。暴動中にビルが放火され、それに乗じて何者かが現金輸送車を襲ったのである。ビルに放火したデヴリーズは逮捕され強盗の共同謀議で有罪となった。だが放火は、当時知り合った白人の男子学生にそそのかされてやったことだった。この男が強盗を計画し、彼に罪を被せたのか?ウォーカーは白人男の足どりを追って過去の記録にあたり始めるが、そこには野望に満ちた策略が隠されていた。チャンドラーの衣鉢をつぐ著者が自信をもって放つ、正統派ハードボイルド。アメリカン・ミステリ賞受賞作。
クリスマス・イブの夜、ヘンリ・ティベット主任警視の家に意外な人物から電話がかかった。今年で90歳近くになる旧友のルーシーだ。今ではカリブで悠々自適の生活をしているはずのその彼女が、なぜかわざわざロンドンにきているという。ヘンリは食事に招いて話を聞くことにした。ルーシーの話に、ヘンリは眉をひそめた。実は彼女の住む島タンピカがコカイン密輸の中継点になっており、島の首相や警視総監までもが一枚かんでいるらしいというのだ。ルーシーは名誉総督から密命を帯びて秘密捜査を頼みにきたのだった。ヘンリは妻のエミーとともに南の国に飛んだ。だが二人の到着早々、麻薬密輸の首謀者と目されていた男が突然謎の事故死をとげた。ヘンリは身分を偽って陰謀のただなかへと潜入していくが…。暖かい語り口と全篇に溢れるサスペンス-英国ミステリの女王モイーズが久しぶりに贈るファン待望の最新作。
空に糸胞があるかぎり、竜騎士は飛んで、糸胞を殱滅しなければならないー。しかし、惑星パーンの安寧をあずかる竜騎士のあいだにすら疫病は蔓延してしまった。療法師ノ長キャピアムが苦心のすえ開発したワクチンも、パーンのあらゆる地点へ瞬時にして運び、人びとに集団接種しなければ効果がない。フォート大巖洞の洞母にして女王竜オルリスの騎士モレタはこのワクチン配付のため、危険きわまる時ノ跳躍に挑むのだった。
さんさんと照り輝くカリフォルニアの明るい太陽。ところ狭しと並ぶ超高層ビル。その間隙を縫うように走る電磁軌道道路網には、コンピュータにより自動制御されたハイテク車が目まぐるしく行きかう。時は21世紀。カリフォルニアの中心部オレンジ郡は、とどまるところを知らぬテクノロジーの進歩がつくりだしたユートピア社会を謳歌していた。だが、この夢のような社会にも、見えざる陥穽がぽっかりと口をあけていたのだ。