出版社 : 早川書房
サラミスの海戦。それは、かの歴史家ヘロドトスが『歴史』に記した、ペルシア戦争のなかでもっとも歴史的な戦いである。この海戦を、細大もらさず写し取ろうと試み、映画を凌駕する3Dの迫力を実現した、ディープな視覚小説とでも呼ぶべき、奇想天外な戦記。
R・バートンの稀覯本を入手して一躍時の人となった古本屋クリフを、それは私の書庫から盗まれた本だと主張する老婦人が訪れた。彼女の祖父はバートンと交流があり、献本で埋め尽くされた一大書庫を持っていたが、祖父の死と同時に騙し盗られたという。彼女の頼みで失われた蔵書の探索を始めた矢先、クリフの周囲で強盗殺人が。だが元刑事のクリフの勘はこれは計画的犯行だと告げていた…本好き垂涎の古書蘊蓄ミステリ。
異変をめぐる戦いは、地球の広範囲におよび、やがて宇宙規模へと拡大していった。人類は、さらに苛酷な戦闘を強いられることになる。地球人類がかつて直面したことのない、恐るべき脅威とは?来たるべき人間の未来を指し示す、黙示録巨篇。
“アーヴによる人類帝国”と“三カ国連合”との戦争は七年目に突入した。戦況は帝国に有利に展開していたが、さらなる攻撃のために、新たな作戦『双棘』が発起され、ラフィールとジントは、襲撃艦“フリーコヴ”で、ラフィールの弟ドゥヒールは、戦列艦“カイソーフ”に乗り組み、出撃する。そのころ、皇帝ラマージュと“ハニア連邦”とのあいだで、とある密約がなされようとしていた。大詰めを迎える戦争、その行方は。
さえない中年会計係のぼくと若い恋人のケアリーは、つましい結婚式を計画していた。ところが、勤め先の有力者の気まぐれな勧めにさからえず、高級リゾートのモンテ・カルロで式をあげることに。市長立会いの挙式、美しい海、そして豪華ヨットが待つ港町へむかったぼくたちはしかし、ギャンブルをめぐる不器用な愛のすれちがいにはまりこむー丸谷才一の名訳で贈る巨匠の異色恋愛喜劇。著作リスト・年譜を収録した保存版。
依頼人の女マーリーンはもったいぶった態度で、夫の浮気調査を依頼した。彼女の夫トレントンは、電力を中心としたエネルギイを扱い莫大な収益を挙げている巨大企業キナージイ社の財務責任者だという。調査をはじめたスペンサーは奇妙なことに気づいた。依頼人や調査対象の夫の浮気相手にも何者かが張りついているのだ。いったいこれはどういうことか?まもなく、トレントンが会社の中で殺されているのが発見され、会社の警備部長が依頼人たちを見張らせていたことが明らかになる。だが、その警備部長も自殺に見せかけて殺されてしまう。やがてスペンサーは、ダリン・オゥマーラという一対一の関係にとらわれない自由な結婚生活を標榜するトーク・ショウの司会者が、今回の事件に関与しているらしいことを掴んだ。巨大エネルギイ企業とオゥマーラとのつながりとは?大企業の莫大な財務に関わる事件という得意ではない分野で、スペンサーは会計士の力を得て解明をはかるが…シリーズ第31巻。
若妻グエンダはヴィクトリア朝風の家で新生活を始めた。だが、奇妙なことに初めて見るはずの家の中に既視感を抱く。ある日、観劇に行ったグエンダは、芝居の終幕近くの台詞を聞いて突如失神した。彼女は家の中で殺人が行なわれた記憶をふいに思い出したというのだが…ミス・マープルが、回想の中の殺人に挑む。
連続猟奇殺人事件の謎、手掛かりを集約すべき名探偵不在という謎、ちりばめられたパズルの薀蓄の謎…。徹底して不可思議な小説構造で読者の頭脳に挑戦する、かつてない思考型サスペンス。今年度最大の異色問題作。
数々の伝説が残るルーマニアでアメリカ人の青年が喉を切り裂かれて殺された。雨上がりの現場に残ったものは、狼の足跡のみ。犯人は村で噂される狼人間なのだろうか…探偵としてこの地を訪れたきみは、事件の真相をつかみ、伝説の狼人間の正体を暴けるか?フランス、カナダ、メキシコ、ブラジルなど世界各地で頻発する難事件の解決にきみの推理力が求められている。いざ世界へ!ちょっぴり観光もできる推理クイズ集。
七王国の空に輝く、血の色の彗星。それは大戦乱時代の到来を高らかに告げていた。前王の暗殺後、王妃の策略どおり、鉄の玉座は少年王ジョフリーが継いだ。しかし、南部の諸公を率いるレンリー王に、異国の黒魔術師の力を借りるスタンニス王ー少年王の出自に疑問を抱く叔父たちが、それぞれ諸公をを率いて挙兵したのだ!さらに父を処刑されたスターク家の長男ロブも、“北の王”として蜂起し、北部の諸公とともに軍を南へと進めている。国内に四人の王が入り乱れ、今や七王国全土は混沌に覆いつくされた。そればかりか海の向こうでは、古代王朝ターガリエン家の末裔が、蘇ったドラゴンたちとともに玉座の奪還に向けて力を蓄えつつあった…。ローカス賞を連続受賞、世界19カ国で絶賛された傑作巨篇、待望の第二部。
七王国全土で、血で血を洗う激しい戦が続いていた。民は飢え、貴族たちは兄弟で殺し合い、黒魔術師が暗躍する混沌の時代。運命に翻弄され散り散りになったスターク家の子どもたちも、それぞれの戦いを続けていた。都で残酷な少年王に虐げられている長女サンサ、故郷を目指し仮の姿で旅する次女アリア。“北の王”となって出兵した兄ロブの留守を守るブランにも、予想だにしない敵が迫る。一家の再会を願う母ケイトリンの思いとは裏腹に、運命はますます彼らを引き離してゆく…。一方、“王の手”として都を守るティリオンは、玉座を奪おうと迫るスタンニスの軍勢と対峙するため奇策をめぐらせていた。勝利は次々に、より冷徹な剣と、より冷酷な心の持ち主の手に渡ってゆく。戦と陰謀に彩られた七王国で、壮大な群像劇がさらなる佳境を迎える。
娘のアニーは二十歳にもならぬうちに駆け落ちし、わたしは止めることができなかった。男手ひとつで大切に育ててきたというのに、コールのような中身のない男のために一生を捨てるなんて。心配のあまり、わたしは病的なまでに娘の後を追い、逆に娘の激しい反感を買ってしまう。だが四年後、アニーは幼子を連れて戻ってきた。父娘の間のわだかまりは完全に消えたわけではなかったが、この四年間、わたしは娘と孫のリンダの保護者として精一杯やってきた。アニーが再婚しようとしているいま、わたしの心は複雑だ。相手のルイスは心やさしい男やもめで、娘よりわたしに年齢が近いくらいなのだ。そこへ、アニーの再婚話を聞きつけたコールが、自分の娘を奪い返そうと怒りに燃えて、突然姿を現わした…。壊れかけた人間関係を修復しようとする男たちが切ないセンチメンタル・ストーリー。
その男は警備の手薄な私立学校に押し入り、銃を乱射した。血は流れ、血は飛び散り、血は鮮やかに周囲を染めた。無残な骸と化した少年たちを前に、男は自らのこめかみを撃ちぬき自殺した。犯人の名はリー・ハードマン。かつて英国陸軍の特殊部隊に所属していた有能な男で、重大な犯罪歴も特になかった。スコットランドはエジンバラの刑事リーバスは、自身も特殊部隊にいた経歴をもっていたため、捜査に駆りだされる。しかし、強引な捜査ばかりを行ない、署内で疎まれる一匹狼のリーバスを、上層部は辞職に追い込もうと画策していた。リーバスは、リーを調べ続け、謎のゴス・ファッションの少女や精神病院に送られた殺人者といった奇妙な人物たちの存在を突き止める。さらに英国陸軍の調査官がリーバスの捜査を妨害し、事態は混迷を深め…。
近未来、医学の進歩によって自閉症は幼児のうちに治療すればなおるようになっていた。35歳のルウ・アレンデイルは、治療法が確立される前に大人になってしまった最後の世代の自閉症者だ。それでも、ルウの生活は順調だった。触感やにおいや光に敏感すぎたり、ひとの表情が読みとれなかったり、苦労は絶えなかったけれど、自閉症者のグループを雇っている製薬会社に勤め、趣味のフェンシングを楽しんでいた。だが、新任の上司クレンショウが、新しい自閉症治療の実験台になれと自閉症の社員たちに言ってきた。ルウは、治療が成功してふつうになったら、いまの自分が自分ではなくなってしまうのではないかと悩む。ルウの決断のときは迫っていた…光がどんなに速く進んでもその先にはかならず闇がある。だから、暗闇のほうが光よりも速く進むはず。そう信じているルウの運命は?自閉症者ルウの視点から見た世界の光と闇を鮮やかに描き、21世紀版『アルジャーノンに花束を』と評され、2004年ネビュラ賞を受賞した感動の長篇。
1887年英国。ブラックフィールド村に、『デイリー・テレグラフ』の記者と名乗る男が十年振りに帰郷する。昔、この村で起こった密室殺人事件を、正体を隠して調べ直そうというのだ。十年前、娘の誕生日に手品を披露する予定だった父親が、カーテンで仕切られた密室状態の部屋で、何故か背中を刺されて死んでいた。当時の関係者の協力を得て事件を再調査するうちに新たな殺人事件が起こり…。奇怪極まる密室殺人と犯罪史上最も悪名高い連続殺人を融合させ、“フランスのディクスン・カー”と評される著者が偏愛して止まない冒険小説大賞受賞作。
星船から転移されたグインは、ノスフェラスにいた。記憶を失い、セム族の村にいた。この情報は、グラチウスによって、パロに伝えられ、居合わせたハゾスから、ケイロニアへと知らせられる。ケイロニアは総力をあげてグインの捜索に乗りだす。いっぽうグインは、そんな中原の動きを知るはずもなかったが、記憶のないまま、なにかに突き動かされるかのように、ドードーの制止を振り切り、ひたすら中原を目指して歩んでいた。
長閑な生活をおくるべく、トミーとタペンスは田舎の家へ引っ越した。が、家で発見した古本には「メアリは自然死ではない」とのメッセージが!メアリという育児係が、のちにスパイ容疑をかけられ、不可解な死を遂げたことを知った二人は、大々的に聞き込みを開始する。すてきに齢をかさねた老夫婦探偵の大活躍。
地元の競馬大会で起きた殺人事件は、人間界のみならず動物界も沸騰させた。「騎手が誰かに刺し殺されたの。心臓をトランプの上から貫かれて」たまたま現場に居合わせたコーギー犬タッカーは、トラ猫ミセス・マーフィに得意気に語った。コカインや遺産相続といった不穏な単語が人間たちの間で囁かれるなか、名探偵を自認するトラ猫は、目撃証言を求めて鼠との協定締結に乗り出す。人畜力を合わせての推理の行方やいかに。