出版社 : 講談社
おなじ外観の家が続く雪に塗りこめられた街の迷路をさまよう敗残兵の姿と、「ライフェンヘルスの敗戦」と題された絵の場面とが交錯し、物語は複雑な軌跡を描きながら展開回帰をくり返す。兵士は銃撃をうけ、居合わせた医者に介抱されながら死ぬが、意表をつく結末が控えている。執拗なまでに幾何学的な描写によって独特の世界を構築し、ヌーボー・ロマンの旗手となったロブ・グリエの代表作。
「都会とは恐ろしいところだ」……5年間、地方で暮らし、都会に戻った私は、毎朝のラッシュに呆然とする。奇妙に保たれた〈秩序〉、神秘を鎮めた〈個と群れ〉の対比、生の深層を描出する「先導獣の話」のほか、表題作「木犀の日」、「椋鳥」「陽気な夜まわり」「夜はいま」「眉雨」「秋の日」「風邪の日」「髭の子」「背中ばかりが暮れ残る」の10篇。内向の世代の旗頭・古井由吉の傑作自選短篇集。
全寮制の名門女子高の生徒が子宮から大量出血して死に、いたはずの胎児が消えた。同じように変死した卒業生の姉、謎の言葉「ジャック」を遺し塔から身を投げた少女-桜の園に封印されたおぞましい記憶!陰惨な檻と化した学園で女探偵『黒猫』と一年生の優子に魔手が迫る。女に棲む“闇”を妖しく描く衝撃作。
二人の死者とは、二つの一族のアフォウトとモウチョを指す。両者が死んだ1936年の11月と1940年の1月の2回だけ、盲人のアコーディオン弾きガウデンシオはマズルカ『わが愛しのマリアンヌ』を奏する。最初は喪に服するために、2度目は歓喜の気持を表すために。舞台を故郷ガリシアにおいたノーベル賞作家の自伝的長編。
家を作ってんだ、男は言った。「連れてってやるよ」-ふとした気まぐれで無口な中年男の車に乗り込んだ「私」が、あてどないドライブの果てにたどり着いた場所は…?「今」の空気を映して話題のロード・ノベル「草の巣」と「夜かかる虹」の二篇を収録。
東京、北海道、沖縄…各地で起こる奇怪な連続殺人。血を抜き取られた死体は、バラバラにされ、あるいは皮をむかれていた!そして、少女たちの間でひそかに流行する「ゾディアック・カード」とは?世紀末の都会の闇に、「魔物」がひそむ-。
室町幕府第五代将軍足利義量の時代に幕府首脳部の一員として重きをなした一色満範が没すると、一色家は二つに分れた。丹後を領する喜多一色家を嗣いだ一色信康の死については多くの異説が伝わっている。信康は、同じ日、永享九年五月十四日に、別々の場所で殺されたというのだ。
料理をつくらない、しかし料理の真髄を知悉している料理人ー村上龍。ニューヨーク・パリ・ウィーン・リオ・ローマそして東京etc.を舞台に、男たちとは人生の懊悩を語りあい、女たちとは悦楽を分かちあうそのテーブルにこそふさわしい32の掌編小説をお届けしましょう。
生き残る王子はたった一人。流血が王位継承の伝統であったムガル帝国に東インド会社を尖兵としたイギリスの魔手が迫る。アヘン戦争、明治維新へと続く歴史の前哨戦として、三百年を越えるムガル王朝滅亡のひき金をひいたのは誰か。インドは「我が青春の一部」と語る著者が熱き思いをこめて描く長編歴史小説。
地中海地方の溢れる光の中をひとりバイクで旅する青年が出会う人々や風景を、明晰なことばを積み重ねてくっきりと描き出した「アポロンの島」「大きな恵み」、キリスト教についての著者の基本的な考えがうかがえる「エリコへ下る道」、戦時中の重苦しい時代に土俗的な雰囲気の中で成長する少年を自伝的に描いた「動員時代」の四つの作品群からなる短篇集。
栄達出世を夢みつつ、人生への懐疑にゆれる悩める青年健次の魂の行方を追う「何処へ」。瀬戸内海沿いの旧家に集まる兄弟姉妹らの心の翳と哀感を描く「入江のほとり」。父の死を綴る「今年の春」、母の死を書く「今年の初夏」。生涯基督教の神を求めながら棄教し、晩年に回心した“懐疑しつつ信仰を求めた求道者”正宗白鳥の代表作8篇。
十数人に及ぶ人命が易々と奪われた、あの怪奇的で残虐な、血みどろの「人狼城殺人事件」-背後には悪魔以上に怪物的な犯人が必ずいる!美貌と無類の知性で難事件を解明する名探偵二階堂蘭子は、義兄黎人とともに、この超絶的事件解決のため一路欧州へ。幽鬼のごとき殺戮者の魔手は、蘭子にまで伸びるか。
密室と化した社長宅で起きた殺人事件。しかも室内では時間の流れまでも狂っていた!?そんな不可思議な事件の真相解明に現れたのが「超能力者問題秘密対策委員会出張相談員・(見習)神麻嗣子」なるとんでもない少女。-ミステリの可能性を極限まで追求する西沢保彦が紡ぐ奇想が、今年も斯界に衝撃をもたらす。
春団治刑事長こと岩切鍛治は、組織や規律だけを重んじる警察の体質に刃向かう大阪府警の一匹狼だ。彼を慕う若手刑事が市内で屋台を撤去しようとして暴力警官として告発された。その直後、告発した男が不可解な死を遂げる。事件にきな臭さを感じた岩切は単独捜査を開始!「刑事長」シリーズ興奮の第三弾。
「プノンペンである男を捜して、この金を渡してくれ」流れ者が集まる白人バーで依頼人は囁いた。私立探偵カルヴィノはNY育ちの元弁護士。バンコク在住九年。タイ警察のプラット中佐が唯一の親友だ。二人はUNTAC統治下のカンボジアへ飛んだ。はびこる汚職、強盗、密輸、そして売春。哀愁の熱帯ハードボイルド。