出版社 : 講談社
奈津が奉公先雁金屋の次男光琳と出会ったのは光琳八歳、奈津十歳のときだった。早くも逸材の片鱗を見せる光琳に奈津は胸をときめかすが、それは果たせぬ恋の始まりだった。尾形光琳・乾山兄弟の間で揺れる女ごころ。京の大呉服商雁金屋を舞台に展開する絢爛豪華な時代絵巻。第一回時代小説大賞受賞作。
後水尾天皇は十六歳の若さで即位するが、徳川幕府の圧力で二代将軍秀忠の娘、和子を皇后とすることを余儀なくされる。「鬼の子孫」八瀬童子の流れをくむ岩介ら“天皇の隠密”とともに、帝は権力に屈せず、自由を求めて、幕府の強大な権力と闘う決意をする…。著者の絶筆となった、構想宏大な伝奇ロマン大作。
徳川家康、秀忠の朝廷に対する姿勢は禁裏のもつ無形の力を衰弱させ、やがて無にしてしまうことだった。「禁中並公家諸法度」の制定や「紫衣事件」などの朝廷蔑視にあって、帝は幕府に反抗し、女帝に譲位し、自らは院政を敷くことにする…。波瀾万丈の生を歩まれる後水尾天皇を描く、未完の伝奇ロマン。
妻と病室の窓から眺めた満月、行方不明の弟を探しに漕ぎ出た海で見た無数のくらげ、高校生に成長した娘と再会して観た学生野球……せつなく心に残る光景と時間が清冽な文章で刻み込まれた小説集。表題作の他「くらげ」「残塁」「桃の宵橋」「クレープ」と名篇を収録し、話題を呼んだ直木賞作家の、魂の記念碑。
夫との別居に始まり、離婚に至る若い女と稚い娘の1年間。寄りつかない夫、男との性の夢、娘の不調、出会い頭の情事。夫のいない若い女親のゆれ動き、融け出すような不安を、“短篇連作”という新しい創作上の方法を精妙に駆使し、第1回野間文芸新人賞を受賞した津島佑子の初期代表作。 光の領分 水辺 木の日曜日 鳥の夢 声 呪文 砂丘 赤い光 体 地表 焔 光素
2DKの「ぼく」のアパートにアキラとよう子と島田が住みついて、それぞれがふらりと出かけては帰ってくる4人の共同生活ははじまった-。猫たちのくらしにも似たとりとめのない日常をトレースし、新しい世代のしなやかな感受性を浮かびあがらせた青春小説のイノベーション。
父こそいないが、母や弟妹がいる。保護してくれる伯父がいる。親友もガールフレンドもいる。修平にはなんの不満もないはずだ。でも、修平はなぜか落ちつかない-。不安とときめき、修平16歳。大人への入口に佇つ。
友情を保つには優しさがあればいいが、愛を確かなものに育むには〈強さ〉が不可欠だ。美しい女になったヒロシとの関係に思い惑う主人公の亘。失われていく〈男〉への断ち難い思いの中で、新しい性のありようを問う長篇書下ろし小説。
竜堂家のスーパー四兄弟(ドラゴン)の超(ウルトラ)パフォーマンスを悪用し、世界征服を狙う四人姉妹(フォー・シスターズ)の極東のボスは、極秘の作戦を展開する。終(おわる)、余(あまる)の年少組を捕まえようとドーム球場に穴をあけたのにこりず、次兄続(つづく)を新宿の摩天楼に追いつめる。忍耐の限界に達した続は巨大な竜に変身し、悪の亡者どもを火炎の中に迎える……。
マーチ家の四人姉妹ー、長女のメグは温順な美少女、次女のジョーは活発で作家志望、三女のベスは心優しく内気、末っ子はおしゃれで絵の好きなエイミー。南北戦争に従軍中の父と、その留守を守る母の愛情につつまれて、貧しくても自分らしく精いっぱい生きる姉妹の一年間を描いた、アメリカ文学の不朽の名作。
若き中上健次が、根の国・熊野の、闇と光、夢と現、死と生、聖と賎のはざまで漂泊する、若き囚われの魂の行脚を、多層の鮮烈なイメージに捉えようとして懸命に疾走する。“物語”回復という大きなテーマに敢えて挑戦する力業。短篇連作『熊野集』、秀作『枯木灘』に繋ぐ、清新な十五の力篇。
南フランスのシャトーホテルで結婚式を挙げようと旅立った2人を襲う惨劇。ウェディングドレス姿の女が、衆人環視の塔の5階から炎に包まれて落下、続いて起きる密室殺人。持ち主が変死したばかりの古城が、さらなる犠牲者を必要とするのか。リアリティ溢れる人間描写と本格推理の醍醐味が見事に結合。
歪んだ館が聳え、たえず地が揺れ、20年前に死んだはずの女性の影がすべてを支配する不思議な島「和音島」。真夏に雪が降りつもった朝、島の主の首なし死体が断崖に建つテラスに発見された。だが殺人者の足跡はない。ラストで登場するメルカトル鮎の一言が齎す畏怖と感動。ミステリに新次元を拓く奇蹟の書。
野尻湖畔に屹立する修道院の塔上に発生した、二つの密室殺人。咲き乱れる満開の桜の枝に、裸で逆さ吊りにされた神父の首なし死体。不可解な暗号文。ヨハネ黙示録に見立てた連続殺人。名探偵・二階堂蘭子が超絶推理の果てに探りあてた、地下迷路の奥深くに埋もれた文書庫。ついに暴かれる禁断の真実とは。
竹本健治の連載ミステリに、ひそかに忍び込む残虐非道な殺人鬼の手記。連載が回を重ねるにつれ、虚構と現実は、妖しくも過激に昏迷の度を深める。竹本健治、綾辻行人、友成純一、新保博久、島田荘司…。ミステリ界を彩る豪華キャストが実名で登場、迷宮譚に花を添える。『匣の中の失楽』と並び賞される傑作。